ピーチ姫の脱出大作戦   作:長星浪漫

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W2-4「粉砕!」

 「私は右手を攻撃します!マッスルは左手を!」

「はっ!」

 

 ピーチ姫の指示通りに行動するM・キノピオ。

 

「レサレサはマッスルのサポートをお願いします!」

「かしこまりましたわ」

 

 レサレサはM・キノピオのサポートをするべく飛んでいく。ピーチ姫は単身イワンテ(右手)に向かっていった。  

 

「お姫様一人で突っ込んでくるとは…なめるなぁ!」

 

 イワンテ(右手)は手のひらにある目玉を充血させながらピーチ姫をつかもうと手を広げた。ピーチ姫は握られる寸前高く跳躍しかわした。イワンテの手がなにもない空を掴む。ピーチ姫はひらりとイワンテの後ろに着地するとすかさず蹴りを入れた。

 

「つぅ~~…」

 

 しかしイワンテの体は固く、ダメージがまるでない。

 痛がっている間にイワンテがぐるりとピーチ姫の方を振り向く。同時にピーチ姫はイワンテの目を蹴ろうとしたがイワンテは目をつむっておりまぶたで弱点を隠していたので、すぐに蹴る位置を変更しイワンテの目のすぐ上を蹴った。

 

「はははぁ!前回マリオにやられた弱点は対策済みだぁ!そおれ捕まえたぁ!」

 

 指を閉じピーチ姫を掴もうとするイワンテ、しかしピーチ姫はすでに予想済みだ。

 

「は!」

 

 先程の蹴りの反動を利用し後ろに飛び退くピーチ姫の目の前でイワンテの指が閉じられた。ピーチ姫は着地と同時に体制を整える。イワンテは指を開きひとつしかない目でジトリとピーチ姫を睨む。

 

「お姫様のくせに対した戦闘センスだな」

「おほめに預かり光栄ですわ」

 

 スカートの裾をつまみ上げ軽く会釈するピーチ姫。しかし頭では次の攻撃を考えていた。

 

(想像以上に固いわ…そして速い…相手の攻撃事態は単純だけど、それゆえに迷いがなくてやっかいね…)

「いつまでそんな軽口を叩いていられるかな?」

 

 先程までよりさらに速いラッシュ。ピーチ姫は回避に専念した。

 

(このままではこちらが参ってしまいますわ…相手は“疲れ”を感じないみたいだし…)

 

 握りこぶしで殴ってきたイワンテをかわしバック宙で再び距離をとる。空振りしたイワンテはその場で何回か回転し、フラフラしたあとすぐにピーチ姫を探しまた拳を握って突っ込んでくる。

 

「考える暇もありません…わ!」

 

 ギリギリまで引き付けて右にかわす。しかし、かわした方向がよくなかった。右側はイワンテの手のひらの方向、つまり指が折り畳まれている方向だ。イワンテはピーチ姫がかわした瞬間指を開き、四本の指で突いてきた。

 

「ぐっ…!?」

 

 突然のことで回避が間に合わず攻撃が当たってしまう。しかし、回避したのと同じ方向への攻撃だったので威力はかなり押さえられた。それでも少しダメージを受けたピーチ姫。

 

「……っ!」

 

 受け身をとった時に左の横腹に痛みを感じた。だが息つく暇もなくイワンテは攻撃をしてくる。それを避けるピーチ姫、だが次第に距離が縮まっていく。

 

(このままでは負けてしまいますわ…)

 

 追い詰められたピーチ姫、しかしその時脳裏にある言葉が浮かんだ。

 

『“波動”の力は相手の中の力も利用するんです』

 

 ピーチ姫ははっとなった。イワンテの攻撃を下にかわし、上から指を突き立ててきたので隙間を上手く通り抜け脇腹の鈍い痛みに耐えながら距離を開ける。イワンテは指が地面にめり込み抜くのにバタバタしている。

 

(“波動”の力…そういえばルカリオさんに教えていただきましたわ)

 

 ピーチ姫の意識が過去に戻る。

 数ヵ月前、プププランドに行ったときにたまたまメタナイトのもとに来ていたルカリオに“波動”を教わっていた。“波動”とは生物のもつ生命エネルギーや無機物のもつオーラなどのことをいう。それを感じとり自在に操れるようになることで戦闘においてかなり有利になると思ったので教わることにした。

 初めは苦戦したが、普段使ってる魔法に近いものを感じたのでコツを掴めばあとはすぐに我が物にした。

 

 意識が現在に戻る。視線の先でイワンテの指が抜けそうになっている。ピーチ姫は呼吸方法を少しかえ、一気に距離をつめる。イワンテが指を抜ききる。そしてピーチ姫の接近に気づき拳を握る。ピーチ姫はイワンテの手前で止まり右足を後ろに引き右手を握る。右手に魔力をまとわせるように波動を蓄える。

 

(相手に自分の魔力を流し込むイメージで…)

 

 波動が右手にたまったのを感じたピーチ姫は握った拳を開き手のひらを前に向ける。そして一気に息を吐き出し無酸素状態を一時的に作り出す。そして、

 

(“はっけい”!)

