妖之恋2020 -LILAC-   作:伊須鳥

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このストーリーは妖之恋2020の番外編(続編)となっております。
まだ本編を読んでいないという方は、先にそちらを読む事をお勧めします。

・物語はタイトルにもある通り、冬のある日、白玉楼に居候している〇〇が幽々子様に呼ばれるところから始まります。
・〇〇君ですが、妖夢との再会以降、口調がタメ口になったり丁寧語になったりしていますが、これは演出です。



after story -冬物語-

肌寒い季節になった。幻想郷にも雪が積もり、妖怪たちも自分の住処にこもるようになった。

そんなある日のこと。

「〇〇君、ちょっといいかしら?」

白玉楼の自室でくつろいでいると、幽々子さんに呼ばれた。一体何の用だろう。

幽々子さんの部屋に通されると、そこには紫さんまでいた。どこからとなく緊迫した雰囲気が伝わってくる。どうやら重要な用事らしい。

「〇〇君、あなたは今、外の世界で好意を寄せている人、もしくは結婚する予定の人はいるかしら?」

「いえ、いないです。」

あれからというもの、俺は用事のない週末に幻想郷に顔を出し、妖夢に会う事が日課になっていた。最近は冬休みなのもあって、白玉楼に居候しっぱなしだが。無論幻想郷にも外の世界にも、妖夢以外に付き合っている人間はいない。

「実はね、貴方と妖夢を合わせてみようと思って。」

 

…え?

 

「…え。ちょ。……紫さん……今なんて…」

「貴方と妖夢、ゴールインするの。」

「え?」

頭の処理が追いつかない。

「あれから数年間経つけど、貴方も悪い人ではなさそうだし、妖夢もそろそろそういう年頃だからね、というわけ。」

 

 

 

…ああ、はい。そう言うことですか。

 

 

 

…マジかよ。

 

 

「どうかしら?」

幽々子さんが聞いてきた。

「まぁ、突然すぎるわよね。いいわ、ゆっくり考えて…」

「幽々子さん。紫さん。」

言葉を遮るようにして口を開いた。

答えなど、とっくに決まっている。

「僕でよければ、ありがたくお引き受けいたします。」

返事を聞いて幽々子さんと紫さんは嬉しそうに手を取り合った。

にしても全く信じられない。未だに現実味がわかない。だが以前から、なんとなくそんな予感はしていた。

 

妖夢さんは、妖夢は、俺の運命の人であると。

 

その夜、夕食の片付けの手伝いをしていると妖夢が話しかけてきた。

「〇〇さん、今日紫様と幽々子様と何話してたんですか?」

「ああ、……秘密です。」

「?」

妖夢は首を傾げたままだった。

一応三人で、俺からプロポーズしたことにするという事で合意したのである。

 

数日後、俺は紅魔館に来ていた。

 

「お嬢様方、お久しぶりです」

「ひさしぶりー!〇〇!!」

「久しぶりね、〇〇。それとおめでとう。」

「え?」

「紫から聞いたわよ。貴方と妖夢の縁談。それで、軍資金稼ぎにここの大掃除の手伝いに来たってわけなんでしょう?」

…もうここまで広まってたのか…。

「…そうですよ。やるからには真面目にやりますから。」

「あらあら張り切っちゃって。丁度窓掃除を誰がするのかで悩んでいたところなの。あ、ちなみにこの屋敷のすべての窓よ。三日以内に終わらせたら、バイト代奮発してあげちゃうからね」

「お任せ下さい!」

 

…軽々しく返事をした俺が馬鹿だった。この屋敷、幻想郷の中でも一、二を争うデカさの建造物ゆえ、窓の多さも尋常ではない。咲夜さんや妖精たちの手も借りながら、なんとか三日で終わらせることができた。

 

「三日間助かったわ、ありがとう〇〇」

「いえいえ、言われたことをやったまでですから。」

「また数ヶ月後、大掃除の時もよろしくね♪」

…ハッタリかまし過ぎた。俺の悪い癖だ。

「あ、そうそう。お約束の軍資金もちゃんと渡さないとね。結婚祝いとかも含めてちょっとサービスしてあげちゃうわね。というわけで、はいこれ。」

そう言ってお嬢様じきじきに分厚い封筒を渡された。

「改めておめでとう。貴方たちの幸せを祈ってるわ。」

「ありがとうございます!」

俺は紅魔館を後にした。

門を出たところで美鈴が寝てるのを確認し、封筒の中身をこっそり覗く。

「おお.…」

思わず声が出た。

レミリアお嬢様、本当にありがとうございます。

 

