底辺ウマ娘が異世界転移したら何気にチート臭かった件   作:うひひゃう!@

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 正直に言いましょう。最終回のテンションアゲアゲで突発的に投稿したのが一話でした。はっきり言って今後の展開とか、何も決まっていません。このままなし崩しに続けられるのか? あるいはエタってしまうのか? 本業との両立が出来るかどうか、悩みは尽きず更新もいつできるかわかりません。それでも宜しければ見てやってくださいませ。



2R いきなりの戦闘!

 走る、走る、走る。

 

 かれこれ二時間程も走っただろうか?

 

 正直、あたしはダートを走るのは苦手である。

 

 ぶっちゃけラスト三走のタイムオーバーは全てダートを無理して走らされた結果でもある。正直ハロン辺り13秒を切るのが結構しんどいのだ。ましてやこの砂漠の砂はきめ細かく、深い。噂に聞く笠松のダートよりも辛いんじゃないかと思う。

 

 いや、当然レース程早く走っている訳じゃない。当たり前の話だが精々ダク足程度のスピードだ。ましてやこの暑さである。数分走って息が整うまで歩いての繰り返しである。

それでも時間当たり20キロ位は進んでいると思う。

 

 やがて、日がだいぶ傾いてきた。直に日が沈むだろう。そうするともう少しは涼しくなるだろうから、そうしたらその間に距離を稼いで早めにこの砂漠を出たいところだ。

 

 そう、皮算用をしていたところ、あたしはとんでもない物を発見してしまった。と、いうか発見されてしまった、だろうか?

 

「うげ!」

 

 蠍、スコーピオン。中国では唐揚げにして食べる料理もあるらしいが、はっきり言ってあたしは御免被りたい、見た目でもうノーサンキューな生き物である。もっとも、こいつは簡単に料理されるようなタマでもなかろう。何しろこいつを揚げられるような中華鍋など存在するとは思えない。

 

『キシャァァァァァァァァァァァッ!』

 

 思い切り威嚇されている。毒のある尻尾をあたしに向けて大上段から突き刺そうと、すんげー背伸びして。つまりは身長170のあたしの頭上に届く程の高さ。体高でも2m超え、体長は実に4~5mはあるんじゃないか?  

 

「どうしろってんだよ、こんなの」

 

 あたしに向け示威行動をとる巨大蠍は、大きく振りかぶった尻尾の棘をあたしの脳天目がけて振り下ろした。

 

 ぐっ!

 

 間一髪避けることに成功したものの、ぐるんと後方回転するつもりが、手を付いた所が深く埋もれてバランスを崩してしまった。こういう時、ヒシアマ先輩なら「タイマンだーっ!」って嬉々としてバトるんだろうけど、あたしみたいな似非ヤンには絶対的な実戦経験が不足している。いや、ヒシアマ先輩だってこんな化物と闘った事なんて無いだろうけど。

 

 どしん、と尻もちを突いたあたしは、巨大蠍に尻を向けた無防備な状態であったが、蠍の方も振り下ろした尻尾が砂に突き刺さって抜き辛いらしく、幸いな事に第二撃が来るまで僅かながら間が空き、なんとか態勢を立て直せた。

 

 たしか、ヒシアマ先輩は、

 

「タイマンの時は相手の目を睨み付けて目を逸らさなきゃ、大抵は勝てるっ!」

 

 って言ってたっけ。

 

 ……蠍の目って、

 

 あたしは地面すれすれの蠍の目にガンをつけた。

 

 ……本当に効果あるんだろうか?

 

「キシャァァァァァァァァァァァッ!」

 

 ああ、きっと効果ないわ。

 

 その証拠に今度は両方のハサミを振り乱しあたしの足を狙いに来ている。

 

 そして、ぎちぎちと無数の足を鳴らしながら意外と速いスピードでにじり寄って来た。

 

 そして、確信した。あたし、こういう節足動物って苦手だわ。

 

「うっぎゃああああああああああっ!!」

 

 にじり寄るキモさ加減に我を忘れ、再度振り下ろして来た尻尾をむんずと捕まえると

 

「あっちいけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 ぐるんぐるん振り回してぶん投げた。

 

「キシャァァァ……」

 

 あれ?

 

 思ったよりずっと遠くまで飛んでいった?

 

 20m程も飛ばしてやっただろうか、ドッスンと墜落した蠍は、流石に自重が重い事もあって、落ちた瞬間に損傷したのだろう。立ち上がった瞬間にぽろっ、とハサミが落ちた。

 

 あ、これ、いけるんじゃね?

 

 重いとはいえ、練習用の「重いコンダラ」よりは全然軽いわ。

 

 ましてや、あたしは足はともかく、腕の力だけは自信がある。ヒシアマ先輩にタイマンを挑まれてアームレスリングで勝ったこともあるんだ。以来一目置いてくれて何かと面倒を見てくれていた。寮の後輩とはいえ、一介の未勝利娘であるあたし相手にだ。あの人の暖かさがあったからあんな環境でもずっと耐えてこられた。きっと、恩人ってああいう人の事をいうのだろうな。

 

「グ、キシャァァァッ!」

 

 あ、戻って来た。

 

 今のぶん投げで結構ダメージがあるようだ。これなら素手でもいけるかも?

