山を彷徨い早3時間弱。ついに、ついに見つけた。
草木の間から見えるのは、木の葉を放棄で掃いている少女の姿だった。
なんか想像より若そうだし、赤と白の装いは巫女服に見えるが、こんな山奥にいるのだから、間違いないはず。向かって右側にある朱色の鳥居は見なかったことにした。
間違いねえ……、彼女こそ、
一説によると、塵塚怪王は山姥の王であるとされているのだが、なぜか俺は山姥を一度も目にしたことがない。嫌われているのかもしれないが、さすがに一度も会ったことがないというのはどうだろう? と思い、今に至る。
九割は暇つぶしで探してた、ということは伏せておこう。
俺は草木から飛び出そうとしたが、寸でのところで止めた。なんかはじめての対面で高揚していたが、一旦冷静に考えてみよう。
まず山姥ってさ、山の奥に住む老婆の妖怪で知られてんじゃん? 立ち寄ったやつを包丁片手に襲うような。
しかし眼の前にいる山姥(仮)はどうだ。シワひとつない、まだ十代に見える少女ではないか。本当に彼女が山姥なのか? もし勘違いして出ていったら、めちゃくちゃ恥ずかしいことではないか。
俺は座り直して、また草木の隙間から様子を伺うことにした。いやぁ、危うく恥をかくところだった。
と、安堵の息をついたとき、あることを思い出した。
とある地域に伝わる山姥(ヤマヒメ)は、見た目二十歳ほどの女性で、眉目秀麗で珍しい色の小袖に黒髪だったと伝わっている。出会った猟師が鉄砲で撃ったが、弾を手でつかんで微笑んだらしい。
山姥(仮)とそれを比べてみる。
見た目二十歳ほどの女性――わからなくはない。個人的には十代に見えるが、まあ誤差の範囲ってことで。
眉目秀麗――これに関してはかなり当てはまっている。確かに目の前の彼女の容姿はかなり優れていた。
美しい色の小袖――うーん? まあ誤差の範囲だろう。きっと。
黒髪――まごうことなき黒髪だ。
鉄砲の弾を掴んで微笑む――これが一番当てはまっている気がする。なぜだかはわからかいが、目の前の彼女は凄く怖い方の笑みを浮かべそうなイメージがある。きっとそう思わせる『スゴ味』があるのだろう。
いやもうこれ山姥でしょ。Q.E.D.証明終了だよ。
確信を得て、俺は彼女の前に姿を現す。すごい神社っぽい家に住んでるな、と思った。
「初めまして、山姥さん」
正面から山姥(確信)を見ると、やはりその装いは巫女服を彷彿させる。周りもよく見なくとも完全に神社だが、だがきっとたぶんおそらく違うのだろうmaybe(希望的推測)。
それはそれとして、俺の言葉に山姥(確信)は思いっきり顔をしかめた。
「は?」
怖い。
3ヶ月ぶりの更新でこの文字数&クオリティ……。救いようがねえな。