「コンラッド~! どっか行こうぜ」
第27大魔王こと、渋谷有利(原宿不利)は、部屋で静かに仕事している のにも飽きてきたのか、魔王の護衛でもあり名付け親でもあるウェラー卿
コンラート(コンラッド)を困らせていた。
「しかし、陛下
まだこんなに残ってますよ?」
机の上にはずらりと並ぶ書類の山、山、山。
とても一日でかたずけられる量ではない。
「陛下って呼ぶな、名付け親」
「すみません、つい癖で」
「だってさぁ~、健全な野球少年をこんなと「ユーリ!!」
バタンッ!!
ものすごい音を立てて部屋に入ってきたのは、前魔王の息子であり、
ユーリの婚約者でもあるフォンビーレフェルト卿ヴォルフラムだった。
「どうしたんだよ、ヴォルフラム?
ドアが壊れるじゃないか」
「ドアなどどうでもいい!!
ユーリ!僕と一緒に遠乗りに行くぞ!!」
「遠乗り?
なんでまたぁ「ユーリ!」
有利が話しているときに、ヴォルフラムの後ろにいたのか気づかなかった
ユーリの愛娘ことグレタが飛びついてきた。
飛びつかれた勢いで少しのけぞってしまう。
「うぉ!・・・グレタ?!
どうした?」
飛びついた相手が愛娘だと気付くと、途端にユーリは父親モードに
入り、優しくその頭をなでてやる。
「グレタね、精霊の森に行って妖精さんと友達になりた~い!!」
「・・・・へ?」
突然のグレタのおねだりにわけもわからず説明を求めるように、
コンラッドを見た。
「精霊の森とは、精霊と妖精が一番多く生息しているといわれる森で、
そこでなら普段見えない精霊も見ることができるといわれているん
ですよ、ユーリ」
「へぇ~・・・、すげぇーじゃん!!
なぁなぁ、ここからどのくらいかかるんだ?
その・・・精霊の森って?」
「馬で行っても半日はかかるといわれてますから、日帰りというわけには
いかないと思いますよ」
「半日かぁ~・・・」
さすがにそんなにかかるといろいろ準備が必要になるため、考え込んで
いると、ヴォルフラムが子犬のようにキャンキャンと怒鳴った。
「何をしているっ!早く準備をするぞ!!
あの場所には賊など入ってこないんだから、安全だ
まっ、僕がいればどこにいても安全だがな」
「・・・何で?」
「それは俺にもよくわからないのですが、聖域とされているみたいなので
近づけないのではないかと言われています」
「ダメじゃん!
オレ魔王だよ!そんなとこ行ったら大変じゃん!!」
コンラッドの話を聞くとユーリは慌てる。
確かに自分たちは魔族なので聖域とされている場所なら、自分たちの方
こそ入れないのではないかと思ったのだ。
しかし、そんな考えも次のヴォルフラムの言葉で安心に代わる。
「何を言っているのだ
僕たち魔族は、精霊と契約をするからこそ魔術が使えるのだぞ
そんなこともわからんのか、本当にお前はへなちょこだな」
「へなちょこ言うなっ!!」
「では、今日準備をして明日にでも行きますか?」
「おう、行く行く」
「やった~!!
ユーリ、ありがとう!」
行けることがそれほど嬉しいのか再び抱きついてくるグレタの頭を
なでながら、ユーリは、
(どんな所なんだろう・・・・?)
と考えていた。