リーダーブロスをお空の彼方に吹き飛ばし、いよいよクッパ城に入っていった三人は熱さに参りそうになっていた。
「熱い~」
首もとの部分をパタパタさせながらピーチ姫、M・キノピオ、レサレサはキノコ城を出てクッパ城に入りすぐのエリアの溶岩エリアに来ていた。
「はぁ~、なぜクッパはこんな溶岩が好きなのかしら?苦い経験しかないでしょうに…」
初めてマリオと戦った時は溶岩に落とされ、尻尾をつかまれ振り回されたあげく落とされたりした。まあとにかくクッパにとって溶岩というものはピーチ姫としては“クッパの敗北の象徴”みたいに思っていた。
「ですね~」
答えたM・キノピオは暑さのせいで汗をかきまくっており頭のキノコが少し干からびているように見えた。そんな二人を涼しそうな顔で見ているのはレサレサだ。
「お二人とも大変ですわね」
「レサレサは暑くないのですか?」
「わたくしはおばけですから暑さや寒さを直接感じることはありませんわ」
「そうなんですか?おばけっていいですね-、涼しそうで」
「あら?マッスルも涼しくなりたいの?わかりました、あなたの主としてその願い叶えましょう」
「え?なにを…」
「えいっ☆」
「ふん?」
ピーチ姫に急に押され意味がわからないまま溶岩の上に飛び出すM・キノピオ。自分の現状を理解した頃には落下が始まっていた。
「わーーーーー!??」
重力に引かれ落ちていくM・キノピオ。溶岩に落ちる!…寸前で体が止まる。
「へ?」
自分の現状がわからず固まっているとゆっくりレサレサが姿を現した。
「レサレサ様!あ、ありがとうございます!!」
安心感から涙と鼻水があふれでる。レサレサはそれを少し嫌そうにしながらもM・キノピオを石畳の上に下ろした。自分がまだ生きていることを確認し安堵したM・キノピオはピーチ姫に抗議した。
「姫ぇ!なにするんですか!」
「なにって、ひやっとしたでしょ?」
「当たり前ですよ!めちゃくちゃひやっとしましたよ!」
「よかった」
「よかった!?」
ピーチ姫の満面の笑みにM・キノピオは暑さも忘れて震え上がった。その様子にピーチ姫は満足そうに頷いた。ますます意味がわからなくなるM・キノピオ。
「涼しくなったでしょ?」
「あっ…」
そういうことか、とM・キノピオは理解した。自分が「暑い」といったからピーチ姫は気を使ってあんなことをしたのか、さすがピーチ姫、部下のこともお考えになる素晴らしいお方………
(いやいやいや!)
心の中で首を激しく横に振るM・キノピオ。
(この人はなにを考えているんだ!?一歩間違えば焼きキノコだったっての!この人の前では迂闊な発言は控えよう…)
そう心の中で誓うM・キノピオだった。
しばらく歩くと石畳が途切れ天井から金網が釣り下がっているエリアに着いた。
「この金網に張り付いていくのかしら?」
ピーチ姫が金網をガシャガシャしながら首をかしげる。
「多分そうですね、マリオさんもそうしたって言ってました」
「むむむー…」
ピーチ姫は金網を前になにか悩んでいるようだった。
「どうかされましたか?」
「金網にしがみついて移動するのですよね?」
「?ええ、そうなりますね」
「私一応お姫様ですし、がに股みたいな格好で移動するのは少し抵抗がありますわ」
「あ~、それはそうですね。でしたらどうやってここを渡りましょう?」
色々考えていると金網をつたいながらノコノコがのこのこやってきた。
「ピーチ姫!とその他二人!ここは通さないぞぉ!」
「あら、ノコノコ」
「うわ、あんなにいたら姫のわたるスペースがなくなってしまう!ここはお任せを」
金網に行こうとしたM・キノピオの頭のキノコをピーチ姫がわしづかんだ。
「あいたぁ!?姫!なにするんですか!!」
「マッスル、その必要はないわ、むしろこのままのほうが都合がいい♪レサレサ、ちょっといいですか?」
「なんですの?」
ピーチ姫がレサレサに耳打ちする。レサレサはセンスをぱちんとうちならすと「了解しました」と言って姿を消す。
「マッスル、私は先に行きます。後からついてくるように」
「え?いや、だから、ぼくが姫の護衛…ああちょっと!!」
M・キノピオの制止も聞かずピーチ姫は助走をつけて大きくジャンプした。さらに二段ジャンプから得意の滞空ジャンプに切り替え空中を浮游する。
「まさかそのまま渡りきるつもりか!?」
「いや、飛距離から考えて無理だ。見ろ!」
ノコノコのうちの一匹が言う通りピーチ姫の高度が落ちてきている。
「今だー!!」
一斉にピーチ姫に向かって突撃するノコノコたち。しかしピーチ姫はこれを待っていた。滞空ジャンプを止め、一気に落ちる。そこにちょうどノコノコがやって来てそれを踏みつける。
「むぎゅっ…!」
踏まれたノコノコは溶岩の中へ消えていった。ピーチ姫はそのノコノコを足場に再び滞空ジャンプを行う。
仲間をやられたノコノコが怒りのままにピーチ姫わ、邪魔しようとする。しかし、その度に頭を踏まれピーチ姫の足場にされてしまう。そのことにようやく気づいたノコノコたちは今度はピーチ姫から離れようとする。
「離れろー!ピーチ姫は足場さえなければジャンプできない!」
わらわらとノコノコが散らばっていく。ピーチ姫の滞空時間ももうすぐ切れそうだ。
「ひひひ、落ちるギリギリで捕まえてやる。…ん?」
