グラブルオリジナルストーリー(主役:アンナ) 作:水郷アコホ
──図書館へ向かうつもりだった旨を伝えた一行。
──しかしカレーニャ曰く、図書館に向かっていたら門前払いを受けていた所だったという。一行から困惑の声があがる。
──ドリイがすかさず手帳を取り出し、何事か書き込む。
ドリイ
「カレーニャ、脅迫行為一点。これは重いですよ」
カレーニャ
「んな!? 事実じゃありませんの。貴方も入館規定の最新版読んだでござあましょ!?」
「それに脅迫が成立するのは見返り要求してからとプラトニアの判例にも──!」
ドリイ
「一部、事実に反します」
カタリナ
「入館規定……つまり問題は我々にあるという事か」
──不服げなカレーニャを制して、ドリイが一歩前に出て説明する。
ドリイ
「まず、カレーニャの発言には大きな誇張があります。その点について代わってお詫び致します」
「しかし、現在のまま図書館に赴いた場合、入館が認められるのは困難である方が若干名いらっしゃる事も事実です」
ビィ
「何だ何だ、図書館って誰でも入れる所じゃないのか?」
ドリイ
「原則としてはあらゆる方々に
「図書館は我が国の知性の心臓部。産業に欠かせない資料等も所蔵されている場所であるため、何卒ご理解を願います」
カタリナ
「そういう事なら、国の重要な施設では何も珍しい事ではない。して、私達の何がその規則に反していると?」
カレーニャ
「”ドレスコード”ですわよ」
──カレーニャが口を挟む。来るのは解っていたという様子で、特に機嫌を損ねる素振りもなくドリイが嗜める。
ドリイ
「カレーニャ。ここは私が説明いたしますので」
ルリア
「ドレスコード……ってあの、レストランとか豪華なお店にあるやつですか?」
アンナ
「ふ……服かぁ……」
──思わず自分の身なりを自信なさげに見下ろすルリアとアンナ。
ドリイ
「正確には、主に装飾品に関する規定について……」
カレーニャ
「ドリイさん。回りくどい話は置いといてバッサリ判定して差し上げなさいな。着飾るのはともかく見定めるのは得意なんですから」
ドリイ
「……畏まりました」
──ほんの僅かに「やれやれ」と言った具合に目を伏せた後、切り替えたドリイが説明を始める。
ドリイ
「図書館入り口では、入館規定を満たされない来館者様に対し受付係員が呼び止め、入館の是非を判定する事になっています」
「申し遅れましたが私、図書館においても司書を始めとした多少の資格を有しており、入館者様の判定につきましても同様に権限を有する身です」
「よって僭越ながら、現在の皆様が図書館でどのように判定されるか、この場で推定させていただきたく。よろしいでしょうか?」
カタリナ
「あ、ああ。そういう事ならよろしく頼む。……何というか、多芸な方なのだな」
ドリイ
「恐れ入ります。ではまずは──ルリア様」
ルリア
「ハ、ハイ! 私ですか?」
──呼ばれたルリアがビシリと背筋を伸ばして棒立ちになる。ドリイは軽く一瞥した後、穏やかに笑んで告げる。
ドリイ
「ルリア様におかれましては、殆ど問題ないでしょう」
「係員によっては厳格な方も居りますので、例えば却って薄着が過ぎるなどと苦言を呈される場合もあるやもしれません」
「しかしながら、入館をご遠慮いただく理由には当たりません」
ルリア
「ホッ……」
ドリイ
「次に、団長様」
主人公(選択)
・「ハ、ハイ!」
・「今日の服、イマイチだったかな……」
→「ハ、ハイ!」
ドリイ
「服装につきましては差し障り御座いませんが、図書館内では武器の所持に制限が設けられています」
「騎空士様などの武器を生活の一部とされる方の入館も認められてはおりますが、万一の場合に備え、剣なら刀身と鞘を専用の留め具等で硬く固定する。銃なら弾薬のみ受付に預ける等の処置が求められます」
「しかし、いずれにせよその場で問題なく対応できる程度のものですので、団長様も入館に際して心配は無いかと」
──ここまでは、隙の無い姿勢ながら穏やかな印象を受ける佇まいだったドリイだが、団長から目を話すと同時、どことなく感じられる雰囲気が固くなった。
──実際に、場合によっては規定に抵触する恐れがあるのは、この後の人物という事だろう。
ドリイ
「そして、ビィ様とカシマール様」
ビィ
「オイラとカシマールがまとめてって……オイラ、何となく察しついちまった」
カレーニャ
「そりゃあもう、プラトニア図書館は原則ペット不可ですもの」
ビィ&カシマール
「オイラはペットじゃねぇ!
