グラブルオリジナルストーリー(主役:アンナ)   作:水郷アコホ

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40「正当」

 ──団長達が生存者を路地まで無事に連れて行くと、もう既に全員がその場所を知っていたようで、一行に礼を返しながらも我先にと路地の向こうへと駆けていった。

 

 

 

ビィ

「あ、おい待てって。まだグラスがその辺に居るかも──」

 

 

 

 ──ビィが止める間もなく、一刻も不安から逃れようと路地の向こうへ去っていく生存者達。

 ──10人単位で通り抜けるには路地は狭く、無理に制してでも先頭に立つべきだったかと焦る一行。

 ──だが、丁字路に差し掛かった先頭集団がそのまま特に驚く様子もなく道を曲がって行った。幸いにも危険は無かったらしい。

 ──念のために生存者達の後を追うと、昨日アンナを介抱した辺りで、最後尾の人影が壁の何処かを引っ張るような仕草をしている。そしてその向こうへ滑り込むように消えていった。どうやらあの近くに隠れ家があったらしい。

 ──生存者の安全を信じて、隠れ家らしき地点を過ぎ、団長達も大通りへ抜けた。先程カレーニャと対峙した時よりも一層暗くなってきている。

 

 

 

ルリア

「結局、隠れ家がどんな所か解らないままでしたけど、皆さん、本当に大丈夫でしょうか」

 

アンナ

「隠れ家は、魔導グラスを使ってないって言ってたから、大丈夫……だと、思うけど……」

 

ビィ

「まあ、入った途端にもうグラスに荒らされてたってんなら、1人くらい飛び出したり叫んだりしてるだろうしなぁ……」

 

主人公(選択)

・「今は信じるしか無い」

・「襲われてても今更助けられない」

 

→「襲われてても今更助けられない」

 

ビィ

「止めろよぉ……団長(オマエ)は相変わらず変な所でドライだよなぁ」

 

アンナ

「それと……皆、さっき、カレーニャが街の人達を襲った時の事、覚えてる?」

「カレーニャが……う、撃たれた時の……人達……」

 

ビィ

「お、おう……でもそれがどうかしたか?」

 

アンナ

「あの時ね……」

「その……カレーニャが『悪魔』になるために死んだ……って、街の中で噂になってたって、島の人の誰かが言ってて……」

「カレーニャも……その事を知ってるみたいだった……噂を誰が言い出したかまで……」

 

ビィ

「そういや、オイラもそれ聞いたな。確か、『朝っぱらから酔っぱらいが言いふらした』──みたいな事言ってたはずだぜ」

 

ルリア

「私も聞きました……けどカレーニャちゃん、何でそんな事まで?」

 

アンナ

「ここに来るまでも、何度か気になってたんだけど……」

「多分、カレーニャ……魔導グラスを通して、この島を見てるんだと思う……昨日の夜から……」

 

ビィ

「グラスを通して……見てるだぁ?」

 

 

 

 ──アンナの推理では、この島の魔導グラスが認識した映像や音を、カレーニャはどこに居ても見聞きできるのでは無いかとの事だった。

 ──ショーウィンドウのグラスを巨大なグラス壁に変え、窓ガラス代わりのグラスの中へと消えていったカレーニャ。理屈は解らないが、彼女は恐らく昨夜の一件を通して、魔導グラスと一心同体になっている。

 ──グラス越しに島の状況を読み取る事で、今朝に酒場で交わされた会話を拾い、噂が広まっていく様を見届け、夜にはブティックのグラスが全て対策されたのを知りグラス人形を送り込んだのではないか。

 

 

 

ビィ

「う~ん……確かにそう考えりゃぁ辻褄は合うけどよぉ……」

「だったらカレーニャの奴、生き残ってる島の人間がどこでどうしてるかとか、全部お見通しなんじゃねぇのか?」

「何ならオイラ達が図書館に行こうって決めたの知って、すぐに発着場をあのグラスの壁で閉じ込めたりできただろうしよ」

 

アンナ

「多分だけど……全部を一遍には見られないんじゃないかな」

「い、一度に沢山の人に話しかけられたら、何を言ってるか聞き取れないみたいに……グラスの1つ1つが見たり聞いたりした事から、その時々で幾つか選んでる……とか、かなあ?」