 

 引いていた手をつきだしイワンテの指に押し当てる。同時に表面からの衝撃と内から外にいく衝撃が同時に発生し、先程の二倍の衝撃がイワンテの指を襲った。すると、時間差でイワンテの指にひびが入った。それからすぐに砕け散る。

 

「!!?」

 

 驚いたイワンテは慌てて身を引く。すかさずピーチ姫は一歩踏み出しイワンテが身を引くよりも素早く距離をつめ今度は両手をイワンテの指に押し当てる。

 

「ふっ!」

 

 さらに波動。今度は時間差なくイワンテの指が砕けとんだ。

 

「えっ?えっ?」

 

 突然砕け始める自分の指を見てパニックに陥ったイワンテは中指と人差し指がなくなった状態でなんとか弱点を隠そうとじゃんけんのチョキを握った。残りの三本だけでもなんとか(じゃくてん)隠せる。

 だが、この時点でイワンテの行動は完全に間違っていた。“防御”ではなく“回避”に専念すべきだった。動きが止まりイワンテの視界が遮られたことによりピーチ姫は簡単にイワンテの横につくことができた。小指の付け根あたりを狙う。

 

(自分の体に力を入れるのでなく…力を相手に流し込むイメージで…)

 

 息を吐き出し体内の酸素量を調節する。体の中の力の流れに集中し、その流れを自分の手のひらに集中させ一気に放出する。

 

「はっ!」

 

どがあぁぁん!

 

 豪快な破壊音と共に親指が碎け飛ぶ。そのまま反対方向に回り込み小指の方に手をあてる。

 

「ふっ!」

 

 今度は小指と薬指が吹き飛んだ。指がすべて吹き飛び手のひらだけになってしまった。

 

(くっ、このままじゃ弱点が隠せない…!)

 

 ピーチ姫もそれを狙っているらしく距離をつめる。しかしイワンテはまだ奥の手があった。

 

「これでどうだ!」

 

 イワンテはぐっと目をつむった。イワンテの本当の弱点対策は“目を閉じること”だ。イワンテのまぶたはマリオのパンチですら防いでしまう高い衝撃吸収があった。しかも完全に隙間もなくなるので針一本通らない。

 

「ふはははははははー!勝つことはできなくなったが、これで負けることもなくなったぁ!どうだ!?俺達を完全に倒さなければここは通れない!」

 

 イワンテは目を閉じたまま勝ち誇った。だが、目を閉じれば当然視界は完全に閉ざされる。なのでピーチ姫のスピードが上がったのに気づかない。

 ピーチ姫はイワンテのすぐそばまで行くとイワンテの下部を足払いの要領ですくいあげる。

 

「むおっ!?」

 

 イワンテは目を下にして倒れこんだ。

 

「まさかオレを倒して重みで目を潰そうとしたのか!?無駄だと言っているだろうがぁ!!キャン!?」

 

 突然イワンテの背中、手の甲にあたる部分に何かが乗るような、下に押し付けるような状態になった。イワンテの上ではピーチ姫が足でイワンテを押さえつけている。

 

「確かに、先程触ったまぶたの感触を考えると今の私の“波動”では吸収されてしまうでしょうね」

 

 ピーチ姫の顔が無邪気にそして冷酷に歪む。

 

「それでは、“目の周り以外を削り取り”ますわ」

「へ?」

 

 イワンテが言葉の意味を噛み砕くまでにピーチ姫は攻撃を開始した。

 

「りゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 “波動”を込めたラッシュをイワンテに連続でたたき込む。イワンテは抵抗できないまま内部から破壊され目玉だけがその場に転がった。

 

 

 

 「ふぅ、終わりましたわ」

 

 ピーチ姫は呼吸を戻した。イワンテの体を構成していたレンガ状の岩は完全に砕けちり弱点の目玉だけが残っていた。目玉が弱点で本体のイワンテはまだ言葉を発することができる。

 

「うぅ~、負けてしまったぁ」

 

 それを見ながらピーチ姫はため息をついた。

 

「今回はなんとか倒せましたが、この“波動”まだ実戦では使えませんわね、頭で考えてしまいます。この敵には有効に働きましたが、ルカリオさんやマルス王子、メタナイト卿のような手練れが相手だったら絶対負けていましたわ。考えずに使えるようにさらに特訓!ですわね」

 

 ピーチ姫の独り言に絶句するイワンテ。初めて使う戦術をあそこまでうまく使っておきながらまだ未完成だと言うからである。

 

(ピーチ姫、底が知れない!)