オレサマペットジャネー!」
ドリイ
「カレーニャの表現は悪意があり、かつ不適切です。申し訳御座いません」
「プラトニアでは種族や外見を理由とした生活の制限は不当であるとし、それらの撤廃に積極的です」
「図書館はお二方を不当に評価する事はないと、責任をもってお約束致します」
ビィ
「あ、いや──気持ちはありがてぇけど、そこまで大げさに受け取ってくれなくても……」
ドリイ
「お心遣い、痛み入ります」
──ビィの寛大な対応に少し綻んだ顔を、一瞬で仕事の顔に引き締め直し、ドリイが続ける。
ドリイ
「お二方につきましては、受付係員と少々会話を交わして頂ければ、入館についてはまず問題無いでしょう」
「同等の知性を有すると係員が判断すれば、平等に入館者として扱われます」
「そのかわり、お二方には図書館のルールに沿う理性をお忘れなきよう、入館前に注意が入るかもしれません」
ビィ
「理性……? ウーン……オイラちょっと自信ねぇな……」
ドリイ
「具体的には──館内で騒がない。みだりに飛ぶ、走る等して他の来館者様の迷惑にならないといった事です」
「特にお二方は良く通る澄んだ声をお持ちですので、静寂に慣れた係員や来館者様の中には過敏に反応する者も少なくないかと」
ビィ
「なんだ。それくらいの事だったらオイラにだって出来るぜ!」
カシマール
「ソレナラソートサイショカライエッテンダ!」
ドリイ
「配慮が至らず、申し訳ありません」
「そして……」
──カシマールとビィに向けて、恭しく礼を返すドリイ。その態度にくすぐったそうにするビィの反応を楽しむのもそこそこに視線を移す。
──今度は雰囲気だけでなく、声色まで少し変わっている。残る二人は即座にその意味を察した。
ドリイ
「まず……カタリナ様から」
カタリナ
「私が……とは少々意外だったな。自分で言うのもなんだが……」
ドリイ
「どうか、お気になさらないで下さい。カタリナ様ご自身は、とても礼に
「ですがカタリナ様の場合、少々事情が特殊です」
「結論から申し上げて、私共はカタリナ様の入館を、断らせていただかざるを得ません」
カタリナ
「ほ、本当に門前払いになる程か……!」
ドリイ
「申し訳御座いません」
「不躾ながらお尋ねします。そのお召し物は、エルステ製ですね」
「それも、実力か家柄か……いずれにせよ少なからぬ功績のある方の」
カタリナ
「あ……!」
「そうか……そうだったな……」
「確かに、そういう事ならやむをえまい……」
ルリア
「え……ええ……? あの、一体どういう……」
──訳が解らないでいるルリア達。ドリイが説明しようとするが、それをカタリナが制する。
カタリナ
「ドリイ殿。済まないが、これは私から説明しておきたい」
ドリイ
「畏まりました」
──すかさず駆け寄るビィとルリア。不満を隠さない二人にカタリナが穏やかに対応する。
ビィ
「姐さんが図書館に入れねぇってどういう事だよ。この中じゃ一番マジメそうな格好してんのによ!」
ルリア
「それも、あんなにはっきりダメだなんて……」
カタリナ
「ルリア、ビィくんも。なんと説明すれば良いか……例えばだ」
「グランサイファーの中で、武装したエルステの兵士が我が物顔で歩き回っているのを見つけたとしよう」
「そいつは誰かを付け狙ったり襲いかかる様子はない。ただただ船内を散策したり、置いてある本を読んだり、倉庫の樽の中を覗き込んだりしている。その兵士を見て、ルリア達はどう思う」
ルリア
「それは……すごく怪しいと思う……かな」
ビィ
「オイラ達の船で何勝手してんだってなるぜ。ソイツ絶対何か探ってるぜ」
カタリナ
「だろう? ……それが、プラトニア図書館での私なんだ」
ルリア
「え……?」
カタリナ
「プラトニアとエルステはかねてから国交があるという事は、島に着く前に話したな?」
「国交があるという事は互いに相手を認め合い、お互いのやり方を尊重した上で、色々な約束を交わしてそれを守り続けなければならない」
「例えば他国の軍隊を国に受け入れる時は、事前に相手の国からの連絡を受け取り、いつからいつまでの滞在を認めると返事を返し、それからようやく……といった約束をな」
「軍隊というものが何のためにあるかは──説明するまでもないだろう。エルステ軍の鎧を来た私が、プラトニアの知識の中枢を、国同士の許可も無く歩き回る……プラトニアから見たらどう思うか、解るだろう?」
ルリア
「そんな……だって図書館を歩いてるその人は、カタリナなんでしょ?」
ビィ
「そうだぜ! 姐さんがおかしな真似なんかする訳ねぇじゃねぇか!」
カタリナ
