漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです! (通称:モモです!)   作:疑似ほにょぺにょこ

4 / 59
1章 王都 ヤルダバオト編ー4

「マーレ、隠蔽の結界の状況は? シャルティア、来ているのはアインズ様達だけなのだね?」

「は、はい。結界、問題なく作動してます」

「周囲にはどなたも居りんせん。 来ているのはアインズ様達だけのようでありんすね」

 

 炎の結界──アインズ様のお言葉をお借りするとするならば、ゲヘナの結界──その中心に隠蔽の魔法を掛けながら周囲を警戒する。シャルティアの対生物用の感知能力はずば抜けているので、周囲に居ないことはまず間違いないだろう。非生物──アンデッドであるならばこの結界内部は私の身体の中の様なものなので私が感知できる。つまり、こちらに向かってきているのはアインズ様とナーベラル・ガンマのみとなる。

 

「この小さな豚小屋では至高の御方をお迎えする場所には些か不向きではありますが、仕方ありません。このままお迎えしましょう」

 

 この倉庫区域で最も大きい家を見繕ったつもりだったが、それでも大部屋位の広さしかない。質素どころか劣悪極まりない環境ではあるものの、何よりも時間が無い。今回ばかりは目を瞑って頂き、他の部分で挽回するしかないだろう。そう思いながら私は小さくため息をついた。

 

「しかし、なんで アインズ様は人間達を集めて来なかったのでしょうかぇ? 今回の作戦では、漆黒の英雄の名を広げるためといわすのがあったのではありんせんか?」

「確かに観客は必要だよ。だけどそれに関してはあの──イビルアイ、だったかな。彼女を含む蒼の薔薇の人達が上手くやってくれているようだ。そして人間達がここに集まる前に…」

「情報のすり合わせをしようと思ってな」

 

 ベストタイミングでアインズ様が部屋に入って来られた。まるで部屋の前で待機し、入るタイミングを計っていたかのようだ。しかしアインズ様ともあろう方がそんなことをするはずもなく、本当に丁度良い──恐らく、こちらが話しているだろうことを予測して走る速度を変えられていたのだろう──タイミングであった。

 

「さてデミウルゴス。始めようか」

「はい、まずは直接情報をお話させて頂きたいというこちらの要望を飲んで頂き、しかもわざわざ時間を作って頂きまして。このデミウルゴス、感激の至りに御座います」

 

 向かいの椅子に座られ、促されるアインズ様にまず始めるはアインズ様への感謝の言葉。本来ならばこのような時間のない時に至高の御方を煩わせるなど以ての外ではあるものの、まるで精密機械の様だと言って下さった私の計画、そしてアインズ様ご自身の計画に不備が無いようにせねばならず。こうやって時間を取るほかないと選択してしまったのだ。

 全く不甲斐ない。アインズ様ならば私の計画など殆ど理解されているでしょうに。私ときたらアインズ様の計画のほんの半分程度しか予想することが出来なかったのだから。

 

 

 

 

 

 

「では私の計画の全貌をお話いたします」

 

 そう言って始めたデミウルゴスの話──計画は想像すらもつかないほど壮大なものだった。

 まず、六腕への攻撃のカモフラージュ。これはこちらの存在をプレイヤーを含む強者たちに悟られない様ぼかすためというのが大きい。そしてこの区域の金品の奪取。これは嬉しい。ナザリックのお金は出来るだけナザリックのために使いたかったので、個人的に動きたいときはモモンとして稼いだ金で何とかやりくりしていたのだ。貧乏に喘ぐ必要がなくなるのは大きいだろう。そして…

 

「人間達の拉致か」

「はい、前回のリザードマンたちは保護する方向となりましたので、実験や材料等が少々不足しております。それを補える良い機会かと」

 

 人間を拉致して実験と材料、か。アンデッドになって暫く経ち、人間への関心は精々テレビの中に移る人達へ向ける程度のものだ。しかし面と向かって材料にするというのは、どうなのだろうかと思う自分も居るのだ。なけなしの、俺の人間の部分と言うべきなのだろうか。それを無くして、俺は俺で居られるのだろうか。

