下の記号が付いてあるところからBGMをかけてもらえればと思います。
◇1
『Bahasa Palus』─刀語 より─
少し修正しました。
◇
「この村はもう駄目だ!皆急いで逃げろ!!」
ニクスが最後の最後で発動させた【
氷雪族の村をゆうに覆い尽くす巨大な氷の塊が出現していた。こんなものが落ちれば人はおろか、村であっても壊滅してしまう。
「あっ、あぁ……」
その異様な魔術でミューリは勿論、氷雪族の人たちも動けなかった。
「ミューリ!ミューリ!!しっかりしろ!」
「レシスト、これじゃあ、皆死んじゃう!」
「おい!ニクス!」
しかし、ニクスの反応がない。この魔術で本当に魔力が尽きてしまったのだろう。ニクスはぐったりと地面に倒れていた。
「ちくしょう、これじゃあ魔術を解除出来ねぇじゃねぇか」
そしてミューリはなけなしの魔力でもう一度【肉体強化】を施していた。
「レシストも、【肉体強化】でもして一人でも多く助けないと!」
「あぁ、そうだな」
本当にコイツは。今一番自分が疲れてるのに人を助けることしか考えていない。
根っからのお人好しだよ。
「一人でもじゃなくて、全員をだろ?」
◇1
だから俺も覚悟を決める。
コイツと並んで歩けるためにも。
俺達を助けてくれた氷雪族の皆を救い出す。
「【
俺は魔術を発動させ、全身から紫色の電気がバチバチと音を立てて放出する。
「レシスト!【紫電】は──」
「そんなことよりも!早く助けるぞ!!」
ミューリの言葉を無視して俺は地面を蹴りあげる。
この【紫電】は俺が独自に編み出した魔術。近い将来魔族との戦闘で、俺の持てる魔術では決して勝つことは出来ないと思い新術を編み出そうとしていた。
どんな魔術であれば魔族を倒せることが出来るのか。魔族は驚異的な身体能力、生命力、魔力を持ち、死ぬまで攻撃の手を緩めない。
魔族の身体能力を超す速さで、かつ一撃で屠る魔術が必要だ。
魔族の身体能力は【肉体強化】であっても超えることはできないとされている。ならばそれ以上の魔術を編み出すしかなかった。
そう、この【紫電】は簡単に言えば【肉体強化】を超えた【肉体強化】なのだ。
【紫電】は全身の筋肉に微弱な電気を流すというもの。体が動くということは脳が筋肉に動けという命令を下して動かく。この【紫電】はいちいち脳の命令を待たずに電気で筋肉を刺激させ反射を利用し、強制的に動かすことが出来る。
故に人間の反射速度をゆうに超し、例え【肉体強化】を施した者であっても先手を取ることが出来る。
しかし、代償は大きい。微弱とは言っても電気を流すことには変わらず、長時間使用すれば筋肉が焼ききれてしまう。
そうなれば俺は動くことさえできなくなるだろう。
だがそんなことは関係ない。俺の命を救ってくれた氷雪族の人たちに恩を返す時がきたのだ。
使用したその瞬間から全身の筋肉が悲鳴をあげる。気が狂うほどの激痛だ。
だがここで気絶するわけにはいかない。
「ウォォォオオオオッッ!!」
俺は上空の氷塊へと飛ぶ。
そして、腰に帯刀してある刀の鯉口を切る。その次に刀に魔術で発生した電気を流す。
次の魔術も魔族を確実に屠るため編み出した。
不可避の一撃。来ると分かっていても体が追い付かずに攻撃を受けてしまう。そんな攻撃を考えていた。
剣術には【居合い】という不可避の一撃があると文献を見た。俺なりに居合いを試してみたがいまいちしっくり来なかった。確かに並みの人間ならば不可避の一撃として通用しただろう。
しかし、相手は魔族。通用するイメージが湧かなかった。だから俺は一工夫加えた。
それは【磁力】。電力と磁力はかなり密接した関係であり、電流があれば磁界が生まれる。そして磁界が生まれれば磁極も当然生まれる。
