BBB×FGO   作:warlus

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第9話

「「あああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」」

悲鳴を上げながら追ってくる集団から逃げ回るのは、レオと藤丸の二人だ。

後方からは応戦しているザップの爆発音が頻発している。

先に弁明をしておこう、ザップは確かに不用意に喧嘩を吹っかけたりはしなかった。

彼はこの街において『控えめに言って人間のクズ』『頭より下半身で物事を考えている男』『不用意が服を着て歩いている』など、数々の称号を欲しいままにしていたが、それでも彼が未だに5体満足でいられるのは、その比類なき戦闘能力故であった。

本気になればどんな怪異にでさえ対処してみせるライブラでもピカイチと言える才能は、この異形犇めく混沌の街においてさえ、畏怖の対象であった。

だがしかし、恐れられるという事は、裏を返せば怨まれるという事でもある。

普段はレオがいてさえ不用意に襲われることのないザップであったが、なんと今はそこにさらに無害そのものであるような一人の少年を連れて歩いている。

日頃から怨みを溜めつつも恐ろしくて手を出せない連中が、もしかしたらとチャンスを狙うには、充分な動機であった。

レオと藤丸は路地裏に入り込み、とにかくジグザグに、狭いルート狭いルートを走っていく。

「おらぁっ!待てレオ!てめえを捕まえればあいつに良い人質になるんだよ!!」

後方から響くノイズ混じりの恫喝に、レオも負けじと声を張る。

「バッカヤロー!待てって言われて待つ奴がいるか!それに僕を人質とった所でザップさんに通用するわけないでしょうが!!

ええい、この…シャッフル!」

目的の狭い路地まで来たレオはくるりと振り向き、追いかけてくる十数人程に視線を合わせる。

すると、追っての異形達は次々とその場で酔ったようにふらふらと目を回して倒れる。狭い路地の中では、それだけで続く追ってを阻む壁となっていた。

「おおー」

何が起こったかはわからないが、ともかくレオが彼等を止めたのだと理解した藤丸は感嘆の声を上げる。

とその瞬間、今度は3メートル程の肉壁を容易くジャンプするバッタのようなフォルムの異形が乗り越えて来た。

「うわあああ、そんなのありかよ!」

予想外の存在に咄嗟に身構えるレオだったが、今度は藤丸の出番だった。

「ガンド!」

制服の中に着込んでいた礼装を起動し、飛び越えて来た異形にガンドを放つ。直撃したそれは、電流でも流されたようにその場で崩れ落ちた。

「おおー」

今度はレオが藤丸に拍手を送る。

二人はその可笑しさに少しだけ顔を見合わせ、思わず吹き出してしまった。

「てめえレオ!調子乗りやがって!!」

笑い出してしまいそうな二人であったが、そうは問屋が卸さない。視線を戻せば、追ってたちが次々と肉の障壁を乗り越えようとしていた。

「やべえ、走ろう!」

「はい!」

 

 

