ピーチ姫の脱出大作戦   作:長星浪漫

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w8-4「混沌と桃のお姫様」

 ピーチは自分が得た能力を使いこなしていた。両腰から伸びる白と黒の二色のリボン、それを自在に伸ばして自らの手足のように巧みに動かしクッパの火球をさばいていく。火球がピーチに効果がないとわかるとクッパは攻撃方法を切り替える。火球を上空に花火のように大量に打ち上げる。ピーチが一瞬上を見上げたそのすきにクッパが突進の構えをとる、しかしピーチの視界はかなり広がっていた。ピーチの影がうごめき多数のカゲの鎖がクッパの体を拘束する。

 

「グガ!?」

「そーれ!」

 

 ピーチが手をあげるとクッパが上空に持ち上げられた。

 

「さらに魔法もかけとこう…“このゆびとまれ”」

 

 クッパの体が淡いピンク色の光に包まれる。すると上空の火球すべてがクッパに引き寄せられるように集まってきた。クッパは逃げようともがくが鎖がとれずに動けない。

 

「グゥアアアアアア!!!!!」

 

 追い詰められたクッパが空気が震えるほどの大声で咆哮した。するとクッパのオーラが赤黒く変わり眼の色も赤くなる。

 

「!」

 

 異変に気づいたピーチがクッパをこちらから火球にぶつけようとした。それよりも先にクッパは火炎をはいた。その火炎の色はいつもの色ではなく暗い赤紫色で火球にあたると大きく広がり降り注ぐ火球をすべて包み込んだかと思うとすべてを一瞬で焼き付くした。

 

「あらあらまぁまぁ…」

 

 そのあまりの規模の攻撃にあきれながらも絶望はしていないピーチ、くるんと回転するとピーチの周りに白と黒、そしてピンク色の光の玉が現れた。

 

「そーれ!」

 

 ピーチがそのうちの黒い玉を蹴りあげた。それは上空でカゲの鎖を引きちぎりこちらに向き直っているクッパにめがけて飛んでいった。クッパは咄嗟に手で払いのけた、しかしそのすぐ後ろに白い玉が控えておりそれがクッパに向かっていく、それもクッパはギリギリで打ち払った。ギリギリだった故に先程打ち払った黒い玉が背後にあることに気づいていなかった。

 

「うふふ」

 

 桃色の玉を持ったピーチが指を鳴らすと黒い玉と位置が入れ替わる。

 

「グガ!?」

 

 突然背後に現れたピーチに驚くクッパ。ピーチはふわりと微笑んだ。

 

「瞬間移動はあなただけの特権じゃなくなったわね」

 

 クッパは瞬間移動した。ピーチは冷静に玉を操作した。白と黒の玉が動き回り白い玉が動きを止めたその側にクッパが現れた。

 

「そこね」

 

 ピーチはすかさず指を鳴らすと白い玉が桃色の玉と入れ替わりクッパの前に移動する。

 

「!!」

 

 クッパは反応が遅れて固まってしまう。ピーチはどこからともなくフライパンを出現させて思い切りクッパの顔面に叩きつけた。フライパンはひしゃげることなくクッパの顔面をとらえた。

 

「グッゴッ…」

「そーれ!」

 

 よろけるクッパの横っ面にフライパンの角を叩きつけた。「スカーーン!!」と気持ちのいい音と共にクッパの痛みの悲鳴をかき消しながらクッパは吹っ飛びかけた、しかしその時にピーチはクッパの尻尾を腰から伸びるリボンで受け止め引っ張った。ものすごい勢いで振り回されたのでクッパの頭は大きく振られてグロッキーになってしまうが気合いで意識を保ちピーチに爪の反撃を試みる。

 

「うわっと!?」

 

 その攻撃に思わずクッパを放してしまう。解放されたクッパは距離をとっても意味がないと理解していたので距離をとらずすぐに攻撃を行う。縦に横に爪の攻撃を繰り出す。ピーチは難なくかわしていくが、不意をついてとんできた尻尾の攻撃はかわしきれず食らってしまった。

 

「さすが大魔王といったところね、でも」

 

 ピーチの腰のリボンが攻撃を受け止めていた。

 

「グオッ!?」

「でもまぁ、今は私の方が強いわね」

 

 ピーチが手をあげるとリボンがクッパを持ち上げる。そのままブンブンと振り回したあと地面に思い切り叩きつけようと振り下ろす。

 

