(だめ、つかめない!)
舞台のはしっこをつかもうとしたが手が届かなかった。
(このままじゃ捕まってしまいますわ…いや、いっそ下に落ちてヘイホーを蹴散らそうかしら?)
そうも考えたが、周りが溶岩なのでかなり不利だ。滞空飛行でフワフワ落ちながら色々考えていると急に空中で何かにあたった。
「きゃっ!」
同時に小さな悲鳴が聞こえた。
「レサレサ!?」
その声はレサレサだった。
「そういえばドンケツ隊が現れたくらいから姿が見えなかったわ」
下にいるヘイホー達はピーチ姫が急に空中で止まったので目(?)を真ん丸にしてポカンとしている。少しずつレサレサが姿を現していく。姿は擬人化モードで両手でさっきピーチ姫が落としたウルトラハンマーを持っている。ピーチ姫はちょうどレサレサの肩に肩車になる形で落ちてきたようだった。
「ピ、ピーチ姫…!どうして、う、えから?」
「先程のボスドンケツに落とされましたの…というかレサレサ?少しずつ降下しているような?」
「そのとおりですわ…このハンマー…重い…!」
どんどん下がっていくレサレサ。ピーチ姫は慌ててウルトラハンマーをアイテムBOXにしまうがレサレサの体力はすでに限界で、姿が元に戻りゆっくり降下していく。
「レサレサ!しっかり!」
「そ、そう言われましても…もう、限界ですわ~」
できるかぎりゆっくりと落ちていくレサレサ。ピーチ姫は何とかしようと考えを巡らせ、一つの道を見いだした。
「レサレサ!少し我慢してくださいまし」
「はい?」
なんのことかわからない様子のレサレサの片方の手にひもを結ぶ。今、ピーチ姫はレサレサの頭の上に乗っていることになる。うまくバランスをとりながらレサレサの上で立ち上がる。当然レサレサの降下スピードも加速する。
「ピ、ピーチ姫!?」
レサレサの叫びも気にせずにピーチ姫は足に力を入れた。そしてレサレサを踏み台に跳躍する。
「はっ!!」
「きゃっ!?」
一気に下に落ちそうになるレサレサだったがピーチ姫が巻き付けておいた紐のおかげでピーチ姫のほうへ引っ張られていった。ピーチ姫は右手を爪を立てるような形にし、後ろに引く。そして石舞台を支えている石柱に右手を思いきり叩き込む。指が柱に食い込んだ。そのまま左手をレンガ状の石柱の僅かな窪みに引っ掻ける。その背中に紐で引っ張られたレサレサがくっつく。
「くっ…」
衝撃で少しずり落ちたが力を込めて耐える。
「大丈夫ですの?」
「レサレサ嬢、おばけで体重がないから問題ないですわ」
そう言いながら僅かな窪みをまるで蜘蛛のように登っていく。
「ピーチ姫!下をご覧になれますか!?」
「えっ、少し無理です。どうされましたか?」
「さっきのヘイホーだなにかランチャーみたいなのを用意していますわ!」
レサレサがそう言った時そのランチャーが放たれる。ランチャーからは網が射出された。
「わ!」
「きゃあ!」
足に引っ掛かりそうになり慌てて足を引き上げなんとかかわす。下ではヘイホーが次弾を準備している。
「次がきますわ!」
「さすがの私でもこの状況で避けるのは難しいです…」
焦りの表情を見せながら柱を登っていく。それなりに早いがまだネットランチャーの射程範囲内から出れない。ヘイホーが狙いを定めランチャーの引き金をひこうとした瞬間、
「おおおおおおおおおあ!」
叫び声と共にヘイホーの乗るボートに一人の影が落ちてきた。
「姫様になにをやっとんじゃあぁぁ!」
影の正体は当然M・キノピオ。金網を乗り越えて追い付いたM・キノピオが向こう岸からなんの躊躇もなくヘイホーの乗る舟に飛び降りてきた。
「ヘ、ヘイ!?」
「ヘイホー!」
慌てるヘイホーの仮面を鷲掴みにし、力一杯投げ飛ばす。
「おおりゃあぁぁぁぁ!」
投げられたヘイホーは溶岩に落ち、パンッ!という音と共に消えてしまった。残りのヘイホーが槍や盾を手に応戦する。完全にピーチ姫から注意が外れた。
「下の事はマッスルに任せて私たちは上に向かいましょう」
ピーチ姫は登るのを再開する。その途中、レサレサにあるお願いをした。
