シャイニング・ブレイド 涙を忘れた鬼の剣士   作:月光花

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スペル様から感想をいただきました。ありがとうございます。

今回は次の作戦までの繋ぎというか、まあ拠点フェイズの話になります。

では、どうぞ。


第48話 海賊騎士団『アークバッカニア』

  Side レオ

 

 収容施設から死に物狂いの脱出を成し遂げて早数日。

 

ローランに帰還した解放戦線は、今もまだ救出した民間人の為に動いていた。

 

流石に100人近い民間人全員をローランに受け入れる余裕は無い為、ベスティアでの戦闘が決着するまで救出した民間人は戦況の落ち着いた他国に一時的に受け入れてもらうことになった。

 

だが、まさか一般人に砂漠越えをさせるわけにはいかないし、そこに護衛を加えた大人数が動けば帝国に発見される恐れが有る。

 

なのでまず、解放戦線はシルディア、ルーンベールの間に確実な補給線を確保することにした。

 

僕を含めた脱出3人組は地獄のような筋肉痛を乗り越えるのに苦戦して戦闘には参加出来なかったが、ひとまず補給線の確保に成功したおかげで民間人が飢え死ぬ心配は無くなった。

 

そして、筋肉痛の地獄を切り抜けて戦線に復帰した僕とレイジは、確保された補給線付近をうろついていた敵を殲滅してたった今、ローランに帰還した。

 

「ふぅ~……しんどかったな~今回の敵……」

 

「強さは大したことなかったけど、随分と砂漠を走り回らされたね……」

 

敵の中に砂漠での隠密行動を心得た人間がいた為、僕の気配探知で居場所を特定しても仕留めるのにかなり時間が掛かってしまった。

 

おかげで体中砂まみれになってしまい、ユキヒメさんよりも早く水浴びを終えた僕達は集会場の近くにある酒場のテーブルで休息を取っていた。

 

いつもは僕達も通ったりして酒盛りや食事で盛大に賑わう店なのだが、流石にまだ夕日も出ていない時間なので店の中に他の客は見当たらない。

 

というか、よく見たら調理人すら厨房にいない。

 

「おいおい店開いてんのに留守かよ……こっちは砂漠走り回って腹減ってんのに……」

 

「運悪く今は仕入れに出てるのかもね。けど、今から別の店に行くのも面倒だね」

 

空腹の音を鳴らしながらレイジは嘆きの声を上げてテーブルに突っ伏してしまう。

 

同じく空腹と疲労感を感じている僕は脱いだロングコートを椅子に掛けて厨房に入り、置かれている食材や調理器具に目を通す。

 

一際強い存在感を放つ中華鍋、大量の卵、様々な野菜、炊き終えた米……一通り見てから調理の時間を考え、メニューを絞る。

 

「レイジ、簡単なモノで良ければ僕が作るけど、食べる?」

 

「え、マジで!? けど、勝手に厨房使ったりして大丈夫か?」

 

「ちゃんと綺麗に片付けるし、プロが店を開けたまま放り出してるんだから多少の我が儘は許してくれるでしょ」

 

そう言って、僕はYシャツを腕まくりして中華鍋を手に取り、油を多めに注ぐと共に調理を開始した。

 

仕込みがされている食材を勝手に使うのはまずいので、それ以外の食材を使う。

 

置かれている包丁は日本の家庭で広く使われている洋包丁ではなく中華包丁によく似た物だったが、扱うには問題無い。

 

手早く玉ねぎ、人参、長ネギ等を細かく刻んで纏め、一先ず別々に置いておく。

 

「随分と手慣れてるな」

 

「伊達に十年以上も習い事してないからね」

 

割った卵をボールの中に落とし、レイジと話をしながら菜箸で溶く。

 

充分に溶いたことを確認し、中華鍋に投入して半熟に近付いたタイミングでご飯を加えて素早く混ぜる。

 

そのまま鍋を片手で軽く持ち上げ、何度も返しながらお玉の背でご飯を解す。

 

「おぉ、チャーハンか」

 

「食べるのが男だけで簡単な料理と言ったらコレでしょ」

 

野菜を入れて調味料で味付けし、香ばしい匂いが漂い始めて来る。

 

一摘みして味見を行い、上出来だと僕が軽く頷くとレイジが嬉々とした表情で厨房の奥から大皿を二枚取って来た。

 

その上に完成したチャーハンを並々と盛り付け、使った調理器具は一先ず水に浸しておく。

 

「「いただきます」」

 

向かい合ってテーブルに座るレイジと一緒に手を合わせ、皿に盛り付けたチャーハンを食べる。

 

ガツガツ! と音が付くような勢いでチャーハンを平らげるレイジの様子から、どうやら味付けは問題無いようだ。

 

