碧空高校生徒会長の須田は北野誠一郎への復讐を考えていた。自身の策略の失敗が導いた全くの自業自得かつ逆恨みではあるが、自分が堕ちてしまったのは北野誠一郎のせいだと考えていた。
「ふふふ、こいつで北野誠一郎をどん底に陥れることが出来る!!」
小出が生徒会長を心配そうに見つめている。
「会長、大丈夫ですか?」
「大丈夫なもんか! 生徒会長であるこの俺が生徒の信頼が全くないんだぞ!」
「それは自業自得ですけどね」
「ぐっ! まぁいい、俺は北野誠一郎を悪魔にする術を見つけたのだ!」
「また変な企みを……もうやめませんか?」
「うるさい! 俺はとうとう見つけたのだ! 人を思い通りにする黒魔術をな!!」
「なげかわしや生徒会長……」
副生徒会長の小出は堕ちきった須田の姿を見て嘆いていた。
「さぁ、この手順で黒魔術を行えば、北野誠一郎を闘いを好む凶悪な性格にできるはずだ……」
「きひゃええええいいいいい!!!」
北野君は自身の体がおかしくなっていると気付いた。何か自分が自分でなくなるような感覚を覚えた。
「くっくっく……」
北野君は不気味な笑みを浮かべていた。
「ナンバー2! 勝負だ!」
北野君が一人でいたところ、荻須がやってきた。
「雑魚の荻須か……まぁいい、ちょうど暴れたいところだった」
ぶるっ
荻須は北野君から今までに感じたことのない殺気を感じた。
(なんだこれは! いつものナンバー2の気じゃねえ! つうか別人、いや、本当の悪魔か!?)
「う、うおおお!!」
荻須は北野君めがけて渾身の右ストレートを放った。
どすん
北野君は荻須の右ストレートに双掌打のカウンターをくらわせ、荻須を2メートルほど後ろに吹き飛ばした。
「ごはぁ!」
荻須は完全に失神していた。
「強い奴がまだいるはずだ……」
北野君は新たなる敵を求めてどこかへと歩いていく。
かくして、北野君は須田生徒会長の得体の知れない黒魔術により、正真正銘の悪魔と化してしまったのだ……。
「北野さん! お疲れ様です!!」
黒田率いる三人組が北野に出会い、挨拶を交わした。
「おや、北野さん? 機嫌でも悪いのですか? なんかダークな雰囲気が漂っているようで?」
黒田は北野の様子がおかしいことにきづいた。
「相手をしてやるよ」
「え?」
どすん どすん
黒田の取り巻きの時山と大下が黒田の後方に吹っ飛んだ。
「時山! 大下! どうした!」
「き……北野さんが……俺達を……」
北野君は一瞬のうちに時山と大下に双掌打をくらわせたのだ。
「北野さんだって? 何を馬鹿な事を言っているんだ! 北野さんは俺達には心優しい番長様だぜ!」
どすん
黒田も北野の双掌打をうけ、吹っ飛んだ。
「黒田さん、恵まれた体格を持っているのにもったいないね」
あっさりと倒れた黒田達に北野君はがっかりした表情をしている。
「てめぇ、いきなり何しやがる!!」
黒田が目覚めた。いつもの弱気な態度が全くなかった。
「意外と早く起きてきたなぁ。普段やられっぱなしだから打たれ強くなっているのかな?」
「そこの怖い顔! 俺様にどつくとは良い度胸しているじゃねえか!」
黒田の言葉に北野は違和感を感じた。
「もしかして頭へのショックで記憶を一時的になくしたのかな? そういえば黒田さんって、衝撃で記憶をなくすと強いとか、誰かから聞いたなあ」
「うおおおお!!」
ぶおん ぶおん ぶおん
黒田は重さの載ったパンチを振り回していく。まともに当たれば誰でも一撃でKO出来るほどの威力を持った拳だ。しかし北野君は持ち前の動体視力で黒田の攻撃を難なくかわしていった。
「黒田さん、小磯流道場で少しはパンチを当てる練習もした方がいいよ」
どすん
黒田は再度北野君の双掌打を受けて、完全に失神した。
「お、おい、あれ北野君だぜ!」
ついに周りの生徒達が北野君の異変に気付いた。そしてすぐに校長の元にも話が届いた。
「なに! 北野誠一郎が暴れているだと! そうか……ついにあの悪魔を追い出せる時が来たんだな!! 至急影の七人を呼びだすぞ!!」
校長は早速電話をかけ、影の七人のうちの五人を呼び出すことにした。
「あ、あいつにだけは関わりたくないんだ!!」
かつて北野君に対しトラウマを植え付けられた入江はこの有様だった。
「あの悪魔に挑むにはまだ修行不足の身……」
熊谷も北野討伐の要請を断った。
他の三人も北野君の恐怖伝説をどこからか聞いたのか、校長の要請を聞こうともしない。
「おのれ北野誠一郎!! たくさんの人に恐怖を植え付けおって!! 白滝先生と菱田先生だけでは心細い……いや待てよ、以前この学校の三者面談の日に白滝先生と同等以上の力を持った二人がいて……」
さて、様子のおかしくなった北野君の元に碧空高校の強者達が集まってきた。
「え……本当に北野君なの?」
小磯良子が目の前の北野君の姿を信じられないといった感じで見ている。
「お前はあいつのそっくりさんが暴れ回っているとでも言いたいのか? あんな顔している奴はこの世にただ一人だけだろ」
白滝幾乃が小磯良子の疑問に回答をよこした。
「北野さんどうしちまったん? 機嫌でも悪いのか? 普段ならあんなことする人じゃねえ」
竹久もまた、いつもと違う北野にとまどっていた。
ぎぃぃん
白滝、小磯、竹久の三人を蛇睨みのごとく北野君が睨み付けた。三人の動きが一瞬止まった。
「きええええ!! 強い子みっけえええええ!!」
北野が全速力で三人の元へと走ってきた。
「二人ともいけ!」
「幾乃! あんただけに任せるわけにいかないわよ!」
「北野さんをお前だけで止められると思っているのかよ!」
「良子、北野を本気で殴れるのか? 北野の正妻であるお前にそれができるとは思えない。金髪君も同様だ、お前は北野の大事な友人なんだろ?」
二人は幾乃に答えを返せなかった。
「私は所詮愛人ポジション狙いの女だ。北野が駄目なら金髪君二号もいるしな」
「だからって! あんただって北野君の子と好きでしょうが!!」
(金髪君二号ってだれだ?)
