底辺ウマ娘が異世界転移したら何気にチート臭かった件   作:うひひゃう!@

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 一部男性自身にとっては残酷な描写があります。お覚悟を決めてから御覧下さい。


6R 天高く底辺ウマ娘の名が轟く時!

 アチシは今、猛烈に後悔しているわ。

 

 正直、アチシは人を見る目だけは自信があると自負しているの。その根拠は、アチシの奉じる神様『キュア』より賜わりし『聖女』としての神秘の力。その名も『神威鑑定』かの女神様の権能のほとんどは戦う為の力だけど、この権能だけはアチシも普段使いで重宝しているの。

 

 おかげでアスラきゅん♥という逸材を発掘出来たのは僥倖だったわ。まさか後に国王様にまでなっちゃうとは流石に思っても見なかったけど。

 

 それはともかく、今日もアチシはギルドに入ってくる人を『神威鑑定』で覗きまくってたの。趣味のマンウオッチングを兼ねた『神威鑑定』のレベリングね。そうしたら、アチシが以前近所の子供達と一緒に「迷宮体験ツアー」に連れて行ったネアルコ商会のリリッタたんが、お初のお嬢さんを連れて来たの。

 

 『神威鑑定』で彼女をいつも通り覗いたの。

 

 アチシ、噴いたわっ!! 

 

 噴いた挙げ句に飲んでたドリンクが変なとこ入って、咽せたわっ!!

 

 昨年アスラきゅん♥とトットーリの砂漠で戦った砂の大精霊とのバトル以来、本当に死ぬかと思ったわよっ!!

 

 ギルドのバーカウンターはテーブル席のパーテーションに阻まれて、正面から入ってくる人の視線に入りづらいのが奏功したわね。おかげでアチシがのたうち回る無様な姿を見ていたのはバーテンダーだけで済んだのよ。

 

 最も、アチシが死の淵を彷徨ってる間にアホのトンキッチンがゴロ巻きに行ったのには閉口したけど。

 

 ま、おかげであの子の実力を確認出来たし、アスラきゅん♥との顔合わせも出来たのは僥倖だったわね。

 

 でも、アチシはあの子、ベレーちゃんと名乗った彼女をいきなり戦力として計算しなきゃいけない事態に落とし入れてしまった。

 

 ゴブリンの大軍襲来!

 

 確かに数年に一度はある事態だし、備えも怠って無かったけど、悪い事にキングまでが確認されていた。不幸中の幸いな事にアスラきゅん♥ がこの町に居たのでキングを相手にアチシが出張る事態は免れてラッキーだった。単独でアチシが戦ったら勝つ可能性は三割切っていた筈だし。

 

 ところがいざ、準備を整えて出撃しようとしたら、ベレーちゃんったら、エリーゼちゃんから武器もらったら、一人で突っ走ってさっさと街門まで行っちゃった。その行動を見てベレーちゃんの危うい部分が露呈したわ。

 

 あの子、戦闘とか、冒険者としての心得だとか、ズブの素人もいい所じゃない!? 位階が位階だけに、流石に一度や二度の討伐経験位あると思ってたわよ! これには流石に早まったと反省したわ。

 

 それでも、アチシは町を預かる身としては彼女の力を当てにしなきゃいけない。後衛のアチシが前線で出しゃばるよりは確実に戦力になるから。それにあの子の素質ならアスラきゅん♥ と連携すれば危なげなくキングに勝てるんじゃないかと、期待しちゃったの。しかし、それが甘い目論見だったと思い知らせる事になるなんて……

 

 

 

「ゴ、ゴブリンダイバーだぁ

っ!」

 

 叫ぶ冒険者の悲鳴にオアシスの岸辺へと視線を動かすと長髪を濡らした不気味なゴブリンダイバーが次々と上陸していたわ。

 

「まさか、別働隊? ゴブリンが戦術を使うなんて!?」

 

 衝撃を受けるシルビア姫を叱咤して、アチシ達も岸辺へと向かう。

 

「トンキッチン!」

「グレッコか。済まねえ! 俺様と子分だけじゃ支えきれねぇ!」

 

 アチシは周りの冒険者達にも聞こえる様に、戯けた声で精一杯虚勢を張ったわ。

 

「だからアチシとシルビア姫が来たのよっ! みんな〜! 今からアチシらが先制かけるから、アチシとシルビアたんの姫プレイに乗りなさい〜っ!!」

 

 うおおおおおおっ!!

