Fate/Digital traveller 作:センニチコウ
抜けていることに気づいて、改めて投稿します。
大変申し訳ございませんでした……!
無事にアリーナから校舎に帰り、胸を撫でおろす。
特に怪我もなく、更には記憶も取り戻せた。いい収穫だ、と言いたいところだが。
「はぁ……」
なんだか、少し気が滅入っている気がする。
思い浮かぶ原因は、ついさっき取り戻した記憶だけ。でも、大変な記憶ではあっても嫌な記憶ではなかった。
だから、多分違う原因だと思うけど……。
「いや、やめよう」
嫌な予感がする。
今思い出してしまったら、足元が崩れてしまうような。そんな予感。
はぁ……さっさと食堂に行こう。
白乃と話せば、この嫌な気分も吹き飛ぶはずだ。
小さなため息を飲み込み、食堂へ行こうと角を曲がる。
そしてようやく、廊下がざわめいていることに気が付いた。
また、何かあったんだろうか。
「─────白乃?」
少し進んだ先に、友達の後ろ姿が見えた。
だけど、明らかに様子がおかしい。
いつも真っ直ぐピンとしてる背筋は折れ、足取りはふらついて危なっかしい。
あのままでは、いつ倒れてもおかしくはない。
一刻も早く保健室に連れて行かないと……!
「っ白乃!!?」
体を支えようと一歩を踏み出した瞬間、彼女の姿をぶれる。
前に倒れこむ白乃に、手は届かない。
「奏者っ!」
だけど、彼女が倒れこむことはなかった。
突然現れた、真っ赤なドレスを着た金髪の女性。その人が、倒れこむ白乃の体を支えたのだ。
きっと、白乃が契約しているサーヴァントだ。
倒れそうになるのを見て出てきたのだろう。でも、それはまずい。
ざわめきが大きくなる。
ただでさえ向けられていた視線が、サーヴァントを観察するようなものに変わってしまった。
慌てて駆け寄り、サーヴァントの姿を隠すように視線の前に立ち塞がる。
片方からしか隠せないが、ないよりはましなはずだ。
「変わります。貴女は、あんまり姿を見せない方がいいと思うから」
「……貴様と
警戒している鋭い視線が刺さる。
そういう視線が向けられることは覚悟していたが、こんなに近いと想像以上に怖い。
だが、こちらも引くわけにはいかない。
見た目だけで真名に近づく場合もある以上、下手に姿を見せるのはまずい。
なんとか任せてはくれないだろうか……。
「セイ、バー……」
「っなんだ、奏者」
「クレアは……大丈夫、だから……」
「……わかった」
女性、セイバーは納得していないながらも、私に白乃を預けてくれた。
しっかりと支えれば、セイバーはそれを見届け消えていく。霊体化したのだろう。
「歩けそう?」
「う、ん。なんとか……」
「……ごめん。持ち上げるよ」
「えっ……!?」
返事は待たない。
私としては彼女のことを思ってしたことだが、保健室に行くのを邪魔したのも私だ。
少しでも早く治療をするためにも、ここは背負っていった方が早い。後できちんと謝ろう。
手早く上着を脱いで、膝裏に腕を差し入れ持ち上げる。
ついでに脱いだ上着でスカートを覆う。これで、中の下着も見えないはずだ。
「ちょっ、クレア……!」
「大丈夫。保健室まですぐだから」
「そういうことじゃ、っぅ……」
白乃の抗議は無視する。
顔色は悪いし、今だって苦しそうなうめき声をあげた。
本当なら動くのも辛いんだろう。やっぱり、抱き上げたのは正解だった。
しっかりと抱え込み、廊下を駆け抜ける。
その勢いのまま保健室に飛び込むと、桜が驚いた顔をしたまま固まっていた。
「いきなりごめん! 白乃を見てほしいんだ!」
「は、はい! こちらのベッドへどうぞっ」
案内されたベッドに白乃を寝かせる。そこからは、桜の仕事だ。
カーテンは閉め切られ、奥で何をやっているかは分からない。
だけど心配はない。桜は健康管理AIだ。白乃に危害を及ぼすことはありえない。
とにかく今は、治療が終わるのを待つだけだ。
……でも、どうして白乃はあんなにも体調が悪かったんだろう。
少なくとも、朝であったときは体調が悪いようには見えなかった。
となると、やはりアリーナで何かあったんだ。実際、二の腕辺りに小さな切り傷があった。
けれど、見た感じそれ以外の怪我はなかった。なら、考えられるのは……。
「えと、白乃さんのサーヴァントさん。治療が終わりました」
「セイバーでよい。そやつも余のクラスには気づいておるだろう」
気を遣った桜に、セイバーはそう返す。
チラリと向けられる鋭い視線に、私は苦笑いで返すしかなかった。
「それで、奏者の様子は?」
「今は眠っていますし、傷も二の腕の切り傷だけでした。しかし、随分強力な毒に侵されていました。私の
やっぱり、毒か。
しかも桜の力でも解毒できない可能性があるほど強力なもの。
そんなものの治療に、私が手伝えることは何もない。
でも、このまま帰るのも不安だ。帰る前に、一度様子を見ておこう。
「桜、セイバー。白乃の様子、見てきてもいいかな」
「あ、はい。起こさないように気を付けてくださいね」
「……」
セイバーからの返事はなかったが、止められもしなかった。
鋭い視線を背中に受けながら、カーテンの奥にいる白乃のところに向かう。
桜の言う通り、彼女はぐっすりと眠っていた。
まだ顔色は悪いが、苦しそうではない。むしろ、顔色さえよければ普通に眠っているように見えるくらいだ。
『これ、イチイの毒ね』
「分かるの?」
『これでも毒には詳しいの……それにしても、彼女の相手はあのアーチャーなのね』
え……?
