十数分後三人は次の部屋を見つけていた。次の部屋は先ほどと違い西洋のお城の王との謁見の間のようだった。奥のほうに階段がありその上の王座に一つ箱が置いてある。その王座に着くまでには少し長めの道かあり、両側の壁には大量の仮面がつけられていた。
「なんだか気味が悪いわ」
さすがのデイジーも気味の悪さに体を震わせた。一方のピーチはその仮面を歩きながらじっと見て「どこかで見たことあるような?」と呟いた。そして王座について箱を見てみると箱には鍵穴があった。
「鍵がかかってるわね」
「叩き壊す?」
「中に珠が入っていた場合壊してしまうかもしれませんわ。慎重にいきませんと」
「む~…じゃあ鍵を探す?」
三人は鍵を探し始めた。その間ピーチは先ほど感じた違和感の正体を考えていた。
「仮面…鍵…うーん何かを忘れているような気がするのだけど…なんだったかしら?」
そんなことを考えているとデイジーが声をあげた。
「鍵あった!」
デイジーの方を見ると(今のサイズでは)大きな鍵を掲げていた。その姿を見てピーチは思い出した。マリオたちと夢の世界を旅した時の事を
「デイジー!それを早く置いてそこから離れて!!」
「え?」
デイジーが首を傾げていると背後にあった仮面の一つが動き始め壁を離れた。
「やっぱりあの時の仮面の敵!」
何とかしようと走り出したがまだ体のサイズが戻っていないため間に合わない、レサレサも少し遠くて間に合わない。その間に仮面はデイジーの顔のサイズに変化し、顔に張り付いた。
「むぐぅ!?」
デイジーの顔が仮面で隠れた。
「何よこれぇ!」
デイジーは鍵を置いて仮面を取り外そうとするが取れない。ピーチも一緒に手伝おうと近づいた時、仮面の目がギランと光った。同時にデイジーがピーチを攻撃した。ピーチは咄嗟に受け止めた。
「へ?」
「デイジー?」
驚くピーチをよそにデイジーは攻撃を続ける。ピーチはそれをさばいてはいるが攻撃一つ一つにピーチへの殺意を感じた。しかしデイジー自身からは殺意を感じない、それどころか見るからに戸惑っている。
「体が…勝手に…動く!?」
「まさか仮面に操られているの?」
この攻撃はデイジーの意思ではないことは明白で攻撃も全く止まらない。はじめはデイジーの攻撃をさばいていただけだったがだんだん本格的な戦闘になりつつあった。
「………」
仮面に表情はなく何を考えているのかわからない。戦いは続き数分がたった。二人の攻撃がぶつかり合い二人を弾き飛ばした。しかしデイジーは止まらずピーチも構えを取り直す。
「お二人とも!これ以上は…!」
「止めないでレサレサ!」
デイジーがレサレサを止めた。やはり意識はハッキリ残っているようだった。
「デイジー?」
「今、この状況はよろしくないのはわかってる、味方同士の戦いだもん。でも、でもね?」
仮面の下から聞こえるデイジーの声は震えていた。心配になるレサレサ。
「デイジー…」
「でも、今私………めっちゃ楽しいの!!」
「デイジー?」
思わぬ言葉に名前を二度呼ぶレサレサ。一方のデイジーはうきうきワクワクといった様子だった。
「操られているのは正直残念だけどピーチと全力で戦えるのは嬉しいわ!お姫様っていう立場上スマブラみたいな理由がないと戦えないのよね、だから全力できてね!ピーチ!!」
「全くあなたは…しょうがないわね」
ピーチはアイテムBOXから袋を取り出しレサレサに投げ渡した。
「これは?」
「回復アイテムとかが入っているわ。もしもの時はよろしくね」
「……止めても無駄のようですわね」
「うん、ほんとのところ私も楽しみなのよね♪」
楽しげな二人にレサレサはあきれながらも「お怪我は最小限にしてくださいまし」と後の事は二人に任せてもしもの場合に備えることにした。そして二人の戦いが始まった。始めに動いたのはデイジーだった。といっても仮面に操られているのでその動きに自分の力をうまくのせて攻撃している。ピーチもアイテムは使わずデイジーの攻撃をさばきながら本気の攻撃を繰り返している。
「はぁ!せぃ!」
「おりゃ!とりゃあ!」
ピーチが右ストレートをデイジーの胸中央に向けて打ち込むがデイジーはそれを左手で受け止め右足でピーチの横っ腹を狙う、ピーチはそれを左足を上げて受け止めた。少しデイジーがバランスを崩したのを見計らって右手を引き抜きデイジーの足を掴んだ。
