ピーチ姫の脱出大作戦   作:長星浪漫

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w8-3b「反撃のおてんば姫と調教のおばけ令嬢」

 デイジーは突進した。タタンガが放つ様々な攻撃をピーチを越える野生の勘でどんどんかわしていく。攻撃が紙一重のところでかわされ続けタタンガは焦りの表情を見せた。それを見てデイジーはさらに活気づく。

 

「にひひ!覚悟ぉ!」

 

 あっという間にコックピットのガラスまでたどり着き拳を握りしめる。ありったけの魔力を込めたその拳は明るいオレンジ色に輝いた。

 

「そりゃあ!!」

 

 叩き込まれた拳はコックピットにひびをいれた。

 

「!!?!」

 

 真っ青になったタタンガは慌ててデイジーから離れた。ひびはすぐに治った。

 

「ありゃ、ダメージが残らないか。でもひびが入ったってことはダメージ自体はあるはずよね」

 

 ペロリと舌をだし目をギラリと光らせる。

 タタンガは破裂弾を連射してきたデイジーに届く前に破裂し火の玉が放たれ接触するとさらに花火のように破裂する。

 しかし完全にトラウマを払拭しているデイジーにはなんてことなかった。破裂弾は厄介ではあるが直線にしか飛んでこないので避けるのは容易い。右に左に時には上に避けながらあっという間にタタンガの側に近づく。タタンガは上に逃げながらアームを伸ばしてくる。それは悪手だった。デイジーはそのうちの一本を脇に掴み思い切り引っ張る。焦ったタタンガも負けじとエンジンをふかせて綱引き状態になる。

 

「持久戦は望んでないのよね」

 

 デイジーはネコミミがついたベルを身に付けた。すると姿が変化しネコデイジーに変身した。そして手を離す。急に離されたタタンガは吹き飛ぶような勢いで飛んでいく。ネコデイジーはさらに上がった動体視力と瞬発力でアームに飛び乗ってコックピットまで一気に走る。制御を失っているタタンガは対応できずただデイジーを目でおうしかできなかった。

 タタンガの真上にきたデイジーは獣のようにニタリと笑うと拳を叩き込んだ。一撃ではヒビが少し入るだけ、なので全く同じ場所に素早く連続で何度も何度も叩き込んだ。宇宙船が激しく振動し何とかしようにもタタンガはうまく操作ができない。

 そしてとうとうコックピットを守るガラスが派手に叩き割られた。驚愕に見開かれたタタンガの目、それを見てデイジーの心は燃えたぎる。

 

「ニャヒヒ♪さ~ぁ、ここからいくどんどんニャン♥️」

 

 

 

 ドガボンは困惑していた。カメックババによって再現されたこの2体には確かに感情まで再現されていた。しかしそれはマリオに打ち負かされる前の精神状態で再現されている。タタンガはサラサランドを侵略した時の精神状態でドガボンは不死身だった時の精神状態で再現されている。しかも今のドガボンは完全なる不死身の状態なのだ。それなのにドガボンは目の前のたった一人しかいないテレサの少女に少しの恐怖を感じていた。

 

「ウフフフフフ…」

 

 レサレサは心から今の状況を楽しんでいるように笑う。

 

「さてさて、あなたは恐怖を感じた時にどんな表情をするのかしら?」

「!!」

 

 ドガボンは反射的に拳を振り下ろしていた。レサレサは笑みを浮かべたまま避けずに拳を迎えた。ドガボンの拳は地面にめり込んだ。レサレサはそのすぐ横に移動してドガボンの腕に触れていた。

 

「あのカメックのおばあさんの力かしら?あなたの攻撃に対して“すりぬけ”は効かないようですわね?でもこの空間には魔力が満ち溢れていますわ」

 

 レサレサがニヤリと歯を見せて笑うとドガボンの腕がきれいに切れ落ちた。

 

「!?」

 

 ドガボンは驚きの表情をしたが腕はすぐに生えてきた。

 