 

 歓声がアチシの演説に応えてくれた。60人程しかいない、それもほとんどが第一位階の冒険者達が、今程頼もしいと思った事ないわね。

 

「じゃあシルビアちゃん、さっきの手はず通りにね」 

「了解! お願いするわね!」

 

 アチシはオアシスの中から上陸してくる青白いゴブリン共が完全に上陸してくる前に足止めの為、上空から水面へと一気に大気を叩きつける。見えざる大いなる神の御手『ゴッドフィスト』の魔法だ。

 

 ドッゴオオオオオオオオン!!

 

 と水面諸共押し潰されたゴブリンダイバー、その数約800!

 

 だが、それだけでは致命傷ではない。でも、それを与えるのはアチシの役目じゃない。

 

「フィニッシュ頼むわ!」

「了解!『ファイアーブラスト』!!」

 

 水煙の舞うオアシスの上空で圧縮された焔の塊が水蒸気を最悪の凶器へと変える。

 

「ブレイク!!」

 

 パチン! シルビアちゃんが指を鳴らしたと同時に

 

 ヴオオオオオオオオン!!

 

 水蒸気爆発が連鎖して起る。ほぼ上陸成功していたゴブリンダイバーは、何に自分自身が殺られたかを理解する間も無く炎と爆発で死亡する。まだ、水面に顔を出してないダイバーもまた、変わらぬ運命である。何故なら、水面から下、半径200mの範囲に残った水も全て沸騰していたから。

 

 当然ながら沸騰した熱湯の中で生き延びる事の出来る生き物なぞほぼ居ない。あわれ、対面からはるばるオアシスを渡って挟撃しようとした小汚いゴブリンの別働隊はあっさりと煮沸消毒されてしまったの巻。

 

「大勢は決したわね。じゃ、後は残敵掃討するだけの簡単なお仕事よ〜ん!!」

 

 アチシも最初の陸戦部隊の残り、アドミラルが二、三残ってるけど、第三位階の下位なら、アチシらとトンキッチン達で対処できる。後はキングだけね、と、高を括ってたわ。

 

 Doooooooon!!

 

ものすごいスピードでベレーちゃんが200メルトもの距離を吹っ飛んで来たのは、正にアチシらの緊張感が切れたその一瞬だったわ。

 

「い、嫌ぁーーーーっ!!」

「べ、ベレーちゃん!?」

 

 そこには、腹部を真っ赤に染め上げ、内臓のはみ出たベレーちゃんが余りにも無残な姿を晒していたの。

 

「待ってて! 今、助けるからっ!!」

 

 アチシは既に枯渇寸前の魔力を振り絞ると、はみ出た腸を無理矢理押し込めつつ、

 

「リバイタル!!」

 

 対重症患者用の止血魔法を唱えたの。

 

「シルビアちゃん! アチシの鞄からMP回復薬出して! 全部っ!!」

「は、はいっ!!」

 

 出してもらった回復薬を片っ端から飲み干しつつ圧死した組織の回復を試みる。気絶していた事が不幸中の幸いだったわ。意識が残ってたら痛みと出血のショックで即死してたかも。

 

「ベレーさんは!?」

「アスラきゅん! 丁度良かった! 時空魔法でベレーちゃんの時を止めてっ! 直ぐ!!」

 

 言い終わる前に時空魔法を行使してくれたおかげで時間を稼ぐ事が出来るわ。後はMPポーションを連続でガブ飲みすると、アチシは最後の魔法を行使する。

 

 げぷっ! 対象の体組織を在るべき姿に戻す究極の回復魔法。但し、極度の破損や著しい劣化は事前に回復させておかなければならない。しかも、どんな状態でもまず生きてなければそもそも使えない、但し生きてさえいれば本人の生命力次第だが、それまでにあった躰の破損を一切合切無かった事にしてくれる、神『キュア』の使徒が使える究極魔法!