「はっ…そろそろ…キツくなってきた…」

「…はっ…僕も、です…」

更に暫く走り続けていたが、二人は未だに追っ手を振り払えていない。実際、二人はしぶとく逃げ回っている方だが、とにかく数が多過ぎるため、完全には振り払えないでいた。

その時、ピピッという音と共に、藤丸の端末に通信が入る。

『待たせたね藤丸くん。逃走ルートをシミュレーションして確保できたよ』

「ドクター!待ってた!」

『いいかい。その先にある十字路を右に曲がったら、道は行き止まりだ。7メートル程の高さのビルが道を塞いでいる。

だから君達は、そこを一息で飛び越えてくれ。それで追っ手は君達が一瞬で消えたように錯覚するだろう』

「了解!」

「いやいや了解って!僕そんな身体能力無いっすよ!」

『それなら大丈夫だ。レオくんは藤丸くんと手を繋いで合図したタイミングで思いっきりジャンプしてくれ』

「はい?」

訝しげに目を顰めるレオだったが、今はとにかく時間が逼迫していた。

藤丸は有無を言わさずレオの手を掴み、目的の十字路を右に曲がる。すると情報通りに目の前に7メートルほどのビルが立ちはだかる。

『合図するよ!』

「ええい、わかりましたよ!跳べばいいんでしょ!」

ヤケクソ気味になりながら頷いたレオに併せて、ロマ二が合図を取る。

『3…2…1…今だ!藤丸くん!』

「礼装起動!全体強化!」

瞬間、藤丸が礼装を起動して二人の身体能力を一時的に急激に上昇させる。すると、二人は宙を飛ぶように高く跳躍し、ちょうどピッタリ屋根の上で着地をした。

急激な浮遊感な上に、手を繋いだバランスの悪い状態で着地をした二人は、そのままゴロゴロところがるようにして、その場で崩れる。

「い、つつ…」

『お疲れ様、二人とも。マシュ達も直に駆けつける。

もし追ってが君達の場所に気づいたとしても、そこを登れる形状をしているヒトは居ないはずだ。追いつくまでにはマシュ達も間に合うよ』

「はあ…つっかれたあ。ありがとう、ドクター」

「疲れた…凄いねさっきの」

二人で屋根の上に座り込みながら、息を整える。

「ええ、まあ。僕じゃなくて、カルデアの技術が凄いんですよ。魔術と科学のハイブリッドだとかで」

「へえ、なるほどね」

二人の会話はそこで途切れ、少しの間沈黙が降りる。別に気まずい空気というわけでは無いが、二人ともまずは体を休ませたかったのだ。

そして、少しだけ間を置いてから、藤丸はレオに声をかける。

「あの…ちょっといいですか?」

「ん?」

「会ってすぐの人にこんな事言うのもなんですけど…レオさんってなんでライブラに居るんですか?」

それはかなり不躾な質問だった。

外様の人間がいきなりあなたは何故そこに居るんですか、などと下手をすれば相手を怒らせてしまうような質問だ。

だが、藤丸は尋ねずにいられなかったのだ。この逃走劇の中で浮かび上がってきた疑問の答えがどうしても欲しかった。

「なんでって…目的があってとしか」

「それは、自分の命を脅かしてまで達成する必要があるんですか?」

「……」

「疑問に、思ったんです。レオさんって目が特殊ですけど、それ以外は普通の人じゃ無いですか。戦う力もないし、その目の力があったって、この街のカツアゲから逃げ切る事だって一苦労じゃないですか。

多分、僕と喧嘩をしてもほぼ五分五分だと思うんですよ。

なのに、なんで一般人みたいな貴方が、この街にいて、ライブラなんて危険なとこ所属してるんですか?」

「いや、それは君も同じだろう?」

「僕が戦っているのは、僕しか居ないからです。生き残った中で、僕が唯一マスターになる資格があったから。

もし、Aチームの誰かがいてくれるなら、きっとその人の方が良いんですよ」

Aチームなどという存在をレオが知らない事は、藤丸も重々承知している。でも、勝手に滑り出した言葉を、藤丸には止めることが出来なかった。

「でも、レオさんは違うじゃないですか。多少特殊な力を持っていても、貴方はただの人ですよ。多分探せば代わりをしてくれる人はいくらでもいる。

なのに、なんで貴方は無理してまでライブラに所属しているんですか?

ーーなんで、戦い続けているんですか?」

最後にその言葉を吐き出して、藤丸は自分が何を問いたかったのを理解した。

一般人でしかない、つまり、自分と同じでありながら、なんで自ら危険な場所を選んで所属しているのかと。そうせざするをえなくてここにいるのではなく、貴方はそうしたいからそこにいる。その境遇の一致と在り方の不一致に、藤丸は問いを正さずにいられなかったのだ。

僕はこんなに怖くて、それでもしょうがないから戦い続けているのに、貴方は何故そこにいるのか、と。

『……』

「んー…」

レオは考える素振りを見せる。それは藤丸の張り詰めた問い詰めに対して、あまりに軽い様子であった。

「…そうだな。多分君と同じだよ」

「…はい?」

「うん、僕も怖いよ、こんな常識の通用しない街。ここにきてからもう何度死にかけたかもわからないし」

ハハハと、レオは苦笑いをして頰を掻く。まるで自分の武勇伝を語る学生の様な軽さだ。

「んでさ、それでもこの街に居て、ライブラに居るのは、やっぱり目的があって、この街でも仲間が出来て、友達が出来てっていうのもあるんだけど、多分根っこはもっと単純なんだ」

「単純…?」

「うん、多分君もおんなじだよ。

僕には妹がいるんだ。ちょっと生活に難はあるけど、それを感じさせないくらい生意気で強い妹。でも、俺はやっぱりお兄ちゃんだからさ。

男(兄貴)なら女(妹)の前でカッコつけなくちゃ。だろ?」

「そんな…事で良いんですか?」

藤丸は驚く。あまりの価値観の違いに驚いたのではない。

レオの言葉が、ストンと綺麗に自分の胸に落ちたことに驚いたのだ。

「そう、そんな事で良いんだよ。君もそうだろ?」

レオはそう言って、握り拳を藤丸に向ける。

藤丸は恥ずかしそうにしながらはにかむレオを見ながら、自分の中につかえていたモヤモヤが取れるのを感じた。

自分がこんなに必死になりながら頑張るのは、無理をしてまでカッコつけようとするのは、そうか、そんなに単純な理由だったのか。

「…そうですね、きっとそれでいいんです」

藤丸も同じくはにかみながら握り拳をつくり、レオのそれにゴチンと合わせた。

『…マシュ達がそろそろ着くね。移動するよ、藤丸くん』

「はい!」

ロマ二の声に、藤丸は清々しい顔で返事をした。

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