Fate/Digital traveller   作:センニチコウ

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第三話 束の間の休息

 2-Bの教室の扉に端末をかざすと、軽快な電子音と共に鍵が開く音がした。

 中には予選で過ごした教室と何一つ変わらない光景が広がっている。机もあれば椅子もあるし、黒板に掃除道具入れまである。本当に普通の教室だ。違う点と言えば、人の気配が全くしないことくらいか。

 しかしここで寝泊まりするとなると少し環境が悪い。

 ベッドがないせいで、必然的に寝るのが硬い床か机の上ということになる。疲れをとるためにもそれは避けたい。

 

 いつの間にか姿を現したランサーも、殺風景な教室を見渡して軽く眉をひそめた。

 

「これが個室(マイルーム)? 本当になにもないのね」

 

 彼女もこの様子は想像していなかったらしい。

 私も同感だ。流石にホテルのような内装を期待していた訳ではないが、ここまでなにもないとは思ってもなかった。

 もしかして、家具とかも購買で買えたりするのだろうか。……あ、お風呂はある。

 

「普通の魔術師であれば内装の変更も容易いのでしょうけど……」

「へえ、そうなんだ」

 

 一緒に寄越されたジト目には気づかない振りをしておいた。

 

 それはともかく、先ほどのランサー言葉を思い返す。魔術師であれば、ってことはプログラムを変更するのかな? それなら、屋上で遠阪から教わったあのやり方を工夫すればできるかもしれない。

 手を軽く振るい、水色の画面を投影する。これも遠坂に教わった技術の一つだ。

 あのとき教えてもらったのはリード不能の探り方だが、今回はこの部屋のプログラムを探りだして、と……あった、これか。

 

「……へぇ」

 

 どこをどう弄るか、考えながらキーボードを打っていく。

 ベッドは二つ。大きいものと小さいものを。それから大きな机とそれに合う椅子を用意して。

 

「うん、まあこれぐらいか」

 

 元々あった学習机と椅子は消せば完成だ。壁紙や床は弄ってないためアンバランスさが目立つが、それは後回し。

 今は眠るだけの準備ができていればいいだろう。

 

「驚いた。貴女、多少のプログラミングはできるのね」

「え? ああ、そう言われれば」

 

 ランサーに言われて気づいた。普通にプログラムを変更していたが、私はそんなのを教わった記憶はない。

 それなのにできたということは。

 

「また失くした記憶の方か……」

 

 改めて、覚えていることを確かめてみる。記憶の方は全く思い出せないのに、知識の方は案外スラスラでてきた。

 初歩的な計算から、ハッキングやプログラミングなどの電子関係についてなど、色々な知識が思い出せる。

 しかし、その知識も中途半端なものだ。

 苦手な漢字についてはなぜか予選の授業で習った記憶しかないし、ハッキングを応用してなにかできた気がするのに、それがなんなのか思い出せない。結局、知識の方も忘れていることが多そうだ。

 

「……はぁ」

 

 嬉しいことと悲しいことを同時に知った時の気持ちってこんな感じなのか。

 ため息を隠すようにベッドに寝転がれば、想像以上の柔らかさにさっきまでの憂鬱とした気分が吹っ飛んだ。

 

 おおっ、これは結構いいベッドが作れたんじゃないか?

 いい感じのふわふわ感にごろごろしたい気持ちが沸き上がってくるが、なんとか我慢する。

 ランサーがいなければしたかもしれない。というかした。

 

 しばらくベッドの寝心地を堪能していると、段々と眠気が襲ってきた。うとうとと意識が曖昧になり、瞼が閉じ始める。このままでは寝てしまう。慌てて起き上がり頭を振ると、なんとか眠気を覚ますことができた。

 危ない危ない。まだ明日のことも決めてないのに寝てしまいそうだった。

 いいベッドを作った弊害か。明日の朝は起きるの辛そうだ。

 

 ベッドの縁に腰掛ける。

 ランサーも向かいに作ったベッドに腰掛けており、少しリラックスしているように見えた。これだけでもベッドを作った甲斐があったというものだ。

 