 

「『リヴァース』」

 

 アスラきゅんはアチシが魔法を行使したのを見届けるとキングと戦ってるエリーゼちゃんの所へと戻って行った。アスラきゅんの判断の速さに助けられたけど、彼を送り出してくれたエリーゼちゃんのタンクっぷりも凄まじいわ。

 

 かなり長時間の追い詠唱が必要な『リヴァース』だけど、幸いトンキッチン達がアチシの護衛を買って出てくれた所為で、安心して行使出来る。後はベレーちゃんの生きていたいという意思次第だけど、大丈夫、きっと。

 

「時が回復しますっ! 3、2、1」

「まだっ! 駄目よ、ベレーちゃん!! 目を開けなさいっ!!」

 

 嗚呼、『キュア』様っ!!

 

 アチシはどうなっても構いません! どうか、どうか、

 

 この無垢なる魂を御元にお迎えなさいますなアアアアアアアアっ!!

 

「べ、ベレーさん!」

「……ベレー!」

「死んじゃらめぇっ!!」

 

「くっ! あのアマ! 勝ち逃げするんじゃねー!」

「「クソアマぁぁぁぁっ!!」」

 

「! お、お姉ちゃん!!」

「リリッタちゃん、大丈夫、大丈夫よ!」

 

「ベレーさん……」

「ベレーちゃん! 気をしっかり!」

 

 

 嗚呼、みんなの想いが流れ込んでくる! お願いっ! みんなの想いに応えて! ベレーちゃんっ!!

 

 

 

 

〈その時、奇跡が起こった!〉

 

 

 

 グレッコ=エールの位階が上昇

 発動中の『リヴァース』が第四位階から第五位階へと進化

 

 発動中の『リヴァース』第五位階がアスラ=ウインザーの時空魔法『ポーズ』と融合、複合魔法『リヴァースコンヒーロ』に進化

 

 発動 クイーンベレーの内臓破裂を破裂前の状態に

    クイーンベレーの腹部裂傷を裂傷前の状態に

    クイーンベレーの肋骨骨折を骨折前の状態に

    クイーンベレーの右膝内側靭帯損傷を損傷前の状態に

    クイーンベレーの左足亀裂骨折を骨折前の状態に

 

 クイーンベレーの全損傷部分完治を確認、再損傷予防の為永続バフ効果『強靭』を発動

 

 クイーンベレーの所持ステータス値を自動で『リビルト』

 

 最適化に成功

 

 

 

 

 封印称号『王者の魂』を解放

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 あ、光が……

 

 光を追いかけて走ってきた。

 

 追いかけて、追いかけて、

 

 それでもとうとう最期まで、

 

 追いつく事ができなくて、

 

 ……嗚呼、もう、いい!

 

 ……いい、のか?

 

 ……あたしはこれで、いいのか!?

 

 

 

 イヤだ!

 

 イヤだ!!

 

 イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!

 

 まだあたしは何も出来てないっ!!

 

 そうだ! この世界で最初に誓ったじゃないか!! 

 

「こうなったら、歌舞伎町だろうが砂漠だろうが関係ねえ、何が何でも生き抜いてやる!!」

 

『いつか、最高の舞台で!』

 

 そうだ! デセーオちゃんとUTCで誓ったあの日、その約束はもう果たせないかも知れないけど、あたしがこの世界で頑張れば、いつかはあたしの名がこの世界で轟くかも知れない。

 

 いや、何が何でも生き抜いてやる!