「いただき!」
「うわわわわ!」
そのままデイジーをぶん投げる。空中に投げ出されたデイジーを追うピーチ、地面に落ちる瞬間を狙うつもりだ。が、デイジーは空中で体勢を切り替えデイジーの花の形の障壁の足場を作りそこに立った。ピーチはそれに対応しようとブレーキをかけるがデイジーの方が行動が早い。足場を蹴りかなりのスピードで回転しながらかかと落としで狙う。ピーチは何とか直撃は免れたが、デイジーの攻撃には仮面の呪いの力も加わっていたのでその力が空気を切り裂きピーチの頬を軽くかすめてそこから血が流れる。
「くっ…」
さすがに距離をとろうと下がろうとした時、粉塵の中から手が伸びてきてピーチの腕を掴まえた。
「あ!」
「ふふふ…捕まえたわよ~」
デイジーが掴んだ手を思い切り引きバランスを崩すピーチを魔力を込められた左手が襲う。
「なんのぉ!」
ピーチは掴まれながらも思い切り上体を反らした。それはもう「骨ある?」と言ってしまうくらいに反らした。デイジーのパンチは空を切った。
「嘘ぉ!?」
「甘いわよ!」
驚いている隙に手を引き抜き上体を戻すと同時にデイジーに頭突きをかました。
「いったぁ~!!」
仮面越しにものすごい衝撃を受けたデイジーは痛みに呻いたが操られているので怯まず攻撃を返してきた。
「ちょっと!痛いんだから少しは気を遣いなさいよ!」
デイジーが少し抵抗したのもあって動きが少し鈍った。その大きな隙をピーチが見逃すはずもなくデイジーの手を担ぐように持つと勢いのまま投げ飛ばした。
「うわっちゃ!」
飛ばされながらも体勢を整えるデイジーに対してピーチはバットを取り出しさっきよりは少し大きくなった手で握りメタルにした野菜をかっ飛ばした。デイジーは避ける余裕があったのだがニヤリと笑うと右手に障壁を小さく展開しメタル野菜に叩きつけた。するとメタル野菜は簡単に弾けてミニメタル野菜になりデイジーに襲いかかる。
「あいたたたたた!」
慌てて避けるデイジー、避けることに夢中になっていたせいでピーチの接近に気づいてなかった。
「しまった!」
「ひゅっ!」
平手打ちを容赦なくデイジーの(仮面の上から)頬を打った。しかしデイジーはすぐに切り返してピーチと掴み合う形になった。
「うふふ…楽しいわピーチ!」
「私もよ」
本気の殴り合いをしているとは思えないほど爽やかなピーチとデイジー、レサレサはもう何度目かわからない呆れ溜め息をつきながらピーチから預かったアイテム袋から救急セットを出していた。
デイジーに取り憑いている仮面、『カメーン』は困惑していた。言葉を喋ったり感情があるわけではないが思考はでき自分がどういった存在で何をできるのかは理解している。故に現状に困惑していた。
カメーンは鍵を取った相手を追いかけ回すのが基本の動きで、この個体はカメックババの魔法で『取り憑いた相手を操る』能力を追加されている。そして操った相手を完全に操って意識まで支配してしまう………のだが、今回の相手は勝手が違った。
取り憑いても意識が消えなかった。たいていの人間はすぐに意識を奪えるのだがこの女は全く奪えなかった。次に戦いに関して、支配した体は完全に支配できるのだがその対象の魔法などの特殊能力は使えない。仮面が持っている“呪い”の力を攻撃に乗せることはできるのだが対象者の魔法などで強化等はできない。
だがこの女は自らの意思でタイミングを合わせて魔法で攻撃を強化している。そしてその行動もカメーンの混乱を招いている一因だ。この女、いやこの二人は明らかに今の状況を楽しんでいる。一歩間違えば死に至る戦いを楽しんでいる。意味がわからないことだった。
そしてそれらの困惑とは別に物理的な違和感がカメーンに徐々に広がっていた。
掴みあっていた手を放すと同時に近距離での攻撃の応酬が始まった。相手がパンチを繰り出せばそれを避けてパンチを返し、それを止められたのなら蹴りで応戦し、攻撃がぶつかって後ろに下がってもすぐに間を詰め再び攻勢を強めた。そのスピードはどんどん上がっていき一発一発はもはや見えない。しかし打ち合っている二人の表情は笑顔だった。しばらく打ち合っているとそれは起こった。
ビシッ!