場所は変わってピーチ姫が現在登っている舞台の上。そこではボスドンケツがヘイホーたちの報告を受けてピーチ姫が上がってくるのを待ち構えていた。
「むむむ~!さすがはピーチ姫、なかなかしぶとい。だが!今度はそうはいかん!!」
短い足をダンッ!と踏み鳴らしたボスドンケツの体は異様にテカっている。
「突き落としてもダメならばこの体にくっつけてやるわ!」
テカりの正体はクッパ軍団特製の瞬間接着剤だった。体中に塗りたくった瞬間接着剤でピーチ姫の体を自らの体にくっつけてしまおうというのだ。
「ククク…さぁ、早く上がってこい!今度は俺自ら捕縛してやる!」
その時は確実に近づいてきていた。壁を登る音が少しずつ近づいてくる。ボスドンケツは耳を(どこにあるかは不明だが)すませその時を待つ。そして、ピーチ姫の手が見え上半身が見えた瞬間突進を開始した。
ピーチ姫はレサレサを背負う形で舞台の上、ボスドンケツの目の前に立つと真っ直ぐにボスドンケツを見据えた。
「わはははは!驚きすぎて避けることもできないか!」
ボスドンケツは勝利を確信している。あと数秒でピーチ姫に体当たりをし、自らの体にピーチ姫をくっつけ捕縛する。この距離なら絶対にかわせない。それはピーチ姫もわかっているはずだ。…だが、ピーチ姫は笑みを浮かべていた。
「!?」
ボスドンケツは理解できなかった。たしかに目の前にピーチ姫はいたのだ。左右に避ける時間もなかった。なのに、
(しまった!勢いが!)
ピーチ姫にあたる前提で突進したボスドンケツはピーチ姫にあたることができなかっことで勢いがつきすぎて舞台から落ちそうになった。
「ぐうぅ…!!」
なんとかギリギリで踏みとどまるボスドンケツ。すると後ろから声がかけられる。
「本当に真っ直ぐにしか攻撃しないんですね?」
「!!」
背後からくる気配がボスドンケツの恐怖心を刺激する。
「あなたもこれで終わりですし、なんでこの状況になったかお教えしましょう」
ピーチ姫はアイテムBOXからゴルフクラブを取り出しながらにっこりと笑った。
「あなたが私にあたる寸前でレサレサの『透明化』の能力を使用したのです。対象を自分と一緒に透明にする、単純ですがかなりすごい能力ですわ」
レサレサはピーチ姫の背後で得意気にセンスで自分を扇いだ。
「さて、そろそろ…」
ピーチ姫はゴルフクラブを構えた。絶体絶命ののボスドンケツ。しかしボスドンケツには最後の希望があった。それはピーチ姫がまだ体に塗った接着剤に気づいていない様子だからだ。少しでも触れればくっつく。
(その瞬間に飛び降りてやる!)
つま先で体を支え、絶妙なバランスになっているボスドンケツはその時を待った。だが、次のピーチ姫の一言でボスドンケツは完全に敗北を悟った。
「その体に塗られているものについてはすでに把握していますわ」
「!!」
「あなたが巻き上げた粉塵がすべて体に張り付いています。先程はそんなことなかったのにです」
「…!!」
ボスドンケツの顔から血の気が引いていった。
「おそらく、接着剤か…それに類似したものでしょうか?私をその体に張り付けて捕らえようとしたのでしょうか?」
すべてお見通しだった。
「ぐぐぐ、だがそうだとして攻撃できまい!攻撃したらくっついてしまうんだからな!」
「そうでもありませんわよ?」
「な、に、?」
「ボスドンケツさん、あなた先程からつま先立ちでギリギリのバランスを維持してらっしゃいますね?」
「…?」
ピーチ姫の言う通りボスドンケツは舞台のギリギリのところでつま先立ちで体をピンと伸ばし、奇跡のバランスで踏みとどまっていた。
「体全体になにかを塗ったとしても一ヶ所だけ絶対に塗らない場所がありますよね?」
ピーチ姫はボスドンケツに近づきゴルフクラブで
「移動のことを考えたら足の裏には塗れませんよね?」
「しまった!」
ボスドンケツはなんとか逃げようと試みるが、少しでも動くとバランスが崩れて落ちてしまう。ピーチ姫はゴルフクラブをゆっくり構えた。
「では、これで本当に最後です」
「ちょっ、まっ…!」
パコォォォン!
