モモです! 外伝集   作:疑似ほにょぺにょこ

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dai198509様
『ナザリック』『アルベド』『ヒロイン勢によるアインズ様との思い出自慢大会開催』というお題目を元に作りました。

dai198509様、ありがとうですよ!


お題目短輪-8 キヨラカ

「只今より、オーバーロードのヒロイン達による、アインズ様との思い出自慢大会を開催します!」

 

 とある麗らかな昼下がり、ナザリック地下大墳墓第九階層『ロイヤルスイート』の一区画にある大会議室にて突如行われることとなったこの自慢大会。

 

「司会進行はこの私。ナザリック地下大墳墓守護者統括にして、至高の御方々の頂点にあらせられるアインズ・ウール・ゴウン様を愛して已まないアルベドが行います」

 

 異論はないか、とテーブルについている面々を見渡していく。守護者であるアウラにマーレ。それにシャルティア。プレイアデスの子たちにカルネ村の姉妹。それと──

 

「あー、私が呼ばれている理由が分からないのだが」

 

 少々控えめに手を上げたのはリ・エスティーゼ王国アダマンタイト級冒険者チームである蒼の薔薇の一人である吸血鬼の小娘だった。

 

「何を言っているのかしら小娘。あのような──え、何?かんぺ?──はぁ?」

 

 今回はスタッフ役を買って出たセバスが、皆の後ろから私に見えるようにカンペ──進行役である私に指示を出すカンニングペーパーを出している。それに書かれていたのは──

 

『現時点では蒼の薔薇の人達はアインズ・ウール・ゴウン様と漆黒の英雄モモンが同一人物であることを知りません』

というものだった。

 

 まさかあれだけ分かりやすいのに未だに気付いていなかったとは思いも依らなかった。いやむしろ、分かりやすくすることで敢えて誤認させていたのかもしれない。流石は私のアインズ様である。

 

「アインズ様との素晴らしき思い出が無いと言う、あまりにも無残で可哀想な貴方達にも発言権を与える。それがこのナザリック地下大墳墓の守護者統括であり、未来のアインズ様の妻たる私の慈悲と思いなさい」

「いやだから、アインズ・ウール・ゴウン──様との思い出など無いのだが?」

 

 頭痛がする。アインズ様とモモンが同一人物でないと思っているからの発言ではあるが、あまりにも無様であるが故に。さてこれをどう説明しようかと思ったとき、再びカンペが上がった。凄まじいタイミングである。セバスは心を読む能力を持っていたのだろうか、そう思ってしまう程に。

 

『漆黒の英雄モモンとの思い出を語ってもらいましょう』

 

 それはナイスね、セバス。その思いを乗せながら親指を立て(サムズアップ)た。

 

「光栄に思いなさい。無様で滑稽で、哀れなあなた達に発言させてあげるために新しい題材があるわ。漆黒の英雄モモンとの思い出自慢を語りなさい」

「えっ──えぇ──そんなぁ──モモンさんとのなんてぇ──し、しかもみんなの前でなんてぇ──うふふぅっ」

 

 ビシリと音が鳴る。ちらりと視線を移せば、右手に持っていたはずのタクトが手の中で粉になっていた。例え漆黒の英雄モモンであっても、それがアインズ様であることに変わりはない。大した思い出はないだろうと思っていたのだが、なぜか全員頬を染め始めたのだ。しかも中心に座っている仮面を被った吸血鬼の小娘は特に酷かった。仮面を被っているため直接は見えないが、その仮面が熱せられて変色したのではないかと思えるほどに明らかに頬を染めているのが分かる。いやそれだけではない。両手を頬に当て、何を思いだしたのかくねくねと身体を揺らし始めたのだ。

 あまりのことに『貴様のような小娘にアインズ様の何がわかる』と叫びそうになるのを必死に堪えながら、笑みを浮かべるよう努力する他ない。今回に限っては敵同士ではないのだから。

 

「因みに、今回はアインズ様より了承を得ております。貴方達も無礼講で、普段通り喋りなさい」

 

 そうプレイアデス達に向かって言うと、いつもとは違う統一性の無い了承の返事が返ってくる。こういう時でもないと彼女たちの普段の喋り方は分からない。アインズ様がルプスレギナの普段の喋り方を全く知らなかったことにそのお心をお砕きになって考えられた事だった。こういうイベントの時には無礼講で、普段の喋り方をするように、と。

