BBB×FGO   作:warlus

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第8話

一行は路地裏を抜け大通りに出た。

ぶわっと、幾重にも積み重なった音と光の暴力が藤丸を襲う。

先ほどまではこの異常な光景にあっけにとられていたため気に掛ける余裕がなかったが、人魔入り乱れる環境にある程度慣れた今、改めて大通りに出てみると、思わず気おされてしまう程の人の多さであった。

考えてみれば、カルデアに来てからこれほどの多くの人(と人以外の何か)を目にするのは初めての事であった。

ちらりと藤丸が隣を見ると、先ほどまでややはしゃぎ気味だったマシュが、今は少し青ざめた表情をしていた。今まで見たことのない人の波に引いているようだ。

「マシュ、大丈夫?」

藤丸が尋ねると、マシュは少し申し訳なさそうにほほ笑む。

「は、はい。ありがとうございます。

情けないですね、さっきまではしゃいでいたのに」

「いや、無理もないよ。ほら、深呼吸深呼吸」

藤丸が安心させるように穏やかに言うと、マシュはその場で大きく2.3度深呼吸をする。

「なんだあ、おのぼりさんか。そこの嬢ちゃん」

「ただでさえ、ここはほかの都心部とは桁が違いますからね。僕も初めて来たときは、多少なりとも緊張しました」

藤丸とマシュの後ろで、ザップとツェッドは勝手な感想を言い合う。

「そこの白銀のガキは大丈夫か?」

ザップは葉巻をくわえたまま、顔の動きだけでジークを指す。

「ああ、少し驚いたが。元々ひとの営みに顔を出したことはあるから、多少免疫はある」

「そうかい」

そういって、ザップは吸い終わった葉巻を吐き捨てる。どうやらジークの事を心配してくれたらしい。

「んで、これから何するって?」

「ああ、はい…とりあえずダ・ヴィンチちゃんに連絡をとって」

藤丸が手元のデバイスをいじると、ホログラムが全員に見えるように展開される。しかしそこに映し出されたのは、ダ・ヴィンチではなくロマンであった。

『やあ、藤丸君。大通りには出たみたいだね』

「あれ、ロマン?ダ・ヴィンチちゃんじゃないんで?」

藤丸が当然の疑問を投げると、ロマンは困ったような顔をする。

『ダ・ヴィンチなら、今はクラウス氏と宗教画について熱く語り合っているよ。どうやらクラウス氏は芸術方面に一言持っている人みたいだね。目の前の女性がダ・ヴィンチその人だとわかったら、興奮気味にあいつの作品について語り始めたんだ』

藤丸の隣のレオが、ああ、と苦笑いを浮かべた。

『なまじ造詣に深いものだから、ダ・ヴィンチも盛り上がっちゃってね。

あの会話が終わるまではもう少しかかるかな、あれは。だからこっちは僕が担当だ。

さて、ライブラのほうから貰い受けた地図をこちらで電子化した。これを見てほしい』

ロマニが言うと、ホログラムに大きめの地図が展開される。

『その地図に何か所か、赤い点が打ってある所が見えるかな?そこが龍脈に近い反応を見せているポイントだ。

みんなにはとりあえずそこへ向かって、魔力の調査をしてほしい』

ライブラの三人が、地図を覗き込んで場所を確認する。

「ああ、これならわかりますよ。僕たちで案内できます」

『たすかるよ、よろしく頼む。それと、君たちは先ほど昼食がまだという話だったかな?できればうちのマシュと藤丸にジークも一緒にご飯に連れて行ってくれると助かる』

「うし、んじゃ適当に入って飯食ってから向かうか」

「よ、、よろしくお願いします。せ、先輩!これはいわゆるみんなでお出かけご飯というやつではないでしょうかっ」

「ああ、これはおれもあまり経験したことがないな」

マシュとジークがうれしそうに言葉を弾ませると、それを見たロマンと藤丸は少しだけ頬を緩めた。

 

 

