悪役令嬢プロデュース   作:ななせせせ

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書きたい話があるのに文章に出来ないストレスで禿げそう


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 ……おなかいたい。

 

 会場に入った瞬間にざわざわと騒がしくなる周囲の様子に腹がきりきりと痛みだした。これだけ人がいるのだ。“D”の称号を持つ者として、王子の親友として恥ずかしくない言動をしないと後でうちのメイドによるお説教フリータイムコースが待ち受けている。毎回聞き流しているから内容なんてほとんど覚えちゃいないが、大体「お前もっとちゃんとしろや(意訳)」という感じだ。

 子供の頃からそんな感じなのでもう慣れたし諦めたが、普通毎日そんなのやられたら精神病んでもおかしくないからね?

 

 気を抜けばだらだらと溢れ出しそうな脂汗と魔獣の鳴き声にも似た音を奏でそうな腹をなんとか気合で抑え込みながら目的の人物を探す。

 

 だめだ。人が多すぎて見当たらない。もうなんか多すぎて酔いそう。

 この臭い(・・)も駄目だ。

 お嬢様方がその身に纏った香水の数々が混ざり合い、反応し、恐ろしい臭気を作り上げている。

 その吐き気すら催す臭気の中で楽し気に歓談し、踊る男女という図はこいつらみんな鼻詰まってんのかなと思わせる程に違和感を覚える。

 

 もうこれは帰っていいんじゃないだろうか。ユークリウッドさん家のエーリカさんも見当たらないし。帰るべきだよ。

 なあ、お前もそう思うよな? ハ〇太郎?

 

 

「マッタクナノダ!」

 

 

 心の中に住まうハムスターに肯定してもらえたのでバレないうちにそそくさと帰宅を……

 というところで後ろから聞きなれた声がかけられた。

 

 

「ん……? ヘックス? ヘックスじゃないか!」

「ドゥエ!? ……ああ、アンディか。ちょうどよかった。今夜の主催者たる君に挨拶しに行こうと探していたところだったんだ」

 

 

 最悪だ。

 この国で最も視線を集めるであろう金髪セミロングに見つかってしまった。

 デカいソプラノボイスでヘックスなんて連呼するものだから会場にいる大半の視線がこっちに向けられている。

 お前今度覚えとけよ。

 

 

「はは、今夜のはそういう堅苦しいのは抜きの気楽なものだから気にすることはないよ。……それにしても、珍しいじゃないか。いつもなら誘いを断るというのに、何があったっていうんだい?」

 

 

 やばい。

 アンディが近づいてきたことで周りの注目を集めている。

 今回の目的であるエーリカ嬢に近づくことの妨げにもなるし、あと単純に更に緊張して気分が悪くなってきてる。

 もういいか。どうせアンディだし。多少雑な扱いをしても許してくれるだろう。

 

 とはいえ周りに聞かれるのも困るので顔を近づけて耳元で囁くようにして話す。

 

 

「ちょ、ちょっとヘックス……こんな所で……! いや君がいいというのならボクもやぶさかではないんだけどね?」

「時間がないから手短に話そう」

「……何かあったんだね?」

 

 

 何やらごちゃごちゃと言っていたアンディも、こちらのただならぬ様子に何か感じったのだろう。真剣な表情で続きを促してくる。

 ……というかこいつも香水つけてるのかよ。甘い匂いが漂ってきて辟易とする。

 

 まあ、アンディの趣味はどうだっていい。

 さっさと話を切り上げてしまおう。

 

 

「ユークリウッド嬢にちょっとした用があってな」

「ユークリウッド嬢、というと……エーリカさんだね。でも、あの人になんの用が?」

「それは……」

 

 

 やっべぇ何も考えてなかった。

 ここで誤魔化すのはどう考えても悪手。

 しかし即興で嘘を吐くのはリスクが高いし、敏いアンディにはすぐばれてしまうだろう。

 そうして疑いをもったこいつが俺を調べ始めて――駄目だ、計画が全ておじゃんにされて怒り狂う俺と冷静に相対するアンディの姿まで浮かぶ。

 

 考えろ、考えるんだヘクセン=“Ⅾ”・ヴァーミリオン。

 確かこういうのは、嘘でもないが真実でもない情報か、僅かに真実を混ぜた嘘というのが定石のはず……!

 

 

「彼女の家のことが少し気になったんで、話を聞いてみようかと」

「……ユークリウッド家?」

 

 

 僅かにアンディが思案するように眉を顰め、やがて何かに気付いたようにぱっと表情を明るくした。

 

 

「そうか。そういうこと(・・・・・・)か! ああ、ヘックス! まさか君がそこまで掴んで、動こうとしているとは!」

 

 

 え、なに。どういうこと?

 何を興奮し出したんだお前は。

 困惑する俺をよそにやたらとキラキラした目でこちらを見上げてくるアンディがとんでもないことを言い出した。

 

 

そういうこと(・・・・・・)なら――不肖このアンドリュー・“K”・マックスウェル。喜んで君に協力しよう!」

「えっ」

 

 

 何を言い出したのかと思えばこの男、協力するだと?

 

 ……なんか盛大に勘違いしているようだが、折角だ。思う存分に利用させてもらおう。

 ふははは、馬鹿めアンディ。お前は敵に塩を送る――というか自分から城門を開け放つ手助けをしようとしているんだ。

 

 

「まずは――君に熱い視線を送る彼女たちを引き離さないとね。大丈夫、任せてくれ。女性のことはボクがよく知っているから」

「……すまないな」

 

 

 出来心で教えた嘘をまるっと信じてしまった子供に申し訳なく思う親というか……ヒーローショーに出てきたヒーローを本物だと信じ切っている横で中身が冴えないおっさんだと知っている親のような――微妙な気持ちだ。

 

 あっ、なんかお腹痛くなってきた。

 

 

「ヘックス、ボクは君を――いや、よそう。これを口にすると歯止めが利かなくなりそうだ。さあ、行って。ボクはここでレディをくぎ付けにしておくよ」

「アンディ、お前……」

 

 

 最後に片目でウインクを寄こしたアンディが大仰な仕草とハリのある声で会場の注意を引く。

 いつものように……いや、いつもよりも一層王子様らしい動きで女性たちの、そして男たちの視線までその一身に集める。

 

 おかげで会場の端まで、誰に見咎められることなく来ることが出来たが……

 

 

「あいつ、酔ってたのかな」

 

 

 色々変だったし。

 まあいい。アンディという最大の障壁の協力を得たおかげでかなり動きやすくなる。

 

 

 さて……エーリカ嬢がどこにいるのか、探しに行くとするか!




【悲報】一話で纏めきれない
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