すぐに気絶した二人の治療が行われた。幸いにも二人はおでこから出血していたくらいで助かった。今は即席のベッドの上で寝かしている。細かい治療はノコヤン(弟子)にまかせて最後の試合の準備が進む。
「戦績はピーチ姫側が一勝一分け、次に私が勝たないと敗けが決定するな…うむ!追い詰められた!」
「その割に楽しそうですけど?」
「追い詰められるほど燃えるものだよ。それに、私は負けないからね」
「あら、油断していると足元をすくっちゃいますよ?」
お互いに牽制しながら構える。そして、戦いのゴングが鳴り響いた。
「やああぁ!」
先に動いたのはピーチ姫だった。動くのが遅れたジャッキーは動けずに固まっている。先手を取れた…はずだった。
「!!」
ピーチ姫は攻撃を止めて右側に飛び退いた。するとさっきまでピーチ姫が居た場所にジャッキーの攻撃がかする。目の前にあったジャッキーの姿が霞んで消えた。
「あっぶなぁ」
目の前にあったのはジャッキーの残像で本体はすでにその場におらず攻撃をしていた。ピーチ姫はそれに寸前で気付き何とかかわした。
「ほぉ、さすがピーチ姫だ」
「そちらこそ」
距離をとりながら動き続けるピーチ姫、ジャッキーから目を離さずにいたのだが…
「!」
一瞬で目の前まで距離を詰められる。ジャッキーは動き出しのモーションがなく、動きが見極めにくいので反応するのが難しい。
「くっ!」
とっさにガードするピーチだかジャッキーはそれを読んでいた。一瞬で背後をとられる。
「てつざんこう」
ジャッキーの刃のようなとさかがピーチの背中にくい込む。
「いっぎ…!」
歯を食い縛り痛みを堪える。ジャッキーはそのまま頭をふりぬきピーチを弾き飛ばす。飛ばされたピーチは体を捻って着地、そしてすぐにその場から離れる。離れたその場所にジャッキーの拳が飛んでくる。
「うっわ!?」
避けると同時に障壁をはる。強めにはったのでジャッキーの追撃は防げているが時間の問題だ。ピーチは障壁が壊れるタイミングを見極めながら熟考する。
(ジャッキーさんはただでさえ体が小さくて捉えにくいのに気配を完全に消すものだから姿を追いかけるだけで精一杯、リーチを生かして戦おうとしてもあの短い手足なのにリーチの差をもろともしない、しかも距離をとっても一瞬でつめてくる…そもそもモンスタウンで倒したのも3人がかりだったし…)
障壁にヒビが入る。まもなく障壁が壊されるだろう。
(私も出し惜しみはしていられない、ここで負けて元の部屋に戻るなんて絶対嫌!)
アイテムBOXを探るピーチ。
「全部を使って絶対勝つ!」
「フフフ!それでいいぞピーチ姫!!」
障壁が割れる。ジャッキーの攻撃がピーチを襲う。しかし同時にピーチはゴルフクラブでそれを受け止めた。
「はあ!」
ゴルフクラブを振り回しジャッキーを狙う。ジャッキーは簡単に避ける、ピーチは端から見るとかなり適当に振り回していた。普通の敵なら近づいたら叩き倒されるがジャッキーは一点の隙を見つけていた。
(適当に振り回しているようで攻撃は常に相手の動きに対応できるように動いている。だが、甘いな、一点だけ隙がある)
それはピーチの右脇腹の辺り、普通に見るとわからないが少し攻撃が薄くなっている場所があった。
(ピーチ姫のクセかな?無意識にやってしまったいるのだろうな)
ジャッキーは少し後ろに飛び退いてその隙をめがけて攻撃に転じる。その速さで一気に距離をつめるが違和感を感じた。
(まてよ、なぜ一ヶ所だけなんだ?武器を出す前はそうじゃなかった……まさか!)