 

「デミウルゴス、実験等苦痛を与えるものは犯罪者等を中心に行え。ナザリック──アインズ・ウール・ゴウンに対し悪意を持たぬ者には苦痛なき、安らかな死を与えよ。よいな」

「おぉ、なんと慈悲深きお言葉…必ずや、そのお言葉に沿うように致します」

「うむ、それと…だ」

 

 ゴソゴソとアイテムボックスからあるものを取り出す。かつてユグドラシルでウルベルトさんがとあるワールドアイテムを真似て作り上げたものだ。とはいえ、俺が持っているのは失敗作の方。恐らくデミウルゴスは完成品──と言っていいのかは微妙だが──を持っているはずだ。

 

「これは…もしやウルベルト様のっ!?」

「あぁ、それの失敗作だな。第十位階魔法《アーマゲドン・イビル/最終戦争・悪》を玉一つ一つに込めて作り上げたもの、それの試作ともいうべきものだ」

 

 完成品は玉を6つ持っているが、これは3つ。効果も半分しかないネタアイテムだ。

 ウルベルトさんに貰ったはいいものの使う間もなく、捨てることも出来ず、倉庫の肥やしとなっていたもの。ウルベルトさんもネタに使われるより、こういったときに使った方がきっと喜ぶだろう。だがデミウルゴスは徐に立ち上がり、『いけません!』と拒絶してきた。

 

「良いのだデミウルゴスよ。お前が持つであろう、ウルベルトさんの完成品とは比べるべくもない些末なものだ。私にとっては精々祭りに使う程度の価値しかない。それに、ウルベルトさんもこういったときに使って貰う方が本望というものだろう」

 

ですが、しかしと言い続けるデミウルゴスに押し付ける。決めた。そう決めたのだ。使え、デミウルゴスよ。

 

「至高の御君の所有物をこんな杜撰な計画に使うなど、いけません!」

「私のでなければよいのだろう? ならば、それは今からお前のものだ。 私によく尽くしてくれる、そのお前の忠義に対するものとして与える。好きに使え。」

 

 余程嬉しかったのだろうか。捨てるに捨てきれなかったゴミに近いものなのだが、受け取ったデミウルゴスは大事そうに抱え、涙声で震えながら感謝の言葉を何度も口にしていた。もしかして飴とかでも喜ぶのだろうか。今度コキュートス辺りに試してみようか。そんな仕様もない事が頭に浮かんでしまった。

 デミウルゴスが落ち着くのを待ってから次の話へと移ろう。俺の壮大なウソ話をどこまで真実らしく飾ってくれるか楽しみだ。

 

「では、次に私の計画の話なのだが」

「はい、漆黒の英雄モモンが──実は故国の王子であった。という話ですね」

 

 え?王子?どこから来たのだ。思わずきょとんとしてしまう。適当に滅んだ国の兵士とかその辺りのつもりだったのだが、いつの間にか王子にされていた。何を言っているのだろうか、デミウルゴスは。

 しかし俺の乏しい想像──否、妄想では穴だらけの杜撰な話にしかならない。ここは乗る他ないだろう。

 

「確か、ヤルダバオトに国を攻撃され、ナーベラルの家族はエントマに喰い殺されたのでしたね」

「あぁ、そしてヤルダバオトに殺されたモモンはアインズ・ウール・ゴウンに会うことになる」

「…なるほど、そうか!そういうことでしたか」

 

 流石デミウルゴス。全力で称賛を送りたい。一気にバックストーリーを作り上げてくれたようだ。どうしてこんなに優秀な部下に思慮深き──なんて言われるのだろうか。

 

「流石はデミウルゴスだな。もう私の計画の全容に気付いたか」

「いえいえ、アインズ様がこれだけヒントを並べて頂いたからこそです」

 