上手く出来たことに満足しながらも、何だかんだで腹が減っていた僕もそのまま黙ってチャーハンを食べ続けた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  * 

 

 

 

 

 「いやぁ~、ごちそうさん! 本当に美味かったぜレオ!」

 

「お粗末様。でも悪いね、後片付けやってもらって」

 

「美味い飯作ってもらったんだからあの位当たり前だって」

 

空腹だったこともあってか、僕とレイジは大量のチャーハンをぺろりと平らげ、米粒1つ残すことなく完食した。

 

その後、使用した調理器具や皿をレイジが全て洗い終わったところで店主が戻り、詳しい説明をした。

 

予想通り店主は食材の仕入れ関係の用事で外出していたらしく、随分慌てて出掛けたらしい。

 

普段から僕達が常連であることと、店を開けたまま離れてしまったこともあって、勝手に厨房を使ったことに関しては笑って許してもらえた。

 

そして食事を終えた後、僕達は次の仕事が無いかの確認を取る為に集会場の方へと足を運んだ。

 

その途中、ちょうど同じく集会場に向かう途中だったサクヤさんに遭遇した。

 

「あら、レイジ、レオ。ちょうど良かったわ。他の皆に集会場に集まるよう声を掛けてきてほしいの」

 

「良いですけど、何か有ったんですか?」

 

「前々から声を掛けていた協力者が来てるの。次の作戦で力を借りることになるだろうから、皆と顔合わせをした方が良いと思ってね」

 

「分かりました。それじゃあレイジ、手分けして皆に声を掛けよう。僕は街の外を回るから、そっちは街中をお願い」

 

僕がそう言うと、レイジは軽い頷きを返して走り出す。

 

続いて僕も走り出し、頭の中で他のメンバーの場所を思い出しながら最短コースを考える。

 

だが、頭の片隅にはサクヤさんが先程口にした次の作戦、という言葉が強く影を残していた。

 

 

 

 

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  * 

 

 

 

 

 数十分後、主要メンバー全員が集会場に集まり、協力者との顔合わせが行われた。

 

「よう! 初めましてだな、解放戦線の方々! あんたが噂の隊長さんかい? 聞いてた通りの別嬪さんじゃねぇか」

 

そんな風に、対面してすぐにサクヤさんにナンパ染みた台詞を投げたのは、まさに海の男と言う言葉を再現したかのような長身の男性だった。

 

およそ190に届きそうな長躯にターバンで大雑把に纏められた黒髪、不敵な笑顔を浮かべるその顔には顎から伸びる髭が良く似合っている。

 

着ているクロックコートの胸元から見える肉体は鋼のように鍛え上げられており、その立ち姿からも相当の実力者であることが分かる。

 

「ふふっ、ありがとう。何処で聞いた噂なのかは分からないけど、光栄だわ。そういう貴方はディランね」

 

「おうよ。「海賊騎士団」アークバッカニアのリーダー、ディラン・ローエンだ。で、こっちは相棒のイサリ。射撃と釣りの腕はピカイチだぜ」

 

「…………どうも」

 

短い挨拶と共に前に出てきたのは、ディランさんとは対照的に随分と線の細い男性だった。

 

無造作というか殆ど無秩序に伸びた青色の長髪は胸元に届くほど長く、髪の分け目から見える瞳は少々ぼんやりとしている。

 

服装も特に変わった所の無い革のジャケットにコートといったもので、歩き方や体格から見て間違い無く剣や拳を扱う者ではない。

 

というか、僕個人としては海賊騎士団という肩書きについて突っ込みたい。

 

何だ海賊騎士団って、海賊の集まりなのか騎士の集まりなのかさえ分からないのだが。

 

「海賊騎士団って言うのがイマイチよく分からないけど、この人達がサクヤさんの言ってた協力者なんですか?」

 

「ええ、そうよ。ブレイバーンのいる火山島、そこに行く為に彼等の力を貸りたいの」

 

ベスティアの北方の海に浮かぶ島、アグニル火山島。

 

そこに向かうにはどうしても船が必要であり、港を帝国に抑えられている現在は手の出しようが無かった。

 

だから、サクヤさんは独自の船を持つディランさん達に協力を頼んだのだろう。

 

「あぁ、ちょっと待ってくれ。確かにその件は刃九朗から話を聞いてるし、出来るなら力になりたいとも思ってる」

 

「?……なら問題無いじゃんか。協力してくれよ」

 

「いや、残念ながら問題が有る。実は先日、帝国のヤツらにオレ達の船を沈められちまってな……」

 

「…………は?」

 

ディランさんの口から出た内容に、間違い無く場の空気が一瞬凍り付いた。

 