 

 どっこいそれでも生きてやるっ!!

 

 

 

 

 

 びゅんっ! と、腹筋の力だけでジャンプし、空中反転する。昔、地元の山の中でデセーオちゃんと共に練習した成果だ!

 

 シュタッ! と降り立つと不敵にあたしは言い放つ!

 

「あたし、再び、参上!!」

 

「「ええええええっ!?」」

 

 あ、ギルマスとシルビアが目を剥いて驚いてる。

 

 ってか、周囲の冒険者達が死人を見るような顔であたしを見ている。あ、あの失礼なオヤジも涙流してあたしを見ている。

 

 だが、何よりも驚愕してるのは、遠くで顎カックンしてやがるゴブリンキング!

 

 良く覚えてねぇが、確か余所見してるスキにアイツに吹っ飛ばされたんじゃ?

 

 に、しては身体が軽い。痛い所が何処にもない!

 

 もしかして? もしかしたら? アイツに吹っ飛ばされた時に古傷の膝の骨が、元の位置にピッタリ嵌ったとか!?

 

 なら、ちゃ〜んす!! 絶対アイツは、

 

 心華を燃やして〜っ!

 

「ブッ潰すっ!!」

 

 あ、ゴブリンキングがドン引いた。

 

 

 

 無論、ドン引きしたくらいで許せる訳がない。ハロン程もある距離をあたしは一気に駆け抜ける!?

 

 速っ!? 砂地とはいえ、町の人達が使う為に整備した広場だ。トレセン学園のダートコースよりは走りやすい。でも、そんなレベルの話じゃない! 

 

 これは、あたしの競走能力が、爆上げしてる!?

 

 ハロン十秒どころぢゃねー!

 体感五秒、ってか止まらん!

 ヤバイヤバイ! どうやって止まる!? ! アイツを利用してやれ!

 

 あたしはアスラやエリーゼに

 

「退けぇーーっ!!」

 

 退避勧告をしてそのまま走り抜けると、そのままゴブリンキングに突っ込む!

 

 かなり高い所にあるキングの喉元にジャンプしつつ右腕を引っ掛けてやる。確かプロレス技のラリアート、って言ったっけ?

 

 Gyaow!!

 

 短く吠えたキングの喉元にバチンと入った! で、でも勢いを殺しきれずに右腕を支点にあたしは一回転しそうな勢いである。

 このままだとあたしがスケキヨになっちゃう!?

 

 Ugwaaaaaaaaaaw!!

 

 あたしの勢いにキングの方が耐えられずあたしの身体が90度程持ち上がった所でもんどり打ってドッゴオオオオンと転倒する。 

喉元の打撃よりも転倒した方がダメージは多かったみたいで、後頭部を押さえて悶絶してる。

 

「ラ、ランニングネックブリーカードロップ!? 三度世界を征した伝説の必殺技!? ベレーさん、君はもしかして……」

 

 へ? アスラがなんか変な事言い出してフリーズしてるけど、そんな暇は無い筈だ。

 

「アスラっ! さっさとトドメを刺してぇぇぇぇっ!!」

 

 ハッ! としたアスラが慌てて駆け寄りあたしが吹っ飛ばされた際落とした角材をあたしに差し出す。

 

「いや、トドメは君が刺してくれ。脳天を砕けば簡単だろう。僕らじゃコイツを倒しても位階は上がらないが、君なら……」

 

 そう言いながらキングが立ち上がれないように首の動脈を剣で斬り裂く。びゅうびゅうと血が凄い勢いで吹き出すが、まだ致命傷と言う訳じゃないようだ。

 

 まあ、ブッ潰す! と宣言した手前、情けを掛けるのも違うし、地元でも、クマとか出た時は遠慮なく解体して、売り飛ばしていたあたしが言えた話でも無い。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 スイカ割り宜しくキングの脳天に思い切り一撃! ゴキャッ! と頭蓋骨が砕け脳味噌が飛び散る。念の為眼球から脳味噌に貫通する様に角材を突き刺すと、完全にキングは沈黙した。

 

 第四位階に上がりました。

 第五位階に上がりました。

 

 あれ?