「グギギィ!」

 

 身をよじり何とか抜け出そうともがいたが抜け出せないと判断し甲羅に尻尾以外を引っ込ませてダメージを軽減した。

 

「ふぅん、じゃあ」

 

 ピーチが浮かび上がるとピーチの周りに魔法陣が7つ現れた。そしてそれぞれの魔法陣から様々な『武器』が現れた。フライパン、バット、ゴルフクラブ(アイアン)、ゴルフクラブ(パター)、桃の形をした刃先の槍、キノピオの形をしたロボット、そして大きな手がでてきた。その様子にクッパは何度目かわからない驚愕の表情を見せた。ピーチの方も何度目か…いや、今までで一番の不敵な笑みを浮かべた。

 

「どこまで耐えられるかしら?」

 

 

 

 元の場所に戻ったデイジーとレサレサは呆気にとられた。

 

「あれ、ピーチ姫?」

 

 デイジーとレサレサが戻って初めて見た光景に目を疑った。ピーチの衣装が普段のピンクではなく白と黒を基調にしたデザインに変わっていてしかも空に浮かびながらたくさんの巨大な武器を召喚していた。一方のクッパは普段よりも大きくなって怒りのオーラをまとっており明らかに普段と異なる異形の姿に変貌していた。

 

「クッパの方もかなり姿が変わっていますわね」

「クッ…クッパしゃまあぁぁ~」

 

 カメックババがフラフラになりながら身をおこす。

 

「ババからの支援ですじゃあぁ~…」

 

 カメックババが杖から魔法をクッパの方に放った。

 

「まだ動けたの!?とりゃ!」

「ぐぎゃあ!!」

 

 デイジーが咄嗟にカメックババの首の後ろに手刀を強めに叩き込んだ。カメックババは少し地面にめり込んで気絶した。しかしカメックババが放った魔法は止まることなくクッパに届いた。放たれた魔法は幾重にも広がりクッパに収束していく。

 それを見たピーチはデイジーとレサレサに気づいた。

 

「デイジー!レサレサ!無事だったのね!」

 

 安堵に胸を撫で下ろす。その一瞬、クッパが攻撃を放った。口からでたのは炎ではなく一筋のレーザーだった。そのレーザーがピーチをとらえた。

 

「ピーチ!」

「ピーチ姫!」

 

 デイジーとレサレサが同時に叫ぶ。レーザーが消えるとそこにはピーチはいなかった。

 

「まさか!?」

 

 デイジーが最悪の結果を想像し辺りを見渡す。

 

「ピーチ姫…」

「呼んだかしら?」

「「ぴゃあ!?」」

 

 突然背後から声がしたのでデイジーとレサレサが驚いて飛び上がった。後ろを向くとそこにはピーチが無傷でいた。

 

「ピーチ!!よかったぁ」

「わたくしを驚かせるとは、不覚ですわ…」

「二人とも無事でよかったわ!」

 

 三人が喜んでいる目の先でクッパがゆっくりと立ち上がった。まとっていたオーラに青白い炎が混じりあい体が少し大きくなった。先ほどまでのダメージは消えていた。ゆっくりとこちらを向くと大きく咆哮した。そのあまりの凄まじさに空気が震えデイジーとレサレサは思わず一歩後ずさる。しかしピーチは前にでる。

 

「大丈夫、私に任せて」

 

 ピーチはキラキラと桃色に輝く魔法障壁を二人の前に出現させて自分は前にでた。

 

「ちょっとピーチ!?」

「お一人で行かれるおつもりですの?」

 

 心配そうにするデイジーとレサレサにピーチはふわりと笑顔を向ける。

 

「大丈夫!今の私なら絶対負けないから」

 

 そういうとピーチはクッパの元に向かっていった。クッパの目線はピーチにのみ向いている。ビーチもそれを意識していた。

 

「フフ、どうせ戦うならやっぱりこのスタイルがいいわね」

 

 ピーチはその長くきれいな髪をかきあげた。するとドレスが光り、新しいバトルドレスに変身する。ピンクを基調とした中に白と黒のひかりをまとっている。

 ピーチはクッパの前までくると挑発的にニヤリと笑う。

 

「さあ、かかってきなさい」

 