「そういえば、アイテム以外に君をサポートすることはできないの?」

 

 ずっと疑問だったことを口にする。

 

 今日行った初めてのアリーナ探索。

 そこでエネミーを二体同時に相手したとき、指示が遅れて彼女に怪我をさせてしまった。あの時私が敵を動きを止められていたら、と思うと口惜しい。

 アイテムにそういうものはないのかと探したが、今回見つけたのは治療用アイテムとここでの通貨だけ。他に能力強化アイテムなどはないのだろうか。

 

「コードキャストという技術があるわ」

「……聞いたことない」

「でしょうね」

 

 即答は酷い。

 

「コードキャストは魔術師が予めコードを設計・製造し、それに魔力を通して使う簡易術式(プログラム)のことよ。消耗型(ワンオフ)修得型(インストール)に分けられるわ」

 

 ワンオフは外付けのコードキャスト。その名の通り消耗品で、使用回数が決められている。

 インストールは体の霊子構造に組み込んで使う。威力は強力だが、その分術者に大きな影響を与えるため好む魔術師は少ないそうだ。

 

 だが、その二つとも今の私に使えるとは思わない。

 使うのならワンオフもインストールも一から作ることになるだろう。そうなると時間も知識も足りない。

 

「けど二つの中間に位置する礼装は、購買やアリーナで手に入れることができるの。今後使うのはこれね」

 

 礼装、というのは内部にプログラムを埋め込み身に付けることで半永久的に使うことができる代物らしい。しかも術者への影響もなく、素人でも魔力を通せば使える優れもの。他二つのデメリットを抜いて考えても、使いやすいように思える。

 

 ワンオフ型は時間があれば作るのもありだが、基本は礼装を駆使する方がよさそうだ。

 購買は……アリーナに行った後は使えないんだっけ。一応、見に行くだけ見に行ってみよう。

 

「あ、そうだ。ついでにご飯も食べてこようと思うんだけど、ランサーはどうする?」

 

 購買と食堂は同じ場所にあるからちょうどいい。電脳空間だからか空腹感はあまり感じないが、だからって食欲自体が無くなるわけでもないのだ。

 実際に食堂を使えるかどうかも知らないが、それを確かめるためにもこれから行ってみよう。

 

「……そうね、着いてくわ」

 

 少しの間をおいて、ランサーから返事をもらった。

 意外だと思いつつも、それは口に出さずに立ち上がる。

 もしかしたら彼女もなにか買いたいものがあるのかもしれない。あるいは校内で攻撃するマスターを警戒して、とか。後者は他のマスターに自分の情報を取られる可能性があるから少ないとは思うけど。

 

 

 *

 

 

 食堂では多くの生徒が座って食事をしていた。一部NPCと思われる生徒もいるが、その多くはマスターだ。

 近くに変な気配もほんの微かに感じる。やはりみんなサーヴァントを連れているらしい。

 けれど食堂の雰囲気は意外にも穏やかなもので、戦いをしていることを忘れてしまいそうだ。

 

「クレアも食事しに来たの?」

 

 ボーッと食堂を眺めていたら、突然後ろから誰かに話しかけられた。

 聞き覚えのある声。振り返ってみれば、予想通り白乃がそこにいた。

 

「うん、そんなとこ」

「なら一緒に食べない? 私もこれからなんだ」

 

 らしいと言えばいいのか、緊張感がないと言えばいいのか。

 いつもと変わらず接してくる白乃が少し眩しく見える。彼女は、私がマスターの一人だと分かっていないのか。

 

「……白乃は、私のことどう思ってるの?」

 

 気がつけば、そんなめんどくさいことを聞いていた。

 きっと、白乃との関係にちゃんと答えを出しておきたかったんだ。

 予選では友達だった。けどそれは与えられた役割の一つでしかない……本当に?

