時間は少し戻りパワードスーツを見にまとったピーチ姫、すべてのステータスが倍増していた。
「いくわよ」
ピーチ姫が地面を蹴るとスーツのスラスターが反応しピーチ姫の考えた方向にジェット噴射した。
「それ!」
「がは!」
モートンの目の前に着くのとほぼ同時にパンチを顔面に叩き込んだ。普通の敵ならこれでダウンだったがさすがは中ボス、ピーチ姫の腕をがっしり掴んだ。
「あら?」
「いっでぇ~…けど!捕まえた!捕まえた!ロイ!」
「そんな服?魔法で変えてやるぜ!」
ロイが魔法の杖をクルクル回すと三角と四角と丸の形をした光が浮かび上がる。
「それぇ!!」
ロイが杖をさらに振るとそれらが杖から離れピーチ姫の方へ飛んでいく。だがピーチ姫は焦らない。
「ふっ!」
「どわっ!?」
ピーチ姫は背中から倒れこんだ。ピーチ姫の予想外の行動にロイは対応できずそのまま引っ張られる。そしてロイの体は魔法とピーチ姫の間に挟まれ…
「ぎゃあ!?」
「ロイ!!」
ロイの甲羅に魔法が当たりトゲトゲがたくさんのお花になった。しかしこのままではピーチ姫の上にロイの巨体が落ちてしまい下敷きになってしまう。
「こうかしら?」
ピーチ姫が背中に意識を集中させる。すると背中についていたスラスターが作動し仰向けの状態でロイの下から移動した。
「ぶべっ!」
ロイはそのまま腹から落ちた。ピーチ姫は立ち上がりスーツの性能に感心する。
「すごい!体の一部みたいに動かせるわ!」
パンチやキックを空打ちし再び動作を確かめていると、この時点でオートモードになっているルドウィックの罠が作動した。ピーチ姫の足に枷がはめられ電流が流れる。
「きゃ…あ!?」
体全体に電流が流れよろめくピーチ姫。
「よっしゃあ!チャンスだ!」
すかさず突進していくロイとモートン、しかしその判断は甘かった。ピーチ姫は足裏のスラスターを利用し高く跳躍、ロイとモートンの頭に手を置き
逆立ちの状態になる。
「うっお?」
「なに??」
状況に混乱し一瞬思考が止まったタイミングを見計らい。
「えい!」
「ぷぎゃ!」
「うぶぁ!」
ロイとモートンの顔面を勢いよくぶつけた。そしてそのまま空中で一回転し着地、まだふらついているロイとモートンの方を向くと再びジャンプ。一気にロイとモートンに近づくと同時にモートンの後頭部めがけて蹴りをぶちかます。蹴りはきれいに決まったのだがロイが踏ん張ってたえた。
「あら、じゃあ次ね」
「逃がすかぁ!」
ピーチ姫が距離をとったのですかさずロイが魔法を放つ臆せずピーチ姫は走る。上段に飛んできた魔法を状態を低くしかわし、下段は飛び越え、中段の攻撃も全て避ける。避けられないものは握りつぶした。
「魔法が効かないのかよ!?」
“魔法が効かない”というよりは“魔法が届いていない”というほうが正しかった。パワードスーツの外装に加え、ピーチ姫の魔法による防御障壁、波動によるバリアと三重の壁がピーチ姫を守っていた。まずいと感じたロイとモートンはふた手に別れ離れようとしたがロイの目の前にまるで瞬間移動したかのように移動した。
「あわわ…」
「遅いわよ?」
間髪いれずピーチ姫はロイの腹を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたロイは背中からモートンにぶつかり重なるように倒れてしまう。
「ちょ、おい!どけよ!!」
「ま、まて!暴れるな!!」
二人同時に立ち上がろうとしたためお互いが邪魔で立ち上がれない。あたふたしているとピーチ姫が近づいてくる音が聞こえてきた。
「ルドウィック!!何してるんだ!?早く助けろ!!」
モートンが必死に叫ぶがこの時ルドウィックは自室に侵入してきたM・キノピオとレサレサに対応中だった。オートモードの罠が作動するがことごとく弾かれる。打開策を考えていたロイがあることを思いつきモートンに耳打ちする。聞いたモートンはニヤリと笑った。
「そういう使い方なら勝てるかもな!」
二人は今度は息ピッタリに飛び起き魔法の杖をお互いに向けた。
「?なにをする気かしら?」
ピーチ姫は黙ってそれを見守ることにした。ロイとモートンが杖をクルクル回すと杖の先に光がきらめき始め、それが顔くらいの大きさになったところで準備は完了したようだ。
