Fate/Digital traveller   作:センニチコウ

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第九話 心残り

 今度こそ白乃と別れ、図書室から出る。

 アリーナに向かう前に、念のため一通り校舎を回る。しかし、特に目新しいものは見つからなかった。

 それならさっさとアリーナに向かおう。図書室で予想以上に時間を使ってしまったし。

 そう思い、できるだけ早足で廊下を歩く。

 

 はて、なんかこの状況、前にもあったような気が。

 

「ちょっと待ったぁ!!」

「うわぁ!?」

 

 したのは間違ってなかった!

 

 だがしかし、再び気を失うなんて愚かなことはしない。

 踏み出した足を軸に回転することで、何とか激突は回避する。しかし、相手はそのまま進ませてはくれなかった。

 なぜか私に向かって手が伸ばされる。その手は払いのけ、ぶつかりそうになった相手と向かい合った。その相手は、予想通りの人物。

 

「なにしてんですか、藤村先生」

「いやぁ、ごめんごめん。つい手が出ちゃった」

 

 なんでつい手が出るんだ……。

 それに、なんで私はまたこの人とぶつかりそうになっているんだろう。

 早足か、早足だったのがいけないのか?

 

 いや、落ち着け。早足だった私も悪いけど、藤村先生だって悪い。いきなり人の目の前に飛び出してくるなんて。

 前回があったから避けられたけど、これが私じゃなかったらぶつかっていたんですよ。 

 

「ごめんごめん、この前頼んだものが気になっちゃって。お陰で夜も8時間しか眠れてないのよ!」

 

 私の軽い説得ものらりくらりと躱されてしまった。次から早足はやめよう、と決意する。二度あることは三度あると言うし。それに、また同じことが起こりそうな気もする。

 

 それにしても、8時間睡眠って。とても理想的な睡眠時間じゃないか。

 だがまあ、夜も眠れないなんて言われるよりは遥かにいい。

 生徒からタイガーと呼び慕われていたこの先生が、私のせいでそうなったと思うと……想像しただけで罪悪感が……。

 

「これ、頼まれてた剣道着です」

 

 そうなる前に渡してしまおう。

 端末から剣道着を取り出すと、先生は袋の口を解き中を覗きこんだ。

 

「うん。ちゃんと一式、全部揃ってるわね」

 

 中身の確認を終え、先生は慣れた動作で袋を肩に掛けた。

 助かったと笑う笑顔が見れただけで、これを取りに行った甲斐があるというものだ。

 

 さて、次は私が交渉する番だ。

 

「あと、これが一緒に入っていたんですが……よければ私に譲ってくれませんか?」

 

 装備していた木刀を外し、具現化して先生に見せる。

 先生は木刀を手に持ち様々な角度から眺めると、大きな目をキラキラと輝かせた。

 

「これ、もしかして枇杷の木でできてたりする!?」

「え、ええ。そうみたいですけど……」

 

 急に上がったテンションの高さに、思わず後ずさる。端末に書いてあった説明通り、この木刀はそれなりの代物らしい。

 これはだめかな?

 

「今じゃ中々お目にかかれない代物よ。よかったわね!」

「え、はい」

 

 あっさりと木刀は返された。

 そのまま欲しがると思っていたから、少し拍子抜けだ。いや、くれるのはいいことなのだけど。

 

「あ、その顔、私がその木刀を欲しがると思ってたでしょ」

「うっ」

 

 す、鋭い。この人、洞察力もあるし勘もいいからな。隠し事はあまりできない。

 決して、私の顔に出ていたわけではないと弁解しておく。

 

「そりゃあ、欲しいっちゃあ欲しいわよ? でも、それを見つけたのはヴィオレットさんじゃない。だから、それはあなたのものよ」

 

 大切にしなさい、と先生は言う。

 受け取った木刀を見つめる。たったこれだけのやり取りで、なんだかこの木刀が大切なものに思えてきた。先ほどより輝いて見えるのも、きっと気のせいではない。

 単純だな、私。

 

「はい、大切にします」

 

 だけど、そういうのも悪くない。

 木刀を再び端末にしまい、装備する。

 

 お礼を言おうと先生の顔を見れば、どこか申し訳なさそうな顔で笑っていて。

 なんか、嫌な予感がするぞ。

 

「ところで、もう一つお願いがあるんだけど……」

「え?」

 

 予想は的中した。あはは、と苦笑いを零す先生に頭を抱える。

 少し不安そうな目で見るのもやめてほしい。その目には弱いんだ。

 

「できることなら、まあ」

「ありがとう! 実はね、お弁当を猫に取られちゃって」

 

 猫に!?

