歌語りの英雄   作:白燕狭由那

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オリ主の名前が決まった経緯

白燕:今構想練っている話の主人公の名前、調和を意味するアルモニアにしようと思うんだが
友人:アンモニアと見間違えるんじゃね?
白燕:アンモニアwwwwwアンモナイトとも間違えそうだしなw
友人:アンモナイトwwwwwというか調和って女神様の名前にいたような
白燕:そういえばそうだった。ほか何かないかな

≪ネーミング辞典 13ヵ国語版≫

白燕:お、ギリシャ語で歌うっていう単語でアーディンってのがあった。いいかも
友人:オーディンっぽいな
白燕:ギリシャだから問題ないだろうしカッコいいし(キリッ)
友人:ならいいんじゃね


ギリシャ語で歌うを検索するとこれともう一つの単語が出てくるのですが、なんででしょう。


想いを交わした歌

あの後、ヘクトールに手を引かれる形で退出したアーディンこと自分であるが。

 

「………ヘクトール王子」

「ヘクトールで良い。王子だと堅苦しいから。あとさっきの話し方。最初会った時みたいに砕けた感じで良いんだぞ?」

「はぁ………いくらなんでも、この国を統べる王に失礼をするわけには………」

「む………なら俺と二人だけの時で良いから普通の話し方にしてくれ」

「………了解」

 

 

こんなやり取りをしながら王宮の廊下を歩いていた。

 

分からない。

全く以て、分からない。

 

ヘクトールに付いて行きながら、こうなった経緯を振り返る。

トロイアを見るのに夢中になって時間を忘れ、気付けば夕方で。

誰もいない広場を見掛けて、歌いたくなって歌って、そしてヘクトールと出会った。

一言二言話して、何を思ったのか王宮に連れてこられて、名前を与えられた。

 

あまりの急展開に、流石の自分でも混乱気味である。

そもそも、何故ヘクトールは自分に拘ったのだろう。自分なぞ、取るに足りない流浪人なのに。

そんなことを考えている間に、目的地らしい部屋にたどり着いた。ヘクトールの居室らしいその部屋は、質素ながらも品の良い調度品が備え付けられ、ほんのりと薫り高い香が焚かれている。

ヘクトールは寝台に腰掛け、隣に座るよう促した。寝台に腰を降ろすと、自重で敷布に沈み込む。その感触に戸惑っていると、ヘクトールが話し掛けてきた。

 

「アーディン。旅をしていた時のこと、聞かせてくれないか?」

「ああ、構わないが………」

 

狩人と行動していた際に狩りの手解きを教わったことや訪れた場所の風土や名産、祭事や催しなど旅先での経験に聞き入るヘクトールは期待に満ちた表情をしていた。

自分も誰かに自らの経験を話すということが楽しくて、侍女が食事に呼びに来るまで話し込んでしまった。

 

 

 

 

食事を終えて部屋に戻った時には、一日で色んなことがあった所為か頭がぐらぐらし、身体が重く感じた。

話の続きを聞かせようとするが、呂律がうまく回らず、意識が途切れそうになる。

 

「アーディン、大丈夫か?休むか?」

「いや、いい。それよりも、どこまで話したんだっけ…」

 

重い瞼をなんとか押し上げてヘクトールの姿を視界に入れる。怪訝な表情を浮かべている。

うまく働かなくなった頭を回転させて話の内容を思いだそうとしていると、不意に両肩を掴まれて、そのまま寝台に押し倒された。思わず顔を上げて見ると、ヘクトールが顰めっ面で顔を覗き込んでいる。

 

「ヘクトール………?」

「どうして、君は無理をするんだ」

「べつに、無理なんて」

 

肩を掴む腕を除けようと手を添えるが、うまく力が入らない。それどころか、ヘクトールが肩を押さえたまま横になり、自分の身体を抱き締めたため身動きすらできなくなった。

 

「もう休みな。ここで寝ていいから」

「でも」

 

