あんなに緊張した祖父母との対面は和やかなものとなった。お金持ちのお祝いも庶民とそんなに変わらないんだなぁなどと考えていたら現実はそんなに甘くなかった。
「そうだ、晶。お祝いの前におじいちゃん、おばあちゃんと一緒いついてきてほしい所があるんだ。いいかい?」
「?うん。大丈夫だよ。どこに行くの?」
そう聞くと祖父は申し訳なさそうな顔をして黙った。
「ちょっとお父様なんですの?晶をどこに連れていくかハッキリ言ってくださいな。」
お母様!さすがです。
お母様に感動してたら祖父が爆弾を落とした。
「…嫌な、晶に贈った水晶の花を頼んだ部下が晶のお祝いを自分達もさせてくれと聞かなくてな。晶、ほんの少しでいいんだ顔を出してやってくれないか?」
「お父様どういうことですの?話が違いますわ!」
えぇ…まじか。本音を言えば絶対出たくないが……おじいちゃん孝行の一つと思って頑張るしかないよな。もう準備万端っぽいし……今更断れないよじいちゃん……
「お母様大丈夫です。ほんの少しでいいんですから、ね?おじい様。」
「あ、ああ。ほんの少しで構わない。済まないな晶。」
「構いません、その代わりお願いが一つあるんです。」
「ん?私に出来る事なら何でも叶えてやるぞ。」
キターーーーー
「僕、庭園に行ってみたいんです。だめですか?」
「そうか、晶は花好きだったなあ。構わないよ。」
「ありがとうございます。おじい様!」
よし!ナイスだぞ自分。
「はぁ……お父様、晶に感謝してくださいよ。
晶、ごめんなさいね。お父様に付き合わせて。」
「気にしないでお母様。」
「ありがとう、晶。私達はお祝いの準備をしてるから、楽しみにしていて」
そう言うとお母様は抱きしめてくれた。微かに果物と薔薇の香りがする。……この香りが今世の母の匂いか……前世はどんなだっただろうか、もう思い出せないが。
家族と一旦別れ、祖父と共に来たのは一つの部屋の前だった。
え?小さくない?ちょっとしたパーティー部屋を想像してたんだがな。扉が開かれると見えたのは、広いっちゃ広いがパーティー会場というよりも会議室のような部屋だった。そして十数人の大人達が全員立って
その瞬間俺は察した、祖父が微妙な顔をした訳も。これは俺のお祝いという名のプレゼンテーションなのだろう。実際はじめこそお祝いの言葉を掛けてくれたが、直ぐに俺より祖父に注目したしな。
…これ、俺いらなくね?そのうち寝るぞ。そんなことを考えていると、祖父からメモを渡された。書いてあったのは庭園の場所への案内だった。イケメンすぎかよ。
「ありがとう。おじい様。」
小さい声で言うと祖父は驚いた様な顔をしたが、何も言わず微笑んだ。
プレゼンに夢中の大人達に気づかれずに部屋でてメモの案内通りに行くと、そこにあったのは懐かしいが小さくなった世界だった。
今世は恵まれた家庭環境で生まれた俺は幸福なんだろう。前世を知らなければ。
前世の自分は中の上程度の家庭で生まれた。両親は共働きで一人っ子だった自分は、寂しくても最初は忙しい両親からの愛情で満足していたのだが、足りないものを埋めるように外に求めだした。次第に世界が両親と自分だけでは無くなり。学校では先生に、職場では上司に認められたくて、見てもらいたくて頑張っていたのだが途中で気づいてしまったのだ。自分が求めているものは、選んでほしいことなのだと。何よりも優先して、一番に考えてもらいたかったのだと。所詮学校の先生も上司も仕事だから見ているのであって、そんなものは一番でも何もない。そして自分が真に選んで欲しかった時は過ぎていて、もうどうにもならないという事に。
気づいた瞬間、何もかもどうでも良くなり仕事もやめ家に籠っていたのだが、今までナニカに尽くしてきた人生。身体を動かしてないと落ち着かなく結局、ブラック企業に就職して同期や部下の仕事を減らしながら自分の仕事をこなす毎日を過ごしていた。そんな毎日に身体が耐えられなかったらしく、十数年後には死んでいた。
いかん、久しぶりの自然に触れたら変なスイッチ入った。切り替えよう、久しぶりの自然だぞもったいない。
それにしても見事な庭園だな、ほどほどに整備されてない箇所は自然そのままな様な感じだしきっちりされてるところは一種の芸術のようだ。
よく見ると銅像なんかも置いてあるしなぁ、どれも本物みたいだ。あの子供の像とか今にも動きだそうだし……あれ本物じゃね?
まじで?それになんか泣いてない?庭園に入れる人は基本高柳家の人間だ、その中に子供は聞いた中では俺一人だけそうすると迷子か。とりあえず声かけないとな。
「っぐす…………っひく。。…………おとう………さぁん…っひく」
「ねえ、君。迷子?」
「うわぁ!…君…誰?」
「僕は神原晶、君の名前は?よかったら教えてほしいなっ。」
「ぼ、僕の名前鈴木悟って言います。…お父さんとはぐれちゃったの…。」
……………。…マジで!?
お目汚し失礼しました。
朝日が染みます…
風薫る頃。