思いも寄らぬ不意打ちに僕を含めた殆どの者が絶句し、僅かに声を漏らしたレイジもすぐに口をパクパクとさせて言葉を失っている。

 

「帝国の奴等が我が物顔でオレ達の縄張りに入ってきやがってよ。痛い目に遭わせてやろうとちょっかい出したら返り討ちに遭っちまった。ははは、ざまぁねぇや」

 

「そのせいで……沖釣りが出来ない……帝国……許せない……」

 

ディランさんは豪快に笑い、イサリさんは静かに怒りを燃やしているがこっちはそれどころではない。

 

状況を打開する為の頼みの綱が実はもう切れていたのだから、笑い話にもならない。

 

「キャプテン、笑い事ではないでしょう。このままでだと海賊から山賊に名乗りを変える羽目になりますよ?」

 

「はは、優しそうな顔して中々キツイこと言うなお前さん。まあ、確かにその通りだ。てか、ここに来る前にそのことは刃九朗にも話したはずだぜ?」

 

呆れを含んだ僕の言葉にディランさんは少々気を落としながら答える。

 

そして、集会場の全員の視線が刃九朗さんに向けられると、本人は腕を組んで静かに頷く。

 

「うむ、確かに聞いている。そして、打開策も考案済みだ。その上で確認するが、ディラン、イサリ……お前達は海賊だろう?」

 

「「海賊騎士団」と言ってもらいたいところだが、まあ、船が無い身じゃ何も言えんわな。そうだな……たしかに、お前の言う通り、オレ達は海賊だ」

 

「ならば話は簡単だ。船の1隻くらい、奪えば良いだけの話であろう? 港には幾らでも獲物が転がっているぞ」

 

「港? いや、あそこに有るのは帝国の軍船……って、まさか……」

 

ディランさんは目を丸くして刃九朗さんを見るが、僕は此処までの話の流れで今回の集まった本当の議題について大体予想が出来た。

 

「だから、お前達は海賊なのだろう? 欲しいモノを奪い取る。そのことに何の不思議がある」

 

つまり、無いなら敵からぶん捕れば良いと、そういうことである。

 

……一体僕達は、いつの間に蛮族の集団に片足を突っ込んでいたのだろうか。

 

「……だとよ、イサリ。まあ、考えてみりゃ、もっともな話だよな。海賊が敵さん相手に遠慮する必要なんざ無ぇ」

 

「(コクリ)……何をするにも……船は必要だ……」

 

刃九朗さんの言葉にディランさんは先程とは一転して獰猛な笑みを浮かべ、イサリさんの声にもそれに賛成するようなやる気が感じられる。

 

「だが、オレとイサリだけじゃ流石に港に陣取ってる帝国軍を相手に出来ねぇ。それに関しちゃお前達の力を当てにして良いのか?」

 

「無論だ」

 

「……よし! 交渉成立だ! そうと決まれば、さっそく港に行って獲物を物色してくるぜ。良い船が見付かったら連絡するからよ。行くぞ、イサリ!」

 

「……ああ……」

 

そう言うと、ディランさんはイサリさんを脇に抱えて集会場を飛び出し、真っ直ぐローランの出口へと向かっていった。

 

先程までも活気溢れる人だったが、船が手に入ると聞いたからかさらに活力が増している気がする。

 

そんなディランさんの行動が予想出来ていたのか、刃九朗さんもサクヤさんも軽く肩をすくめるだけで何も言わなかった。

 

とりあえず、会議を進めるという意味も含めて僕はサクヤさんに質問する。

 

「キャプテンにはああ言ってましたけど、本当に良いんですか? 今回の作戦、色々まずいんじゃあ……」

 

「え? まずいって、どういう意味だ? 面白いことになってきたと思うけど……」

 

首を傾げながらそう尋ねてきたレイジの言葉に、僕は思わず手を額に当てて溜め息を吐いた。

 

やばい。

 

この辺の認識をあやふやにしたままで今回の作戦を行うのは非常によろしくない。しかも、僕の気のせいでなければレイジと同じ状態の人が他にも何人かいる。

 

「……あのね、レイジ。さっきの話を聞いて分かったとは思うけど、今回の作戦は港にある帝国の船を奪うことなのは分かるよね?」

 

「ああ、だからディランさん達と協力するんだろう?」

 

「そう。僕が言ってる問題点はソレだよ」

 

頷いた僕の言葉に集会場にいる人達が再びそれぞれの反応を示した。

 

未だに首を傾げる者、僕の言おうとしていることに気付いた者、既に理解しているのか黙って何も言わない者。

 

その全てを確認して、僕は話を続けた。

 