 

ビィ

「かなあって言われても……」

 

ルリア

「でも、カレーニャちゃんが遠くからグラスで見たり聞いたりできると、何で服屋さんの人達は大丈夫なんですか?」

 

主人公(選択)

・「隠れ家はカレーニャに見つからない」

・「グラスが無ければ大丈夫」

 

→「隠れ家はカレーニャに見つからない」

 

アンナ

「そ、そう、それ! だ、団長さん、ありがとう……!」

「グ、グラスから島の様子を見てるって事は……グラスを使ってない隠れ家は、外を歩いているグラスに見つからない限りは、安全なはずなんだ……」

 

ビィ

「なるほどなぁ。グラスが無い所までは確かめようが無いって訳か」

 

アンナ

「うん。島の人が通った道とか、ずっと見てたんだけど、グラスはどこにも無かったから……た、多分、隠れ家に逃げ込む所も、見つかってないはずだよ」

 

 

 

 ──話していると、大通りの向こうに数人の人影が見えてきた。

 

 

 

ビィ

「お、また生き残りか。隠れ家の事とか教えてやんねぇとな。おーい!」

 

アンナ

「ッ……!」

「ビ、ビィくん待って」

 

 

 

 ──話しかけに行こうと飛んで行くビィにアンナが咄嗟に手を伸ばす。

 ──その手がビィの尻尾をむんずと掴み、自らの推進力で自らの尾を引き伸ばすビィ。

 

 

 

ビィ

「いっでぇ!!」

「な、何すんだよアンナぁ……」

 

アンナ

「ご、ご、ごめんね……でも、行っちゃダメ──」

「あ、あれ……魔導グラスだから……!」

 

 

 

 ──暗がりで、団長達の目には人型の影が蠢いているようにしか見えない。

 ──だがアンナの目はこの闇の中でも健在だったようだ。

 ──先程の隠れ家談義とは打って変わって、確信に満ちた声で注意を呼びかけるアンナ。

 

 

 

ビィ

「だったら尚更じっとしてる訳にはいかねぇぜ。オイラ達はこの先に用があんだからな!」

 

 

 

 ──意気込むビィ。団長も同感とばかり武器を取る。

 ──すると、人影はまるで団長達の行動を悟ったかのように、急に景色の隅の方へと歩んでいく。

 

 

 

ルリア

「あ、グラスさん達、どこかへ行っちゃいました」

 

アンナ

「み、皆、走って。島の人を、見つけたのかもしれない……!」

 

 

 

 ──駆け出す一行。

 ──アンナの予感は的中した。グラス人形が消えた辺りから一本の路地が伸びているのを暗闇でも捉えられて来た頃、その路地から女性の悲鳴が届いた。

 ──路地に飛び込むと、三体の大型グラス人形が路地の幅一杯に並んで奥へ奥へと直進している。

 ──人形たちの奥から子供の声が聞こえる。

 

 

 

子供の声

「そ、そそ……それ以上、近づくんじゃねー! たた、タダじゃお置かないぞ……!」

 

 

 

 ──どうやら間近まで迫られているようだ。一刻を争う。

 ──団長が飛びかかるが、脇を固める2体が振り向き団長への防衛を始め、決定打が通らない。

 ──そうこうしている間に中央の1体が腕をゆっくりと振り上げる。背を向けたままに構えたその拳は十中八九、団長達に向けたものでは無い。

 ──考えている暇は無いと中央の人形に突撃する団長だが、焦る余り気付いていない。その死角から「待ってました」とばかりに二体の人形の拳が迫っている……。

 

 

 

アンナ

「だ……団長さん、伏せて!」

 

 

 

 ──アンナの声にすんでの所で我に返り、瞬時に指示に従う団長。滑り込むように石畳に寝そべった直後、その直上を帯状の炎の塊が”虹色”に輝いて駆け抜ける。

 ──周囲を照らす鮮やかな光と背中の熱気が失せた頃に団長が顔を上げると、3体のグラス人形は足首を残して消滅していた。

 ──両隣の建物は石造りなのもあり、若干の煙を残すだけで殆ど燃えていない。よしんば燃えたとして、既にこの辺り一帯は倒壊した家屋ばかりだ。被害は大差無かっただろう。

 