 クッパが動く、ピーチも突っ込む。ピーチの目線が右上に動いた。そのすぐ後にクッパが左手を振り上げる。ピーチはすでに左に動いておりクッパの攻撃が空振りした。ピーチは次にチラッと左下を見、同時に左に障壁を展開、するとすぐにそこにクッパの蹴りが入った。その時にはピーチの目線はクッパの口を見ており蹴りあげる。少し反応が遅れてしまったクッパは反射的にのけ反ってしまう。そして同時にブレス攻撃を行おうとしていたのでそれを止められず閉じた口の中で暴発してしまった。そしてよろけたところに思い切り魔力を込めた拳の一撃を打ち込んだ。

 

「ぐぐっ」

 

 受けたダメージ自体はクッパにとって大したことなかったが、ピーチの動きに明確な違和感があることを感じていた。クッパは距離をとるために後ろに飛び退こうとしたがそれよりも先にピーチがクッパの首輪を掴んでひきよせる。

 

「が!?」

「フフフ、逃がさないわよ」

 

 間髪いれずにピーチの拳がクッパの顔面に打ち込まれた。

 

「ぎゃごぉ!!」

 

 激しく地面をバウンドしながらクッパは吹き飛ばされる。しかしなんとかすぐに体制を立て直し甲羅に顔を引っ込めた。そこをピーチの蹴りが空振りした。

 

「あら?」

 

 ピーチは空振りした足を軸にしてもう一方の足で甲羅に蹴りを叩き込んだが、ダメージはほとんどなかった。

 

「やっぱり甲羅の上からは無理ね、あ、次は尻尾攻撃か」

「!?」

 

 クッパは甲羅を回転させて尻尾による足払いを画策したがピーチはそれを難なくよけた。いや、よけたというよりくるのがわかっていたようだった。

 クッパは確信していた。ピーチは完全に自分の行動を先読みしている。

 

「グガガガァ!!」

 

 それなら先読みができてもよけられないくらいド派手な攻撃を放てばいい、そう考え…いや、考えずに攻撃を行う。

 

「対応が早いわね」

 

 頭で考えずに行った攻撃のため少し反応が遅れたピーチ、クッパは限界まで口を広げると凄まじい火力のブレスを放った。ピーチは魔力障壁を展開した。それを見てデイジーが叫ぶ。

 

「だめよピーチ!それじゃ防ぎきれない!」

 

 デイジーの警告にピーチはニッと笑う。

 

「大丈夫、“防ぐ”気はないから」

「え?」

 

 クッパのブレスが魔力障壁に激突する。しかし不思議と衝撃はなかった。よく見ると魔力障壁にブレスが吸収されていく。膨大なブレスが一気に吸収されやがて途切れた。ブレスを吸収した魔力障壁は強く輝いている。それはやがてまとまり桃の形になる。

 

「いただきます」

 

 ピーチはそれを食べた。デイジーとレサレサはぎょっとしている。ピーチがそれをたいらげるとお辞儀するように頭を下げた。その上をクッパの攻撃が空振る。

 

「!!」

「あなたは私が頭の中を見て先読みしてると思っているようだけど」

 

 クッパは瞬間移動でピーチから離れるがその先にビーチがいる。

 

「違うのよね、私は少し先の“未来”を視てる」

 

 今度こそ尻尾を掴んだピーチはクッパを上に投げあげた。

 

「!!??!」

 

 クッパは手足をバタつかせるが先ほどまでのように攻撃にうつらない、何をやっても、どうやっても攻撃を読まれてしまう、と頭に刷り込まれてしまい咄嗟に動けなくなってしまったのだ。

 ピーチは高く跳躍した。

 

「くらいなさい!」

 

 右手にありったけの魔力を込めて強く握りしめる。

 

「くぅらええぇぇぇぇ!」

 

 ピーチの拳がクッパのお腹にめりこんだ。

 

「………!!!」

 

 声がでないほどのダメージを受け白目を向いて落ちていくクッパ。ピーチはそれを空中で見送る…ことはせずクッパの落下に合わせて自分も落ちる。今度は足に魔力を込めてクッパのお腹に叩きつけた。

 

「きごっおおぉ…」

 

 ダメージに目覚めなたクッパは自分の現状に改めて気を失いそうになるが失う前に地面に背中から叩きつけられた。そしてピーチのハイヒールが食い込んだ。

 

「ぐっおえっ」

 