「僕達の所属している組織、ヴァレリア解放戦線はドラゴニア帝国に対抗する為に作られたモノだ。だけど、他の国々からすれば現状僕達は精々ゲリラ屋の集まりであって国の正規兵じゃない。

そんな僕達が、海賊として名が通っているディランさん達と協力して帝国軍の船を奪取したとなれば、他の国からは多分良いイメージを持たれないと思う」

 

戦争において敵国の物資や施設を奪うということは決して少なくはない。

 

だが、それはあくまでも国と国が争う戦争においての話だ。

 

ディランさん達が善い人であるのは勿論理解しているが、残念ながら『海賊』という肩書きは圧倒的に悪の印象が強い。

 

その海賊と僕達のような反抗勢力が手を組んで船を奪った場合、世間の反応は恐らく良いモノにならないだろう。

 

最悪の場合、ヴァレリア解放戦線に対する世間のイメージが『海賊とも手を組むならず者の集団』に大暴落する可能性だって有る。

 

勿論、これは僕が考える可能性の1つであって絶対に起こるとは限らない。

 

だが、この戦争において未だ被害に遭っていないヴァレリア地方の様々な小国が様子見を決め込んでいる現状、避けられるリスクは出来るだけ回避するべきだとも思うのだ。

 

こういった世間体というものは、悪くなってしまうと取り戻すのが非常に難しい。

 

殺人事件を起こした姉さんの弟である僕が同じ位の危険人物だと思われ怖がられたのが1つの例だ。

 

生憎やったことは無いが、もし僕が何の危害も加えないと主張しても、周囲の人間は恐らく信じないだろう。最悪、騙そうとしているのではないか?とさらに悪化する可能性も有る。

 

取り敢えず、このまま作戦を決行するのはまずいのではないかということを出来るだけ嚙み砕いてレイジ達に説明し、僕はもう一度サクヤさんに確認を取る。

 

「そういうことね……色々気にかけてくれてありがとう、レオ。でも大丈夫、そうならないように刃九朗がディランと話をつけておいたから」

 

「うむ、アイラ王女とラナ王女にも協力してもらい、ディランが率いる『アークバッカニア』を傭兵団として正式に雇うよう契約を結んだ」

 

「これから必要になってくる海軍方面の担当としてね。もし他の国に何か言われても、ルーンベールとフォンティーナの王女が正式な契約で雇った傭兵なら文句も言われないわ」

 

笑顔でそう言いながら、サクヤさんは懐から一枚の書類を取り出す。

 

それを見て、僕を含めた何人かが安堵の息を吐きながら肩を落とした。

 

なるほど、帝国の侵略で一度はボロボロになってしまったが、ルーンベールもフォンティーナもヴァレリア地方においては紛れもない大国である。

 

この2国が正式な契約によって雇った傭兵ならば体裁は守れるだろうし、下手な難癖をつけられることも無いだろうから安心だ。

 

そして、話を戻す合図のようにサクヤさんがパン! と手を鳴らして皆の視線を集める。

 

「さて、話も纏まったところで、次の作戦の準備に掛かりましょう。ディラン達が目当ての船を見付けたらすぐに動けるように、各所への通達をお願い。具体的な指示は後でそれぞれ送るから」

 

そう言われ、集会場に集まっていたメンバーはそれぞれ退出して自分の担当する仕事に戻っていった。

 

同じく僕も自分の仕事に戻ろうと集会場を出ようとするが、サクヤさんに肩を叩かれて呼び止められた。

 

「ごめんなさい、レオ……実は、貴方と刃九朗にはやってほしいことが有るの」

 

そう言われて僕の視線が刃九朗さんに向けられると、腕を組んで一度頷かれる。

 

「うむ、前回の作戦で見たお主の隠密能力を買ってな。どうか力を貸して欲しい」

 

「それは構いませんけど……具体的には何をするんです?」

 

質問すると、刃九朗さんからバッグを1つ渡された。

 

中を見てみると、そこには望遠鏡と少し大きめの紙とペンが入っていた。

 

「ディラン達と同じく下見だ。まあ、我等の方は防衛戦力の下見だがな」

 

この言葉が、後に結成されるヴァレリア解放戦線偵察部隊の切っ掛けになるとは、僕も刃九朗さんも全く予想していなかった。

 

 

 




ご覧いただきありがとうございます。

とりあえず、海賊騎士団についてのツッコミは譲れなかったのでレオの心中だけでやらせていただきました。

まあ、その後にディランの正体知って滅茶苦茶驚いてすぐにどうでもよくなったんですが。

海賊と手を組む世間体云々は……まぁ、ゲームやってて「これ大丈夫なの?」って思って書いてみた程度なので軍事や政治方面で深く突っ込まないでいただけると幸いです。

次回は港での戦闘になると思います。

では、また次回。
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