ピーチ姫の脱出大作戦   作:長星浪漫

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w8-2b「過去からのボス」

 デイジーとレサレサは何もない広い空間に飛ばされていた。2人を見下ろすようにカメックババが浮いている。

 

「ヒーッヒッヒ!!お前たちの相手はわしがしてやろう!」

「あなたが?私たち二人を相手に出きるかしら?」

「ワシ一人で相手をするわけなかろう?お前たちの相手はこいつらじゃ!」

 

 カメックババが杖を掲げると金色の光が溢れ広がった。その光に反応するようにデイジーとレサレサの体も輝きだした。

 

「え!?なにこれ!」

「まさか、攻撃?」

 

 しかし、二人の体に特に変化はなく光は体から離れて二つの球体になりカメックババの前に浮かぶ。

 

「これはお前たちの“記憶”じゃ」

「私たちの“記憶”?」

「そう、お前たちの記憶に最も深く刻まれた敵の…な!」

 

 光は形を変えていき実体となる。その姿にデイジーとレサレサは息をのんだ。

 

「タタンガ…?」

「ドガボン…ですの?」

 

 光が実体になり姿を現したのはかつてデイジーの故郷サラサランドを侵略しデイジーをさらった宇宙人の“タタンガ”と迷いの森と近くの荒野でテレサを無差別に食い漁っていた不死身の体を持つ“ドガボン”、その二体が二人の目の前に降り立った。

 

「ヒヒヒ!お前たちにはトラウマな相手じゃろう?」

「そ、そんなことないわ!」

「心なしか声が震えておるぞ?ヒヒ」

 

 カメックババは愉快そうに笑う。

 

「さてしかし、共闘や戦う相手を交換して戦われては意味がないからのぉ、ホレ!」

 

 カメックババの掲げた杖から光がほとばしりデイジーとタタンガ、レサレサとドガボンを障壁で囲んだ。

 

「しまった!」

 

 デイジーが障壁を殴るがびくともしない。レサレサもすり抜けようとしたができなかった。カメックババはケラケラ笑う。

 

「ヒーッヒッヒッヒ!無駄じゃ無駄じゃ!ワシの渾身の魔法障壁じゃからの!(しかし、記憶のボスの召喚とこの障壁の維持が大変で攻撃はできそうにないわい)」

「くっ、レサレサ!大丈夫!?」

「…えぇ、多分」

 

 いつも強気なレサレサが少し弱気になっている。以前現実のドガボンを倒しているとはいえ、その時はマリオたちと一緒だったしドガボンも不死身ではなくなっていた。

 

「問題はこのボスがどれくらい再現されているのか?ですわ」

「確かに…」

 

 タタンガはマリオにサラサランドから追い出された後ワリオの下についたとも聞いている。果たして二人の記憶だけを再現したのか、それともその記憶にカメックババの魔法による追加要素があるのか、それがわからない。

 しかし、それを考えている暇などあるわけがなかった。

 

「「!!!」」

 

 タタンガとドガボンが襲いかかってきた。二人は即座に回避行動をとった。

 

 

 

 タタンガと向き合うデイジー、頭にはかつてさらわれた時の記憶がよみがえっていた。タタンガは大きな球状の物体をいくつも発射した。デイジーは少し遅れて防御に使っているいつものデイジーの花の形の障壁を手裏剣のように投げ球に当てるが、その瞬間に球は三つに分かれる。

 

「くっ…」

 

 デイジーはなんとかかわしきった。明らかに動きがおかしい。

 

(もしかして私怖がっているの?…うーん、少し違う?でも心に違和感を感じるわ)

 

 目の前のタタンガの乗る宇宙船から三日月の形をしたビームカッターが飛んできた。デイジーはそれをなんとかかわしながらタタンガの姿や宇宙船を見る。その姿は記憶にあるものよりも強大で凶悪になっているように感じた。

 

(なんなの?この感じ…)

 

 サラサランドに来た時の巨大宇宙船とワリオについていた時の小型宇宙船を合わせたような外観に加えて当時はついていなかった兵器もついているようだ。今も触手のようなアームがこちらに狙いを定めている。

 

(やっぱりこれは…!)

 

 定められた触手の先からレーザーが放たれた。一発二発と回避し、三発目は障壁で受けきった。しかし、障壁を解除したとき目の前にタタンガの宇宙船が迫っていた。コックピットのタタンガと目があった。

 

「!!」

 

 デイジーは目を見開いて固まった。そこに今度は大きなグローブがついたアームが出てきてデイジーに襲いかかった。

 

(あぁ、そういうことか…)

 

 デイジーは今まで感じていた心の違和感の正体を悟った。

 

 

 

 カメックババは高みからニヤニヤと眼下の戦いを見ていた。

 

「ヒーッヒッヒッヒ、予定どおりじゃ二人にとって最も因縁深い相手を戦わせれば有利に戦えると思っておったがここまでうまくいくとはのぉ!さらにワシの魔法で強化を加えて完璧じゃ!さて、テレサの娘の方もてこずっておるようじゃの」

 

 

 

 レサレサはドガボンの攻撃をかわしながら声高々に叫んでいた。

 

「ドガボン!おやめなさい!」

 

 なんども呼び掛けるが答えることはなくドガボンはレサレサの記憶よりも太く長い腕を振り回しレサレサに襲いかかる。

 

「くっ」

 