 全力拍手を送りたいのになぜ『あなたのお蔭です』と感謝されるのだろうか。適当に『こんな感じで』と言っただけなのに。そもそもアインズ・ウール・ゴウンに会う事にしたのは、俺が同一人物だからだ。つまりモモンとして知っていることをアインズが知っていておかしくないように、と。口を滑らせたときに『あ、実は知り合いだったんですよ。いや参ったね!』と言い訳出来るようにしたかったためだ。

 

「あの、二人の話が全く分かりんせんでありんす。私にも分かるように話してくれんせんかぇ?」

「ふむ、デミウルゴス。話してやれ」

「はっ! では僭越ながら──」

 

 お願い、デミウルゴス先生!分からない人たちに教えてあげてください、俺も含めて!

 情けないことこの上ないが、口に出さず顔にも出さず、鷹揚に促す。がんばれ、デミウルゴス。

 

「それでは僭越ながら、アインズ様が作られた計画──バックストーリーを話させて頂きます」

 

 身振り手振りを加えながらデミウルゴスの壮大な話が始まる。壮大で、緻密な計画の話が。ペロロンチーノさんの様に『さすデミ!』とか言った方が良いのだろうか。

 

「はるか昔。今から1000年以上昔の話。この地にはかつて繁栄を極めた国がありました。その国の王子が漆黒の英雄ことモモン──モモンガというそれは美しい王子が居ました」

「ブッ!?」

 

 自分のフルネームである『モモンガ』の名が出て思わず吹いてしまう。しかし周りはデミウルゴスの言葉に聞き入っていたのだろう、喋るデミウルゴスを含めて誰も気づかなかったのは僥倖である。

 

「王子の傍付きのメイドであるナーベと、近衛騎士でありナーベの姉であるユリがいました」

「わたし…ですか?」

 

 デミウルゴスに指をさされたユリ・アルファが不思議そうに首を傾げる。俺も傾げたい。なぜユリ・アルファなのだろうか。確かに彼女は人間ぽく見えるが、他にも理由があるのだろうか。

 デミウルゴスがドヤ顔でこちらに視線を送ってきたので、鷹揚に頷いた。デミウルゴスは嬉しそうに続けていく。そうか、ナーベの姉はユリだったのか。忘れない様にしよう。

 

「そして、王子モモンガ様には愛すべき婚約者が!」

 

 周囲から『おぉ!』と声が上がる。婚約者も居たのか、その王子。うらやまけしからんな。俺なんてずっと独り身だったというのに。

 

「だ、誰! その婚約者とは誰でありんす!?」

「残念ながら君じゃないんだ、シャルティア。そう、婚約者は──」

 

 溜めるデミウルゴス。ノリノリだな、デミウルゴス。そんなに時間あったのだろうか。時計が無いため少し心配になったがきっと大丈夫なのだろう。恐らくだが、今頃集まって話し合いなどしてるはずだ。そして『そんな悠長なことしている場合じゃない!』とかイビルアイが言っている気がする。きっと気のせいだろうけれど。

 

「公爵家の──すみませんアインズ様。公爵家の名前は流石に予測出来ませんでしたが、何と言う家名なのでしょうか」

「あー…──レエブン──」

「ありがとうございます。レエブン公爵家の一人娘、アルベド──アルベディア姫です」

 

 再び『おぉ!』と声が上がる。そうかー。アルベド──アルベディア姫は王子の婚約者だったかー。羨ましいなモモンガ。今度見つけたら一発殴ってやろう。きっとそのモモンガってのは俺ではなく同じ名前の他人だ。いやまて、そうすると俺と同じ名前の他人がかつてアルベドの婚約者だったということになるのか。俺の目の黒いうちは結婚なんて許さんぞ。タブラさんに代わって断固反対してやる!