「いくぞ!」
「それぃ!」
これまた同時に魔法をお互いに放った。それぞれの魔法が体に触れた瞬間、ロイとモートンの体の筋肉が肥大し強化された。
「“強化魔法”ね」
ピーチ姫は攻撃の構えをとった。ロイとモートンはすでに勝ったつもりでいる。
「感覚でわかる!今の俺たちの力はいつもの数十倍にも膨れ上がっている!!」
「覚悟しろ!ピーチ姫!」
二人はピーチ姫を両サイドから挟む形で攻撃を開始、ロイが繰り出した右ストレートを右にかわす、かわした方向からモートンの肘が迫ってきたのでしゃがんで回避、すかさずロイが魔法の杖をハンマーに変えてすくいあげるように攻撃してきたのでハンマーの動きと力を考えうまくハンマーの腹に足をかけて跳躍、今度はモートンが魔法の杖をバズーカに変え魔法の炎を打ってきた。ピーチ姫はスラスターをうまく使い空中でそれを回避モートンは連続で魔法の炎を打ってきたので全て回避する。魔法の炎に気をとられていたのでロイがいなくなったのに気づくのが遅れた。後ろを向くがそこにはいない、するとピーチ姫の上に影が落ちた。
「上…!」
気づいた時にはロイが目の前にきていた。避けることもできずロイのボディプレスが直撃する。
「あうっ…」
ダメージはパワードスーツで軽減されるが衝撃は殺しきれず呻くピーチ姫、ロイが後ろに回り込み羽交い締めにしようとするのを感じたのですぐにジャンプした。それに合わせて今度は魔法の杖を金属ハンマーに変えて叩きつけてきた。ピーチ姫は何とか反応し威力を相殺しようとしたが、弾き飛ばされ地面に叩きつけられた。衝撃からかすぐに立ち上がってこないのでロイとモートンは勝利を確信しつつも慎重に近寄る。すぐ側まで近づいてもピーチ姫は動かない。ロイとモートンの中で勝利が確信に変わる。
「これでおしまいだぁ!」
「二度と逃げるなんて考えられなくなるくらいにしてやるぜぇ!」
二人がハンマーを振り下ろす。ズガン!!という音と共にハンマーは地面を叩いていた。だがそこにピーチ姫の姿はなかった。
「んん!?どこにいっ…」
突然ロイの目の前に影がよぎり、まっすぐにロイの顔面に吸い込まれていった。
「ぎゃん!!」
妙な叫び声と共にロイが弾け飛ぶ。
「ロイ!?がぺっ!!」
ロイの方に気をとられたモートンの横っ面に鋭い蹴りが入りモートンも蹴り飛ばされる。そして元いた位置にピーチ姫が着地した。
「やっとアップロードが終わったわ」
「ア…アップロード?」
ロイとモートンがまだ驚きで麻痺する体を持ち上げピーチ姫の言葉を困惑と共に繰り返す。ピーチ姫は肩をすくめ説明した。
「えっとね、
この姿で戦い始めてすぐにモニターに『着用者の身体能力に対しスーツの現機能では対応できません』って表示されてね?その後すぐにアップデートが始まっちゃったの。始まった途端にこのスーツの機能のほとんどが停止しちゃって大変だったわ」
「!!」
「つまり今まで100%ではなかった…?」
「そうねぇ、感覚としては30%くらいしか出せてなかったかな?」
ロイとモートンは口をあんぐり開けて目が点になった。二人はむしろ100%を越える本気で戦っていたのに、相手は3割くらいで戦っていたのだ。それで追い詰められないとなると…体が震え出すロイとモートン。ピーチ姫はスーツの奥でニッコリ笑う。
「じゃ、再開しましょうか?」
言葉が終わると同時にピーチ姫の手がロイの胸ぐらを掴みそれに気づく頃にはピーチ姫のパンチが横っ面に命中していた。
「ぶぎゃぁぁ!」
反射神経も強化されているはずなのだが、ピーチ姫の動きが全く見えなかった。ロイの体は金網にぶつかり同時に電流がはしる。
「ぶべべべべべべ!!」
「な、なんで電流が発動するんだ!?まさか、ルドウィックは今席を離れているのか!?」
「集中しないとダメよ?」
「ぬはっ!?」
いつの間にかピーチ姫にバックをとられ後ろからガッチリと羽交い締めにされる。
「んふ♥️頑張ってね?」
「なにが!?ちょっ、え!??」
モートンが焦って逃れようとするが全く動けない。ピーチ姫はジャンプするスーツの力もあり、五メートルほど飛び上がり、頭を下にして落ちていく。地面が近づいてくる。そして