ジャッキーは空中を蹴り軌道を変えてピーチから離れた。ジャッキーがまさに飛び込もうとしていた場所にゴルフクラブの先が振り下ろされていた。
「あえて一ヶ所だけ攻撃をずらしわざと隙を作って私を誘い込んだのか、いやはや危なかった!」
「バレましたか、でも…」
ピーチはニヤリと笑うと指をパチンッ!と鳴らした。同時にジャッキーの背後がパッと光りピンクに光る鎖が現れてジャッキーを捕縛した。
「む?」
「さあ、こっちへきなさい!」
ピーチの手元にも鎖が握られていてそれを引っ張るとジャッキーがピーチの方へ引き寄せられる。その軌道に合わせてピーチはフライパンを構える。
「私を甘く見すぎだ」
ジャッキーは鎖からあっさり抜け出した。しかしピーチはニヤリと笑った。ピーチのフライパンの前とジャッキーの真上に同じ魔法陣が現れた。ピーチのフライパンが魔法陣に入り同時に真上の魔法陣からフライパンが出てくる。
「そーれ!」
ほぼゼロ距離で振り下ろした。しかしジャッキーは頭のとさかで受け流す。空振りになったピーチに少しスキができる。この程度のスキなら簡単にフォローできるのだが相手は本気のジャッキー、一瞬がまさに命取りである。
「“てつざんこう”」
とさかの一撃がピーチの脇腹にヒットした。
「かはっ」
一瞬後に激痛と衝撃が襲う。吹き飛ばされた先にジャッキーが先回りしている。
「“ジャッキーラッシュ”」
飛び向かってくるピーチを右パンチで受け止めラッシュをうつ。2発目までは受けてしまうが3発目で体勢を立て直しなんとか受け流し再び距離を取るが受けたダメージがかなり強く膝をつきそうになるがアイテムBOXから1UPキノコを取り出し食べる。ダメージは回復したが、疲労は消えない。
「ふぅふぅ、やっぱり強いですね」
「ふふふ…ピーチ姫もな、あの時は3人がかりだったのに今は1人でここまでやるとは」
「あら、ありがとうございます」
感心するジャッキーにお礼を述べるピーチ、しかしこのままでは勝つのは難しいこともわかっている。
「もう、遠慮とか出し惜しみとか考えてる場合じゃないわね」
ピーチはアイテムBOXからアイテムを取り出す。ジャッキーはそれを黙ってみているわけはなかった。
「アイテムは自由に使ってくれたまえ、どうしてもできてしまうスキに気をつけてな」
迫るジャッキー、ピーチは使うアイテムを決めていたので変身はすでに終わっていた。服の色がピンクから白を基調にした色に変わっていた。
「ファイヤボール!」
ピーチの手から火の玉が数発出る。ファイヤフラワーを取ったマリオの技そのものだった。だが、そんなものを数発だしたところでジャッキーに当たるはずもない。しかし避ける動作はやらなければならずそこに少しのスキがピーチの動く時間に繋がった。ファイヤボールを打ちながら逃げ回る。しかしジャッキーはその動きを不信に思い少し動くのを躊躇する。その躊躇を狙っていたピーチは一気に跳躍すると何百もの火の玉を空中に出現させた。
マリオがファイヤフラワーを使っても一度に2.3発しか出せないが、魔法が使えるピーチが使えばこういったこともできる。
「くらいなさい!」
すべての火の玉がジャッキーを狙うが…
「そういった攻撃には慣れている」
ジャッキーは迫る火の玉の雨を睨み付け力を込める。
「“きはくアップ”」
ジャッキーの体を光が包み込み攻撃力が上がる。迫る火の玉にジャッキーはパンチを一発。その一発が衝撃波を発し一度に十数発が暴発する。その攻撃を超スピードで何発もくり出し向かってくる火の玉をすべて弾き消す。煙がジャッキーを包む。
「派手な攻撃は当てるつもりはないようだ。目的はこの煙による視界の妨害、ならピーチ姫の目的は…」
ジャッキーが後ろを振り返るのとピーチが煙を掻き分けて突っ込んでくるのとは同時だった。
「“てつざんこ…”」
物理攻撃で応戦しようとしたジャッキーはピーチの姿に違和感を感じた。ピーチの体が…
(透けている?)
周りを包む煙のせいか?その思考がジャッキーの攻撃を躊躇わせた。ピーチの
「背後を取るのが目的だったのか?だとしたら愚策だな、私の背後にスキはない」
ジャッキーの攻撃はとさかのような部分からくり出されるものもある。つまり背後への攻撃には長けていた。
「これで終わりだな“しゅうしけん”」
ジャッキー必殺の即死技がくり出される。
「いま!」
ピーチはピンクゴールドを解除した。
(なに?)
ジャッキーは訝しく思ったが攻撃の手は止めない。ジャッキーの攻撃はピーチのお腹をとらえようとしている。
「くっ!」
ピーチは体をひねりそれをかわそうとしたが避けきれず横腹の服が少し破れ肌にも傷が入った。だがダメージは最小限に抑えられた。それはジャッキーには予想外のことだった。
(“しゅうしけん”をかわされただと?)
