グラブルオリジナルストーリー(主役:アンナ) 作:水郷アコホ
──発着場に飛び降りた団長とカタリナ。
──全身に鎧を纏いながらも、カタリナが着地と同時に踊るように剣を一閃。付近を漂っていたグラスの鳩が2つに砕けた。
──鳩は地面に墜落し、そのまま魔力の粒子となって消えていく。
カタリナ
「フッ──。武器が使えれば、ざっとこんな物だ」
──図書館での雪辱を
カタリナ
「まずは私が切り込んでグラスを砕いて回る。君は生存者の避難と、可能であれば経緯を聞き出してくれ」
──頷く団長。カタリナが駆け出し、団長が周囲に人影が無いか探す。
──とはいえ騒乱の只中だ。優先すべき被害者もすぐに見つかった。
──グランサイファーの傍らで横たわっている男性が居た。近くで一部が欠けたトロッコ型のグラスが横転したまま消えかけている。
──先程船内で聞いた音も、彼かグラス、あるいは両方が艇にぶつかったためだろう。
──助け起こすと、男は途端にパニックになり、団長の手を振り払って負傷した身体を引きずりながら逃げ出した。
男
「ひっ、よ、寄るなぁ!」
「くそっ……こんな、こんな島、二度と来るかぁっ!」
──その足取りは負傷のためか、一般人が歩くより遥かに遅い。
──自分の艇に回収すると引き止める団長の言葉も、恐慌を来した頭には届かない。
──粘り強く団長が男に組み付くも、男は殴って、引っ掻いて、全身をよじりながら叫び散らす。
男
「バカ言ってんじゃねぇ! 逃げんだよ、みんな逃げんだよぉ!」
「島の奴らが言ってたんだ、”アレ”は本物の悪魔になる前兆だって!!」
「本当だったんだよ! いきなり人を呑み込むんだ! だから逃げんだよ離せぇ!」
──男の言葉は要領を得ない。抵抗する男の拳が団長の顔面に命中し、思わず拘束が緩んだ。
──その隙に倒れかけながら逃げ出す男。再び捕まえなければと団長が駆け出した瞬間、背後で悲鳴が上がる。
──遠くで親とはぐれたらしい女の子が地面に倒れ込み、グラスの車輪の馬車が猛スピードで女の子に迫っていた。
──助けに行こうにも、既に足は反対方向の男へと踏み出した後。女の子と馬車の距離も、団長が方向転換してる間に衝突してしまうと容易に予想できる近さだった。
──見届けたくなんて無いが、目を閉じちゃいけない。切羽詰まって女の子へと手を伸ばすが、届く訳もない。胸中で覚悟したその時……
???
「ワ……ワッショイ!」
???
「ワッショーイ!」
──威勢のいい掛け声と共に当たりが真っ赤に照らされた。次の瞬間には、女の子は無事で、馬車と車輪は幾許かの煙だけ残して消えさっていた。
──幸いにも、騒動に気付いたらしい女の子の母親がすぐさま駆け寄り、女の子を抱き抱えて足早に去っていく。
──声がしたのはグランサイファーの甲板。見上げると、先程カタリナに運ばれたはずのアンナが甲板の手すりに立って肩で息をしている。
主人公(選択)
・「ありがとう!」
・「無理はしないで!」
→「無理はしないで!」
アンナ
「あっ、だ、団長さん……!?」
「あ、あの、ボ、ボクは大丈夫だか──ひゃっ!?」
──呼ばれて初めて団長に気付き慌てて応えるアンナ。しかしその真っ最中に、アンナはぐらりと身体をよろめかせた。足を踏み外してからワンテンポ遅れて悲鳴を上げ、そのまま落っこちた。
──咄嗟に飛び出した団長がアンナをキャッチして事なきを得る。
主人公(選択)
・「まだ休んでた方が……」
・「大丈夫……?」
→「まだ休んでた方が……」
アンナ
「あ……」
「……あ、いや、あ、ごご、ご、ごめん……」
──ワタワタと団長の腕から離れ自分の足で立つアンナ。
──抱きかかえられたアンナは、しばらく団長の顔をぼんやりと見つめていて、返事も数拍遅かった。強がっていても、やはり体はガタガタのようだ。
──不安そうな視線を送る団長。しかしアンナはその瞳に気付くと、自らに力を入れ直すように語気を強めて、言った
アンナ
「し、心配かけちゃってるのは……ごめんなさい」
「で、でも……お願い。今は、無茶させて……ほしいの……!」
──団長を見据えて申し出るアンナ。その目には、何か強い意志が感じ取れる。
主人公(選択)
・「──わかった!」
・「でも……」
→「──わかった!」
男
「うわああぁぁあ~~~、くく、来るなぁ~……!」
──団長の言葉をかき消すように新たな悲鳴が上がる。
──振り向くと、先程の錯乱した男性だった。
──腰を抜かして座り込んでいる。叫び散らす先にはまたもやグラスの鳩。
──自分の艇へ一心不乱に逃げようとする余り、周りに目が行かなかったようだ。
──加えて男の更に向こう……鳩から男への直線上の先に、島の住民と思しき老人の姿もあった。