そして翌日の昼過ぎ。

「妖夢さん、今日これから俺と外の世界でも見て回りませんか?」

俺は妖夢をデートに誘う事にした。

「え…で、でも私、仕事ありますし…」

「いいじゃないの、行ってきなさい」

幽々子さんにも事前に伝えてある。

「じゃあ、行きましょうか!」

妖夢は嬉しそうに返事をした。

 

「よし。」

服装を整えたのち、門の前で待つことにした。

実は妖夢と出掛ける事はこれが初めてではなく、何度か二人で外の世界に出ては妖夢に洒落た服を買ってあげたりしていた。さて、妖夢はどんな服装で来るのか。一応並んで恥ずかしくないよう、まともな服を選んだが…。

「お待たせしました!」

玄関からこちらに駆け寄ってくるのが見える。

「お、来た来た...…おぉ…」

 

ベージュのコート、チェック柄のスカート、黒タイツ

 

「あの…どうでしょうか…?やっぱり私にこんな服は…」

「…いや…その…なんというか…僕の語彙力不足でなんと言い表せばいいか分からないぐらい似合ってます…。」

普段は白シャツに緑のブレザーとスカートしか着てない妖夢だが、いざ外の世界の服を着せてみると、どんな服でも見事に着こなしてしまうから凄い。

「もう、〇〇さんったら…大げさですよ///」

と、妖夢は顔を赤らめながら笑った。

 

博麗大結界を出て、外の世界の商店街へと向かった。年末が近いこともあり、町は人でごった返している。

「うーん…相当混んでるな…」

「そうですね…あの〇〇さん…はぐれたら嫌なので…」

そう言って妖夢は手を差し出してきた。俺は頷いて、その手を強く握った。

「えへへ…」

妖夢もそれに応じるかのように妖夢も俺の手を握り返した。勿論恋人つなぎである。

そうして二人並んで、夕暮れの商店街歩く。時々目が合うと、幸せそうな笑顔をこちらに向けてくる。その笑顔は冗談抜きで、街のイルミネーションの何倍もまぶしかった。

ふと後ろの方で俺の名を呼ぶ声がする。振り返ると友人がいた。どいつもこいつも彼女いるのをいいことに万年非リアの俺にマウントを取っていた陽キャ共だ。

だが今の俺は違う。

「よう〇〇!お前またひとr...」

その瞬間彼らは言葉を失った。

驚くはずである。冴えない非リアと恋人つなぎしているのは、錦のように滑らかな白銀の髪、透き通るような白い肌、宝石のように澄んだ丸い大きな瞳の、日本中探したってどこにもいなさそうな絶世の美少女なのである。

「よ、久しぶり。」

「え、ちょ、誰この子。滅茶苦茶かわいいんだけど。」

「ああ……彼女だよ、俺の。」

 

〜暫しの沈黙〜

 

「「「ハァ‼︎‼︎⁇⁇」」」

 

今まで生きてきてこれほど快感と感じた事は他にないだろう。

「いやいやいやふざけんなよ、なんでお前みたいなやつがこんな可愛い子と…!!」

「俺絶対認めねえから!!」

「あ、そう。じゃあ行こうか妖夢!」

「うんそうだね、〇〇君!」

そう言って妖夢は俺の腕に抱きついてきた。

あいつらは全員( ゚д゚)ポカーンとした表情で俺と妖夢の方を見つめていた。

ちょっと離れたところになって妖夢に話しかけた。

「ありがとう妖夢さん。」

「えへへ、ちょっとはしたない言い方しちゃいましたね。でも嬉しかったですよ。〇〇さんがみんなの前であんな事言ってくれて。」

笑い合っていると…今度は女友達だ。

「あ、おーっす、〇〇じゃない!……え、あれ、誰そのバリ可愛い娘。」

「俺の彼女。」

「ハア‼︎‼︎⁇」

「うーわもったいな〜〜〜〇〇にこんな子が付いてくるなんて〜」

「私の彼女にしたい〜」

どうして外の世界の女ってこうなんだろう。俺には関係ないけどね。

「ったく、お前らも相変わらずだな〜お前らこそ彼氏とかいないのかよ〜」

「うるさいお前。彼女が出来たからっていい気になってんじゃねぇよまったく…末長く爆発してろ!」

駄弁っていると妖夢が袖を引っ張って急かしてきた。

「ねえはやく行こうよ〜。〇〇君…」

「あ、そうだね、じゃあな〜」

あいつらもまた( ゚д゚)ポカーンとした表情でで、俺の方を見ていた。

「どうしたんですか?」

「だって…私の〇〇さんが他の人に取られそうでイヤだったから…。」

 