 

「アリーナに持っていっちゃったの。多分2階層にあると思うから、取り返してきてもらえないかな?」

「あの、ちなみに中身は……」

「おにぎりよ」

 

 おにぎりなら多少日持ちするし、大丈夫、かな?

 

 猫とおにぎりという、予想もしてなかった言葉に戸惑い、困惑する。それでも、なんとか頷き了承すると、先生は礼を言いながら走り去っていった。

 小さくなっていく背中を見届け、呆然と立ち尽くす。

 まるで、嵐のような出来事だったな……。

 

『……おにぎりくらい食堂で食べなさいよ』

 

 あ、本当だ。でも言うのが遅いよ、ランサー。

 

 

 *

 

 

 第二層に足を踏み入れる。

 何もなかった一層とは違い、周囲にはボロボロの平屋がいくつが沈んでいた。薄暗い海のような空間も相まって、まるで沈没した町を見ている気分だ。

 

 緊迫した空気は感じない。小鳥遊たちはまだ来ていないようだ。

 なら、来る前にアリーナの探索を終えてしまおう。

 

 一つ目の部屋にいた一層と同じ敵を倒していると、視界に違和感を感じ目線をずらす。

 壁の奥に見える小さな部屋。そこは孤立しており、どこからも道は繋がっていない。

 でも、多分これは……。

 

「やっぱり、隠し通路か」

 

 壁に手を当てながら歩けば、それは案外すぐに見つかった。昨日のものと同じ構造だ。

 しかし、こちらの方が構造は安定している気がする。まあ、あっちは元々アリーナに組み込まれたものではないようだったし、そのせいだろう。

 

 隠し通路を通った先にあったのは、青色のアイテムフォルダ。基本購買で買えるアイテムが入っている。

 今回入っているのは、リターンクリスタルか。

 校舎へ帰還するためのアイテム。余程のことがない限り使うつもりはないが、沢山持っていて損はない。

 それは端末にしまいこみ、アリーナ探索を続ける。

 

 道中、道を塞ぐように壁が立っていたが、それは解除スイッチを押すことでなんとかなった。まあ、スイッチの前にいた新型の敵を倒すのに時間をかけてしまったのだか。その分、今後あのタイプに苦戦することは少くなるだろう。

 壁を抜け少し進めば、分かれ道に差し掛かった。真っ直ぐ進む道と、隠し通路を進む道。

 こういうのは、隠してある方に正解の道があるのが定石だよね。行き止まりだったとしても、なにか重要なアイテムがあるだろうし。先にこっちに行ってみよう。

 

 隠し通路を通り抜けると、そこは下り坂になっていた。折り返し地点にいる蜂型のエネミーを相手にしつつ、道を下っていく。

 戦っては下り、また戦っては下る。それを数回繰り返し、ようやく一番下に辿り着いた。

 

「青の、アイテムフォルダ」

 

 思わず口に出してしまった。それぐらい衝撃的だったのだ。

 今下ってきた坂道は長くて急なものだった。しかも曲がり角の度に敵がいるから、ここまで来るのにそれなりの時間と労力を使ったのだ。その結果が、これ一つ?

 いや、まだこの中身は分からない。もしかしたら、購買では中々買えないアイテムが入っているのかも。希望を捨てちゃだめだ。

 

「……1000PPT」

「無駄足ね」

 

 ランサーの言葉が胸に刺さる。否定できないのが辛い。

 確かにお金は購買で買えないけどっ。それなりに大金ではあるだろうけど! もっとこう、別のアイテムがよかった。

 零れ出るため息を隠し切れず、肩を落とす。しかも、帰りはあの長い下り坂が上り坂になるんだ。憂鬱でしかない。

 再び出そうになったため息はなんとか抑える。ため息ばかりではよくない。気持ちを切り替えよう。

 

 隠し通路がないかだけ確かめ、来た道を戻る。幸い、さっき倒したエネミーは復活しておらず、スムーズに元のフロアに戻ることができた。

 でも、やっぱり一気に駆け上がるのは体力的に少しきつい。軽く乱れた息を整えながら、次に行く道を見る。

 