 

 どこからか、優しげな、それでいて無機質な声が聞こえる? あれは一体?

 

 うおおおおおおおおっ!!

 

 別のゴブリン共を倒していた冒険者達も、キングの死を察して喜びの歓声を上げる。アスラも肩を叩いて労ってくれた。エリーゼも涙ぐんでいる。遠くでは、ギルマスとシルビアが、ダンスを踊ってた。

 

 ほぼ九割方の討伐を果たした上に、士気も未だ高い。後はあたしが出張る必要も、? 何? 何か違和感が……

 

 

 

 ひょっこり!

 

 オアシスの岸辺に生えたサテツ? のおっきい大木? その木の陰からのっぺりした顔のちょっと大き目のゴブリンが顔だけ出してこちらを伺っている。

 

 なんだ!? アイツ、キングよりもヤバイ感じがする。

 

「ヒャッハー! 残党狩りだー!」

「踊れ、踊れ!」

 

「バカ野郎! 調子に乗るな!」

「平気ッスよ? アニキ!」

「オレらも位階が第二に上がりましたから、あんなホブゴブリンくらい訳ねーですって!」

 

「待ちなさいっ! ソイツはマジでヤバイのよっ!!」

 

 ギルマスが慌てて子分共、確かモブ連2号、3号だっけ? を止めようとするが、時既に遅く、

 

 バキッ!!

 

 たった一発のパンチでぶっ飛ばされて気絶した。

 

「マズイです、ベレーさん! アイツは多分僕らより位階が高い」

 

 アスラの言を肯定する様にギルマスが大声で周囲の冒険者達に警告する。

 

「ソイツは称号持ちのネームドエネミーよ! 名称は、ボブ=ゴブリン! 称号は『紐育の帝王』! 位階は……」

 

「位階は幾つだ!?」

 

 モブ連1号が子分を回収しつつ尋ねるが、ギルマスの答えは

 

「アンノーンよっ!! 文字化けしてて読めないのっ!! みんなっ! 逃げて! チョー逃げてっ!!」

 

 だが、その忠告は一足遅かった。

 

 ボブ=ゴブリンがファイティングポーズを取り冒険者達を威嚇する。

 

「「「ぐわあっ!!」」」

「「「ぎゃああっ!!」」」

「「「スケキヨっ!!」」」

 

 ! 指一本も触れてないのに冒険者達がぶっ飛ばされていく。流石にアスラ達やギルマスは踏みとどまったが、トンチキとやらは気絶していた手下諸共ぶっ飛ばされた。

 

 指一本触れてないのに全滅!?

 

「ヨワイ! ヨワスギルゾ サルノデキソコナイドモ!! コレナラ姑息ニモヘイタイヲ使ッテ退却戦ヲエン出スル必要スラナカッタ」

 

「その割には別働隊? はアッサリ全滅したみたいだけど?」

 

 ゴブリンが喋る事に驚愕するあたしを置いてアスラが件のボブゴブに挑発する様に語りかける。

 

「バカメ! アンナチリアクタヤカイライノ王ナドイクライヨウトモ物ノ数デハナイワ! ワレコソガ神デアリ、ワレコソガ国家デアル!!」

 

 なんか、言ってる台詞の傲慢さとのっぺりした顔のギャップがパねえんだが…… 

 

「ともあれ、これ以上の侵攻は看過できない! お前はここで討ち取る!!」 

 

「シレモノガ! 思イシレ!!」

 

 アスラとボブ=ゴブリンの戦いが幕を開けた。アスラの大剣が力任せに振り降ろされるが、ボブは短い手足の割に意外にも機敏なステップでこれを回避する。

 

「アタラナケレバドウトイウコトハナイ!」

「なら、これならどうだ!!」

 

 アスラが更なる追撃で力任せの一撃を放つ。『バッシュ』が空をきり、地面を刳るも外れると

 

「何度ヤッテモ同ジダ!? ナ!ソラヲトンダ!?」

 

 地面に刺さった大剣を支点に空中へとジャンプしつつ捻りを加えて回転し、有り得ない角度からのキックを放つ!