幾乃が向かってくる北野君の前に立ちはだかった。
「幾乃ちゃんか! 本気で闘うのはこれが初めてだねぇ!」
しゅっ しゅっ しゅっ
北野君の掌底が素早く連打された。幾乃はそれをかわすので精一杯だった。思っていた以上に北野君の動きが速く、一撃必殺の威力あったからだ。
「くっ! 北野の奴がこれほどまでの動きを見せるとは! さては生来の優しさでこれまでの闘いは手加減していたことか! ならば!」
みしぃ
幾乃はガードをして掌底を受けつつ、鋭いローキックを北野君の内ももの膝付近に放った。
がく
一瞬北野君の膝が落ちた。しかし同時に幾乃も後方へ吹っ飛ばされた。
「相打ち覚悟で放ったが、私の方がダメージが大きかったか」
幾乃はあばら骨の故障を感じていた。
「まだやるかい?」
北野君が悪魔の笑みを浮かべている。それに対し幾乃は苦笑いを浮かべた。
「こうも実力差を見せ付けられると、余計に倒したくなるもんだ」
幾乃はあばら骨の痛みに耐えながら北野と向き合った。
ばきっ
突然北野君が横方向に吹っ飛んだ。一人の男が北野君を不意打ちでふっとばしたのだ。その男は児島猛であった。
「北野、お前ほど強いならこれくらいの不意打ちは良いハンデだろ?」
すくり
北野君の頬が赤くなっていたが、何事もなかったかのように立ち上がったてきた。
「酷いなぁ児島さん、流石に元ボクサーのパンチは僕でも効くよ?」
ギャラリーが児島猛の登場にざわついた。
「おいおい白雲からやってきた児島まで登場したぜ!」
「北野君、今日一日でこの学校の実力者全てを倒すつもりか!」
児島猛の登場を幾乃も黙ってみてはいなかった。
「なんのつもりだ。人様の闘いにしゃしゃりでてきおって」
「怪我した女は引っ込んでろ。こいつは俺がやる」
「待てよ児島! 俺だってこれ以上黙って見てはいられないぜ! 北野さんを止めるのはおれだ!」
竹久もまた、すぐにでも北野と対峙する気持ちであった。
「私だって! 北野君がこれ以上暴れたらまた皆怖がっちゃうもん!」
小磯良子も同じく出てきた。
「お前らを止める気はねえが、三人で一人にかかるつもりか? 俺はそんなの嫌だぜ」
「私もできればね。でも本気の北野君が相手なら私達三人でも危ないところよ」
「確かに、北野さん相手なら俺や児島やばか女一人ずつはきついところか……」
「だから、ばか女っていうのやめてくれない?」
「くるぞ」
北野君が襲いかかった。
「いくぞ北野!」
始めに児島猛が北野君に素早い左ジャブを連打した。児島猛の拳がわずかに北野君の頬や髪の毛を何回かかすった。北野君のよけたところを竹久が狙おうとするが拳が空振りしてしまう。
「最初にあった時よりも動きが良くなったね児島さん。気を抜いていると」
実は児島猛。北野君に負けてから密かにボクシングのトレーニングを行うようになっていた。いつか借りを返そうと思っていたのだ。
「そう簡単に避けられながら褒められても嬉しくないがな」
ひゅん
小磯良子が北野君の脚を払うように蹴るが、北野君は瞬時にそれを読み、かつ児島猛に鋭い膝蹴りを放った。
がこん
北野君の体重の載った膝蹴りが児島猛の顎をとらえた。児島猛は一撃で倒れた。
「助走も付けずに児島猛の顔面まで届く飛び膝蹴りを放ったか。流石の瞬発力だな」
「感心している場合か!」
解説する幾乃に竹久がツッコミを入れた。
一方、碧空高校の校門に二人の男がやってきていた。小磯良子、北野誠一郎の父親二人だった。
「北野の父親か。何の用できた?」
「私の息子が暴れ回っていると聞いて会社を早退してきました」
「私も同じく悪魔が校内を暴れ回っていると連絡が来て店を閉めてきた。娘が心配だからな」
二人は互いに意を決して校内へと入っていった。