 

「ところで最初はだれから発表するっすか?やっぱりアルベド様からっす?」

「私が最初でも構わないのだけれど、アインズ様の最も近くに居る私の話から始めてしまうと、それだけで時間が終わってしまうわ。だから私はトリよ。最初は──そうね、シャルティアは妄想が多分に含まれてとても長くなりそうだからアウラから始めましょう」

 

 まるで瞬間湯沸かし器のように怒り立ち上がるシャルティアを無視しながら、今回スタッフであるセバスから貰った新しいタクトでアウラを指した。

 

「え、あたし?」

「えぇ、最初だから緊張するとは思うわ。でも気軽に話していいわ」

 

 『仕方ないなぁ』と後ろ頭を掻きながら立ち上がるアウラ。無論アウラを最初にした理由はある。アウラは子供だ。そして守護者としての立ち位置。あまり大した話がないであろう者を最初に置くことで軽く始めるという手だ。何しろアインズ様との直接的なものは少ないはずだから。精々最初の頃に自慢気に話していた水を貰った話や、ぶくぶく茶釜様の声の入った時刻を知らせるマジックアイテムの話程度──

 

「じゃあ、前にアインズ様と二人きりでデートした話を──」

「はぁっ!? ──こほん。アウラ、先に聞いておくけど──妄想じゃないわよね?」

「そんなシャルティアじゃないんだからさぁ」

 

 再び立ち上がろうとするシャルティアをスタッフのセバスが当身で沈ませた。総合最強とはいえ、こういう部分であっさり落ちるのはシャルティアらしいと言うべきか。

 しかしアウラの言ったことは本当なのだろうか。

 

「んじゃ話すよ。シャルティア──は、気絶してるから良いか。シャルティアと前に東の巨人であるグと西の魔蛇であるリュラリュース・スペニア・アイ・インダルンの所に行ったんだ。そしたらグは抵抗してきたから殺したんだけど、リュラリュースの方は抵抗してこなかったんだよね。で、あたしの配下になりたいって話が上がったの。でもあたしの一存じゃどうしようもなかったから、後日アインズ様と一緒にそいつの所に行ったんだ」

「それ、ただの仕事じゃないの」

 

 何を勿体ぶって驚かせたのだと、呆れ声を出すがアウラはこちらを見ながら意味あり気に笑みを浮かべるだけ。

 

「アルベドはせっかちだなぁ、最後まで聞いてよ。んでさ、あたしのフェンに乗ってリュラリュースの所に行ったんだけど」

「まさか、アインズ様も一緒に乗られた──? まさか──あ、ああ相乗りしたっていうの!?」

「だからデートだって言ったじゃん。で、こっからが本題」

「ま、まだ本題じゃないって言うの!!」

 

 まさかこんな所に伏兵が居たとは。かねてからアインズ様と相乗りしようと計画していたが、乙女であったために私の騎乗ペットであるバイコーンに私自身が乗れないという失態を犯してしまって頓挫してしまっていた。その計画を先んじて行っていたのがアウラだったなんて。

 

「その時にあたし聞いたんだよ『アインズ様は誰を一番愛しているんですか?』って」

「あ、ああああ──愛している方を──き、聞いたですって!! だ、誰なの!早く言いなさい!!」

「いやこの流れで気付かない?」

 

 そう言いながらの自信満々の笑み。まさか──

 

「アインズ様はこうお答えになられたんだよ『私はアウラが大好きだぞ』って」

「い、いやぁぁぁ!! ま、まさかアインズ様はお子様体型がお好きなのかしら──私が身を以て正しい道に戻して差し上げなければいけないわっ!えぇ、未来の妻として!!」

 

 恥ずかしそうに頬を染めて『終わり』と言いながら座るアウラを気にする余裕など無い。まさかここまで進んだ関係をアウラが築いていたなんて知りもしなかったのだから。

 いやまて、今回の事がアウラの妄想ではなかったと何故言える。アインズ様の事だ。一緒に二人乗りはしただろう。あくまで子供と乗る感覚で。しかしその後の会話はアウラのただの妄想だったのではないか。そう一縷の望みを掛けて叫ぶ。

 

「え、NAR(ナザリック・アシスタント・レフェリー)!NAR判定は!」

「はい、白です。因みに、その時の映像がこちらです」

 