一匹のノコノコが突然動きを止める。というより突然動けなくなった。
「な、なんだ?どうして動けない?」
バタバタしているとスーッと何者かが姿を現した。
「悪いですが、あなたには足場の続きになってもらいますわ」
リボンをつけたエメラルドグリーンのテレサ、レサレサがセンスでノコノコの行く手を阻んでいた。
「あっ、ちょっとまっ…」
「時間があまりありませんので」
ノコノコの尻をセンスではたく。
「うわああぁぁぁ!」
勢いよく上にうち上がるノコノコ。そこにジャストミートでピーチ姫が降りてきた。
「ありがとう、レサレサ」
ノコノコの顔面を思いきり踏みつけて再び滞空ジャンプ。レサレサも姿を消して次の足場を探す。ぱにっくになるノコノコたち。
「どどどどどこにいったぁ!」
絶対に飛ばされまいと金網にしがみつく。と、一匹にセンスの一撃があたる。
「ぐわあぁ…ぐっ!」
しかし、金網にしがみつき耐え抜いた。
「わはは!参ったかぁ!!」
他のノコノコも力一杯しがみつきレサレサの攻撃に備える。
「なかなか強情ですわね。…ハァ、仕方ありませんわ」
レサレサが姿を現した。
「そこにいた…、か?」
現れたレサレサを見たノコノコ全員が目を疑った。そこにはレサレサと同じ肌の色をした人間の女の子が浮いていたのだ。その女の子は近くにいたノコノコの脇をつかんだ。
「え?え?どちら様??」
「知る必要はありませんわ。それ、コチョコチョ」
「え?ちょっ、やめて、あははははは!!」
くすぐられ力が抜けるノコノコ。
「えい」
「あっ」
そして簡単に引き剥がされる。
「は、はなせ~!!」
必死にばたつくがレサレサはそれをうまくいなしはなさない。
「ピーチ姫!いきますわよ!」
ピーチ姫の滞空時間が終わるタイミングを見計らいノコノコを放り投げる。
「わーーーー!」
抵抗できずに飛んでいくノコノコ。そしてジャストなタイミングでピーチ姫のヒールがノコノコの頭をとらえた。
「ありがとう、レサレサ」
レサレサの絶妙なフォローを嬉しく感じながらノコノコを思いきり踏みつけて今までよりも高く跳躍した。
「いたーーあああぁぁぁ………」
こちらも今までで一番早く落ちていくノコノコ。そしてピーチ姫は最後の滞空ジャンプで向こう側にたどり着いた。レサレサもピーチ姫の側まで飛んでいき元の姿に戻ってピーチ姫とハイタッチした。
「ありがとう、レサレサ。おかげで無事に渡れましたわ」
「フフフ、ピーチ姫のすばらしい身のこなしあってこそですわ」
お互いにお互いを賞賛しあうなか、金網のスタート地点にいるもう一人が自分の存在をアピールするかのように大声で割り込んできた。
「ピーチ姫ぇ!レサレサ嬢!ボクはどうしたらー!?」
ピーチ姫とレサレサがM・キノピオをちらっと見て少し考えた。そして笑顔をつくり、両腕をぐっと前で構えて、
「がんばれ!」
と一声。
「え?えっと、具体的にはどうしろと?」
M・キノピオは気づく、今自分がおかれている状況に
「同志がやられて黙っていられるか!」
「ピーチ姫はもう追いかけられないが(怖いし)せめて臣下のこいつだけでも」
「恨みはらさでおくべきか~」
「…」
M・キノピオは無言で周りを見渡してみる。遥か後方には城への出入口、左右は煮えたぎる溶岩、天井は高く遠く地面に隠し通路はなくもちろん土管もない。進める道は目の前の金網のみ。そしてその金網には血眼でM・キノピオに怒りを向ける大量のノコノコ。ピーチ姫とレサレサはさらに向こうの金網のみゴール地点でにこやかに手を振るばかり。
(フッ…)
M・キノピオは心の中で笑った。
(もういろいろ諦めよう)
「マッスル~!」
ピーチ姫に名前を呼ばれ顔をあげる。
「回復用にここに桃のをおいておくわね~」
そう言って大きめのサイズの桃をその場に置きレサレサと先へ進み始める。
(暑さで痛んじゃうじゃん?)
M・キノピオは無言でストレッチを始めた。
(なんだかピーチ姫、ボクの扱いが雑…決して嫌われている訳じゃないってことはわかるんだけど…)
M・キノピオの両腕の筋肉がもりあがる。
(こんな扱いされたら…)
金網をわしづかむ。
「興奮するじゃん!」
M・キノピオを置いて先へ進むピーチ姫とレサレサ。レサレサがセンスでピーチ姫を扇ぎながらレサレサが少し心配そうに後ろを振り返る。それに気づいたピーチ姫がにっこり笑う。
「大丈夫よレサレサ」
「でも、正直あのお方そこまで強く見えませんでしたけど」
「ふふふ、大丈夫。かなり追い詰めましたから」
「どういうことですの?」
ピーチ姫はレサレサに耳打ちした。
「彼、実は超がつくほどのドMなんです♪」
「はい?」
「詳しくいうと『追い詰められるほど強くなる』体質なんですの。あら?」
歩いているとまた特殊な場所に出た。道が途切れ橋がかかっていて円形状の舞台のような場所に繋がり、そこからさらに橋が繋がって向こう岸に繋がっている。
「…」
「…」
周りを見渡すが当然他に道などない。だが、目の前の橋は恐らく罠であろうということは想像できた。
「でも行くしかないですわね」
「そうですね、レサレサ、もしもの時はフォローお願いします」
「おまかせですわ」
二人はハイタッチするとその橋を渡って円形の舞台へと歩いていった。
次はM・キノピオが主役になる予定です。