 

「反転『コークスクリューソバット』! どうだ! これが人間の長い歴史が磨き上げた力だ!!」

「……アスラ一人じゃない事を忘れないで! 『ハンマーフォーフィフティ』!!」

 宣言通りの450°回転したエリーゼがその遠心力を利用して巨大なハンマーでボブをぶっ叩く! 

 

「こっちも喰らいなさい! 『ホーミングレーザー』!!」

 

 シルビアが指先から集中した魔力の光を放つ。が、余裕を持って回避されてしまった筈のレーザービームが、直前に分裂した!?

 

 ドガガガガガガガーーン!!

 

 ビームの大半は外れた様で砂煙を巻き上げた、が、その中を突っ切ってアスラが駆け込むと砂煙の中、ボブのシルエットを脳天から一刀両断に斬り裂く。

 

「や、やったか!?」

 

 ヤバイ! それはフラグだ!

 

「残像ダ」 

 

 砂煙が晴れるとアスラの後ろを取ったボブがアスラをバックから抱え上げる。

 

「な、なにをする!?」

「我ガ妙技ヲ味ワエ!」

 

 両足を抱え込まれたアスラがそのままボブに勢いづけて落とされる。待っていたのは折り曲げられたボブの膝!

 

「ぐ、ぎゃああああっ!!」

 

 哀れ、アスラは尾てい骨をボブに割られてしまった。

 

「アスラっ!」

「アスラあっ!?」

 

 エリーゼとシルビアが慌てて駆け寄りアスラを守ろうとボブの前に立つ!

 

「ホウ、人間ノメスニシテハナカナカ度胸ト器量ガイイナ。キサマラハ我ガ国家ノ国母トシテヤスム間モナク孕マセツヅケテクレヨウ!!」

 

 カチン!

 

 あたしは黙っていられず、アスラ達の前に立つ。

 

「ナンダ? キサマモ我ガハーレムニイレテホシイノカ?」

「ざっけんなっ! このすっとこどっこいがぁっ!!」

 

「「すっとこ?」」

 

 エリーゼとシルビアが疑問符を投げ掛けるがそんな事は知らん! 後でお父さんかお母さんに聞け!!

 

「ばっちゃがあたしに言っていた。女たるもの、女としての挟持に生きろと」

「挟持ダト? タカガメスイヌフゼイガカ?」

 

 ツーアウト。

 

「女たるもの、本気で人を愛して惚れて、惚れた相手に最大限の愛情を捧げろ、と。そして、その捧げた愛情の集大成こそが二人の間に出来た子供だと」

 

 エリーゼとシルビアがアスラを見つめてぽっ、と頬を染める。やっぱあいつらデキてるんじゃないか? ちくそー! 爆発しろー!

 

 もとい。

 

「だが、貴様は女を見て只、子供を孕む為の道具扱いした。その傲慢さは全ての『女』を敵に回す行為だ! 天が地が、人が許しても、あたしが許さん!!」

 

スリーアウト、でいいよな。

 

「オノレコシャクナ小娘ガッ! 貴様ハ一体ナンナンダ!?」

「通りすがりのウマ娘だ! 覚えておかなくていい。さっさと死ねーっ!!」

 

 あたしはボブに向かって突進すると、角材を袈裟斬りに叩きつける。

 

「「「ウマ娘って、なに?」」」

 

 アスラ達が疑問符を投げ掛けるのを尻目に猛攻を繰り広げるが、ボブに当たらない。

 

「コシャクナ! 喰ラエ! 『バックランドストレート』!!」

 