 こっちも坂道だけど、さっきよりは全然ましだ。距離もないし、そこまで急でもない。

 通路の入り口に立って下を見下ろすと、そこには四つ足で歩行する、まるで馬のようなエネミーがいた。今までのエネミーよりもかなり体が大きい。やろうと思えば、その背に乗ることもできそうだ。

 ただ、のしのしと歩く姿から予測すると、スピードはあまりないように思える。だけどその分、攻撃力と耐久力はありそうだ。

 ランサーとは真逆のタイプと言える。攻撃を受けないよう注意が必要だ。

 

「今回は攻撃をなるべく避けていこう。スピードはなさそうだけど、注意して」

 

 ランサーが頷いたのを確認して後ろに下がる。

 敵もこちらに気づき突進してくるが、やはり今までのエネミーと比べると大分遅い。お陰でランサーも、余裕をもって避けることができた。

 軽い攻撃は相殺し、重い攻撃は避ける。それを数回繰り返せば、攻撃パターンは読めてきた。

 

 アリーナで活動している敵性プログラム(エネミー)には攻撃パターンが設定されている。一巡の手数は6。

 6回攻撃してきたら別の、もしくは同じパターンで攻撃する。その繰り返しだ。

 そして今戦っている敵は、とても単純な攻撃パターンをしている。手数を間違えず、一手目さえわかればあとは簡単だ。

 スピードがない分避けられる心配もない。馬のようなエネミーは、なすすべなく消滅した。

 

「ふぅ」

 

 やっぱり戦闘は慣れない。肩に入っていた力を抜き、一息つく。

 だけど、休んでいる暇はない。小鳥遊が来る前に、できるだけアリーナの探索を進めなければ。

 

 さらに奥に進んでいくと、再び分かれ道に差し掛かる。

 直感的には左に行きたいところだけど、さっきは私が選んで間違えちゃったし。ここはランサーに選んでもらおう。

 

「ランサーはどっちに行ったらいいと思う?」

「……右、かしら」

 

 少し考える仕草をして、ランサーは右側の道を選んだ。

 なら先にそっちに行こう。違ったらそれはそれで構わないし、あっていたなら左はまた今度行ってみればいい。

 

 右の通路を進んでいくが、すぐに行き止まりとなってしまった。

 アイテムすらない。ということは、左の道が正解だったのか?

 

「いえ、こちらで合ってるみたいよ」

 

 来た道を戻ろうとする私をランサーが引き留める。

 彼女が立ち止まり視線を向ける先には、先ほどのように孤立した小部屋があった。なるほど、隠し通路か。

 隠し通路を抜けると、そこは和室のような空間になっていた。

 壁はボロボロで、柱も朽ちてしまっている。天井は一応残っているが、少しでも暴れたら落ちてしまいそうな不安定さがある。アリーナである以上崩れることはないだろうが、ここで戦闘はしないでおこう。

 

 和室に設置されたアイテムフォルダは二つ。そのうちの一つ、重要なアイテムが入っているオレンジ色のフォルダを先に開ける。中に入っていたのは礼装だ。

 早速端末にしまい込み、詳細を調べる。

 

「名前は『聖者のモノクル』。効果は『view_status()(解析)』、だって」

「役には立つの?」

「うん。サーヴァントは分からないけど、エネミー相手なら確実に」

 

 ただ、端末には『敵対者の情報を表示する』としか書かれていない。次に出会った敵に使って、どれほどの効果があるのか試してみないと。

 手に入れた礼装を新たに装備しつつ、もう一つのフォルダも回収する。ちなみに、入っていたのは魔力回復の効果がある『魔術結晶の欠片』だった。

 最後に、さっきも見かけたスイッチを押しておく。これがここにあるということは、左の道は壁に阻まれていたのだろう。正解は向こうだけど、一度こっちに来なくては先に進めない。やっぱり、ランサーに選んでもらってよかった。

 

「よし、それじゃあ先に……っ!?」

 

 進もうか。そう言おうとした瞬間、アリーナの空気が一転する。

 これは、まさか。

 

「敵が来たようね」

「そう、みたいだね」

 

 この緊迫した空気は、サーヴァントのものだ。

 小鳥遊がアリーナに踏み込んだのだろう。彼女があの長い坂道を無視するとして、ここまでくるのに十分もかからない程度、だろうか。

 

「どうするの?」

「……今は些細な情報でも欲しい。どこかで身を隠して、様子を見よう」

 