 

 またしてもハサミを使って足を捕えようとしてくる。そこを逆に踏んづけてやった。みちっ! と妙な音がしてぶらぶらしている。流石はウマ娘用のレーシングシューズ。底に付けた蹄鉄が十分凶器としていい仕事をしてくれる。

 

 に、しても思ったより脆い? 無理やり解体したら勝てるんじゃね?

 

 次は毒針を突き刺そうとする尻尾をどうにかしよう。胴体に乗っかって逃げられない様にしてから尻尾をつかむ。所謂蛇腹関節になっている尻尾は、それ以上いかない所まで逆関節にむりやり曲げると拍子抜けする位簡単に折れてしまった。

 

 よし、これで直接攻撃の手段は潰した。後はどう仕留めるか、だけだな。

 

「おらぁっ!」

 

 かかと落としの要領で乗っかっていた胴体を踏み抜いてやるとバキッ、と音がして固い甲羅が割れて内臓が見えた。そこに手を突っ込んで内臓を引っ張り出してやる。

 

 ねちょっ、とした気持ち悪い感触がうげぇ! だったが流石にそんな野蛮に対処する方法は無かったらしく、蠍の化け物も遂には倒れてしまった。

 

 うーん、今夜は夢で見そう。

 

 微妙な気分ながら、どうにか退治に成功したな。終わってみれば危ない場面も無かったので良しとしようか。

 

 そんな事を考えていると、死体からプシュー! と黒い煙みたいなものが噴き出した。

 

 まさか爆発するんじゃ?

 

 慌てて飛び降りて50m程も逃げただろうか? 結局30秒程の間吹きだしていた煙は唐突に止まると、蠍の躰が真っ白になっていた。まるでライン引く石灰のような感触になっている。触るとぼろぼろと崩れ落ちた。きもい。と、いうか、どういう現象なのだろうか? 

 

 そして、あたしがぶち抜いた内臓の部分、その奥が光っていた。

 

「な、なんだ?」

 

 恐る恐る光の元を探るべく、内臓部分に手を突っ込んだ。何かを掴む感触があった。

 

「うわ、綺麗……」

 

 あたしの手が掴んだものは青い発光する石のようなものであった。

 

「これって、魔石って奴じゃないか?」

 

 自ら発光しているその石の不思議な魅力にしばしうっとりと眺めていたが、

 

「大分日も傾いてきたな。一応、これだけ持って行こう。流石にこんな処で野宿とか嫌すぎる。この石は記念にもらっとくか。もしかすると売れるかもしれないしな」

 

 こうして、この世界へ来て最初の戦闘? はあたしの勝利で幕を閉じた。戦利品も得てなんとなくほくほくした気分である。が、あたしはまだ砂漠の恐ろしさを理解しきれていなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 さ、寒い。

 

 

 

 日が落ちてからというもの、あれだけ暑くてたまらなかった気温は、反転して今度は凍える寒さに辟易としている。

 

 寮を出る前に見た今日の最低気温が8度で冷え込みがきつくなるという話だったので厚着をしてきたつもりだったのであるが、感覚的には北海道の冬並の気温なんじゃないか?という位寒い。

 

「びぇっくしょい、ちくしょーめっ!」

 

 鼻が出た。駅前でもらったポケットティッシュでちーん、と鼻をかんだら凍った。恐らくマイナス20度位の世界だろうか。

 

 あ、

 

 さっき手に入れた魔石(仮称)があったかい。熱を持っているのだろうか? ゲームをやった後のスマホみたいに暖かいので、このまま懐に入れて温まろうか。

 

 そして、こんな所で休む位ならこのまま走り続けて行こうと決意した。なんか休む方が寒さ的にも命が危なそうである。

 

 かれこれ、三時間程も走っただろうか? 

 

「町の灯だ」

 

 いくつもの灯りが灯っているのを発見した。

 

 まだ2~3キロあるかと思うが、ここまで来たら慌てず騒がず粛々と近づいていくだけである。そして、近づいて行く度に見える物が増えて来た。

 

「オアシスだ。助かった」

 

 この辺りだけ木々が覆い茂り、池、というには大きな水辺が町の灯を反射していた。




ウマ娘の身体能力:大凡ではありますが、一般人の10人力というのが定説です。
 パンチ力   1350キロ
 キック力   4500キロ
 背筋力    5800キロ
 ベンチプレス 1200キロ

 尚、クイーンベレーのベンチプレスは2500キロで日本のウマ娘としては最強。ただ、無駄な記録であり、特に評価していたのはヒシアマ先輩だけというのがご愛嬌。


重いコンダラ:正確には整地ローラーという。ウマ娘の使用しているそれは全幅4m、重さは2.5tという特注品。これでダートコースを四周すると大体整備が完了するという代物であるとか。


魔石(仮称):実は本当に魔石である。魔力を持ち、光と熱を発している。ガイガーカウンターには反応しない。強力なものほど透明化が進み色も白に近くなる。(最上級はAAA級)ジャイアントスコーピオンの物は限りなくD級に近いC級。

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