2021年1月
大規模改訂を行いました。
2日目、3日目を二話に分割し、文章も一から見直しました。
新しく生まれ変わった妖之恋をどうぞ、お楽しみください。
目が覚めて真っ先に飛び込んできたのは、赤い巫女服を身に纏った十代の少女の姿だった。
「あ、やっと起きた。」
俺の顔をじっと覗き込みながら少女は呟いた。
一体ここはどこなのか。何があったのかはっきり覚えていない。前々から登ろうと思っていた近所の小さな山の中で廃れた神社を見つけ、鳥居をくぐったとこまでは覚えている。
「あんたどうやってここに来たの?外の世界からそうやすやすと入れるもんじゃないんだけど。」
とりあえずこいつに話を聞いてみよう、と思った。
(数十分後)
少女は自分の名を博麗霊夢と名乗った。彼女が言うには、ここは「幻想郷」と言われる、妖怪だとか幽霊だとか、一括りに言えば架空の生き物がうじゃうじゃいる、いわゆる異世界だと説明した。最初は信じられなかったが、神社の縁側で話している途中で霧雨魔理沙という金髪魔女が箒に乗って空から降りて来たので、俺も信じざるを得なくなった。
「それで、〇〇はどうするの?帰ろうと思えばすぐに帰れるけど。」
出来る事ならすぐにでも帰りたかった。が、そう伝えようとした時に俺の中でこんな思考がよぎった。
折角異世界に来たんだから、ちょっとは楽しんでみたくないか。
謎の誘惑により答えるのに躊躇していると、魔理沙が霊夢に耳打ちした。霊夢が何かを思いついたように俺の方に顔を乗り出してきた。
「あんた、二、三日ここにいても平気?」
「え、まぁ、平気ですけど。」
幸い数日はこれと言って予定もない。
「実はさ、明日からここで縁日やるんだよ。で準備とか手伝ってくれないか?」
「え、あ、その」
「嬉しい!これで仕事が少しは楽になるわ!たまには魔理沙も気の利いた事言うじゃない!というわけでよろしくねー〇〇」
と言って部屋に入ってしまった。
どうやら俺に拒否権はないようだ。
困惑していると俺の方をニヤニヤしながら見ていた魔理沙が何かを思いついたらしく、霊夢の後を追って部屋に入っていった。部屋の中から話し声が聞こえる。
「なぁ、それはそうと、三日間あいつの面倒誰が見るんだ?」
「あー、私嫌よ面倒くさい。あんた見てよ」
「却下だ。」
頼むから帰してくれ。
「あ、そうだ、今日の宴会で誰が面倒見てくれるか聞いてみましょうよ!」
「名案だな!」
冗談じゃない、妖怪に面倒見てもらうなんて。何されるか分かったもんじゃない。
その後、日が暮れるまでの数時間霊夢に帰してくれと哀願し続けたが、結局聞き入れてもらえなかった。
月が輝き始めた頃、神社には妖怪たちが集まり出した。
にしても、どの妖怪も…俺が想像していた禍々しいものとは少し違う。
コウモリの羽、宝石っぽい羽を付けている少女姉妹はレミリアとフランだったか。
巨大な綱の輪を背負った女性は神奈子とか言っていた。
変な目玉のアクセサリーっぽいのを体に巻きつけてる女の子はさとり。(話してもいないのに突然「これアクセサリーじゃないです。」って突っ込まれた)
東京だか千葉だかにある夢の国にいそうなネズミやら変なのが揃っている。それより何より全員女なのだ。白髪の日本なのか中国なのか分からない服装をしている若いメガネの男性と俺以外全員女なのだ。
皆、俺のことを珍しい生き物でも見るようにジロジロ見ながらこそこそ話している。
霊夢は宴会の出席者を大広間に集めると、
「あんた達の中で、こいつの面倒2、3日見てくれる人いない?」
と周囲を見回した。
まぁこんな奴なんて誰も興味ないだろう。いい加減帰してくだs.......
「はい!うちが面倒見るわ!!」
「いえいえここは私達が!」
「いや私達が!!」
何で全員挙手してるんだ。
俺を食っても不味いだけだぞ。
「さーいしょーはグー!!」
いやジャンケンで決めないでくれ。
お願いだからかえs(以下略
〜幻想郷ジャンケン大会終了〜
ため息をついていると、霊夢が俺の手を引っ張って勝者の前に連れてきた。
水色のひらひらした服を着ている、桃色の髪の女性がいた。
「あら〜かわいい男の子じゃない。よろしくね〜」
「あ、はい、よろしくお願いします。」
「西行寺幽々子。冥界の住人よ。」
霊夢が紹介してくれた。
「おい…冥界の住人なんて本当に大丈夫なのか?」
「うーん、まぁ大丈夫だと思う☆」
そこは100%の安全を保障してくれ。
まぁ、見た感じも悪い人じゃなさそうだし、大丈夫そうだが。
にしても、さっきから幽々子さんの後ろから俺の方をじっと見つめてくる少女は何なのだろう。身長からして、俺と同じぐらいか、少し歳下くらいだろうか?