 不可視の攻撃があたしに迫る。どうやらさっき冒険者達を纏めて倒した技らしいな。だが、

 

「二度も同じ手が通用するかっ!!」

 

 不可視の何かを纒い伸びてくるのはタダのパンチである。あたしはそれを紙一重で躱して伸びきった肘を角材で打ちつける。

 

「僕ですら見るだけで精一杯の攻撃を見切って反撃したっ!?」

 

「ギャ! イタイ! ジミニイタイ!!」

「お前が安易に女に向かって言った『孕ます』って台詞の方が何倍もイタイ上にどれだけの女を傷つけてるか? 思い知れ! このゴキ野郎っ!!」

 

 あたしは次に奴の膝裏に角材を叩きつける。足が速いなら、足を潰せば何も出来なくなる。

 

 あの暴虐無尽なユーワファルコン先輩だって、年に一度のレース直後の再骨折した時には何も出来ない大人しい時期がある。

 

 その時悟ったのだ。

 

 相手の得意分野を潰してしまえば、ソイツはもう何も出来ないデクの棒だと!

 

 つまり、

 

「足が自慢なら、足を潰す!」

「グギャッ! アギャ! ロ、ローハヤメテ!!」

 

 嫌がるボブの足を次々に攻撃する。

 

「皿」

「ギャ!」

「弁慶」

「ギュ!?」

「内腿」

「ギョエー!!」

 

 グラリと転倒しそうなボブに片手を引きつつ両足をあたしの腕で薙ぎ払うと面白い位簡単にグルンと1回転した。

 

「あれは、三船十段の秘技『玉車』!?」

 

 いや、知らんて! ともかく、あたしは転倒したままのボブを逃がさぬ様鳩尾に膝を押し付け顔面を殴る殴る!

 

「こ、今度はニーオンブレス? 天才佐山サトルが開発したアルティメットボクシングまで!?」

 

 誰だよ、ソイツ!? ともあれ、

 

「さて、最初は自慢のパンチを打ち砕き、次にフットワーク自慢の足を潰してやった。で、大きな口を叩く悪癖もあるから顔面ごと唇を潰してやった訳だが」

 

 ニヤリ! あたしはここで過去のトラウマの解消次いでに奴を追い込んでやろうと画策する。

 

「んで、てめえにはもう一つ自慢があるみたいだなぁ。そうだよ、それだ! その股間に生えてる小汚いち○こだぁ!!」

 

 ここであたしは膝を支点に180度回転し、腰蓑を毟り取り、露出したイチモツをキンタマごと殴打しまくる!!

 

「ウギャ! メギャ! アヘ! モ、モウ、ユルシテ!!」

「馬鹿野郎! 許す訳がねえだろうが!?」

 

「「「あ、悪魔だああああっ!!」」」

 

 いつの間にか取り囲んだ冒険者達が口々にあたしを非難する。あんたらさっきコイツに殺られてたよな?

 

「批判は一切受け付けん! 今はあたしら女のターンだ!! 大体お前ら男は勝手過ぎだ! 女と見ればヤレるかヤレないか、どっちかしか無い! しかも、ヤレればビッチ扱いし、ヤレなければブス! と、手の平を返す! ましてや、イケメン士ね! とか、リア充爆発しろ! とか、てめえを顧みず言いたい放題!」

 

 ぐっ! と黙り込む男冒険者達。

 

「そうして妥協したとしてもお前ら男は自分に魅力があるからだと勘違い! 気がつけばお前らは女を自分のアクセサリーか何かと勘違いしている!」

 

 そうして周りを見渡せば、俯く男共と、うわっ!? エリーゼとシルビアがぼろぼろと涙を流していた!?

 

「そうよ! 私は親戚の筈の公爵から息子の嫁にと求められ、婚約も決まってないのに子供を何人も産む事を義務付けられて、足りない様なら自分も私を種付けしてやるとか言われて、そうしたら弟が王になった後でも殺さず生かして置いてやると脅されていたわ。嫁いで行く自分の未来にずっと絶望していたの!!」

 

 シルビア、重い重い!!