小気味いい音と共にボスドンケツの体が空中に飛び出る。手がないので舞台をつかめない。体をひねりピーチ姫のほうを見ると、ゴルフクラブをしまい「パチパチ」と二回柏手をうった。それを最後にボスドンケツはまっ逆さまに落ちていった。
「あっ!」
ボスドンケツが落ちてすぐにレサレサがあることに気づいた。
「この下にはマッスルがいたのではなくて!?」
「ええ、そうですね」
「ボスドンケツが落ちたらさすがのマッスルも…」
「ええ、さすがに死にますね。ですから文字通り『手を打った』のですわ」
「え??」
ピーチ姫の言葉の意味がわからずポカンとなっていると、下の方でボスドンケツが溶岩に落ちる音がした。
「あぁ!」
レサレサは悲痛な叫びをあげた。しかし、妙な音がしていることに気づく。
びるるるるるる…
「?なにか音が…」
ぴるるるるるる…
「少しずつこちらに近づいているような?」
その事に気づいた時、舞台の端からなにかが現れた。
「!???!?」
キノコだった。レサレサの体よりも少し大きく、ピーチ姫の身長の70%くらいのサイズの大きなキノコが二人の方に飛んでくる。
「ひぃえ?!?」
その異様さにレサレサは驚いた。そのキノコはレサレサを飛び越えるとピーチ姫の方に一直線に飛んでいき、寸前でポンッ!と破裂音がしたかと思うと大きなキノコはシャチホコのような格好のM・キノピオになった。
「マッスル!?」
目の前の状況に目を真ん丸に見開いて驚くレサレサ。小さな口をぱくぱくさせながら目線でピーチ姫に説明を求めた。その視線に気づいたピーチ姫は説明を始める。
「これはですね、以前プププランドにお邪魔した時にカービィに教えていただいたんですよ。えーっと確か『ヘルパーワープ…』とかそんな名前の技術でした」
「…それはどんな技術なんですか、姫様?」
M・キノピオはゆっくりと立ち上がりながらピーチ姫の方を向く。鼻からは鼻血が出ている。
「あら、ごめんなさい。まだ完全にコントロールできないから…」
M・キノピオを治療しながらピーチ姫は話を再開した。
「詳しくは説明が難しいのですけど、私とこのM・キノピオは“ヘルパー契約”を結んでいるのです」
「えっ…初耳ですよ?」
「そりゃそうよ、今いったんだもの」
しれっと結構重要なことを事後報告するピーチ姫。M・キノピオは「…もう慣れた…」といった感じでうなだれる。
「で、話の続きですけど、“ヘルパー契約”を結んだ相手とは見えないなにかで繋がるらしくて、決まった動作をするか、一定の距離を離れると契約した相手が星になって契約主のところへ飛んでくるようになるんです。ちなみに私の場合、“二回手を打つ”が発動動作になっています」
「ちょ、ちょっと待って?星?先程はあきらかにキノコになって飛んできましたわよ?」
「それは恐らく、M・キノピオがキノコ族だからですわ」
「そういうものですか?」
レサレサはこれ以上聞いても理解しきれないことを悟り話をきった。M・キノピオも「聞いても無駄か…」と聞かないことに決めた。
話終えたタイミングで向こう側へ渡る橋が出現した。
「では、行きましょう!」
ピーチ姫を先頭にレサレサとM・キノピオは後に続いた。
橋を渡り少し行くと広場のような場所に出た。少しずつ先に扉が見える。
「あそこがこのフロアのゴールのようね」
「ふぅ、溶岩から離れたから大分涼しくなってきた」
「早く次のフロアへいきましょう」
三人が扉へ向かおうとすると、扉の両脇にあった石の台座が突然動きだし二つの手の形に変形し三人の前に現れた。
「我らは“イワンテ”ここの番人だ!!」
「ここは通さんぞ!」
イワンテは手のひらについている目を見開きながらファイティングポーズをとる。ピーチ姫たちも構える。
「最後の最後で面倒なのが出てきましたわね。ですがモタモタしている暇はありません…てすので、一気にお片付けといきましょう」
ピーチ姫はお姫様らしい微笑みを浮かべながら、その瞳にはピーチ城内でみせた“狂喜”を宿らせていた。
読んでいただきありがとうございまし!
次はなるべく早く投降できるように努力します!