背中に回された手から、密着した身体から温もりが伝わり、思考を奪っていく。

寝てはいけないと言い聞かせるが、身体は言うことを聞いてくれない。せめてと身動ぐが、ヘクトールが背中を軽く叩きながら紡ぐ旋律に動きを止めた。

それは、自分が歌っていた歌だった。その調べは一度聞いただけとは思えない、まるで遠い昔から聞いていたような抑揚だった。

ヘクトールの旋律は自分のものと違って心地好く、温もりと相まって引き込まれるように眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腕の中の力の抜けた朱金を、俺――ヘクトールは静かに見詰めた。

小さく寝息を立てるアーディンの表情はどこか幼く、起きている時とは違う印象を齎す。

 

 

俺がアーディン―――当時は顔も名前も知らず、文字通り名前すらなかった彼に惹かれたのは、歌だった。

星空の中、どこからともなく聞こえてくる歌声。トロイアやアカイアのものとは異なる異国の旋律とどこか寂しげな音色は、幼い子供の心に深く印象付けられたのだ。

王族として生まれ、周りから大切にされてきた境遇に不満はなかった。でも、自分と接する者達の態度を見ていると、子供心に距離を感じて寂しかった。

そんな自分の境遇と歌声を重ねて、いつかこの歌声の持ち主と会いたい、この気持ちを分かち合いたいと想った。

それから、歌が聞こえる星の夜はその旋律に合わせて歌うようになった。父上や母上は歌のことを聞いても、ただありのままに受け入れてくれた。

それから数年経ち、以前より歌が聞こえる機会は減って、周りの環境も目まぐるしく変化した。それでも、歌のことは忘れないように、呼び掛けるように歌った。

 

 

 

そんな日々が続いたある時。

夕焼けに染まる都市を王宮から眺めていると、街の中から歌が聞こえてきた。

耳を澄ませなければ、風に掻き消されそうな歌声。それは正しく、星空の下で聞いたあの歌だった。

居ても立ってもいられなくなった俺は、王宮を飛び出して歌声の元に走って行った。

たどり着いた広場にいたのは、自分と同じくらいの歳の少年だった。薄汚れた外套を纏い、荷袋を腰に提げた姿は長い間旅をしてきた様だった。

近くに駆け寄って見ると、肩くらいまで伸びた朱金色の髪は夕焼けを吸収して輝いており、琥珀色の眼も逆光の中で輝きを放っていた。

少年は顔を覗き込まれて困惑していたが、どこか急ぐように断りを入れて立ち去ろうとした。

彼を引き留めようとその手を掴んで、傷の多さに驚きを隠せなかった。

指先はささくれて、関節の部分もひび割れていた。よく見れば脚にも数え切れない傷が付いていて、幾つかは血が滲んでいた。

そして、この時に彼に名前がないことを知った。その事を語る彼の口調は、まるで自分自身の存在を否定しているようで。

気付いた時には彼の手を引いて駆け出していた。

王宮に着くと一旦彼を侍女に預けて、父上の元に向かった。そして彼を傍に置かせて欲しいと願い出たのだ。

父上はそれを聞き入れ、彼を俺の従者として迎えることとした。

そして、彼に名前を贈った。彼に相応しい名は、それしかないと想ったから。

 

 

 

アーディンが擦り寄るのを感じて、回想から浮上する。

今日初めて会ったばかりなのに、こうして無防備でいるのは、こうなる運命だったのかもしれない。

やっと見つけた、放って置けば消えてしまいそうな彼を、何処へも行かせたくない。

胸に沸き上がった感情に苦笑しながら、俺はアーディンを抱き締める腕に力を入れ直して目を閉じた。

 




アーディンさん(とヘクトール)が歌っていたのはマクロスFのアイモです。

アイモは“あなた”という意味があるということなので、寂しさを分かち合いたいという共通の願望を持つ者同士で呼びかけあうという。
何故歌が離れた場所で聞こえたかって?そこは神秘が跋扈する古代ギリシャですから、フォールド波的なものがあってもいいんじゃないでしょうか。
そして書いた本人が言うのもなんだけど、ヘクトール少年なんか独占欲強すぎやしません?
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