 

「……わたしも同じ様な物。評議会議員の中年から自分の嫁に来る様に命令されていて、それも、お父様が怖いからとわたしからお父様に嫁ぎ先に推薦する様にと。そんな情けない男に自分の安全を握られて、毎日が地獄だった。あの時アスラ達と出逢わなかったらと考えたら……」

 

 エリーゼお前もかっ!?

 

「……どうやらこの世界、男共ってのはどうしようもないクズばっからしいな?」

 

 あたしの言葉に数少ない女冒険者達もウンウンと頷く。男共の方はアスラも含め居心地が悪いのだろう。ビミョーな空気感が場を支配する。今更言えないな。ちっちゃい頃ママの愚痴や恨み言を覚えてて適当にパクっただけの話がここまで重い雰囲気にしてしまうとは。

 

「ともあれ、ここは一罰百戒! 今からコイツの公開処刑を行い、以って全ての罪咎を清算させるとしよう」

 

 やいのやいのと騒ぐ傍聴人の群れを無視してあたしは我ながらドン引きそうな凶悪な笑みを浮かべて宣言する。

 

「判決、死刑!!」

 

 その間もジタジタと逃げ出す機会を伺うボブの手足はアスラとギルマスが腱を切り動かす事も最早叶わない。

 

「じゃあ、早速執行しようか?」

 

 あたしの宣言にヒッ! と白目を剥くボブと既にお通夜の雰囲気な男冒険者達。あたしは徐ろに、

ボブのち○こを直に握り絞めた。

 

「「「「ぎゃああああああああああああああああっ!!」」」」

 

 男共の悲鳴をBGMにあたしはボブのち○こをグルングルンと振り回しボブの身体をびたーん! びたーん! と地面に叩きつける。既に白目どころか完全に昇天してしまったボブは叩きつけられるごとに菩薩の様な穏やかな顔になっていく。一方顔色が悪くなる一方の冒険者達はというと、

 

「恐ろしい。俺様はなんて恐ろしい相手に喧嘩を吹っかけてしまったのだろうか?」

「アチシは今まであの姉達を心の中で恐れていたわ。でも、姉達なんてまだまだ甘い! 結局あれは唯の貴族のお嬢様の遊びに過ぎなかったのね」

 

 青い顔でガタガタ震えつつ虚な表情でそれぞれ神に祈る男共。やがて終末の刻が来た。

 

「あ」

 

 ぷちん! とち○こが千切れてボブが遠くへ飛んで行った。

 

 

 

 その後の事は多くは語るまい。

 唯、有志の男冒険者によりち○こを亡くしたボブは、その名誉を尊重し、安楽死処分となったと聞く。

 

 そして、世界は少しだけ優しくなり、女性達は笑顔を取り戻し、男性達はいつも優しさに満ち溢れる様になった。

 

 そしてあたしは、恐怖の象徴として、『白き魔王』の二つ名を戴いた。ガッデム!!

 




その時、奇跡が起こった︰過去に数多の英雄の危機を救った正に奇跡としか言い様の無いミラクル。具体例、
 仮面ライダーブラックが太陽の力を得てRXに進化した。
 劇場版で守られるべき妖精が神秘の力を得てプリキュアに変身。
 スペが『調子にのるな!』の力を得てブロワイエに完勝、等。

『王者の魂』︰故ジャイアント馬場さんの入場テーマ曲。

三度世界を〜︰その馬場さんが三度に渡りNWA世界ヘビー級王者を奪取した時のフィニッシュ技。

心華を燃やして︰メイクデビューではこれを言いたかったらしい。予想外にスペが怯えたせいで歴史を変え損ねたとか。珠理奈様と、宮脇の確執に通ずる悲劇かも。

白き魔王︰最早語るまでも無い、一部の人にとっては既に伝説となった称号である。
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