 とはいっても、アリーナの壁は半透明。曲がり角で身を隠しても見つかる可能性がある。

 そうなると、隠れるのは今いるこの和室。ボロボロとはいえ、壁があって外側からは見えないここがいい。大分見にくくはあるが、壁の隙間から周囲の様子もみることができる。

 でも、さすがに会話を聞くことは難しい。盗聴器なんてもの持っているわけないし……。

 

「……アリーナをハッキングしよう」

 

 それなら、と思い付いたのはそんな考え。できる確証もない、咄嗟の思い付き。

 

「へえ、大胆なこと考えるのね」

「場所はひとつ前のフロア。ここにくるために分かれ道があるところ。ここにいても会話が聞こえるように、なんとかしよう」

「なんとか、って」

「それしか方法が考えられないんだ。それとも、他になにかある?」

 

 あるのなら是非とも教えて欲しい。いや、本気で。

 私だってこの案が荒唐無稽だという自覚はある。できるなら、もっと確実な案が欲しいところだ。

 

「いえ、面白いしそれでいきましょう」

 

 面白い、って。それで目的が達成できなかったら困るのだけど。

 まあでも、本当に無理なことだったら彼女だって止めるだろう。それがないということは、案外できるという確証になるのかもしれない。

 

「時間がない。ランサーも手伝って」

「わかったわ」

 

 ペナルティが怖いし慎重に行きたいところだが、やはり時間が足りない。急いでハッキングを進めないと。

 

 そこまで深くハッキングする必要はない。会話が聞こえるようにすればいいだけ。

 

 アリーナの壁の構造に解析をかける。だが、そう簡単に解析を進めることはできない。時間があればこのまま進めればいいのだけど。なんとかして時間短縮が図れないだろうか。

 

「コードキャストを使いなさい。さっき手にいれたでしょう」

「っなるほど」

 

 ついさっき手に入れた礼装のコードキャストは解析。こういうことにも役立つのか!

 

view_status()(解析)

 

 魔力を流し、短く呪文(コード)を唱える。

 視界がハッキリとし、壁の構造が浮かび上がる。モノクルが礼装となっているだけに、視界に影響が出たらしい。少し違和感があるが、これでハッキングが進められる。

 

 ランサーのサポートもあり、想像よりも早くハッキングを終えることができた。

 魔力を通し意識を集中させると、少しずつだが声が聞こえ始めた。どうやら、既に小鳥遊たちはあのフロアに到達していたらしい。エネミーと戦う音も聞こえてくる。

 

「ハッキング完了。どうランサー、聞こえてる?」

「こっちは問題ないわ。でも、音質が悪いわね」

「それは我慢して。もうこれ以上時間はかけられない」

 

 確かに多少ノイズが混じっているが、それも微々たるもの。会話を聞くのに影響はない。むしろ、内容に集中すれば聞こえなくなるくらいには小さい。

 それに、既に小鳥遊たちはそこにいるんだ。これ以上凝っていたら会話を聞くことはできない。

 

 ふいに剣劇の音が途切れ、一際大きく高い音が響いた。どうやらエネミーを倒したらしい。小鳥遊の息をつく声も聞こえてくる。

 さて、できればこのまま立ち止まって、なにか情報になることを喋ってくれると助かるのだけど。

 

「マスター、一度ここで休憩としましょう」

 

 っ来た!

 二人の会話に神経を集中させる。ここからは一言も聞き逃してはいけない。

 

「でも、ヴィオレットさんたちは既にいるのでしょう?」

 

 小鳥遊はセイバーの提案に難色を示す。

 私たちの存在を警戒しているようだ。休憩している間に攻撃されないか心配なのだろう。

 至極まっとうな意見だが、そのつもりはないから休憩してくれ。

 

「はい。ですが無理は禁物です。幸い、すぐ近くにサーヴァントの気配はなく、えねみいのりすぽおんにも時間はある。少しの休憩なら問題ありません」

「……なら、お言葉に甘えるわね」

「はい、周囲の警戒はお任せください」

 

 セイバーの説得の末、小鳥遊は渋々ながらも頷いた。

 しかし、セイバーはよくリスポーンなんて言葉を知っていたな。確かゲーム用語だったと思うんだけど。

 

 まあ、そんなことは置いといて。

 壁の隙間から向こうのフロアを覗く。見にくくはあるが、二人の姿を確認することができた。

 小鳥遊は地面に座り込み、セイバーは刀に手を掛けながら周囲を警戒している。流石に盗聴されていることには気づいていないみたいだ。

 