「あらあら、便利な腕ですわね」

 

 感心したようにレサレサは再生されたドガボンの腕をポンポンと叩いた。

 

「…なら、何度切ってもいいですわよね♪」

 

 またドガボンの腕が切り落とされた。

 

「!!」

 

 ドガボンは腕を振るって逃げる。レサレサはぴったりとドガボンについていった。

 

「本来のわたくしはこんなことはできませんわ」

 

 レサレサはドガボンに語りかけた。

 言葉の通りレサレサには本来こんなことはできない。しかしそれは“生きた相手”に対してのことで今のドガボンは少し違う。

 

「今のあなたは実体ではあるものの、あくまでわたくしたちの記憶から作られた存在。つまりどちらかというと“おばけ”に近い存在、“実体のあるおばけ”なのですわ。つまり今のあなたの体を型どっているのはほとんどわたくしと同じようなもの…でしたら」

 

 レサレサがドガボンに触れると今度は右足が切り落ちた。バランスを崩したドガボンは転んでしまうが切られた足はすぐに再生した。しかし、その顔には徐々に恐怖がうかびはじめていた。

 レサレサは人間の姿になり人差し指をアゴにあてて少し考えるような仕草をした。

 

「うーん、切るばかりでは芸がありませんわね」

 

 隙ができたレサレサ、ドガボンはその顔にめがけて拳を放つ。その拳をかわすように人間状態のレサレサの顔がグニャリと歪み拳をよけた。そのまま腕をつたいドガボンの顔まで上がりその顔を優しく撫でる。

 

「顔を吹き飛ばしたらどうなるのかしら?」

 

 ドガボンの顔がどんどん膨らんでいく。レサレサはヒラリと離れ、ドガボンは何とかしようとするがどうにもならずその顔は激しく吹き飛んだ。そしてすぐに回復する。そのさまを見てレサレサはクスクスと笑う。

 

「あらあら便利な体ですわね、本当に完全なる不死身なんですわね」

 

 ドガボンは口を開いた。その動作は見たことがなかったのでレサレサは首をかしげた。するとドガボンの口の中から紫色の炎が吐き出された。

 

「!」

 

 咄嗟にレサレサは身をかわしたが少しリボンが焦げてしまった。それを見てレサレサは目を見開き驚きの表情を見せる。それを恐怖の感情ととらえたドガボンは口を大きく開けて笑った。

 

「何を笑っているのかしら?」

「!!!」

 

 その地の底から響いてくるような冷たい声にドガボンはまたまた体を硬直させた。周りの空気が一気に冷えていく。寒さを感じないはずのドガボンも震えてしまっていた。そんなドガボンを見据え、レサレサはまるで冷気を吹きかけるように言葉を発する。

 

「少し遊びすぎましたわ、一気に仕上げてしまいましょう」

 

 レサレサは無表情で両手を前にあげると辺りの空気が渦を巻き始めた。

 

 

 

 タタンガは急いで“緊急変形ボタン”を押した。すると宇宙船が変形を始めやがてロボットの形になった。その過程でデイジーは振り落とされた。

 

「ちょ、なによそれ!?始めて見るんだけど!」

 

 と言いながらもデイジーは楽しそうに笑っている。タタンガの宇宙船の下に胴体のような部分がつき、そこから手足が生え体の各所から先程よりも多くの兵器が取り付けられている。さらに先程開けたコックピットのガラスはさらに強い強化ガラスにかわっていた。

 タタンガロボは両肩の砲台からランチャーを連発した。デイジーはなんなく避けながら近づいていった。タタンガロボはデイジーが避けるのも計算してロボアームによる攻撃を連打する。しかし今のデイジーはハイになっている上に色々と覚醒しているので、ミサイルを避けた先に飛んでくるパンチをギリギリでかわしながらその拳を利用して逆方向に飛んで次の攻撃をかわす。隙間なく攻撃しているのに全く当たらないので焦りと苛立ちが募っていくタタンガ。そしてそれはやがて隙を生み出す。