それを応用し、刀の刀身と鞘をN極とS極にさせ、くっ付けた状態にさせる。そして、射程範囲に入った瞬間に同極へと変化させ反発させあわせる。
【紫電】の速度に【磁力】による反発力、それらが合わさり不可避の一撃を編み出したのだ。
「オオオオオォォォォォッッ!!」
バチバチと電気の放出音がうるさい。体も悲鳴をあげている。
だというのに俺の思考はクリアとなり、目の前に迫る氷塊をじっと見つめる。
どこを切れば砕くことが出来るのだろうか。ただその一点しか考えていなかった。
そして俺は導かれるように氷塊の真下へとたどり着いた。ここだ。
ここを切れば──
「砕けろ!【
今、この瞬間に【電力】と【磁力】の会わせ技が発生した。
刀を振り抜き、氷塊へと刀身が食い込む。その常軌を逸脱した速度、そしてその衝撃に氷塊は耐えることは出来なかった。
凄まじい破砕音と共に氷塊は砕かれた。
それと同時に右腕に凄まじい激痛が走った。俺は朦朧としながらも右腕を見てみる。
右腕は骨が折れ皮膚を突き破っていた。まるでとんでもない圧力で潰されたようだった。
まあ、それもそうだろう。あれだけの氷塊を砕いたのだ。右腕だけで済んで良かった。
満足感に満ちて俺は気を失った。
◇
「……ん」
目を覚ますとどこかで見たような天井があった。
ああ、そうだ。俺はあの氷塊を砕いたんだ。
「ッッ!!」
辺りの様子を見ようと体を動かそうとしたら、全身に激痛が走った。
これも【紫電】と【紫電一閃】の代償か。これじゃあ連戦にはとてもじゃないが向いていない。
まあ、それが分かっただけでも良しとしよう。改良の余地はある。
「すみません、誰かいますか?」
返事はない。ていうか喋るだけでも痛い。どれだけ後遺症があるんだよ。
俺は諦めて誰かが来るのを待っていた。
「あっ!ミューリはん、龍神様意識を取り戻したみたいどす!」
氷雪族の一人が俺に気付いたようだ。ていうか龍神様?
「レシスト…」
「お、ミューリか?悪いな全身痛くて上手く喋れないかもしれない──」
「レシストォ!!」
ミューリは感極まって俺に抱きついてきた。
「イタタタタタ!ミューリ、痛い!!俺怪我人!!」
「心配…したんだからねぇ……ばかぁ…」
あっ、痛すぎて意識が……
◇
「はぁっ!?三日間も眠ってたのか!?」
「そうだよ。全然起きないから、もうずっと目を覚まさないかと思ったんだからね」
割りとシャレになってねぇよ。どんだけヤバイ魔術なんだよ。いや、俺が編み出した魔術だけどさ。
ていうかこんな魔術欠陥以外の何でもないよ。
「すまなかったな、心配かけて」
「ホントだよ。それに右腕なんだけど、一ヶ月は絶対安静だからね」
「はぁ!?一ヶ月も!?そんなに酷いのかよ!」
「酷いなんてもんじゃないわよ。橈骨は開放骨折、尺骨は剥離と螺旋骨折。手首から先は複雑と亀裂骨折。亀裂の箇所は30から数えてない。上腕骨も亀裂と螺旋骨折」
「うん、酷いなんてもんじゃないな。全然理解できないけど、理解したくもない」
「だから【紫電】は早いって言ったじゃない」
実は【紫電】の魔術はミューリに頼って編み出したもの。ミューリの医学講座みたいなもので筋肉の動かし方からヒントを得たのだ。
そして新術を編み出したとミューリに教えたら絶対に使うなと注意されたのだ。その時に筋肉が焼ききれ、一生動かなくなるぞと脅された。
「こんなにボロボロになって」
「……それで氷雪族は大丈夫か?」
「うん、レシストがあの氷塊を粉々に砕いてくれたから。大きな塊もあったけど、氷雪族の人たちが氷結魔術で砕いてた」
「そうか。良かった」
それを聞いて一安心した。
これだけボロボロになった甲斐があった。
「なに満足した顔してるのよ。龍神様の方がバカじゃない」
「龍神様?ああ、そうだ、氷雪族の人たちが言ってたな」
「それレシストのことだよ」
はい?なんて言ったこの人?