 

 

ビィ

「い……今、何かすげえ技が出なかったか……?」

 

ルリア

「火の色も、とっても綺麗で……」

「そう言えば、昨夜も見たような……?」

 

アンナ

「あ……あれぇ?」

 

 

 

 ──呆気にとられながらアンナを見る一行。アンナ自身も何が起きたのか解らないと言った顔をしている。

 ──本人に聞いても今は仕方が無さそうだと判断し、団長がグラスに襲われていた島民の保護へ向かい、ルリアとビィもそれに続く。

 

 

 

アンナ

「(これって……やっぱり……)」

 

 

 

 ──グラス壁の時と言い、アンナ自身から見ても今のアンナの力は異常だった。そして、アンナにはその力の理由に心当たりがあった。

 ──胸元をきゅっと握りしめて、今は考えている場合じゃないと自分に言い聞かせて団長達の後を追う。

 

 

 

少年

「な……何が、起きたんだ……?」

 

 

 

 ──グラス人形の向こうで、材木の破片を握った幼い少年も呆然とこちらを見ている。あんなに強大な存在が一瞬で蒸発したのだから無理もない。

 ──少年と、その背後でへたり込んでいた女性とを保護した一行。

 ──話を聞くと、どうやら2人は親子で、今の今まで命からがら逃げ惑い、先の団長達同様、倒壊した近くの建物の中で休んでいたらしい。

 ──グラス人形の足音が聞こえて逃げようとした所、却って運悪くその人形たちに気づかれてしまい、少年は転んだ母を守るため立ちはだかっていたと言うのが、先程までの顛末のようだ。

 

 

 

母親

「本当に、何とお礼を言って良いか……」

 

ルリア

「気にしないでください。お怪我も無くって何よりです」

 

 

 

 ──だいぶ疲れているだろうに、しきりに頭を下げる母親。線の細い優しげな雰囲気で、感謝に満ちた瞳を見ているだけでルリアも温かい気持ちになる。

 ──ルリアは屈んで、隣の少年にも語りかける。

 

 

 

ルリア

「君も、お母さんを守って、とっても格好良かったですよ」

 

少年

「へ、へん! あれくらい、オレだけでも何とかなったぜ!」

 

ビィ

「ハハッ! この調子なら心配無さそうだな」

 

少年

「あったりまえだ。オレはドリイさんみたいに強くなるんだ。父ちゃんが居ない間はオレが母ちゃんを守るんだ!」

 

ルリア

「ドリイさん……?」

 

少年

「父ちゃんがいつも言ってるんだ。『ドリイさんみたいに立派になれ』って」

「言われなくたって、オレだってドリイさんみたいになりたい。だからドリイさんがカレーニャやっつけたみたいに、オレもカレーニャの手下くらいやっつけてやるんだ」

 

ルリア

「ぁ……」

 

母親

「この子ったらまたそんな事言って……」

 

ビィ

「そ……そうだぜ。そもそもカレーニャは、その……」

 

母親

「そうよ。カレーニャは、私達がやっつけないといけないのよ」

 

 

 

 ──母親が少年を優しく、哀しげに抱きしめる。

 

 

 

母親

「ドリイさんは立派な人だったわ。だけど──」

「私はカレーニャをやっつけても、それでお前まで居なくなってしまうなんて嫌よ」

「ドリイさんはもう居ないの。だから『ドリイさんみたいに』じゃないわ。『ドリイさんよりも』立派に、強く生きて頂戴……」

 

少年

「母ちゃん……うん。解った」

 

ビィ

「い……いやぁ、だから……」

 

 

 

 ──ビィが口をモゴモゴさせていると、母親がハッと何か察してこちらに向き直る。

 

 

 

母親

「あ、そうだったわね。ごめんなさい私ったら──」

「今は、皆さんが代わりに魔導グラスを退治して下さってるのですものね」

「どこか、少しでも安全な場所をご存知でしたら教えて下さい。皆さんのご迷惑にならないよう、ちゃんと待っていますので」

 

ビィ

「うぅ……」

 