 デイジーに攻撃を当てることだけに集中していたためデイジーの動きまで意識がまわっていなかった。デイジーがロボアームの攻撃をかわしたその時パンチの軌道にタタンガロボのコックピットがあった。

 

「!!」

 

 止めようとしたがすでに間に合わない、パンチはそのままタタンガロボのコックピットを思い切り叩く。強化ガラスで壊れはしなかったが衝撃までは止められず揺れてぐらつく。ロボ全体が停止し、その間にデイジーはコックピットに飛び付く。右手を握りしめオレンジと金色の魔力をまとわせる。

 

「“ディジィー…ストラーイク!!”」

 

 目では確認できないくらいのスピードで拳を振り下ろした。その一撃は強化されているはずのコックピットのガラスに一撃で穴を開けた。このままじゃヤバいと思ったタタンガは自分の安全よりもデイジーを倒すことにシフトした。アームと武器をデイジーに向けようとしたのだが、

 

「邪魔よ」

 

 手にまとわせた魔力を砲弾のように打ち出した。それは一気に巨大化しアームと武器を凪払う。タタンガはその圧倒的なパワーに驚愕するしかなかった。攻撃を放ったデイジーは少しふらついた。

 

「ふぅ…、やっぱり細かい魔法のコントロール苦手だわ、無駄に使いすぎた」

 

 タタンガは今のうちに脱出して体制を立て直そうと脱出ボタンを押そうとしたがその腕をデイジーが掴んだ。震えながら見たデイジーの顔は満面の笑みだった。

 

「まぁでも、あなたに遠慮はいらないわよね♥️」

 

 デイジーの拳がタタンガの顔面にめり込んだ。せまいコックピット内でタタンガの体がボールのように弾みデイジーはタイミングを見計らって下に殴り付ける。その間に強化ガラスが直り密室に二人の構図になった。デイジーはなかなか起き上がらないタタンガの様子を伺うようにしゃがんだ。

 

「終わっちゃった?」

「………!!」

 

 不用意に近づいたデイジーにタタンガは隠し持っていたレーザー銃を取り出し目にも止まらぬ早さで引き金を引いた。

 しかしレーザーはあらぬ方向に飛んでいった。タタンガが引き金を引くよりも早くデイジーはその手を払っていた。呆然とするタタンガが握ったレーザー銃をデイジーは握り、そして潰した。

 

「まだ戦う意志があるようでよかったわ、戦意がない相手をボコるのは少し気が引けちゃうから」

 

 タタンガは理解した、もう勝ち目はないのだと。タタンガは全てを諦め無抵抗だった。そしてタタンガは完全に消滅した。

 

 

 

 レサレサの周りを冷気が渦巻く、氷の魔法ではなく霊的な能力である。ドガボンは体が固まったように動かなくなっていた。レサレサは人間体を保ちながら焦げたリボンを触る。

 

「…このリボンお気に入りなんですの…」

 

 リボンはレサレサの一部ではないので直すことはできない、しばらくリボンをいじったあと無表情でドガボンを見下ろす。

 

「お気に入りなんですの」

 

 二度そう言うと同時に辺りの雰囲気が一変する。レサレサとドガボンが真っ暗な空間に包まれた。ドガボンは驚きあたふたする。不意にレサレサがセンスを横に振るった。するとドガボンのすぐ近くに大きなセンスが急に現れレサレサの動きにあわせてドガボンを吹き飛ばす。

 

「!?!!」

 

 何もできないまま吹き飛ばされ地面を数回バウンドしてやっと止まる。それと同時にレサレサが手で押さえつける仕草をするとドガボンの真上に巨大な手のひらが現れてドガボンを押し付ける。ドガボンは不死身でダメージはほとんどないが、世界最強の力持ちというわけでもない。しかしレサレサは素の力は強くない、だがドガボンは動けなかった。

 そんなドガボンの目の前に降り立ったレサレサはドガボンを見下ろす。

 

