グラブルオリジナルストーリー(主役:アンナ)   作:水郷アコホ

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32.5「発着場にて」

 ──時間を少し遡る。団長達とドリイが戦いを終えた、その日の早朝の事。

 ──プラトニアの発着場にて、島外行き最初の便がもうすぐ発とうとしていた。

 ──出港を待つ船内で、緑のローブを纏った二人組がお茶を酌み交わしていた。

 ──口元のカップをゆっくりと置いた長身の人物が、向かいの小柄な人物に語りかける。

 

 

 

長身

「このお茶とも暫しのお別れになるかと思うと、少々淋しくなりますね」

 

 

 

 ──小柄な人物が何事か語り返す。それを受けて答える長身の人物。

 

 

 

長身

「心外です。私も、これまで情緒というモノをよく学んできたつもりですよ」

「今では、少しくらいなら操ってみせる程度には──」

 

 

 

 

長身

「”死んでみた感想”──中々趣のある表現ですね」

 

 

 

 

長身

「──はい。確かに、遠隔操作した複製体と言えど、停止する瞬間まで感覚を共有しておりました」

「しかしながら、強いて申し上げるなら──『お互い様』です。貴方にとってそうであるように、私にとっても、一朝一夕で言葉に表すのは些か困難です」

 

 

 

 

長身

「はい。皆様、とても驚かれておりましたよ。特に──」

 

 

 

 

長身

「はい、何か」

 

 

 

 

長身

「……畏まりました」

 

 

 

 ──しばし沈黙し、長身の方がテーブル脇に設えられた窓の向こうを眺める。

 ──舷窓に広がる景色には民間用の発着場が広がり、龍を模した二層式の大型騎空艇が朝日に照らされ、一際美しく目を引く。

 ──その大型騎空艇の船首を眺めながら、長身が口を開く。

 

 

 

長身

「それにしても、『自由の身』と言う表現も、余り実感が湧きませんね」

 

 

 

 

長身

「そうかも知れません。しかし私には、この島で貴方と過ごした日々も充分に──」

 

 

 

 

長身

「まさか。不満など微塵も。貴方の要望通り、私は私の意思で貴方を手伝ってきたのですから」

「ましてや貴方には感謝こそすれ、私から直接手を下すような謂れはございません」

 

 

 

 

長身

「それはそれ、これはこれです。業務に私情は挟みません。それより──」

 

 

 

 ──室内と扉越しの廊下の気配を伺い、自分達以外に誰も居ないことを確認した長身が、ローブのフード部分を取り去り眼鏡を直す。

 

 

 

長身(ドリイ)

「ふぅ──」

「それより、私の役目はカレーニャ・オブロンスカヤの肉体をグラスに取り込ませた時点で満了した。間違いございませんね」

 

 

 

 

ドリイ

「役目を満了した時点で、私が何をするかに貴方は干渉しない。今しがた貴方から例示された通り、例え貴方に不利益な行動であったとしても」

 

 

 

 

ドリイ

「契約内容の確認は、いつだって大切な事ですから」

「間違いないようですので、仰せのとおり、私は私なりに好きにしてみます」

 

 

 

 ──出港間近の合図が鳴り渡る。出迎えだったらしい小柄な方が席をゆっくりと立つ。

 

 

 

ドリイ

「もう少々、お待ち頂いても?」

 

 

 

 

ドリイ

「はい。暫しのお別れです。挨拶くらいは、互いの顔を見合わせながら交わしておきたいと思うのです」

 

 

 

 

ドリイ

「それくらいの情緒を持つ私だからこそ、私に選ばせたのでは?」

「あんまり連れないようでは、私だって少しはヘソを曲げてしまいますよ」

 

 

 

 ──小柄な方が静かに溜息を吐き、自らの顔を隠すフードを取り払った。

 

 

 

ドリイ

「では、また”すぐ”会える事を期待しています。カレーニャ

 

小柄(カレーニャ)

「ええ、待ってなさい。どうせ”すぐ”片付きますわ」

 

ドリイ

「誠心誠意尽くされるよう、応援しています」

 

カレーニャ

「ハンッ、指先1つで一捻りでしてよ」

 

 

 

 ──フードを被り直したカレーニャが背後に手を振りながら扉へと向かう。

 ──扉を開こうとしたその瞬間、ドリイに呼び止められた。

 

 

 

ドリイ

「カレーニャ」

 

カレーニャ

「ぬぐっ……何ですの人がクールに立ち去ろうとしてる矢先に……?」

 

ドリイ

「いつかまた──こうしてお茶を飲ませて下さい。一緒に、笑いながら──」

 

カレーニャ

「──?」

 

 

 

 ──目をテーブルに伏せ、お茶の残りを静かに飲みながら語りかけるドリイ。

 ──カレーニャは余分な締めの意図が解らず首をかしげている。

 

 

 

カレーニャ

「そんなん、”終わった”頃にいつでも会いにいらっしゃいな」

「──もう良いですわね? 行きますわよ」

 

ドリイ

「はい。いってらっしゃいませ。カレーニャ」

 

 

 

 ──廊下の向こうへ去っていくカレーニャ。

 ──目もくれずに見送ったドリイは、カップに残った一口分にも満たない僅かなお茶の残りを暫し見つめ、カップを置くと硝子窓の向こうの朝日を見上げ、(つや)やかに目を細めた。

 

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