「それは二人が、私が誰なのかを知っているからだ。プラトニアの人間にとってはそうじゃない」
「彼らにとって、私が何者かを知る手がかりはこのエルステの鎧だけなんだ」
「それに仮に彼らがカタリナ・アリゼを知っていたとしても、エルステが断りも無く図書館に兵士を侵入させた。そんな状態が出来上がってしまう事に変わりはないんだ」
「間違いなく、エルステとプラトニアとの関係は拗れる。二人が思う以上にだ。そんな事が絶対にあってはならない程にな……」
「それと……意地悪だと思うかもしれないが、さっきの例え話にはわざと『エルステの兵士』を出した。私だって、『グランサイファーの中を歩き回る武装したエルステの兵士』──だからな」
ルリア、ビィ
「……──」
──すっかり黙り込んでしまったルリア達。
カレーニャ
「つまり、アポ無し武器持ちで来た余所の兵隊さんをそのまま入れたら国際問題一直線って事ですわ」
ドリイ
「無粋を承知でお伺いします。エルステに纏わる装備を外され、私人として図書館へ赴かれるのでしたら、直ちに断られるような事も……」
カタリナ
「お気遣いには感謝する。だが……馬鹿げていると思うだろうが、私はどこまでも軍人であり、そしてそれ以前に騎士なんだ。軽々しく鎧を脱ぐ気にはなれない」
ドリイ
「いえ。やはり出過ぎた口を効きました。どうかお許し下さい」
カタリナ
「いいんだ。それより……」
──カタリナの面持ちが、今しがたとはまた違った趣の、気まずそうなものに変わる。
カタリナ
「変な空気にしてしまったが、確かドリイ殿の話はまだ……」
ドリイ
「そうでしたね。では最後に……」
アンナ
「あ……あああ、あの……あのっぉ……ボボ、ボ、ボク……そ……そそそんなに……」
──アンナは青い顔で小刻みに震えて、縋るようにドリイを見つめている。
──カタリナで大きくなりすぎた話がどのように降りかかるか最早想像のしようもつかないでいる。
ドリイ
「アンナ様。どうか落ち着いてください。アンナ様の場合、カタリナ様のような深刻な問題は──」
カレーニャ
「そうですわよ、アンナさんの場合もっとつンまらない理由でござあますもの」
ドリイ
「侮辱行為一点」
──カレーニャのニタニタ顔を見るや、ドリイは手早く手帳に罰点を書き足す。
カレーニャ
「ちょっ……今日ちょっと厳しすぎません事!? 私は事実を述べただけですわよ!」
──手帳をしまうと、アンナを落ち着けるため、お茶のお代わりを勧めながら説明を始める。
ドリイ
「まず、図書館には服装についても何点か規則がございます。アンナ様を例とするなら──」
カレーニャ
「ズバリ!!」
アンナ
「ひぇ!?」
ドリイ
「──カレーニャ、ここは私がせつ……」
カレーニャ
「『本が幾らでも仕込めます』と言わんばかりのババ臭いダボダボの服!」
「頭以外にも容量タップリ見せつけてる無駄にデカい帽子!」
「直接の武器でも無いクセにやたら嵩張る長もの!」
「極めつけにこれから本読みに行くってのにローソク生やす人間があるかってーモンでえ、ござあますわ!!」
──余程、直接ツッコんで見せたかったのだろう。東方の伝統劇のような節を乗せて、テーブルの上に足を乗り出さん勢いでビシリとアンナを指差すカレーニャ。
──「知ってた」といった面持ちで冷静に見栄きりを見届け、再び手帳にペンを走らせるドリイ。
──ポカンとカレーニャの奇態を眺めていたアンナは、数秒経ってようやく脳が言語を解読しはじめた。
アンナ
「……え、と……え……ええぇえ! あ、ああの、じゃあ、その……ボボ、ボク……ぜ、全部ダメ!?」
ドリイ
「大変無礼な表現が含まれた事を重ね重ねお詫び致します。しかしながら、指摘すべき点は全てカレーニャが……」
「箒と蝋燭は受付に預けられますが、帽子については折れ目等の毀損を与える事無く保管できる保証がないため、係員によっては預かりも断られる場合がございます」
「服装については私共としても……。何分、厳重に警戒しているつもりでも細かな盗難・紛失の事例は起きてしまうのが実情でして」
「仮に入館を認められたとしても、係員が終始随行した上で、場合によっては退館前に身体検査を求められる場合も……」
アンナ
「うぅ……」
カシマール
「アンナバッカリネライウチミテーナルールジャネーカ! ナットクイカネー!」
ドリイ
「申し訳ありません……想定が甘かったと言う他ございません」
カレーニャ
「人に何か要求するにも責任が伴うし、責任を負いきれないなら始っめからやるべきでない。社会ってなぁそういうものですのよ”シャムシール”」
カシマール
「”カシマール”ダ!!」