いや天使かよ。

 

「大丈夫。俺はずっと妖夢のものだから。」

そうして俺と妖夢は服を見たり、カフェでスイーツを食べたりしながら商店街で充実した時間を過ごした。日は大きく西に傾き、空がオレンジ色に染まり始めた。

 

…さて。そろそろ誘うか。

「妖夢さん…一緒に行きたいところがあるんですが…」

「あ、はい。いいですよ?」

商店街を少し離れたところにある海岸公園へと俺たちはやってきた。散歩の途中の仲の良さそうな老夫婦とすれ違う。妖夢はそれを少しだけ悲しそうに見つめていた。公園の小さな丘の上にある展望台に二人で登った。

「着いた。ここに連れて来たかったんですよ。」

目の前には、青い空と大海原が広がっていた。

「わぁ…!」

無邪気な青い瞳が、より一層大きく輝く。幻想郷育ちの彼女は、海を見た事が無かったのだ。

「いつか妖夢さん言ってましたよね。海、見てみたいって。」

「はい!〇〇さん覚えてくれてたんですね!」

妖夢は瞳を一層輝かせた。

「世界って…広いんですね。」

地平線の果てをみつめながら、そう彼女は呟いた。

「〇〇さん、言ってましたよね。この光景は、自分の全てを受け入れてくれるって。私もそんな気がします。」

「実は俺、もう一つ決めていた事があるんです。」

「ん?何をですか?」

「いつか、俺はこの場所で、誰かに想いを伝え、その人に俺の一生を捧げる事を誓おう、って。」

「……。」

「そして、今がその時みたいだ、妖夢。」

そう言って俺は、妖夢の方を向き直った。

「俺と…結婚してください。」

「はい。勿論です。」

妖夢の答えは即答と言えるほど、あまりにも素早かった。

慌てて俺は聞き返した。

「本当にいいんですか?こんな俺なんかで…」

妖夢は首を横に振った。

「私も〇〇さんしかいないって思ってました。私こそ…こんな私でよければ、どうか〇〇さんのそばに置かせてください。よろしくお願いします。」

胸がいっぱいになった。

「なんでだろう…答えなんかずっと決まってましたけど…でも…まだ信じられないですね…夢みたい…」

妖夢の目から涙が溢れているのがはっきりとわかった。

俺も胸がいっぱいになって妖夢を抱きしめた。妖夢もまた、俺のことを強く抱きしめた。

:

:

ずっと心の中でもやもやしていたものが一気に晴れた気がしました。

〇〇さんは、私の運命の人であると。

これからの人生を、彼と共に歩んでいくということを。

疑問が、確信に変わった瞬間でした。

今はただ、言葉にできないほどの、絶え間なく溢れ出るこの感情を、〇〇さんに伝える事しか出来ませんでした。

:

:

「妖夢…落ち着いた?」

「…はい。〇〇さんは…?」

「俺も大丈夫。それじゃあ、やることは一つですね。商店街へ戻りましょう。」

「やること…?」

「勿論、指輪を買いに。」

「はい!!」

俺と妖夢は二人手を繋いで、商店街へと戻っていった。

 

その後指輪を選んだ俺たちは宝石店を後にした。妖夢の選んだ指輪は、正直言って地味なものだった。本当にこれでいいんですか?と聞いてみたが、妖夢は、これでいいんです、と言い張った。

「私…これで正真正銘、〇〇さんのものなんですね。」

そう言って妖夢は指にはめた指輪を空にかざしながら、誇らしげに、そして幸せそうに見つめていた。

「あ、〇〇さん上!」

ふと空を見上げると、夜空から幾千もの小さな光が空から降ってきた。

「雪か…」

「綺麗ですね…」

それと同時に、街のイルミネーションも輝き始めた。

晴れて結ばれた俺たちを祝福しているようだった、というの表現はは流石に傲慢だろうか?