仮面にひびが入った。先程のピーチの頭突きをくらった場所ではなく全く関係ないところからひびが入った。同時にカメーンの支配力も薄れてきていた。呪いの力が弱まってきたからではない、二人の戦いにカメーンがついてこれなくなってきているのだ。ひびはどんどん広がっていきやがて…
パリーン!
音をたててカメーンは砕け散った。これで完全に支配から解放されたのだが、二人は止まらなかった。それどころか必殺技の準備を終えていた。
「これでとどめよ!」
「それはこっちの台詞よ!」
にらみ合った二人の時間が一瞬止まりそして動き出す。
「はああぁ!」
「えぇぇ~い!」
「そこまで!ですわ」
レサレサがとあるアイテムを使った。地面が揺れて二人はスッ転んだ。
「きゃあ!」
「うわぁ!」
叩かれたブロックは“POWブロック”。叩いた瞬間地面が揺れて敵を倒すアイテム。普段のサイズのピーチとデイジーなら少しバランスを崩す程度なのだが、今のサイズだともれなくスッ転ぶ。
「あいたたた…」
「もぉぉ~い!いいとこだったのに、あれ?」
デイジーは自分の顔を触って確かめた。そこにあるはずの仮面がなかった。
「やった!取れた!」
喜んでピーチの手を取る。ピーチも安心したように笑った。
「よかったわ、気づいてたけど」
「気づいてたのに最後の攻撃をぶつけようとしたんですの?はぁ~…もう慣れましたわ。とりあえずお二人の怪我を治療いたしますわ」
レサレサは慣れた手付きで二人の傷を治療した。
「手際いいね~」
「幼い頃からあらゆる事を学んできましたから」
「おばけが治療?」
「迷いの森の屋敷の主として森で迷って怪我をした人を治療することもありますからね。あとこれも取っておきましたわ」
そう言って取り出したのは例の珠だった。
「いつのまに!」
「お二人が戦っている間にですわ。もう本当に周りが見えていなかったのですわね」
レサレサが緑色をした珠を二人の近くに置き、二人はその珠に触れた。するとさっきの珠と同じように光りが二人を包み込み、光が収まると珠は消えて二人の体がまた少し大きくなっていた。元の大きさの半分より少し上くらいになった。
「やった!かなり大きさが戻った!」
「でも…なんでわざわざ律儀に珠を取る度に体が大きくなるのかしら?」
「どういうこと?」
「私を捕らえるのが目的なら小さいままの方が都合がいいのに」
「確かに…」
考え込むピーチとレサレサ、しかしデイジーはあまり深く考えない。
「それはあれだよ、チャンスをくれてるんだよ!」
「チャンス?わざわざ?」
「もう!考えててもしょうがないじゃない!先に行くわよ」
プリプリしながら先に部屋を出ていくデイジー。ピーチとレサレサは苦笑するとデイジーの後を追っていった。