「この空間はわたくしが作り出した空間ですの、おばけが出たときに周りの人間がいなくなったりするでしょう?これもおばけの能力、まぁキングテレサクラスのおばけしか使えないですが…」

 

 徐々にドガボンを押さえる力が強くなっていき軋むような音が聞こえ始める。ドガボンは抵抗するが全く動けなくなる。

 

「そしてこの空間内では全てがわたくしの思い通り、物理的な力は意味をなしませんわ」

 

 『グシャッ』。鈍い音をたててドガボンはつぶれた。しかしすぐに再生する。その様を見てレサレサはアゴに指を当て小首をかしげた。

 

「ふーむ、この空間内でも不死身を消すことはできませんか…まぁでも…」

 

 レサレサはドガボンの頬に触れた。ドガボンの顔は恐怖に染まりつつあった。それを見てもレサレサは表情を変えずに囁くように言葉を発した。

 

「死なないなら存分にうさを晴らせますわね」

 

 ドガボンの体が溶け始めた。ドガボンはバタつくが溶けるのは止まらずやがて完全に肉体は溶け去り骨だけになった。しかしすぐに再生した。すると次は手足がぐるぐるとあらぬ方向に曲がり始める。レサレサは変わらず表情を変えずに淡々と呪いのように言葉を紡ぐ。

 

「あなたを生かすこの空間が、わたくしに力を与えて、あなたを追い詰めている…さて…」

 

 ドガボンは最早抵抗する気力も失っていた。レサレサはドガボンの頬の辺りに手を当て鼻先が触れてしまいそうなくらいまで顔を近づけ、じっとドガボンの目を見つめる。ドガボンは振り払うこともできず、ただ体を震わせ、それでもレサレサから目をそらせずにいた。ドガボンにとって永遠とも感じる数秒がたった。無表情だったレサレサの表情が満面のテレサスマイルに変わった。

 

「あなたはどんな悲鳴をあげるのかしらあぁ?」

 

「っぎゃああああぁぁ!!…」

 

 本来あがるはずのない悲鳴をあげながらドガボンは消えていった。

 

 

 

「なんということぢゃ…」

 

 

 カメックババは口をあんぐり開けて驚愕していた。デイジーとレサレサの過去の一番強いトラウマボスを完璧以上に再現したはずだった。圧倒的に勝てるはずだったのだが逆に圧倒的に叩きのめされた。

 

「こんなはずでは……こうなったら奴らをここに置き去りにして…」

「あら、それはひどいんじゃない?」

「え?あだだだだ!」

 

 頭を掴まれて強制的に後ろを振り向かせられた先にはデイジーが立っていた。

 

「な、わし、飛んでるんじゃけど!?」

 

 デイジーの足元を見ると花形の障壁に乗っていた。

 

「ねぇ、私たちを早く元の場所に戻してくれない?」

「いっだだだ!ふ、ふん!こうなったらわしごと貴様らをここに閉じ込めるぅぅぅいだだだだ!!」

 

 強めに絞めてみたもののカメックババは強情に魔法を使わない。さすがに完全にのしてしまうことはできないので困っているとそこにレサレサが合流した。

 

「あら?どうしましたの?」

「実は…」

 

 レサレサに説明する。

 

「フン…わかりました。わたくしにお任せください」

 

 レサレサはカメックババの額に手のひらを当てた。すると手のひらがカメックババの額の中に入り込んだ。

 

「ほにゃらげとぉ!?」

 

 なんかとんでもない声をあげるカメックババ。レサレサは気にせずなにやらゴソゴソするとカメックババの腕が動いて杖をふった。すると空間に穴のようなものがあいた。

 

「これをくぐれば外にでられますわ」

 

 レサレサがカメックババの額に手を突っ込んだまま説明すると。おそらく取り憑いているような状態なのだろうがビジュアルのインパクトがすごい。しかし、デイジーは気にしない。

 

「OK!早く戻ってピーチに加勢しましょ!」

 

 二人とカメックババはデイジーを先頭にその空間を脱出したのだった。

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