「龍神様=レシスト。お分かり?」
「いや、さっぱりわからん」
「【紫電】で紫の電気を纏ったでしょ?それで上空の氷塊を砕いた。天空に昇っていくレシストが雷を纏う龍に見えたんだって」
「???」
やめてくれ。冗談抜きで思っくそ恥ずかしい。
「良かったじゃない、龍神様?」
「お前、からかってんだろ」
「そんなわけないじゃない。恐れ多くも龍神様をからかうなんて」
「お前、回復したら覚えておけよ」
「じゃあ早く寝なさい。治るものも治らないわよ」
「ヘイヘイ、分かりましたよ」
実は結構限界だった。
【紫電】を発動していた時に比べ鈍い痛みだけ。でも、これ以上はもう話すことさえできない。
「お休みなさい。ゆっくり休んでね」
ミューリが出ていく所を気配で感じた俺はまた意識を失った。
◇
その日から一週間後にようやく体を動かせるようになった。
その間はひっきりなしに氷雪族の人たちが見舞いに来てくれた。その気持ちは嬉しかったのだが、龍神様を連呼されて死ぬほど恥ずかしかった。
その様子を薄ら笑いで笑っていたミューリはマジでキレた。あの野郎、マジで覚えておけよ。
だが、一つだけ。一つだけ気になったことがあった。
ニクスが現れなかった。
そして今日、氷雪族の村を発つ。
いつまでもここで厄介になっては図々しいにも程がある。彼女達は全然気にしていなかったようだが。
「お世話になりました」
「こちらこそおおきに。それと龍神様?どうかこちらを納めとぉくれやす」
氷雪族の人は一本の刀を俺に差し出した。
「いや、ですけど」
「あの氷塊を砕くのに龍神様の刀折れてまいました。さかいこらその代わりでございます」
「……分かりました。ありがとうございます」
「こちらこそおおきに。名は【
そして俺は刀を受けとるとホワイトサーペントに跨がった。なんでもこのホワイトサーペントは氷雪族のペットらしく海岸まで送ってくれるらしい。
それに氷雪族しか扱えない【断熱魔術】をかけてもらい寒さもない。至れり尽くせりだった。
「ほな龍神様の武運長久を氷雪族全員で祈っとります。また、近くに来た際はお立ち寄りください」
そして最後までニクスには会えなかった。
◇
「あ、レシストー!」
「………」
海岸まで着いたと思ったらニクスが手を降っていた。
デジャヴを感じるな。
「一応聞くが、なんでここに?」
「あはは、ウチ暴走してもうたやんか?それでレシストに傷を負わせちゃったさかいね……国外追放されてもうた」
テヘッとあざとく舌を出した。
「いや、なんか軽いけど全然軽くないからな!めちゃくちゃ重いからな!!」
「いや、全然軽いで。ほんまだったらウチ極刑やで」
「極刑!?」
「そそ。それに世界を旅して王としてあるべきことを勉強したらええって。国外追放って言うたけど体裁上やで?」
「ソウデスカ」
「ちゅうわけで、氷雪族女王【ウィル・ニクス】。末永うよろしゅうなぁ」
そんなこんなでニクスが旅の仲間として加わった。
◇
ニクスは海面に手をかざし【コキダイン】を発動した。すると海面は氷漬けになり、俺達はその氷上を歩いていた。
その途中、凄まじく大きい船と遭遇し乗せてもらった。またヴァート大陸に帰ることになるが仕方ない。
そこで俺は、恐らく俺の人生で後にも先にもないぐらいの、俺の人生観を揺るがす大事件が発生した。
「ふぃー、まさか船の中に風呂が有るなんてな。この旅の最中には入れないと覚悟してたんだけどな」
「レシスト、背中流したるでー」
「ブフッ!ニクス止めろ、入ってくるな!」
「もう遅いもんねー」
有無を言わさずニクスは風呂に乱入してきた。
チラッと見えたじゃねぇ───
「………」
「やん、もう、そないに見んといて。恥ずかしいで」
言葉を失った。
俺は無言で頬をつねり、これが悪い夢なんじゃないかと思った。
「どないしたん?ほっぺなんてつねって」
「いや、夢なんじゃないかと」
「まあ確かに嫁入り前で裸を見せるなんてはしたあらへんか思うかもしれへんよなあ。せやけどウチはレシストにゾッコン。他の男に現を抜かさへんさかい安心して」
「なあ、ニクス。真剣に答えて欲しいんだが…」
「なに?」
「股にぶら下がってるものはなんだ?」
「なにって、ウチのナニや」
「……かっ、……は、はは、な?」
「あ、あれ言うてへんかったっけ?ウチ【男】やで」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
天地がひっくり返った。
特に見なくても大丈夫なコーナー
Q.女装少年、男の娘、TS、女装子、メスショタ、ふたなり、結局のところ全部ホモでは…?
A.なんだァ?てめェ……
──作者、キレた!!
でも2次元だから許容範囲なだけであると思うんだ……3次はいやぁー、きついっす
キャラクター紹介
【ウィル・ニクス】
ヒロイン?の一人。
氷雪族の女王。だが男だ。
氷雪族は女の子しか産めないのだが数百年に一度の確率で男の子が産まれる。
しかしその美貌は美人しかいない氷雪族の中でも群を抜いて美しい。だが男だ。
まだ10歳であるため色々成長途中。だが男だ。
また氷結魔術に関して天賦の才の持ち主で修行を開始して2年で【コキダイン】を収得している天才。