ルリア

「あ、え、えと、それでしたら、島の皆さんが作った隠れ家があるらしいですよ!」

 

母親

「まあ、噂は本当だったのですね。場所さえ教えて頂ければ、自分達で向かいますので──」

 

少年

「何だよ隠れ家ってー。そういうの泥棒とかが逃げる時に使うヤツじゃん」

 

母親

「こういう使い方もする言葉なのよ」

「大丈夫。今は隠れるしか無くっても、皆で力を合わせれば何だって乗り越えられるわ。今は皆で集まって、どうやってカレーニャに勝つかを話し合いましょう」

 

少年

「ちぇー。せめてカレーニャがどこに隠れてるか解れば皆でやっつけに行けるのになー」

 

ルリア

「あ……あは、は……」

 

 

 

 ──ルリアは引きつった笑みを浮かべるのが精一杯だった。ビィは言いたい事が山積みになり過ぎて、もう何が言いたいかも解らなくなって頭をひっかくような捏ね回すような仕草をして小さく唸っている。

 

 

 

少年

「お姉ちゃん達も頑張ってな。カレーニャなんて卑怯な奴に負けるんじゃねえぞ!」

 

ルリア

「う……うん。が、がんばるね……」

 

少年

「心配すんなって。カレーニャなんて、本当は全然弱っちいんだ」

「魔導グラス造る以外に何もできねーし、家に引き込もってばかりでまともに人と話せないんだぜ?」

「それに魔導グラスでラクしすぎて、婆さんみたいにちょっと歩いただけで息が上がるんだって皆言ってるんだ」

 

ルリア

「そ、それは、あのね……」

 

 

 

 ──楽しそうに語るその笑顔が眩しく、それが苦しい。少年のカレーニャへの悪口は尚も続く。

 ──母親も言葉遣いの悪さを窘めながらも、元気を取り戻した息子を頼もしげに見守るばかりだ。

 ──流石に聞くに堪えず、ルリアが口を挟みたがっているが、こんな時に何と言ってやれば良いのか解らずまごつくばかり。

 ──その時、2人の間にねじ込むように、見慣れた人影が割って入った。

 

 

 

ルリア

「あ……アンナ、ちゃん?」

 

アンナ

「キミは……」

 

 

 

 ──ボソッと呟いて、少年の両肩に手を置くアンナ。

 ──膝は曲げず前かがみに。やや覆いかぶさり気味に見下ろしながら少年に語りかける。

 ──その表情は夜闇に霞み、僅かな明かりさえ逆光となり定かでない。

 

 

 

アンナ

「キミは……カレーニャの事、嫌い?」

 

少年

「うん!」

「って言うか、この島でカレーニャの事が好きって奴なんて居る訳ないよ」

 

 

 

 ──屈託なく、むしろ誇らしげに語る少年。

 

 

 

アンナ

「……どうして?」

 

少年

「どうしてって……だって、カレーニャに味方するような奴なんて学校じゃ先生に怒られるし、皆からも仲間はずれにされるんだぜ?」

「こないだだって作文の授業で『カレーニャのグラスで皆が助かってる』なんて書いた奴がいて──」

 

アンナ

「そうじゃない。どうしてキミはカレーニャが嫌いなの?」

 

少年

「ん……? 何言ってんの姉ちゃん……?」

「だから皆がカレーニャは悪い奴だって言ってるんだって。父ちゃんも母ちゃんもそうだよ。父ちゃんなんか図書館の受付やる前は『ぼーえき』って仕事してたけど、カレーニャのせいで仕事できなくなって大変だったって──痛っ!?」

 

 

 

 ──さっきまで肩に軽く置いていただけだったアンナの手はブルブルと震え、か細い指が少年の肉を裂かんとばかりに握りしめられている。

 ──少年が反射的に身を飛び退かせようとするも、アンナの手が逃してくれない。

 

 

 

アンナ

「キミは……カレーニャに何かされたの……?」

 

少年

「姉ちゃん、手ぇ痛いって──」

 

アンナ

答えて!!