 蛙がつぶれたような声をあげるクッパ、それと共にクッパの口から虹色に輝く光が一気に溢れ出る。

 

「え?うわっ!?」

 

 さすがにピーチも飛び退いた。クッパの口から光が溢れ出るのが止まらない。そしてみるみるうちにクッパの体が縮んでいく。数分もしないうちに元のサイズに戻った。

 

「えっぶぐぅ、ゴッハッフウゥ」

 

 しかし意識は残っており咳き込みながら立ち上がった。

 

「ふっぐうぅ、いったい何が…は!」

 

 口をぬぐいながら状況を思いだしすぐに臨戦態勢をとる。

 

「ぜぇ、ぜぇ…ピーチ姫、まさかここまでやるとは…」

「あなたもさすがの体力ね、でもさすがに限界かしら?」

「ガハハ!なぁにまだまだ、さぁピーチ姫、早く部屋に戻るのだぁ!」

 

 クッパが襲いかかる!ピーチはため息をついた。

 

「ぶれないわね、仕方ないなぁ」

 

 ピーチの姿が揺らいだ。次の瞬間にはクッパのすぐ前に現れる。いきなり現れたので完全にタイミングを狂わされたクッパのバランスが崩れた。ピーチはすかさずクッパのお腹にパンチを打ち込む。

 

「がうんっ!!」

 

 なんだか情けない声をあげながらよろめくクッパの背後に回り込み尻尾をつかむ。

 

「とりあえずピーチ城をちゃんと返してもらうわね」

 

 ピーチは片腕でクッパを思い切りクッパ城に向かって投げ飛ばした。

 

「ぐわああぁぁぁ!!」

 

 叫びと共に投げ飛ばされたクッパがクッパ城にあたるとまるでだるま落としのようにスコーンと抜けてピーチ城だけが綺麗に落ちてきた。すかさずピーチは魔法を準備する。

 

「デイジー!レサレサ!」

「わかったわ!」

「わたくしもまだ霊力が少しのこっていますわ」

「よし!じゃあレサレサの力に私のカゲの力を合わせて…」

 

 キノコ城の落下地点に大きな黒いカゲが広がり始める。やがてそれはキノコ城よりも大きくなり落ちてくるピーチ城を待ち構える。すぐにカゲの中央にピーチ城が落下してきて地面に激突!…することはなくまるで柔らかいクッションの上に落ちたかのように衝撃がなくさらに水に沈むようにカゲの中に沈んでいき完全にカゲの中に入ってしまった。ピーチは頭の中にピーチ城の場所を正確に思い描いた。

 

「この辺りね、えい!」

 

 

 

 ピーチが掛け声をあげたその時、遠く離れたキノコ王国のピーチ城があった場所に大きな黒いカゲが地面に広がったかと思うとその中からピーチ城がドドーン!と現れた。周りにいたキノピオ達は驚きのあまり全員一緒に尻餅をついてしまった、

 

 

 

「うん!うまくいったと思うわ!」

 

 手をパンパンと打ち払いながらピーチは満足そうに笑った。力を完全に使いきったのかピーチの姿は元に戻っている。

 

「これでやっと終わりましたのね、長い道のりでしたわ」

 

 レサレサがセンスで自分を扇ぎながら一息つく。

 

「もう終わりかぁ私は途中参加だったから短かったわ」

 

 デイジーは伸びをしながら少し残念そうにしている。

 

「いやはや、まさかここまでの力を隠していたとは、驚きだよピーチ姫」

 

「「「!!!」」」

 

 予想外の声が聞こえて反射的に身構えるピーチ達三人。身構えた先にはジャッキーとノコヤン(弟子)が立っていた。

 

「ジャッキー師匠!脱出してたんですね」

「うむ、結末は見えていたからね、ピーチ姫、ぜひまたお手合わせ願いたいものだ」

「えへへ、ありがとうございます」

 

 ピーチは照れてはにかむ。それから少し言葉を交わした後ジャッキーとノコヤン(弟子)はモンスタウンに帰っていった。

 

「さて、私たちも…あら?」

 

 ピーチが遠くを見やると遥か遠くで赤い帽子と緑の帽子、それにガタイのいいキノコの頭が見えた。

 

「あら、思ったより早かったわね。うふふ、とっても驚くでしょうね」

 

 ピーチはデイジー、レサレサと三人で楽しく笑いながら彼らの到着を待つのだった。

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