「ほら、挨拶したら?」
と幽々子さんが彼女に促した。少女は緊張した様子で俺の前に出てきた。
少し幼さを残しつつも凛々しい顔、透き通るような白い肌、宝石のような青い瞳、そして肩までかかる程度に伸びた、しなやかな白髪。
…まさか自分が人生において「一目惚れ」なるものを経験するとは思いもよらなかった。
少女は
「よろしくお願いします。」
と小さな声で挨拶した。
「魂魄妖夢よ。何か困ったら彼女に言ってね。」
幽々子さんが紹介した。
「よろしくお願いします。」
俺も軽く頭をげた。
さて、どんちゃん騒ぎの宴会も終わり、妖怪達も帰り始めた。
俺も幽々子さんらと共に博麗神社を後にした。明日は朝から博麗神社で縁日の準備を手伝わなければならない。
満天の星が街灯のない道を明るく照らしている。美しい夜空だった。
星空に見とれながら歩いていると、二人の足は、寂れた石畳の前で止まった。左右に並んだ灯篭から漏れる薄紫がかった明かりが妖艶な雰囲気を醸し出している。先を覗くと、石の階段が空の果てへと続いている。
まさか…ここを登るのか?
愕然とした。
「さて、この階段を上った先が私達の住まいなんだけど…」
そう言って幽々子さんは俺の方を振り返った。
「〇〇君は飛べるかしら?」
一瞬耳を疑った。が、すぐに思い出した。ここはそういう所なんだと。
「いえ…無理です。」
「うーん…そうね〜...あ、妖夢におんぶしてもらいなさい」
「え?」
「いいわね?妖夢。」
妖夢さんも呆気に取られていたが、ああ仕方ないか、と言う表情で俺に背を向け、身をかがめた。
俺自身情けなく感じたが仕方ない。俺は妖夢さんにおぶさった。
「じゃ、行くわよ。」
そう言った瞬間、途端に幽々子さんの足がゆっくりと地面から離れたかと思うと、一瞬で空へと消えていった。
「じゃ、しっかりつかまってて下さいね。」
そう言うと、妖夢さんもふわりと宙に浮かんだ。
「もし怖かったら、目をつぶっていてください。」
そう言うや否や、妖夢さんも幽々子さんに負けずと劣らないスピードで階段に沿って飛びだした。
冷たい風が俺の顔に強く吹き付ける。
俺自身、恐怖に怯えるだろうと思っていたものの、不思議と安心感があった。だが、一歩間違えれば奈落の底に転落するのかと思うとやはり身震いがして、腕に力が入った。
しばらくしてスピードがゆるくなったかと思うと、目の前に巨大な門が現れた。
妖夢さんは門の前で俺を下ろした。
来た方を振り返ると、地上へと続く階段が無限に続いており、さっきまでいた場所は闇の彼方に消え、見えなくなっていた。
「着きました。ここが幽々子様のお屋敷であり、私の住処でもあります、白玉楼です。」
妖夢さんがそう説明した。
巨大な門が大きな音と共に開き、先についていた幽々子さんが顔を出した。
「あら、着いたみたいね。どうぞ入って。」
「お邪魔します。」
門をくぐると、そこには平安貴族の屋敷を思わせる豪華な寝殿造の建物が聳え立っている。その建物を囲むようにして、広大な庭園が広がっていた。
「凄いですね…」
「あらあら、ありがとう...あ…」
誰かの腹がなった。
「あら失礼。妖夢、晩御飯つくってくれない?」
幽々子さんだったようだ。
あれ、確かこの人宴会で出された料理の三分の一くらい食ってなかったか?霊夢の手伝いでこの人の皿を数十枚片付けた気がするのだが…。
「幽々子様ったら...支度するので待っていて下さいね。」
妖夢さんも呆れたように返事をした。
その後屋敷に上がり、妖夢さんに案内され客間へと通された。
さすが、客間も十分広い。一人で暮らす分には十分の広さである。縁側の障子を開くと、さっき見えていた広大な庭園が広がっている。奥の方には巨大な桜の木が見え、灯篭が程よい光を灯している。
「いい景色だな…」
「ふふ、ありがとうございます。ところで〇〇さんは晩御飯はお召し上がりになりますか?」
そういえば俺も腹が減った。宴会の時に霊夢の手伝いをさせられて、殆ど料理を口に入れることができなかったので、いただきますと答えた。
「では、支度を致しますので、しばらくお待ち下さい。」
そう言って妖夢さんは縁側の廊下を伝って台所へと向かっていった。
俺はしばらく、目の前に広がる美しい同時に見とれていたが、しばらくして自分の荷物の中に画帳がある事を思い出した。
俺は絵を描く事が趣味で、特に風景画を描くのが好きだった。画帳には、旅行先や身の回りの様々なスケッチが収められている。
俺は真っ白なページを取り出し、ペンを取った。
大抵の人は絵を描くときは大まかな構図を決めて消失点だとかどうのこうのを計算に入れて描くが、俺はそんな事はしない。書きやすいところから描く。そんなんだからいつまで経っても画力が上達しないのかもしれないが。
鉛筆を動かしているうちに、周りの音が頭に入ってこなくなる。書き終わる頃にはご飯もできてる頃だろう…
「あの〜〇〇さ...きゃあ!」
「!?」
妖夢さんの悲鳴によって我に返った。まぁ確かに部屋の入り口の真ん前であぐらをかきながら座ってたら誰でも驚く。