 

少年

「ヒッ!?」

 

アンナ

「カレーニャがキミに何かしたの……お父さんでもお母さんでも友達でも無い、キミに……!」

「カレーニャに会った事あるの? カレーニャと話した事があるの? カレーニャが何か悪い事したの……キミは、それを直接見た事あるの!? ねえ!!」

 

ビィ

「お、おい、アンナのヤツ何だかヤベェぞ!」

 

 

 

 ──異常を察して団長と母親が両者を引き剥がす。

 ──何者が自分を(いまし)めているかも解らない様子で抵抗するアンナの形相は、先だってグランサイファーで豹変した時とそっくりだった。

 ──否、より酷いかもしれない。唸る獣のように鼻筋を限界まで引きつらせ、目は抵抗する最中にも少年だけを睨みつけ、解放してしまえば喉笛にでも食いつかんばかりだった。

 ──我が子を抱き寄せた母親が強くアンナを睨み返した。

 

 

 

母親

「急に何をするんですか!」

 

ルリア

「アンナちゃん、駄目です! 落ち着いて──」

 

アンナ

「カレーニャはっ! カレーニャはそんな()じゃない! 何も知らないのに、酷い事言わないで!!」

 

少年

「な、何なんだよこの姉ちゃん、おかしいよ……」

 

 

 

 この世ならざるものを見るように青褪めた顔で困惑する少年。

 少年を庇う母親が、アンナを睨み返して叫んだ。

 

 

 

母親

「何も知らないのはあなたの方じゃないですか!」

「そりゃあ私達みたいな一般人が、仮にも貴族のカレーニャと直接面識なんてありませんよ。でも!」

「この島の誰もが思い知っているんです。魔導グラスに振り回された20年を。オブロンスカヤに富を吸い上げられ苦しめられてきた人々を!」

「カレーニャがグラスを作り始めてから、生活は便利になっても懐は苦しくなるばっかり。悪徳貴族を私達平民が許さない──これはそんな当たり前の話じゃないですか!」

「第一、悪事ならもう目の当たりにしてるじゃないですか。グラスに島を襲わせるなんて、カレーニャ以外に誰が出来るって言うんです!」

 

アンナ

「だからッ! だからカレーニャは──キャッ!?」

 

 

 

 ──団長がアンナを抱えて走り去った。

 ──これ以上、アンナをこの場に置くのはお互いのためにならない。最悪、民間人相手に魔法を行使せんばかりの剣幕だった。

 

 

 

ビィ

「あ、オイ待てよぉ!」

 

ルリア

「お、置いてかないでくださ──あぁぁ、忘れてた!」

 

 

 

 ──慌てて後を追うビィ。ルリアも走り出そうとするが、第一歩に急ブレーキをかけて親子に振り向く。

 

 

 

ルリア

「す、すみません! アンナちゃん、ずっと戦ってばかりで疲れちゃってて──」

「あと、隠れ家は、おっきな服屋さんの近くの路地です。お気をつけて!」

 

 

 

 ──ペコっとお辞儀して改めてビィの影を追うルリア。

 ──呆気に取られる親子だったが、先に我に返った少年が肩を擦りながら溢す。

 

 

 

少年

「何だよ、あの姉ちゃん……もしかしてカレーニャの仲間なのか?」

「痛ってー……今度会ったらカレーニャとまとめてとっちめてやる……!」

 

 

 

 ──そんな少年を母親は優しく抱きしめて諭す。

 

 

 

母親

「駄目よ。人は無闇に傷つけ合ったりしてはいけないの」

「次に会う時は優しく迎え入れてあげて。そして私達の事をちゃんと知ってもらうの。落ち着いて話し合えば、人はきっと解り合えるのだから」

「あの人達は、きっとカレーニャに何か騙されているだけなのよ。──可哀想に」

 

 

 

 ──母親は、一行が消えた道の先へ憐憫の眼差しを向ける。

 ──瞳には哀しみの中に、きっといつか手を取り合えると信じる、確信に似た希望が満ちていた。

 ──その後、少年に大した怪我が無い事を確かめた親子は、ルリアから聞いた隠れ家を目指して慎重に歩き始めた。




※ここからあとがき

 隠れ家の描写を考えるのが面倒だったので、とにかく見分けが付かないくらい見事な隠れ家だったって事で押し切っています。
 特に伏線とかいう事はありませんので、適当に流しておいて下さい。
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