 しかし──レエブンって思わず言ってしまった。何せ知っている貴族の家名ってレエブンか、この国のヴァイセルフくらいだもんな、知ってるの。まあ千年くらい前の話って言ってるし時効だろう。

 

「婚約し結婚を控えた二人。しかしその幸せを引き裂く魔の手が! そう、ヤルダバオトが国にメイド達を従えて攻めてきたのです!」

 

 そこかしこから『ゆるせんヤルダバオト』等と声が聞こえてくる。いつの間にここは吟遊詩人の公演場となったのだろう。

 

「炎結界であるゲヘナを使い、大量の悪魔を召喚、使役するヤルダバオトに国の民も兵士も無残に倒され、エントマ──蟲メイドのヴァシリッサにユリとその母をナーベは目の前で殺され、喰われ──絶望に染め上げられながら、自身も生きたまま喰われてしまいました…」

 

 演説上手いな、デミウルゴス。感情が凄い入っている。これは彼自身のスキルのお蔭か、ウルベルトさんによる設定なのか。プレアデスの何人かが涙と共に『ナーベ可哀そう』と呟いている。

 

「絶望に苛まれながらも、果敢にヤルダバオトに挑むモモンガ王子! しかし戦いの末、アルベディア姫を人質に取られ、ついに王子は姫とともに命を落としてしまったのです──」

 

 『おぉ、なんという悲劇か!』って、デミウルゴス…感情移入し過ぎだ。もう少し淡々と話すと思っていたのに、今はもうオペラの様になっている。隠匿結界を張って居なければ、デミウルゴスの声がそとまで駄々漏れだったに違いない。

 

「愛するものを、仕えるものを、国を、そして自身を殺された王子。そこに現れる我らがアインズ・ウール・ゴウン様!」

 

 『きゃー』と黄色い声援が上がる。実は俺の見えない所にパンドラズ・アクターが居て、俺の姿でポーズを決めてたりするのではないかと思わず周囲を見回すが居ないようだ。

 

「あ、アインズ様。パンドラズ・アクターならばモモンの姿に化けてもらい、人間達の動向を探ってもらっていますよ。こほん──」

 

 流石だなデミウルゴス。もう『さすデミ』と呼んでも許されるのではないだろうか。長々と吟遊詩人宜しく、オペラ宜しくやっていたのはこういった絡繰だったわけだ。ナザリックはアルベドとデミウルゴスの頭脳のお蔭で成り立っています。頭が下がる思いである。

 

「アインズ様は王子に取引を行います。ヤルダバオトに奪われたメイド──マシンメイドシーゼット、蟲メイドヴァシリッサ──達を、そして妻であるシャルティアを奪い返す事」

「いよっしゃぁ!!!」

 

 へぇ、アインズって人の奥さんはシャルティアなのか。いつの間に結婚したんだろう、アインズって人。シャルティアがガッツポーズしながら嬉しそうにしているけれど、そのアインズっていう多分というか間違いなく俺じゃないそのアインズっていう人に、ペロロンチーノさんの代わりに殴らないと。くそ羨ましいな、モモンガ王子にアインズって人。

 あぁ、そうやって現実逃避していたい…

 

「しかし人の身で強大な悪魔を倒すのは困難です。故にアインズ様達はあえなく異形の者──アルベディア姫は悪魔アルベドに、ユリはデュラハンのユリ・アルファに、モモンガ王子はスケルトンのモモン・ザ・ダークナイト──となったわけです」

「──私はどうなったのですか?」

 

 今名前の挙がらなかったナーベラルがきょとんとしながら手を上げた。そうだ、デミウルゴス。当然忘れていたわけではないだろう。きっと凄い理由があるのだろう。私にはわからないが。分からないからその『分かっていますよね』って視線送らないでくれませんか。と、いうかまだあの恥ずかしい名前を憶えていたのか、デミウルゴス。いい加減忘れてくれないだろうか。私の黒歴史だというのに。

 

「ここが一つの肝なのです。ナーベラルはナーベであるときに第三階位魔法までしか使ってはならないとなっていましたね」

「えぇ、アインズ様よりそうしろと」

「そう、それです。生前の…人間であった時の貴方は第三階位魔法までしか扱えなかった。だから英雄モモンは今のナーベが第三階位魔法までしか使えないと思っているわけです。不死の力を持つ人間であるとモモンは勘違いをし、ナーベ自身も実はドッペルゲンガーのナーベラル・ガンマであること、第八位階魔法を扱える強力なマジックキャスターであることを隠しているわけです」

