『Letzte Bataillon』~Dies irae -Acta est Fabula- より~
◇
──時は遡り、レシストが氷雪族の村で氷塊を砕いた時
「ほぉ」
荒廃した城の玉座に一人の魔族が居座っていた。この者から発する圧は、一般的な魔族のそれとは比べ物にならない。
何故ならこの者こそがテンブリス大陸を治めている魔王であるからだ。
「ディアボロ様、如何されましたか?」
片眼に眼帯、そして片腕がない。隻眼隻腕というハンディキャップがあるにも関わらず、その力は衰えるどころか勢いを増すばかり。
このディアボロこそ歴代最強の魔王と称される。
「フリギディッジ大陸で電撃魔術の魔力反応があってな」
その規格外の魔力、魔術センス、天賦の才、そして惜しみない努力。これらが合わさり、最強の名を手に入れた。
「フリギディッジ大陸で電撃魔術?氷雪族にも電撃魔術を扱う者が現れたということですか?」
「気になった故【空間探知】で確認してみればハーフエルフがそこにいてな。村を覆い尽くす氷塊を刀の一振で砕きおった」
故にディアボロこそこの星の支配者。その【空間探知】は
レシスト達の動向など筒抜けである。
「ほぉ」
「だがまだまだ荒い。動きに無駄がありすぎる。突き詰めれば氷塊を完全に破壊出来ただろうに。それにあの魔術は欠陥そのもの。一度発動しただけで片腕が使い物にならなくなる」
たった一目見ただけでレシストの【紫電】と【紫電一閃】の欠陥性を見抜いた。
更に言えば、ディアボロであれば【肉体強化】無しで御せる。これはディアボロだけが特別なわけではなく、魔王軍の精鋭達であれば簡単に対応できる。
それほどまでに実力差が離れているのだ。
「魔王様、嬉しそうですね」
「あぁ、嬉しいとも。若い芽が育つ、それは人間にとって、我等魔族にとって良い影響を与えると同義だ。たとえ余に刃向かおうとする者であってもだ」
「刃向かう?」
「ああ。余を倒し、インフォース大陸を開放したいそうだ」
その瞬間、配下の魔族から凄まじい怒気と殺気が溢れ出す。
「なんだ?そんなに怒ることか?」
「当たり前です!主を害するものに平静を装えなどできるわけがありません!」
「お前の忠義は相変わらずだ」
「は!私はあの時魔王様に救っていただかなければここまで生き長らえることはありませんでした!故に私の命は魔王様と共に!死ねと仰ればこの場で首を跳ねる覚悟もございます!!」
「馬鹿を申せ。余がそなたにそのようなこと命令するわけなかろう。そんなことをしたらそなたの姉に殺されるわ」
「いえ、姉上も理解してくれるはずです」
「あー、やめようこの話は。先に進まぬではないか。それよりもそのハーフエルフだ」
「はっ!直ちにこの世から消し去ってみせましょう!」
「早まるな。そのハーフエルフは人間からすればかなりの手練れだろう。だが我等魔族から見れば良いとこ下の下だ。新兵に毛が生えたにすぎん。何かまだ奥の手があったとしても、あの練度であれば高が知れている」
「成る程、ですが─」
「そうだ。ハーフエルフでその領域に上り詰めた。もしかすると我等の驚異となるかもしれん。故にそなたにはそのハーフエルフの監視をしてほしい。そなたが直接出向いてもよいし、配下の者に託してもよい。そなたに一任しよう」
「は!その命、私の命に代えても遂行致しましょう」
「間違っても殺すなよ」
「かしこまりました!」
そしてその配下の魔族は音もなくこの場から姿を消した。
「さて、いい加減執務にも飽いていた所だ。楽しませてくれよ?」
ディアボロは虚空に向かってレシストに語りかけた。
というわけで、今回は魔王側の話です。ですのでちょっと短め。すみません。
本文にもあったように、ディアボロ様は歴代最強の魔王でもあり、設定的にこの星最強の存在です。
レシスト君たちが勝つ可能性は天地がひっくり返ってもないです。不意を付いても、完全に不利な状況へ追い込んでも、勝てないです。
それぐらいチートなお方です。