──老人もこの騒ぎに揉まれて負傷したらしく、足首を押さえて蹲っている。
──このままでは男、老人と2人まとめてグラスに呑まれてしまう。大急ぎで駆け出す団長とアンナ。
男
「いぃ、嫌だぁ、来ないでくれぇ~、頼むぅ~~~……」
──恐怖の余り、その場でベッドシーツに自らを包むような姿勢で丸まる男性。
──グラスがゆっくりと男性へと迫る。この距離ではまたも間に合わない。アンナも走りながら炎を練っているが、間に合うかどうかは怪しい。
──が、グラスの鳩は男性の真上を通り過ぎ、そのまま無視して老人へと接近していく。
──思わず顔を見合わせる団長とアンナ。だが呆気にとられている場合ではない。すぐさまアンナが炎を撃ち出す。
──レーザー状に細く伸びた炎が鳩を貫き、一拍置いて鳩の横腹から穴が広がり、瞬く間に蒸発して消え去った。
──図書館で暴走グラスを沈黙させた時より、明らかに威力が上がっている。
──追いついた団長が尚も錯乱する男性を半ば羽交い締めにし、アンナが老人を介抱している頃に、ルリアとビィがやってきた。
ビィ
「おーい、艇の奴ら呼んできたぜ!」
ルリア
「皆さん、襲われている方達を助けに行ってくれました。これなら何とかなりそうです」
──改めて辺りを見てみると、見知った顔がグラスを無力化し、負傷者を手当し手近な艇に運んでいる。
──ホッと一息つく団長。そこへアンナが口を開いた。
アンナ
「み……皆、お、お願いがあるんだけど……」
ビィ
「お? どうしたこんな時に」
アンナ
「ボク……も、もしかしたら……だけど……この、魔導グラスが暴れてるの……何とか、できるかもしれないんだ」
ルリア
「何とかって……グラスさん達を元に戻せるって事ですか?」
アンナ
「あ、あ、いや……も、元通りかは、ちょっと解らないけど……と、とにかく!」
「ボ、ボクと一緒に……図書館までついてきてほしいんだ……!」
──図書館と聞いて、条件反射的に図書館の方角へ目を向ける一同。
──プラトニアで最も高い建物だけあって、発着場からでも若干、空気に霞みながらも見て取れる。
──そして図書館の姿に息を呑む一同。
──カレーニャの邸宅を包んだそれと同じ……否、それより遥かに分厚く、激しく、禍々しい形状のグラスに覆われ、シルエットが二回りは太って見え、そこかしこから棘のように伸びるグラスが要塞のような威圧感を醸し出していた。
アンナ
「あそこにきっと……カレーニャが居るから……!」
ルリア
「カ、カレーニャちゃん!? カレーニャちゃんは、無事だったんですか?」
ビィ
「っていうか何でそこでカレーニャが出て来るんだ? 全然話が見えねぇぞ……」
アンナ
「えっと、それはね。その……うぅ……ど、どこから話したら……」
カシマール
「セツメーハアトダ! イクノカイカネーノカ、トットトキメヤガレ!」
──混乱する一向にカタリナが合流する。
カタリナ
「皆、無事か。周辺のグラスは一通り片付けたが1つ気になる事が……どうした、何かあったのか?」
ルリア
「あ、カタリナ。私達は大丈夫です。ただ──」
──アンナの言い分を、聞いたままにカタリナに説明する一行。
──カタリナは少し考える仕草をした後、アンナに問いかける。
カタリナ
「アンナ。君はこの異変について何か知っているんだな」
アンナ
「うん……。ただ、説明すると長くなっちゃいそうで……」
カタリナ
「そうか。なら事情は移動しながら聞こう」
「図書館なら少しでも土地勘のある私達で向かおう。この広い発着場全体の避難を完了させるためにも、人員を割くのはなるべく控えた方が良い」
ビィ
「あ、姐さん信じるのか?」
カタリナ
「何だビィ君。アンナが信用ならないか?」
ビィ
「い、いやそう言うんじゃねえけどよぉ……やっぱり、突然そんな事言われても……」
カタリナ
「私もアンナが何に突き動かされているかは疑問だ。ビィ君の不安も解る。だが──」
「きっともう答えは決まっているさ。そうだろう?」
主人公(選択)
・「図書館が明らかに怪しい!」
・「ここでじっとしてるよりはマシ!」
→「ここでじっとしてるよりはマシ!」
ビィ
「ん~……確かにグラスから逃げてばっかでもどうしようも無ぇしなぁ」
「ま、
ルリア
「私も、カレーニャちゃんが居るなら絶対に会いに行きたいです!」
カタリナ
「よし。近くの仲間に伝えたら、そのまま図書館まで直進だ。準備は良いな!」
ビィ
「おう!」
ルリア
「はい!」
──走り出す一行。
──アンナは何を知ったのか。図書館に居るというカレーニャとこの事件の関係は……。
──疑問は今は飲み込み、島を覆い尽くさんばかりに溢れ返るグラスをなぎ払いながら、一行は発着場の出口へと向かった。