『因みに、アインズ様は誰を一番愛しているのですか?』

『はは、そうだな。アウラが大好きだぞ』

 

 ナザリックの全てを記録している通称NARを担当しているオーレオール・オメガがあっさりと映像を流す。それがアウラの妄想ではなく、現実であると。

 

「ちょ、はずっ──恥ずかしいからやめて!!」

「うわぁ、お姉ちゃん真っ赤になってる」

 

 記録映像は短いものだったが、明らかにアインズ様の言葉に反応して乙女どころか雌の顔になったアウラの表情まで細かく記録されていた。確かにこんなことを言われて『これは仕事でした』などと言えるはずもない。間違う事なきデートであったのだ。

 しかし。だがしかし。一つだけ希望がある。アウラは『愛しているか』と聞いたが、アインズ様は『好きだ』と答えたのだ。しかも『一番』とも答えていない。つまり、『アウラを一番愛している』とアインズ様が答えたわけではない。それは『皆大好き』という部分からアウラだけを切り取った可能性があるのだ。いやそうだ。そうに違いない。そうでなければ今頃私は二人目を身籠っている筈なのだから。

 

「こほん、では続けるとしましょう」

 

 私が素早く立ち直った事に驚いたのか、セバスから『大丈夫ですか』とカンペが上がったが私は親指を立てて返した。そう、アインズ様はまだ誰も愛しているとは言っていないのだから。

 しかしそこからは平穏なものだった。次のマーレは──まぁ羨まけしからんがアインズ様と一緒に背中を流した話。プレイアデスに至っては頭を撫でられただの優しく声を掛けて下さっただの差して取り上げる必要の無いものばかり。ナーベに至っては自身の話がないからと上げたのは下位メイド達の話で手ずから菓子を食べさせてもらったと言うものだった。

 しかし私だって経験がなかったわけではない。アインズ様御自ら開発なされた新魔法である《センス・オブ・シェア/感覚共有》にて味覚を共有し、食事を食べたことがあった。たまたまであったがその魔法を開発なされた初日にアインズ様に会うことなく終わってしまったために出遅れてはしまったものの、手ずから菓子を私の口へと運んでいただいたあの至福の時間。今でも鮮明に思いだせる私の大切な記憶の一つである。

 

「あの、帰っていいだろうか?」

 

 場も温まった頃。そろそろ本命というべき蒼の薔薇の面々の話を聞きだそうとした時だった。あろうことか彼女らの中央に座っている吸血鬼の小娘が、突如『帰りたい』等と言い始めたのだ。何の為にお前たちをここ──栄えあるナザリック地下大墳墓に呼んだと思っているのか。情報の漏えいを危惧なされたアインズ様が、魔法等による監視を禁じてしまったからだ。ナーベからやエイトエッジアサシンやシャドウデーモンらから又聞きする以外に方法がなかったからだ。一体あの吸血鬼の小娘と深夜に何をしていたかを知りたかったからだ。だというのに本命たるものが一言も喋らないまま帰るなどと言い始めたのである。

 

「ふっ──残念だけれど、ここに来た以上喋ってもらうわ」

「いや、喋るのを嫌がっているわけではないのだがな」

 

 情報の漏えいを防ぐために喋る事を躊躇ったのではと思ったが、どうやら違うらしい。仮面をつけているというのに、そこはかとなく頬を染めているように見えるその顔がなんとも恨めしい。一体何があったというのか。

 

「いや、その──これまでの話があまりに微笑ましくてな」

 

 ぽりぽりと、仮面と頬の境目辺りを気恥ずかしそうにかきながら言うその余裕すらうかがえる姿。気付けば二本目のタクトが手の中で粉になっていたのは仕方ないと言うものだろう。

 

「イビルアイは遠回りにいい過ぎ」

「はっきり言うべき。『子供の発表会の中で大人の男女の情事を話すような大人げない事はしたくない』と」

 

 小さな声。しかしはっきりと聞こえる声。恐らく両隣に居た吸血鬼の小娘よりもさらに小さい、よく似た二人の小娘が喋ったと認識した時。いや、認識したのだろうか。誰が喋ったなどもうどうでもよくなっていた。

 

「なん──ですって──お、おとなの──だんじょの──じょおおおおじですってぇぇぇ!!!!」

 