どうして、ランサーがそんなことまで知っているんだ?
毒のことは分かる。彼女自身が言っている通り、毒に詳しいから分かったんだろう。だから、それはいい。
でも、会ったこともない相手のクラスが分かるのは、いくらなんでもおかしい。
確かに、相手がアーチャーだと予想できる要素はある。だけど、ランサーは確信を持っているようだった。
「どうして、そんなことまで分かるの」
『……さぁ、どうしてかしら』
愉しそうな声色に、答える気が一切ないのだということが分かる。
ここではこれ以上問い詰めることもできない。
彼女もそれが分かっていて、あんな下手な誤魔化しをしたんだろう。
はぁ……。
仕方がない。まだランサーとの仲も深まってない今、下手に問い詰めても関係を悪くするだけだ。
気になるけど、もっと仲良くなってから聞くことにしよう。
……こう思うのも、一体何度目だ。はぁ……。
「早く、よくなってよ」
顔色の悪い白乃の頬に手を当てる。
そして────。
「──────────」
…………あれ?
なんか、今一気に疲れた気がする。
校舎に戻ってから気は滅入っていたし、元々疲れていたのかもしれない。
今日は何もせずにすぐに休んだ方がよさそうだ。
「桜。白乃のこと、お願いします」
「はい、お任せください。クレアさんもお気をつけて」
その会話を最後に、保健室から退室する。
明日の朝、また様子を見にこよう。
食事もしてないだろうから、軽いお見舞いの品も持って。その時までに、少しでも元気になっていてほしいな。
*
夜も更け、全ての施設にロックがかかった。
マスターとサーヴァントは
違反行為さえしなければ、今校舎で活動する人間はいないだろう。
とはいえ、今日は例外もいる。
今現在も保健室で治療を行っている私と、白乃さんとそのサーヴァントだ。
白乃さんを侵しているイチイの毒は凶悪で、夜になっても治療は終わっていない。
少しずつ解毒は進んでいるけど、このペースで明日までに完治するのか……。
健康管理AIとしてはなんとかしたいところだけど、この調子じゃちょっと難しいかも。
それに、気になることもある。
「やっぱり、おかしいよね……」
二つの身体データを見比べる。
一つ目は、最初の診察のときに取ったときのデータ。
二つ目は、その次に取ったデータ。
この二つの間に治療は施してない、はずだ。
「毒の量が減ってる」
僅かだが、確かの体内にある毒の量が減っていた。
治療を施してないのにも関わらずだ。
決して自然に減ったわけじゃない。なにか、外的要因があるはずだけど。
「……まさかね」
なにかをできた人は、ただ一人。クレアさんだけ。
でも、クレアさんは記憶を失ってて、コードキャストもろくに使えないはずだし……。
それに、もしあの人がなにかやったとしても、彼女なら報告してくれると思う。
ならやっぱり、クレアさんは関係ないのかな。
「とにかく、今は治療が優先ですね」
決して悪いことではないし、今はとにかく治療だ。
明日までに、できる限り治療を施しておかないと!
三日目、アリーナから帰った後の話になります。
文字数は少なめですが、二十一話に追加する量でもないので、新たに投稿しました!
これからはこういった抜けに気を付けて投稿していきたいと思います。
どうか、よろしくお願いします。