「ちょっとあそこで休みませんか?」

妖夢が手前のベンチを指差した。

「うん、そうですね、歩きっぱなしだったし。」

そう言って二人ベンチに腰掛けた。

妖夢は何も言わず、ただただ俺の手を強く握っている。俺は話しかける言葉が見つからなかった。

「実は私、最近ずっと不安だったんです。」

「え?」

「貴方にあって、貴方のことが好きになって、それからずっと、私には〇〇さんしかいないって思ってました。でも…実は不安だったんです。やはり〇〇さんは外の世界の人間と結ばれるのかなって…正直…聞くのも考えるのも怖かったです。」

妖夢は下を向いたまま続けた。

「だから私も、いつかこの想いを伝えようって思ってました。自分から進まなきゃ道は開けない。でも…先を越されちゃいましたね。」

そう言って妖夢は照れ臭そうに笑った。

「だから〇〇さん、少し遅くなっちゃったけど、私からも言わせてください。」

もちろん、と俺は頷いた。

妖夢は大きく深呼吸をしてから、真っ直ぐに言った。

「ずっと貴方の事が好きでした。〇〇さん。私と結婚して下さい。」

「勿論。僕でよければ、よろしく。」

「…やった…言えた!」

妖夢は無邪気に抱きついてきた。俺は妖夢の髪を、優しく撫でた。

「じゃあ、帰りましょうか。」

「はい!」

 

しばらく歩いて、人気のないところまで来た。

 

「〇〇さん…今日はありがとうございました……すっごく、楽しかったです。」

「僕も妖夢さんといて楽しかったですよ。ありがとうございました。」

「じ、実はあの…お伝えしたい事が…」

なんかしどろもどろに妖夢が聞いて来た。

「?何ですか?」

「ちょ、ちょっと耳を…」

人気もないし、耳元で話する必要無いと思うが…まぁ、そんぐらい大事な用事なんだろ。俺が妖夢の頭の高さ顔を合わせると

 

 

ちゅ。

 

 

柔らかい唇が俺の頬に触れた。

 

 

「えへへー」

いたずらっぽい顔で俺の方を見る妖夢。

「くそ、一本取られたな…」

二人で笑い合いながら、次はどこに行こうかとか、新婚旅行はどうしようだとか、そんな事を語り合いながら、結界をまたいで白玉楼へと戻った。

 

 

 

 

 

そして数年後————。

 

運命の日がやって来た。

 

純白の姿の妖夢の目には涙が浮かんでいた。しかしその屈託のない笑顔には幸せと夢、そして希望が満ち溢れていた。

俺も俺で半泣きである。

 

「〇〇さん…私今……最高に幸せです…!」

「俺もだ、妖夢…。一生幸せにしてみせる。」

 

 

青い空がどこまでも澄み渡っていた。

 

 

 

その日の夜。俺と妖夢は一緒の部屋で、互いの肩を抱き寄せながら桜の花を見ていた。

「月が綺麗ですね…」

「私もそう思います。きっと…〇〇さんと二人で見る月だから、ね…」

そうだな、と二人で笑い合った。

「あ、そうだ。まだ〇〇さんに挨拶してなかったですね。」

そう言って妖夢は正座して座り直した。

「半人前の私を選んでくれて、本当にありがとうございます。こんな私ですけど、〇〇さんの為に精一杯頑張りますので、今後ともどうかよろしくお願いします、旦那様。」

「妖夢…こちらこそ。僕自身もまだまだ半人前です。これから先、僕らが歩む道は苦難の連続だと思う。でも、そんな苦難も妖夢となら乗り越えられる気がする。俺も妖夢の為に頑張るから、これからも宜しくな。」

「はい、宜しく!」

そうして俺と妖夢は軽く抱擁を交わした。

「じゃあ寝よう。明日もあるから。」

「はい。それじゃあおやすみなさい。」

「うん。おやすみ。」

こうして俺は、俺たちは、新しい人生のスタートを切った。これからも人生の中で、様々な苦難に直面するだろう。でもそんな困難も妖夢、君となら乗り越えていける気がする。乗り越えてみせる。

ここからが、本当のスタートだ。

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
妖ノ恋シリーズはもともと、妖夢好きでたまらなかった作者が自己満足の為にiPhoneのメモを使って書き上げた作品になります。今回の冬物語は、両思いになるだけじゃ飽き足らなくなった作者が一昨年の冬に書き上げた作品になります。
いやホント、妖夢可愛いですよね。
これにて妖之恋シリーズは完結となりますが、もしかしたら気まぐれでまた続編を作るかもなので、気長に待っていただければ幸いです。
(射命丸シリーズとか面白そうだな…と考えたり)
最後になりますがこんな糖分MAXの小説を読んでいただき、本当にありがとうございました。またいつかお会いしましょう!

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