 視界が真っ赤に染まり、全身から漏れ出す力を制御する事なく叫ぶ。確かにナーベから聞いた話にそういうことをした『かも』とは聞いて居た。しかし確証がない話であった。例え小娘が発情しきった豚のような声を上げたとしてもだ。そういう事実はない。もしあったとするならば、既に私は愛するアインズ様との間に出来た二人の子供をこの手に抱いて居なければおかしい筈なのだから。

 

 

 

 

 

「そういえば、アインズ様」

 

 今日は階層守護者の殆どとプレイアデスの面々が休息の日。普段よりも少しばかり多い仕事をデミウルゴスと執務室で片付けている時。ちょっとした空白の時間が出来た時、デミウルゴスがぽつりと零した。

 

「どうした、デミウルゴス」

「あまりに不躾であり、不敬であるとは重々承知しておりますが」

「よい、発言を許す」

 

 あまりにあまりな言葉を。

 

「アインズ様は、生殖行為をなさるのでしょうか?」

「ブッフォォォッ!?」

 

 溜める肺もないはずなのに空気が一気に口から吐き出される。アンデッドあるが故に唾液はでない。空気も出た気がしただけで出たわけではない。だから書類が撒き散らされることも、唾で汚れることもなかった。だがあまりにあまりな言葉に精神の平坦化が起こるのに数秒すらかかることは無かった。

 

「デミウルゴス、私はアンデッドだ」

「承知しております。しかし、同じアンデッドであるシャルティアは生殖行為が可能です。子が成せるのかと言われればどうなのかは実験してみないと分かりませんが」

「あ、あー──セッ──生殖行為な。そもそも私は骨だぞ。肉の身体を持つシャルティアとは違う」

 

 そうはぐらかして事なきを得ようとするも、今日のデミウルゴスは一味違うらしい。珍しく食い下がってくるのだ。

 

「しかしアインズ様。アインズ様は通常のアンデッドと同列には決して置けない御方です。で、あるならば。そういった行為が出来ないと断ずるのは如何なものかと」

「そ、そうか──」

 

 こほん、と咳一つ。これはどうはぐらかしても無駄だと悟り、正直に話す他ないだろう。

 

「──ないのだ」

「はい?」

「んんっ!したことがないのだ。そういう事は」

「な、なんと──清らかなお身体でございましたか!」

 

 『この身体になってからは』という前置詞が付くが、それは人間であった時の話。ユグドラシルはそういうエロい事に関しては特に厳しかった。だから設定だけでもと見た目からして色々とやばいローパー種を、さらに魔改造を幾重にも重ねてもう見た目だけで言えば修正なしには見られないレベルまで昇華。そして使う事もない設定文を事細かに書いて満足する程度でしかなかったのである。

 

(そういえばあのローパーってナザリックの中に居たっけ。エロに対して制約のないこの世界に解き放ったら色々と危険な事になりそうだなぁ)

「う、うむ。清らかであるかは別としてな。それ故にこの身体がセッ、生殖行為が出来るのか自体。私自身でも理解していないのだよ」

「なんと、そうでございましたか──早い御世継ぎをと思っておりましたが、そういう事でしたらもっと慎重に事を進めないといけませんね」

「あ、ああ。そういう事で頼む。あぁくれぐれも。くれぐれも!アルベド達には内密にな」

「勿論でございます、アインズ様」

 

 自慢げに頷くデミウルゴスのメガネがきらりと光る。ハンカチを放つその姿も美しい。というか何故にハンカチを投げたのだろうか。投げた先はメイドが立っている方。そういえば何故かメイドの顔から血が流れている。病弱設定の子だったのだろうか。どうやらその血はすぐに止まったようだが、それを拭くためにデミウルゴスはハンカチを投げたのか。中々に紳士である。

 

 

 次の日から暫くの間。アインズ・ウール・ゴウンが知らぬ所で、彼が純潔であると。彼の身体は清いままであるという噂が、主にナザリックの女性の間で流れたらしい。噂の発信源はデミウルゴスであるとされたが彼は頑なに無罪を主張しており、真の噂の発信源が誰であったのか。真相は闇の中である。

 




冗長にならない様にするのが難しいっ!
ノリで書き続けて2万字超えた辺りで『こいつはヤベェ』ってなりました。
久しぶりに思いましたよ…

削りに削って今の形に。ぷれぷれの、あの短い間にネタを収納する技術。すごいですよね

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