「あ、そうだわ。ねえ、貴女は聖杯に何を願うの?」

「いきなりどうしたのですか?」

「ちょっとした興味よ。聞かせてちょうだい」

 

 唐突に、小鳥遊が会話を切り出した。突然の話題に、セイバーの声からは困った様子がうかがえる。

 しかし無碍にすることもできず、彼女は軽く周囲を見渡した後、小鳥遊の近くに近寄った。

 

「私に叶えたい願いはありません。既に死した身でありますから」

「そうなの?」

「はい……ただ、そうですね。無念なら、あります」

 

 セイバーの声に、後悔の色が宿った。

 無念。つまり、彼女の心残り。それを知ることができれば、少しは真名に近づくことができるかもしれない。

 

「私は生前、あの方の最期を看取ることができませんでした。無念の極みです」

「知っているわ。本で読んだことがある」

「ああ、そのことは後世にまで伝わっているのですね」

 

 彼女の心残り。それは、誰かの最期を看取れなかったこと。

 あの方、というのが誰かまでは分からないが、セイバーにとって大切な人に違いはない。

 それが分かるくらい、彼女の声色は後悔に満ちていた。

 

 そのことが後世にまで残っていることを知ると、彼女は顔を軽く赤らめ、悲しげに視線を下げた。

 その様子に、小鳥遊は慌てたようにフォローに回ろうとする。

 

「ごめんなさいっ。私、そんな顔をさせるつもりはなかったの」

「構いません。あなたが優しい方なのは存じております」

 

 微笑みながら気にしていないと言うセイバーに、小鳥遊は安心したように礼を言った。

 いいコンビだと思った。主従というよりも、まるで友達のような感じがする。

 羨ましい。少しだけ、二人のそんな関係に嫉妬した。私とランサーは彼女たちほど仲良くなれていないから。いつか、彼女たちのような関係になれるだろうか。

 

「ねえ、その、よければ貴女の生前の話をもっと聞かせて頂戴。貴女のこと、もっと知りたいの」

「ええ、勿論です。ですがマスター、ありいなで話すことではありません。どこで敵に聞かれるかわかりませんから」

「あっ。そ、そうよね、ごめんなさい」

「いえ、私も先程までうっかり口をこぼしてしまいました。お互い様、というやつですね」

 

 笑いあう二人の声が聞こえる。

 セイバーからの指摘もあったし、これ以上の情報は入ってきそうにない。休憩を終えた二人が左の道に入ったのを見届け、魔力を切る。

 

「これでまた絞れそうだね」

「でも、まだ決定打に欠けるわ。まだまだ情報の収集は必要ね」

 

 平安時代の武将で、誰かの最期を看取れなかった人物。

 確かに情報はまだ抽象的で、真名に至るには情報が足りない。

 

「これからどうするの?」

「無視はできない。二人を追いかけよう」

 

 一つでも多くの情報を得るためにも、戦闘は仕掛けた方がいい。

 左にあるだろう壁はさっき開けてしまった。もしかしたらスイッチを押したマスターしか通れない可能性もあるが、実際にどうなっているかはわからない。

 二人が奥深くに行ってしまう前に、追いかけた方がいいだろう。

 

「ランサー」

「行けるわ。くだらないことを聞かないで」

 

 戦えるか聞こうと思ったのだが、ランサーは言葉を被せ不機嫌そうに答える。

 いや、今のは明らかに私が悪い。そんなこと、聞かなくてもわかることだった。

 

「ごめん。愚問だった」

「ふん」

 

 サーヴァントと戦うのは今回で二回目。しかも相手の真名は未だ分からず、謎の方が多い。エネミーとは比べ物にならないくらいの強敵だ。

 正直、不安しかない。だが、今はその不安を少しでもなくすために戦うのだ。

 それに、今回は礼装だってある。前回よりはランサーのサポートもできるだろう。

 

 一度、深く深呼吸をする。吸って、吐いて。

 奥へと進もうとする小鳥遊たちの背を追うため、今度こそ走り出した。




今までで一番長い話になってしまいました。しかし区切りどころもわからなかったのでこのまま投稿。

今回は、原作でいうMatrix2の解放まで。
調べ方が悪いのかあまり情報が集まらず。さらにこの作品自体見切り発車なところもあるので、今回の話は難産でした。

まだ真名は出ていないですが、もしどこかおかしいところがあれば教えてもらえると助かります。
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