「ぶぎゃあぁ!」
モートンの頭が地面に激突した。ピーチ姫は衝突前に手を放し逃れた。ロイとモートンは気を失い完全にのびていた。
「さて、敵は倒したけど、道がでないわね」
コクッパ二人を倒したが次の道が現れない。その辺を色々触ったが何も起こらない。
「今度こそ困ったわね」
色々方法を考えていると頭がボーッとしてきた。
「あ、あら、暑いわね…」
ピーチ姫は暑さをやわらげるためにスーツの頭部を外した。同時に風がスーツ内を通り抜け適度に涼しくなった。
「ふぅ~すっきりしたわ~」
ピーチ姫が涼んでいると上の方で何かが崩れる音がした。
「あら?なにかしら?」
ピーチ姫が天井を見上げるとちょうど天井が崩れる瞬間だった。崩れた所からロボットのような物体とキノコとレサレサが降ってきた。
「マッスル!レサレサ!」
M・キノピオを抱えながらゆっくり下降していたレサレサが声に気づいてピーチ姫の方を見たが、ピーチ姫の顔以外全身メタルピンクの装甲をまとっている姿を見てギョッする。そのせいでM・キノピオを落としてしまった。
「うわぁ!?」
M・キノピオは地面に真っ逆さまに落ちていく。落ちて無事に済む高さではない。レサレサも気づいたが間に合わない。
「よっし!」
ピーチ姫が走り出す。降り落ちる瓦礫をよけ、時には破壊しM・キノピオとの距離をコンマ数秒でつめ、そして落ちてきたM・キノピオを抱き抱える。
「ピーチ姫ありがとうござぁ!?」
助けられたM・キノピオもピーチ姫の姿にギョッとする。
「ひ、姫?そのお姿はいったい?」
「これ?うふふ、びっくりした?」
「びっくりしましたわ!」
合流したレサレサも目を丸くしている。そんな二人にサムスからもらったパワードスーツの説明をしているその時、ルドウィックロボの下ではコクッパたちがひそひそしていた。
「どうなってるんだこの状況は!」
サングラスをなおすロイ。
「ルドウィック!なぜ途中からいなくなって空から落ちてくるんだよ!?」
ルドウィックの胸ぐらを掴むモートン。
「うるさい!色々想定外だったんだ!」
髪の毛をワシャワシャとかきむしるルドウィック。この三人は追い詰められていた。
「どうする?どさくさに紛れて逃げるか?」
「戦略的撤退ってやつだな!」
「その方がいいか…ん?」
ルドウィックの目が三人が握っている魔法の杖にとまり閃きが走った。
「おい!ロイ、モートン!魔法の杖を使うんだよ!」
「は?なにに?」
「耳を貸せ!」
ルドウィックがロイとモートンに耳打ちすると三人はニヤリと笑う。
「それはいいな!」
「すぐにやるぞ!」
「バカ!タイミングを合わせるぞ!」
三人は「せーの!」の掛け声と同時に魔法の杖を発動。三本の杖は激しく輝きロボットの残骸を包み込んだ。
「なにかしら?」
ピーチ姫たちも警戒する前で光は広がりロボットの残骸が形を変え、そして先程よりも巨大なロボットになった。ルドウィックの顔がついた胴体はそのままにさらに強靭になった手足にロイ、モートン、ルドウィックそれぞれの色が入った甲羅を背負い、モートンを模した頭部にロイのサングラスがついていた。おでこの辺りに三本の魔法の杖が三角を型どってついている。
『ピーチ姫ぇ!』
ロボからルドウィックの声が聞こえてきた。
『今度こそ本気でお前を部屋にぶちこんでやる!』
『二度と出ようなんて思えないくらい徹底的になぁ!!』
『覚悟しやがれぇ!』
腕をぶんぶんと振り回し威嚇するコクッパロボ。ピーチ姫はロボを見て感心していた。
「ほんとクッパ軍ってロボットが好きねぇ、しかもそれを実現する科学力に加えて魔力技術も大したものだわ」
「敵を誉めてどうするんですか!?」
M・キノピオが焦りながらピーチ姫を咎める。それが聞こえたのかはなまた聞こえていないのかわからないが、ロボットを眺めながら意味深に呟いた。
「個性という点ではうちのキノコたちははるかに劣っているわねぇ…全く、うちのキノコたちときたら…」
「ひ、姫?」
M・キノピオを振り返ったピーチ姫の顔は笑顔だった。
「そ、早く片付けましょうか」
「…はあえ」
M・キノピオは何も聞かなかった事にした。