「はぁ、はぁ」昨日は良いことが有った。クルシュに想いを伝えれた。クルシュは想いを受け取ってくれた。なのに、なのに!!!背中がグッショリと汗で濡れている。思い出すのは今朝見てしまった予知夢。予知夢の中でクルシュは片手が飛ばされて記憶が無くなっていた。何がなんでもクルシュは失わない。この未来を変える方法、それは簡単だ。クルシュの腕を切り飛ばした男達を殺せばいい。今日殺しに行こう。引き出しからコルトガバメントとブラックホークを取り出し赫子銃弾を2つの銃に入れる。ariaにもマガジンに馬鹿デカイ銃弾を入れ込む。横長のアタッシュケースを開けると武骨な鞘に入った長い刀が出てくる。異常がないか点検したあと全てをベッドの上に置いてシャワールームに入って汗を流す。今日は非番だ。1日で終わらせてやる。覚悟を決めてクルシュの部屋に外出する事を伝えに行った。
それにしても魔女教が何故?頭の中では
「魔女教大罪司教『強欲』担当、レグルス・コルニアス」
「魔女教大罪司教『暴食』担当、ライ・バテンカイトス」
と言う二人の自己紹介がぐるぐる回っていた。
早朝の街、いつもの様な五月蝿さは無い。白いロングコート、零番隊のコートに身を包む。向かうは近衛騎士団本部。無知で捜すのは埒が明かない。魔女教については知っているが現れる場所等は知らない。
近衛騎士団本部についたあと魔女教についての資料を漁る。まだ来ている人は居ない。暗い部屋で資料を見る。粗方見たけれど解ったことは存在が謎と言うことだ。今まで目撃されているエリアは何れもバラバラだ。地図に現れた場所に×印を書いていく。最後の部分を書き終える。地図と睨み合っていたら扉が開く。
「チカゲか。早いんだなというか此処にいるのは珍しいな。何をしているんだい?」入ってきたのはラインハルトだった。
「ラインハルトですか。今日は仕事がないので。あとしなければいけないことがあってそれの情報を確かめるために此処に来ました。」
「しなければいけないことって、、って答えてくれないよな?」特に隠す理由も無いし話そう。
「魔女教を殺してきます。」放たれた爆弾発言でラインハルトは一回固まる。
「魔女教は犯罪集団のので殺しても問題無いですよね?俺としてもクルシュ様を助けたいので?」
「別に問題は無いが、、、聞こう。それはクルシュ様の為なのか?」ラインハルトが真っ直ぐ俺を見る。
「いえ。違いますよ。自分の、俺の為ですよ。俺はクルシュ様の側に居たい。クルシュ様を守っていたいから此れをやるんです。ね。自分の為でしょう?此れをクルシュ様の為と言うのは些か傲慢、じゃないでしょうか?」それを聞いてラインハルトは呆れた様に息をはく。
「止めてもどうせ行くんだろう?最近リーファス街道の近くの森林で不審な事故が沢山起きている。そこに行ってみると良いかも知れない。気を付けて。死ぬなよ。」
「そう簡単に死ぬつもりは無いし、そう簡単に死ねる体でもありませんから。」クインケを2つ持つ。ちょうどドランが起きたようで何をするつもりかは得意のプライバシー侵害で分かっていた。本部を出てから人目の無いところでドランは出てきて、出てきたドランに跨がる。
「場所はリーファス街道でしょ。飛ばすよ!!」クインケを確りと握りしめた。
「魔女教との対決、俺も手伝うよ。」
「いつも思うんですが、何故、ドランは俺を手伝ってくれんですか?」て言うかそもそも何故俺と契約したのかが知りたいところだ。
「主人の困難は従者の困難、主人の敵は従者の敵、でしょ?それと何故契約したか、ねぇ、、、チカゲといると楽しそうだから。凄い面白い奴いるわー、って最初思ったから、かな。実際今も結構ブッ飛んだことしようとしているでしょ?チカゲは最高に面白い奴だよ。」ハハハとドランは笑う。
「それは誉め言葉、でしょうか?」
「どうだろうねー。」そうこうしているうちに巨大な木が見えた。リーファス街道に着いた。ドランを宝石に帰してリーファス街道を歩くと、、、、
「凄い寵愛受けているんね。まさか君が傲慢じゃない。それもあり得る?君は魔女教徒?」目の前には矢鱈陽気な男が居る。
「そう言う貴方は魔女教大罪司教『強欲』担当、レグルス・コルニアスですか?若しくは『暴食』担当、ライ・バテンカイトスでしょうか?」変な雰囲気の男に白幻を突きつけて聞いた。魔女教徒は確定だ。でも気になるのは目の動きだ。さっきからチラチラ後ろを見ている。