「んで、だ」

 話を切り出したのはラーメンをすすっているザップからだ。

 カルデアとライブラ一行は現在、一瞬ヤクザと見まがう風貌の店主が経営しているラーメン屋で昼食をとっている。ここがいいと提案したのは今話を切り出したザップで、それに反対したのはツェッドであった。

 ツェッドの反対はまっとうな意見といえるだろう。この寂れた雰囲気のラーメン屋は、来客の人々に案内するにはあまりに庶民的に過ぎる。

 だが、このうらびれたラーメン屋の外観にだれよりも喜びを示したのは、だれであろう来客人のマシュであった。

「こ、これが下町のジャパニーズラーメンですね!」

 目をキラキラさせながら屋号を眺めるマシュに、ツェッドも何も言えなくなってしまったのだった。

「これから俺たちはその龍脈?だったか。とにかくポイントに向かえばいいんだろ?」

「はい」

 藤丸も同様にラーメンをすすりながら応える。

 カップラーメンともエミヤが作る丁寧なインスタントラーメンとも違う、豚骨の出汁が効いた素朴な醤油のスープが口の中に広がる。

 高校の友達と行ったラーメン屋もこんな味だったなと思いつつ隣をちらと見ると、マシュが箸を使って醤油ラーメンを咥えていた。

 「あち、あちち」と言いながら、今一つ慣れない様子で麺をすすってはコクコクうなずいている。新境地の味はどうやらお気に召したらしい。

「そうすっね。何か所あるんでしたっけ」

 レオの言葉に、藤丸もデバイスを展開する。

「えーと…12か所ですね」

「やっぱりさっき見たときも思いましたが、多いですね」

 ツェッドも会話に加わる。確かに一つの都市に散在する拠点を12か所まわるというのは、なかなか骨が折れる作業のように思えた。

「だろう?だからよ、ここは二手に分かれて場所を分担するぞ。どっちにしろ、ここ全部を今日中にワンチームで調べるのは無理だろ」

 ザップの提案は合理的なものだった。

「だが、ちょっと待ってほしい。俺たちはこの街の全容をまだ知らない。チーム分けをするならカルデアとライブラが混在するチームになる」

 次に発言したのはジークだ。ちなみに彼は早々に箸での食事を諦め、フォークで麺をすくようにして食べている。

「そうなるな」

「であれば、マスターの安全を最優先にするようなチーム分けにしてほしい。マスターはこのカルデアのメンバーの中では一番戦闘能力が低い」

「ん~それなら坊主はおれとレオと同じチームだな。ライブラで一番戦闘能力が高いのはおれだ。んで、そこの陰毛頭は戦うのダメダメだが索敵能力は高い」

 考えるそぶりをしながら、ザップはテーブルの中央の餃子をつまむ。

「わかった。あなたが言うならそれがいいのだろう。マスターもそれでいいだろうか」

「うん、いいよ。ありがとうジーク」

 淡々と決まっていく今後の予定だったが、藤丸の隣でマシュが細い声を漏らした。

「あっ…」

「どうした、マシュ?」

 藤丸が尋ねと、マシュは少しだけ悩むそぶりを見せたが、すぐになんでもないという風に首を横に振った。

「い、いいえ…なんでも、ないです」

「…いいか?ならチーム分けをすんぞ。俺と坊主とレオのチーム、半魚野郎と白髪のガキと嬢ちゃんのチーム分けだ」

話は終わったとばかりに、ザップはどんぶりをもってラーメンのスープを飲み干した。

「決まったのなら異論は挟みませんが…藤丸くんの事をちゃんと守ってあげてくださいよ、ザップさん。

任された以上、道端で喧嘩を吹っかけるような真似は厳禁ですからね」

プハーッと空になった丼を粗雑に置いたザップは、爪楊枝で歯の隙間をシーシー言わせながらツェッドの言葉に馬鹿にしたように返す。

「ばっきゃやろう、お前俺様を誰だと思っていやがるんだ。大船に乗ったつもりでいろい」

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