 

 なるほど。と頷く。このバックストーリーであればナーベが上位の魔法を思わず使ってしまったとしても言い訳が効く。流石だデミウルゴス。今日は何回流石と言ったのだろう。

 

「因みに、アルベドとユリ・アルファとナーベラル・ガンマには人間の時の記憶はありません。そうしておいたほうが不都合が出ないでしょう。ナーベはモモンにばれない様に頑張って合わせているわけですね」

「素晴らしい! 流石だデミウルゴス!」

 

 俺は本心から、心の底から称賛を送った。凄いよデミウルゴス。よくそこまで出来るものだ。俺じゃ無理だよ。優秀な部下をもって俺は幸せだ。でもそれを直接言うわけも無く、惜しみない拍手にするしかない自身の立場が凄く苦しい。

 

「いえいえ、アインズ様の事ですからこのような杜撰なものではなく──もっと緻密で、綿密な計画でいらっしゃることでしょう。私程度の浅慮ではその一端を垣間見ることしか出来ませんので…」

 

 そんなことはないよデミウルゴス。凄いよデミウルゴス。必死にデミウルゴスを称賛するのに、気付けば『流石ですアインズ様!』コール一色になってしまう。解せぬ。

 そもそもデミウルゴスの話が杜撰なら俺の話は何なのだ。骨組みさえないではないか。だというのに…

 

(胃が無いのに胃が痛い…)

 

 気付けば『さすアイ!』と唱和され、万雷の拍手と化す。なぜだ。

 あぁ、ナザリックに帰りたい。眠れないけどゆっくりとベッドの中に沈みたい。何もかも投げ出して逃げ出したい。

 出来るわけがないのだが。

 

「そこまでだ皆の者。さぁ、そろそろ人間達が来る頃だろう。盛大に始めようではないか。漆黒の英雄モモンの名が轟く様に! ナザリックの更なる繁栄のために!」

 

 

 

 

 

 

 アインズ様の号令と共に皆が呼応する。あれほど纏めて解決する方法をお考えになるとは。流石はアインズ様と言ったところだ。アインズ様とナーベが出て行き、立ち上がった時だった。

 視線を送ればシャルティアが私の服の裾を引っ張っている。

「なんだい、シャルティア」

「あの…なぜアインズ様はエントマを殺そうとした者を助けたのでしょうかぇ?」

「ふむ、あのイビルアイとかいうヴァンパイアのことだね。簡単な事じゃないか」

 

 そう、とても簡単だ。あれの立場。名声。実力それらを加味すれば簡単に答えが出る。

 だから私はシャルティアに向けて満面の笑みを浮かべた。

 

「あれはね、人間達への広告塔だよ。英雄を英雄たらしめんためのね」

 

 

 

 

 

 ラナー姫を中心とした冒険者たちの話し合いが終わり、今より対ヤルダバオトの攻勢が始まる。とはいうものの、今いるメンバーではヤルダバオトどころか取り巻きのメイド達だけでも相手取るのは難しいだろう。私を除いて。

ラキュースの魔法のお蔭で身体にダメージは残っていない。魔力も十分だ。行ける。モモン様の手助けが出来る。

 

「行けるわね、イビルアイ」

「無論だ。モモン様を手伝えるのは、ここに居る中では私だけだ。何もヤルダバオトと直接戦うわけでは無いさ。モモン様がヤルダバオトと十全に戦えるよう、周囲を掃除する。ただそれだけさ」

 

 待っていてください、モモン様。今、貴方のイビルアイが行きます──

 私たちに負担を掛けない様に、たった一人で──いや従者が一人居たには居たが──ヤルダバオトに挑んで、今なお戦っているだろう漆黒の英雄を思い、強く願う。

 

(だから──死なないで、ももんさま──)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。