 レサレサはすり抜けや身体変化を駆使してかわし続ける。デイジーと同じようにいつもより動けていないようだ。

 

「やはりあれはドガボンのニセモノのようなものなのですわね」

 

 少し高いところに避難しているレサレサを見上げながらドガボンは手に持った何かを口に運んだ。

 

「!!…本当に趣味が悪いですわ」

 

 ドガボンの手に握られていたのはテレサだった。恐らくそれもレサレサの恐怖をあおるための幻なのだろうが見ていて気分のいいものではない。

 

「早くこの戦いを終わらせなければ…ピーチのことも心配ですわ」

 

 考えていると目の前にドガボンが現れた。

 

「へ?」

 

 ドガボンの攻撃範囲外にいて油断していたレサレサはポカンとなって咄嗟に反応できなかった。

 ドガボンの拳がレサレサをとらえた。

 

「きゃあ!」

 

 ギリギリセンスで防御したが勢いよく下に落ちていく。

 

「うぅぅ!」

 

 必死にブレーキをかけて止まったが上からドガボンが降ってくる。

 

「ぐぅ!」

 

 すり抜け状態になりながら回避して距離をとるがドガボンは着地と同時にすごいスピードでレサレサをおう。

 

(なんですのこの身体能力は!?)

 

 レサレサの記憶のドガボンよりも明らかに動きが速すぎる。カメックババの魔法による強化によるものだ。これに加えて“不死身”も再現されていた。レサレサはなす術もなく逃げ回るしかなかった。

 

(今は逃げ回るしかありませんわ…ん?)

 

 その時、不意に疑問が心に浮かんだ。

 

(わたくしが、逃げる?)

 

 周りの時間がスローモーションのように感じ始める。

 

(わたくしが、恐怖を感じて逃げる?おばけのわたくしが?)

 

 チラリと後ろを見ればドガボンがこちらを追ってくる。嬉しそうに楽しそうに

 

(かつてはわたくしたちに怯えていた相手にわたくしが怯えて逃げる?)

 

 レサレサは止まり振り返る。ドガボンはチャンスとばかりに大きな口を開けて飛び付いてきた。レサレサは迫り来る“恐怖”をしっかりと見据えて呟いた。

 

「そんなの、まっぴらですわ」

 

 レサレサの頭にはドガボンの口が被さりドガボンはむぐむぐと租借した。しかしやがて口の中に何もないことに気づいた。辺りをキョロキョロとしていると後ろから声が聞こえてきた。

 

「ほんと、まっぴらですわ」

 

 後ろを振り返ると人間の姿になったレサレサがセンスで顔を隠しながら立っていた。

 

「おばけの身でありながら、誰かに恐怖を感じるなんてありえませんわ」

 

 ドガボンはレサレサを捕まえようと手を伸ばすが捕まえたと思ったらやはりそこにはいない。先ほど殴れたようにすり抜けはもうドガボンにはもう効かない。それでもレサレサはドガボンの攻撃をかわしていた。ドガボンは状況が飲み込めず困惑する。レサレサはセンスから少し顔を出しドガボンを見据える。

 

「何がなんだかわかりませんかしら?それはそうですわ、わたくしたちおばけというのはそういうものですから」

 

 少しずつレサレサは顔をだしていく。

 

「今、わたくしの目の前にいるあなたはかつての不死身とかつて以上の力があるようですわね」

 

 少しずつ少しずつ顔をだしていく。

 

「感情も再現されているのかしら?いえ、仮に再現されてないとしても…」

 

 レサレサの顔からセンスが離れた。その表情にドガボンはピクリと反応した。

 

「“恐怖”というものをわたくしが教えて差し上げますわ」

 

 センスから現れたその顔は人間の顔なのに口がテレサのように大きく裂けて笑みの形になっていた。

 

 

 

 

 一方デイジーにパンチアームが迫っていたがデイジーはわずかな動作でそれを止めていた。タタンガは驚いた顔をした。その様子を見たデイジーの表情からは先ほどまでの戸惑いも恐怖も消えていた。あるのはサンサンと輝く闘争心だった。

 

「ずっとあんたに感じていた違和感の正体がやっとわかったわ、恐怖でもトラウマでもなかった」

 

 タタンガは必死にアームを引っ込めようとしたが肉体強化魔法をかけた握力で止める。

 

「逆だった。恐怖を感じていたんじゃなく恐怖を“感じてなかった”んだわ」

 

 カメックババによって再現されたタタンガは昔よりもより凶悪になっていたが、デイジーは全く恐怖を感じなかった。それが逆に違和感に感じ混乱していたのだ。

 あの日以来たくさん旅をし、たくさん戦い経験を積んできたデイジーは自信に満ち溢れていた。なんならタタンガよりも強大な敵と相対したこともある。そんなデイジーにとってタタンガはもはや過去の存在になっていた。

 

「私はもうあんたに怯えないわ」

 

 アームを握りつぶし手をはらった。

 

 

 

 二人の突然の豹変にカメックババは口をあんぐり開けていた。

 

「な、何がどうなっているんじゃ?」

 

 デイジーはタタンガをやんちゃな笑みを浮かべて見据え、レサレサはドガボンを悪魔のような笑みで見る。二人はほぼ同時に言葉を発した。

 

「今の私の全部をぶつけて過去のトラウマを物理的に叩き潰す!!」

「楽しみですわぁ、あなたの顔と心が恐怖に塗り固められるのが」

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