 

 今更恐怖を感じているとピーチ姫がイワンテの目玉の方を見下ろした。笑顔。その手にはゴルフクラブ。なにされるか察したイワンテの目玉は慌てだした。

 

「待って!見逃して!入り口を開けるから!」

 

 しかしそんな要望をピーチ姫が聞くはずもなく、ゴルフクラブを大きく振りかぶる。

 

「わたしを本気で倒そうとしていた敵が今更なにを言っているんです?」

 

 笑顔。イワンテの目玉はめげずに交渉しようとする。だが、もうしゃべるのは無理だった。

 

「イヤァ!!」

 

 キレイなスイングがイワンテの目玉を捉えた。

 

「…!」

 

 イワンテはゴルフクラブが当たった瞬間光の砂になって消し飛んだ。ピーチ姫はゴルフクラブをアイテムBOXにしまうと手のひらをパンパンと払った。

 

「ふぅ、なかなかいいスイングができましたわ。ていうかゴースト族のあなたは簡単に復活できるじゃない」

 

 少しクールダウンのストレッチをしたあとM・キノピオとレサレサのもとへ向かった。

 

 

 

 ピーチ姫がイワンテを倒したのより少し後、M・キノピオもなんとか勝負を決めていた。

 

「わたくしがまぶたを“透明化”させているうちに早くトドメを!」

「わかりました!そりゃあぁぁ!」

 

 M・キノピオが渾身の一撃をイワンテの目玉に打ち込む。レサレサの“透明化”のおかげでまぶたをすり抜けた。

 

「ぎゃああああ!」

 

 断末魔の叫びと共に消滅するイワンテ。M・キノピオは呼吸を乱しながらその場に座り込んだ。

 

「ハァハァ…ぜぇぜぇ…やっと倒せた…」

 

 M・キノピオはイワンテを倒すために力にまかせてパンチを叩き込みまくった。しかし、イワンテの体は固くヒビ一つ入らなかった。まぶたに攻撃しても威力が吸収されてしまったので、最後の手段でレサレサの“透明化”の能力わー応用してなんとか決着がついた。

 

「まったく、世話がやけますわね」

「はぁ、レサレサ嬢、ありがとうございました」

 

 M・キノピオは徐々に呼吸を整えながらレサレサに感謝の意を示した。そしてゆっくりと立ち上がった。

 

「ふぅはぁ、早く姫の助太刀をしなくては…」

「あら、こっちも終わったのね」

「え?姫?」

 

 M・キノピオは目の前にやって来たピーチ姫を見て困惑した。ピーチ姫もイワンテを倒したようだった。しかも一人で。なのに目の前のピーチ姫は多少衣服は乱れているものの、呼吸がまったく乱れていない。

 唖然としていると奥の方で何かが開く音がした。見ると下へと続く階段が現れていた。

 

「どうやら道が開けたみたいね」

「この暑い場所ともオサラバですわね」

 

 ピーチ姫とレサレサは並んで歩き始めた。主の後ろ姿を見てM・キノピオは改めて思った。

 

(うちの姫様は本当に規格外だなぁ)

「ちょっとマッスルぅー?早く次にいくわよ!!」

「は、はい!!」

 

 ピーチ姫に呼ばれM・キノピオは慌てて二人のもとに走っていった。

 




今回使った“波動”についてこの作品内での他の似たような魔法との違いを説明させていただきます。

「強化魔法」
対象の部分の筋力などを強化します。攻撃自体は物理攻撃です。
「付加魔法」
対象の部分に魔法を付加します。物理攻撃力はあがりません。そのかわり、属性を付与したり、特殊な効果を追加できます。
「波動」
体の中の気の流れを操ります。攻撃力は変わらず魔法攻撃に分類されませんが、相手の内部に攻撃したり、気配を敏感に感じれるようになったりします。

といった感じです。

次はW3です。ちゃんと読んでいただけるように頑張ります!
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