 

 私は疑っている。あそこでの関係は全て偽者であったと断じれば楽だろうに、彼女との関係を嘘にしたくないと思っている。

 だから白乃の答えを知りたかった。答えを知って、安心したかった。

 

「いきなりどうしたの?」

 

 当たり前の反応である。

 確認したかったとはいえあんな言葉はない。お陰で若干引いた眼で見られてる。

 恥ずかしい。真っ赤だろう顔を隠しながら、さっきの言葉を撤回しようと口を開いた。

 

「ごめん、なんでも」

「友達に決まってるじゃん」

「───」

 

 伝えられたのは、嘘偽りない真っ直ぐな言葉。私が友達だと、彼女は信じて疑っていない。

 ああ、本当に君は……。

 

「そんなことより早く行こう。席がなくなっちゃう」

 

 手を引かれる。

 目の前で揺れる茶色の髪に、思わず笑みが零れた。

 だけどいつまでも引っ張ってもらうわけにはいかない。繋いだ手を離して隣へ並ぶ。

 

 共に食券販売機に向かう途中、ふと彼女が何を食べるのか気になった。

 

「今日はなに食べるの?」

「麻婆豆腐」

「げっ」

 

 思い出すのは予選のときの記憶。あの時も、こうして白乃と共に食堂へきていた。

 そしてその日は普段食券には並んでない商品が並んでいたのだ。それが、麻婆豆腐である。

 鮮やかな赤に豆腐の白が映えたあれは、本当に人が作ったものなのか。見てるだけで感じる辛さに引いた記憶が鮮明に思い出せる。

 うぅ、聞くんじゃなかった。

 

「あれ?」

「っどうした?」

 

 白乃の声に記憶に沈んでいた意識を取り戻す。どうやらあれは私に物凄い印象を与えていたらしい。

 

「麻婆豆腐が、ない」

「……あ、そういえばあれ、期間限定だったっけ」

 

 確かそんなことが書いてあったような……。

 あからさまに落ち込んだ白乃に苦笑いを溢す。正直ほっとしたのだが、そのことがバレたら怒られそうだ。

 

 また食べれるよ、と励ましながら自分の分を選ぶ。色々種類があって悩むが、日替わり定食でいいか。

 出てきた食券を取り、白乃に場所を変わる。

 変わらず落ち込んだ雰囲気を纏いながら彼女が選んだのは、焼きそばパンとその他諸々。どんな心境の変化があって麻婆豆腐から焼きそばパンになったんだ。中華系頼むのかと思ってたのに。

 

「……あなたたち、仲いいのね」

 

 食事を受け取り席について雑談していると、遠坂がトレーを持ってやってきた。その上には白乃と同じ焼きそばパンが乗っている。もしかして流行っているのだろうか。

 

「対戦相手じゃないし、一人で食べても味気ないでしょ?」

「それはまあ、そうね」

「あ、対戦相手クレアじゃないんだ。よかった」

「「え?」」

 

 遠坂と声が被る。

 原因の白乃は気にすることなく焼きそばパンを食べているが、今変なことを言った自覚がないのか?

 

「まさか対戦相手を知らないの? 掲示板は見た?」

「不具合だって。発表は明日」

「……あんた、凄いわね」

 

 記憶の返却不備に対戦相手発表の延期。不憫というかなんというか、運がなさすぎじゃないか。

 

「白乃、これあげる」

「え、いいの? ありがとう」

 

 なんか少し心配になったので、白乃が好きなおかずをあげた。

 開かれた口に放り込んでやれば、幸せそうに顔を緩める。それがなんだか面白くて、もう一つ摘まんで近づけた。一つ目を飲み込んだ彼女は、再び差し出された箸に齧り付く。

 

「ほんっと、仲がいいのね」

「……っは!」

「え?」

 

 あまりに幸せそうに食べるのでもう一つあげようと箸を動かしていると、目の前にいた遠坂が変な視線を送ってきた。それに気づいた白乃が素早い動きで離れていく。

 頬は軽く赤に染まっており、目線は忙しなく泳がせている。加えて慌てたように言い訳をしていた。一体何をそんなに恥ずかしがっているんだ。

 