「す、すみません!びっくりさせちゃったみたいで…」
ふと妖夢さんは、俺の手に握られていた画帳に目を移した。
「絵を描いてらしたんですか?」
「あ、はい。」
そう言って俺は画帳を渡した。妖夢さんは、俺のスケッチの一つ一つをしげしげと眺めてては、わぁ、だの、おお、だの感嘆の声を漏らした。
「〇〇さん、絵、お上手なんですね。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
自分の絵を人に見せたことはあまりないので、いざ褒めてもらうと照れるものだ。まあ、褒めてくれた相手が彼女だというのもあるだろうが。
熱心に見入っている姿を見ると、俺も嬉しくなる。
「もし気に入ったものがあれば差し上げますよ。泊めてくださるせめてものお礼です。」
「え…じゃあ、もし良ければこの絵を頂けますか?」
妖夢さんが選んだのは河口と海が描かれた絵だった。
「ええ、喜んで。」
「ありがとうございます。」
その時彼女が見せた笑顔を、俺は一生忘れることはないだろう。あの夜空の満月に匹敵する眩しさがあった。
「妖夢〜、まだ〜?」
奥の方で幽々子さんの呼ぶ声がした。
「あ、そうだ。夕食の用意ができましたので、どうぞこちらへ。」
妖夢さんに案内されて通された部屋は、白玉楼の大広間だった。やはりそれなりの広さがある。ゆうに100畳はありそうだ。ところが部屋の真ん中に置いてある机はどの一般家庭にもありそうなちゃぶ台であった。
確かにこの広い屋敷に住んでるのは二人だけのようだし、そんな馬鹿でかい机なんてむしろ邪魔になる、なんて考えれば納得である。
すでに食事の用意が整えられ、幽々子さんが座って待っていた。食器が三つ、綺麗に揃えて置いてある。どうやら妖夢さんも食事を取るらしい。
「お待たせしました。では、食事にしましょう。」
「いただきます。」
「「いただきます。」」
夕食の品はというと、白米、味噌汁、焼き魚、煮物、漬物といった、いたって普通の食事だった。
さて、味はどんなもんかな…と、煮物を口に運ぶ。
…美味い。めちゃくちゃ美味い。
具一つ一つに、しっかりと旨味が染み込んでいる。魚もちょうどいい焼き加減だ。
「どう?お口に合うかしら?」
「すごく美味しいです。」
「あら〜。良かったわね妖夢。」
妖夢さんは軽く頷きながら、味噌汁のお豆腐を口の中に放り込んだ。
「あら妖夢、照れてるの?」
「て、照れてなんかいません!」
そう言って味噌汁を飲みながら自分の顔を隠す妖夢さんを見ると、なんだかおかしかった。
その後、食事の後も俺たち三人の会話は弾んだ。俺の絵のことや、普段の生活などなど。
ひとしきり会話が弾んだのち、ありがたいことに風呂まで貸してもらうことが出来た。やはり風呂も豪勢だ。屋内だけでなく露天風呂まであり、まるで高級旅館である。
露天風呂に肩までゆっくりつかり、その日の疲れを癒して、脱衣所に戻ると男物の寝巻きが置かれていた。幽々子さんが気を利かせてくれたらしい。ありがたい限りだ。
部屋に戻ると、妖夢さんが布団を敷き終わったところだった。
「〇〇さん、お湯加減は如何でしたか?」
「すごく気持ちよかったです。布団、敷いてくれたんですね。何から何まで、本当にありがとうございます。」
「いえいえ、これが仕事ですから。」
そう言って見せるドヤ顔がまた可愛い。
「そうだ、お風呂空いたんで、妖夢さんどうぞ。」
「分かりました。では入らせていただきます。それでは〇〇さん、おやすみなさいませ。」
そういって軽く頭を下げると、妖夢さんは部屋の障子を閉めると、風呂場の方に向かっていった。
「…すごくしっかりした子だな…。」
見た感じ俺よりもやや歳下であるが、礼儀作法とか立ち振る舞いは俺よりもしっかりしていた。その上あの容姿。あれに匹敵する女性は、少なくともうちの世界ではお目にかかれないだろう。
彼女は一体、どんな人と結ばれるのだろう…きっと、凄い人なんだろうな…。なんて事をも考えてしまった。
そんな感じで布団に入った後もしばらくは妖夢さんのことばかり考えていた。冥界の住人の屋敷にやっかいになる、と言う緊張感はいつしか消えていた。
明日は神社の手伝いか…でもそれさえ済めば元の世界に帰れるのだ。そのうちに眠気が襲ってきて、俺は深い眠りについた。
どの話が一番面白かったですか?
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1日目
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2日目
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3日目
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4日目
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番外編