「僕は質問した。質問したじゃない。されたら答えるじゃない。そう言うものじゃない。それに答えないで武器を突きつけて別の質問を重ねてくる。ああ、自由さ。それは君の自由だとも。君からすれば僕は勝手に喋って、勝手に武器突き付けられて、勝手に質問されて、勝手に質問して、無視されている風に見えるわけだ。いいよ。そうしなよ。でもさ、その考えってつまりこう言うことだよね?」前のめりになりながら首を傾げて眼力を強くして言う。
「それは僕の権利をー数少ない私産を、蔑ろにするってことだよねぇ?」
「さあな。」そう答えてレグルスから距離をとり白幻を投擲するが白幻は男に当たると割れた。
どうやら厄介な能力が有るらしい。白幻は問題無いだろう。説明していなかった白幻の3つのギミックの内の一つ、超回復だ。この刀はまるで喰種の身体の様に割れたら再生して、しかも強化されていくのだ。とまぁギミック紹介は措いといて、未だにレグルスは後ろをチラチラ見ている。俺になんか負けない、という余裕も表れか、はたまた後ろに大事ななにかが有るのか。一回レグルスに高速で接近して殴ってみた。するとまるで予知夢のあの瞬間の様に右腕が飛んでいった。それを見てレグルスは面白そうに笑うが、それも束の間、中に浮いた腕は直ぐに再生した。それから手を飛ばされて、再生して、、、、、それが数え切れない程続いた。
「時間停止。僕の触れたものを無敵にすると同時に最強の武器にする権能。ただこの権能は自分の心臓も止めちゃうから一つだけだったら使えない。そこでもう一つの権能。小さな王。この力で他人に自分の心臓を重ねて欠点をカバーした。君に勝ち目はないんだよ。」レグルスは余裕で言う。あれほど動いたのに息を切らしていないということは並大抵の体力では無いだろう。するとレグルスは地面の砂を高速で飛ばした。飛ばされた砂を体で傾けて避ける。幸いにも何もない平原だから壊れる物もない。ただ一つ分かった。
「だからですかぁ。だからさっきから後ろをチラチラ見ているんですか。後ろをチラチラ見るのは余裕の表れじゃなくて大事な物があったんですね。」レグルスは俺が気付いたことに焦って砂で攻撃してくる。
「無理ですよ。貴方の威力では俺を殺せませんよ?再生が追い付いてしまう。」レグルスは殴って首を飛ばすが、それすら回復する。
「ドラン。出て来て下さい。」宝石からドランが出て来た。
「ドラン、貴方の能力は何ですか?」
「んー。得意、不得意有るけど殆ど何でも出来るよ。」
「ではかなり無理を言いますが、この世界中の生物、自分とドランとこの男以外を一時的に仮死状態にして目覚めさせることは出来ますか?時間を止められると尚良いです。」この世界中の誰かにレグルスの心臓を重ねている訳だから一時的に仮死状態にしてしまえばその重ねている人も機能しなくなるわけだ。安心してこいつを殺せる。
「出来るよー。じゃあ始めるよ。」これで世界中の生物全てが仮死状態になった。レグルスは自分の心臓が止まる。レグルスの動きを封じた今、足と手を切り落とす。時間停止を解いて逃げようとするレグルスだったが自分の足と手が無いことに気づく。レグルスの前に立って鱗赫をだす。
「遺言は有りますか?俺は優しくてねぇ、遺言は聞くことにしているんですよぉ。」ちょっと暴走気味だ。人肉を喰ってないから、血しか飲んでないから。頭が痛い!!!!何かを言おうとしてレグルスは口を開ける。が、
「はい。時間切れですねぇ。時間は限られているんです。その時間をいくらでも使おうなんて考え、傲慢じゃないですかぁぁぁ。」首を鱗赫で撥ね飛ばす。久しぶりの人肉にかぶり付く。
「チカゲ、正気に戻って!!」ドランが珍しく焦って言う。
「なに。言ってるんですかあ?正気ですよぉ。」目の前のレグルスの死体に噛みつく。ムシャムシャ、嫌グシャグシャという咀嚼音だけが何もない平原に響く。暫く食べ続けた。レグルスを食べ終わるとハァハァ、と息を切らす。目の前の光景を見て思う。やってしまった。
「ドラン。ごめんなさい。ちょっと暴走したようです。」ドランは無言で此方を見る。
「本当にごめんなさい。言い訳ですが此処に来てから血しか飲んでいませんでした。」やっとドランは口を開く。
「無理、してたんだね。」いつものドランとは考えられない程、穏やかに諭すように言う。
「でも、君は人しか食べられない。誰かを殺すわけにはいかないし、クルシュ様達を食べるわけにもいかない。何とかしてあげたいけど僕にはなにも出来ないんだ。」そう。ドランにも、クルシュ様にも、フェリスにも、ヴィルヘイムにも、俺にも、何も出来ない。前と同じ様に皆と同じになりたい、そう思うが叶わない願いだ。生まれながらだ。生まれながらの、この呪いを嫌いながらも生きてくしか無いんだ。俺はただひたすら耐えるしか無いんだ。声にも成らない叫びが体の中でずっと木霊していた。