「これは、そう! クレアのパーソナルスペースが狭いからっ」

「別に普通でしょ」

 

 恨めしそうに見られるが意味がわからない。さっきの何がダメだったと言うのか。ただおかずを分けていただけじゃないか。

 不服だと態度で示すと、二人に揃ってため息をつかれてしまった。解せぬ。

 

 

 しばらくして食事も食べ終わった頃、初めにそれに気づいたのは白乃だった。

 

「ん? なんだか階段辺りが騒がしいね」

 

 驚きと困惑が混ざったざわめきが、確かに階段付近から広がっている。

 そちらに目を向けると、一人のマスターが堂々とサーヴァントを従え、食堂に入ってくる姿が見えた。

 

 赤に染められた学生服。金色の髪に翡翠の瞳。中性的な顔立ちの少年が、自信に満ちた笑みを浮かべ歩いている。

 他のマスターとは全く違う、一度見たら絶対に忘れないであろう圧倒的存在感。

 けれど私は彼の名を知らなければ、顔も見たことがない。校舎であんなに目立つ格好をしていたら、どこかで見ていると思うのだけど。

 

「レオ」

「知り合い?」

「ホームルームで紹介された……って、クレアはその時いなかったね」

 

 どうやら白乃は彼を知っているらしい。

 なんでも、私が逃げ出した日のホームルームで転校生として紹介されたとか。通りで私が知らないわけだ。転校生として役を与えられていたのなら、校舎で彼を見かけるはずがない。

 

「レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。西欧財閥の次期当主よ」

「西欧財閥……」

 

 屋上で遠坂に教えてもらった言葉だ。

 地上の60%のシェアを管理・運営する巨大財閥。事実上、『世界』という言葉は彼らの管理都市を指しているとか。

 その次期当主がこの場を騒がせている彼。なるほど、そんな大物がくれば誰だって驚く。

 

 うんうんと一人納得していると、彼は周囲に目もくれずこっちに向かって歩いてきた。

 

「貴女ほどの人物も参加しているとは。ふふ、ますますこの戦いが楽しみになりましたよ、遠坂凛」

「御自らのご出陣とはね……いいわ。地上での借り、天上で返してあげる」

 

 周りの注目を浴びながら、二人は睨み合う。というか、実際は遠坂が一方的に睨んでいるだけだ。

 ハーウェイは笑みを浮かべた顔を崩さず悠々としている。自分によほど自信があるのだろう。

 ……いや、違う。自信があるというより、自分が負けるとは思ってすらないような。けれどそれは決して慢心や驕りではなく、彼にとってはただの日常でしかないんだろう。

 一体どんな生活を送ればそうなるのか、少し気になるところだ。

 

「おや、あなたは……」

 

 彼の目が白乃を捉えた。どうやら向こうも彼女を知っているらしい。

 

「やはりあなたも本戦に来たのですね。言ったでしょう、あなたにはまた会えるって」

 

 彼は微笑みながら言い放つ。

 それに白乃は戸惑いながらも頷き返すだけ。そして視線は、彼の後ろにいるサーヴァントに向けられていた。

 

 花の模様が刻まれた白銀の鎧。帯刀している剣は太陽のような暖かさを纏っている。しかしあれが抜刀されたら、その暖かさは灼熱の炎となり敵を焼き付くしてしまうだろう。

 そんな想像が容易についてしまうほど、彼のサーヴァントの存在感は強かった。

 

「ああ、僕としたことが失念していました。ガウェイン、挨拶を」

「従者のガウェインと申します。以後、お見知りおきを」

 

 瞬間、更なるざわめきが食堂を駆け巡った。

 

 彼の真名は英雄について詳しくない私でも知っている。

 ガウェイン卿。アーサー王伝説に出てくる太陽の騎士。あまりにも有名な騎士の名を、ハーウェイは隠すことなく明かす。

 

「あなたも、よろしくお願いします。僕はレオナルド。気軽にレオとお呼びください」

「……クレア・ヴィオレット。私も名前でいいよ」

 