ジャッキーは戦いのプロである。今の強さを手に入れるためにあらゆる経験を積んできた。このピーチの攻撃も二手三手と先読みし今のような回避も考慮しての攻撃だった。しかし外れた。
(なぜ?…いや、そうか…)
一つだけジャッキーにとって予想外の行動がおきていた。それは“メタル化の解除”。ジャッキーはピンクゴールド状態のピーチで行動の先読みをしていた。故に解除がおきたことでピーチの体積やスピードに若干の変化が起こり攻撃が外れた。
ピーチの手が隙だらけになったジャッキーの体をつかんだ。
(それだけじゃないな)
おそらくジャッキーが“しゅうしけん”を使うのも誘導されてのことだったのだろう。“しゅうしけん”は即死技。威力が強くジャッキーが使うと発動の隙もないが、使った後はさすがに少しスキができる。
「メタル化が無敵状態だと知っていたからこそ無敵状態でも通用する“しゅうしけん”を選択してしまった。だがこれくらいならば…?」
ジャッキーが拘束を解こうとした時、妙な違和感を感じた。ピーチの中に感じたのは“黒い気配”。
(なんだ?この気配は?)
ピーチの中に感じるはずのない気配に気を取られてしまったジャッキー、ピーチは勢いそのままに右手を握る。
「そりゃあぁぁぁ!」
そのままジャッキーの顔を殴り飛ばした。
「……!!」
ジャッキーの小さな体が吹き飛ばされた。
(しまった…集中を欠いてしまうとはまだまだだな…)
壁まで飛ばされれば場外でアウト。壁までは残り数秒だが、ジャッキーは空中で思い切り蹴りを放ち、空気を蹴った。その反動で壁への勢いを相殺し戻ろうとした時目の前、周囲には大量の爆弾。
「たたみかけるな、勝負を決める気か」
ジャッキーは空気を蹴り爆弾が飛んできていない上へとジャンプした。そこにはピーチがフライパンを構えて待っている。あえて一ヶ所だけ爆弾を散布せずジャッキーの動きを誘導したのだ。しかしジャッキーもその事は読んでいる。
「動きを読まれる前提で動いているか、まぁ確かにこの状況ならこちらが使える技は限られる」
敵の背後に回るか背中を見せる必要のある即死技“しゅうしけん”などは使用できない。力をためる必要がある“はどうだん”も地面を踏み込む必要がある“さんかくげり”も現状は好ましくない。
「この場では“ジャッキーラッシュ”が最適解かな、そして」
ジャッキーの体が視認できないくらいの間隔と早さで赤と青に煌めく。“こんじょうアップ”と“きはくアップ”を重ねる。
(これでこちらの勝ちだ!)
その瞬間、ピーチと目があった。それはほんの一瞬、しかしその一瞬が勝敗を分けた。
ジャッキーはピーチの瞳に確かに見た。先ほどは気のせいだと思っていた“黒の気配”。それを視認した瞬間、ジャッキーのバフは消えピーチの攻撃がクリーンヒットした。
「がっ」
ジャッキーはそのまま壁まで叩き飛ばされ決着がついた。
「見事だった」
先程までギリギリの戦いをしていたはずのジャッキーはケロリとしている。それを見たピーチはため息をついた。
「そんなにケロッとされると勝った気がしませんね」
「ほんと強かったねぇ」
ノコヤン(弟子)が出してくれたスターが描かれたドリンクアイテムを飲みながら元気になったデイジーが目をキラキラさせる。
「とにかく、これで君たちはこのクッパ城から脱出できるわけだ」
ジャッキーに言われてピーチはその事を改めて実感する。
「そういえばそうなのよね、ここが最後の関門だものね」
「まぁマリオからしてみたら最初にして最大の関門ですけれどね」
レサレサがセンスで自分を扇ぎながら浮かんでいる。ジャッキーは一緒にくつろいでいるウェンディに確認を取る。
「君も依存はないかな?」
「あたいは負けた身だからね、文句はないし報告もしないよ」
ぶっきらぼうに答えてそっぽを向いた。その答えに満足そうに頷くとジャッキーは出口の扉を指し示す。
「とてもいい戦いだった!さあ、ゴールはあちらだ」
ジャッキーに促されピーチ、デイジー、レサレサは立ち上がってそれぞれ対戦相手と握手をかわし出口へ向かった。
「それじゃあまたどこかで会いましょう!」
ピーチは外へとつながる大きな扉を開け外へと足を踏み出した。