 そして、なんの意図があってか、彼は私にまで話しかけてきた。

 下手に無視することもできず名を名乗る。

 私の名前を聞いたレオは一考するような仕草をした後、にこりと笑みを浮かべた。

 

「それでは僕はこれで。あなたたちと戦える日を楽しみにしています」

 

 その言葉を最後に、レオは去っていった。

 彼はもういないというのに誰も言葉を発しようとはしない。

 張り詰めた空気と嫌な沈黙が部屋に満ちる。

 

「……食事して行かないんだね」

 

 そんな空気を壊したのが、白乃の場違いな言葉だった。その一言がきっかけとなり、再び食堂が喧騒に包まれる。

 話題の多くがレオに関することだったが、さっきまでの静かな空間よりは全然いい。

 ほんと、白乃はすごい。

 

「わたしももう行くわ。あなたたちも精々頑張って生き延びなさい」

 

 遠坂もトレーを持って去っていく。

 その背を見届け隣に目を向けると、白乃がゴミをまとめていた。彼女ももう行くつもりなのだろう。

 私も食器を片付けてしまおうか。

 

「それじゃあクレア、また一緒に食べようね」

「うん、時間が合えばね」

 

 次の約束を交わして、白乃と別れる。

 この次が本当に訪れるのかはわからない。だけど、一つ負けられない理由ができた。いつか彼女と戦うときがくるとしても、せめてその時まではこの約束は守りたい。

 

 さて、マイルームに帰る前に、当初の目的であった購買を見ていこう。

 ランサーの言う通り、購買でアイテムを買うことはできなかった。マイルーム用の家具やデザートは買えるようだけど。聖杯戦争には関係しない商品だからだろうか。

 まあそれはともかく、店番をしているNPCに品ぞろえを確認したいことを伝えてみる。すると、彼女は快く見せてくれた。

 それに感謝しながら、売っているアイテムを確認する。

 なにか、敵の動きを止めるようなものがあると助かるんだけど。

 

 えー、と……売ってるのは『強化体操服』だけなのか。値段は2000ppt。他のアイテムと比べると随分高価だけど、半永久的に使えると思えば妥当な値段だろう。それよりも肝心なのは効果だ。

 

「『boost_mp(50)(魔力強化)』?」

「はい! その名の通り、装備しているだけでマスターの魔力が強化されるコードキャストです」

「マスターの魔力が強化される利点は?」

「そりゃあ勿論、コードキャストの使用回数が増えることですね!」

 

 それもそうだ。

 しかし未だ礼装の一つも入手していない私には不要なものである。

 あと高い。購入はもっと資金を貯めて、他の礼装を見つけてから考えても遅くはないはず。

 とりあえず、明日はアリーナを回って礼装を見つけよう。

 

 礼装は諦め、治療アイテムはいくつか買うものを決めておく。

 明日の朝食のときにでも忘れずに買っておこう。

 

 それから、購買部員さん曰く、試合が進むにつれて商品は増えていくらしい。こまめに品揃えを確認しておいた方がいいだろう。どうせ食事しにくるし、昼間行けなければその時でいいか。

 

 それからマイルームに戻り、ランサーと明日の予定を確認する。と言っても、やれることはまだ少ない。

 敵の情報はマスターの名前のみ。サーヴァントの方はクラスすらわかっていない。

 明日は礼装を探すだけではなく、相手の情報収集もするべきか。

 

「まあ、それが妥当でしょうね」

「なら明日はその方針で行こうか。何かあれば臨機応変に、ね」

 

 無事明日の予定も立ったことだし、今日はもう寝よう。

 元々備え付けられていた蛍光灯のスイッチに手を置き、ランサーを見る。

 

「おやすみ、ランサー」

 

 返事はない。

 これぐらい返してくれてもいいと思うが、まだ一日目。

 少しずつ仲良くなっていくしかない、か。

 

 あまりの塩対応に少し悲しみながらも、電気を消してベッドにもぐる。

 明日への不安を僅かに感じながら、私の聖杯戦争一日目は終わった。

 

 

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