Phantasy Star Contractors   作:FatherBear

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本能

 

「エリザベス、推して参る…!」

 

全く、また面倒を掛けてくれる…!ダーク・ラグネ、【若人】の野郎か。いや、これもルーサーの仕業か…?どちらにせよ、ここで仕留めない訳にはいかん。確実に殺す…!

 

「沙希、ズィエリフ。お前達は早く引き上げろ。その状態ではもう無理だ。」

 

「…!そういう訳にはいかない!ここでアタシが引き下がれば死んだ奴に面子が立たない!まだやれる!戦わせてくれ!」

 

「駄目だ!!!!!!!!」

 

久し振りだな、こんな怒号を上げたのは。

 

「ヒッ…!」

 

…どうした、何故怯える?

 

「エリザベス!後ろ!」

 

「…!」

 

ダーク・ラグネがその大きなハサミで俺を挟もうとする。だが、

 

「フンッ!!!!!!!!」

 

ヴィタソードでその攻撃を防ぐ。中々の威力だ。流石は強化個体。

 

「ハァッ!!!!!!!!」

 

そのハサミを2本共切断する。剥がれた装甲から中の筋肉が露出し、血液代わりのダーカー因子が溢れ出る。

 

【キショアアアァァァアアァァァァァァァ!?!?!?!?!?】

 

痛みとショックでかなり混乱しているようだ。今までこんな事はなかったのだろう。続いて、

 

「ここは…ッ!どうだァッ!」

 

ヴィタソードを大きく振りかざし、長く発達した前足を装甲ごと切り裂く。節足動物らしい関節が露出する。

 

【キショアアアァァァアアァァァァ!?キショアアアァァァ!!!!!!!!】

 

大声を出しながら突進してくる。今度は体当たりか?何ともまぁ原始的な攻撃だ。だが、受けてたとう。

 

「来いッ!」

 

かなりの速度で突進してきた。常人ならこんな攻撃をまともに喰らえばタダでは済まないだろう。しかし、俺はヴィタソードを上から振り下ろす構えを取る。何をするか?そんな事決まっている。

 

「ハァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

全力で振り下ろし、ダーク・ラグネの頭の先端から胴体の末端まで真っ二つに切り裂いた。その際に反り血や繊維状の筋肉が俺の身体に降り注いだ。

 

「完全に切断しきれなかったか…。俺もまだまだだな…。」

 

強化個体と言うくらいだから期待していたが、なんだ。雑魚じゃないか…。

 

「やっぱ…、エリザベスは強いな…。」

 

「強いなんてレベルじゃないさ。規格外だよ彼は。一体どこからあんな力が…。」

 

さて、仕事も済んだ。3人で帰ろう。

 

「…帰るぞ。」

 

「「りょ、了解!」」

 

改めてエリザベスの強さを実感する二人だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~※~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

アークスシップに帰還後、俺達3人は大勢から称賛を浴びた。特に沙希に対する評価が凄まじかった。流石はアークスのトップランカー。人望が厚いな。俺とズィエリフは?特に無い。名無しの俺達にはそういうのはお似合いではなかったからだ。

 

「ヒュ~、沙希ちゃんは凄いねぇ。皆の注目の的だよ。」

 

「それでこそ彼女だ。ところでズィエリフ。お前は何とも無いのか?」

 

「ん~、そうだね~…。損傷として大した物はしてないんだけど、塗装の塗り替えとかかなぁ。完全に剥がれちゃったし…。」

 

「…お前後塗りだったのか…。」

 

「そうだよ~。」

キャストにおける後塗り。それは、人体におけるボディペイントと同じだった。俺達キャストの合金は元々色がランダムに設定されており、多種多様な者が存在する。それを後から上書きする事、それが後塗り。ちなみに俺は元からの色のままだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~※~~~~~~~~~~~~~~~~

 

二人を一応病院に連れて行った後、俺はチームルームに向かっていた。あそこにいる2人を安心させる為だ。

「…!エリザベス!どうだった!?」

 

「エリザベスさん!」

 

ツナにアーデ。だいぶ心配そうな顔だった。

 

「当該地域に大型のダーカーが出現していた…。二人はそれに苦戦している様だった。」

 

「それで!?二人は!?」

 

「…そんなに焦るな。怪我はしているが、二人共無事だ。」

 

「良かった…。」

 

「本当ですね…。でも私、気になる事が…。」

 

アーデが気になる事、それは俺の中では検討が付いていた。

 

「『何故上層部は情報を偽装しているのか』。だろう?」

 

「そうです…。本来であればあそこは第1級警戒地域に指定されるべき地域です。なのに、上層部はそれをしなかった…。明らかに人為的に貼られた罠です。」

 

「そうそう。前の一件もあるし、何か最近変だよね~。(そして、結局アレ気遣いじゃなかったんだよね~…。)」

 

「そうだ。だからお前ら。ここに居ない連中にも伝えて欲しい。」

 

「何?」

 

「何なりと…。」

 

「『上を信用するな』と。」

 

「「了解。」」

 

この犯行、もう目星はついていた。こんな事出来るのは一人しかいない。そう、ルーサーだ。だとしたら六芒は何をしている?そういう者こそ処罰すべきではないのか?

 

「まぁ少なくとも俺は信じてくれていい。ここのリーダーである以上お前に危害は加えさせない。絶対に…!」

 

だが、そんな事を言っている俺も、コイツらに危害を加える一因かもしれなかった。そう、【蒼鬼】だ。今は【蒼鬼】を上手く封じ込められているが、これもいつでも持つか分からない。ましてや気を抜けばいつ解放されるかわからなかった。あれから10年経った。その間に解放されかけた事は何回もある。特に戦闘中は。【蒼鬼】は生物の魂で腹を満たす。その際に【蒼鬼】の本能が俺の身体を勝手に動かし、気付いたら敵を殲滅している、なんてざらにある。実際さっきのダーク・ラグネの時も危なかった。だが、倒した瞬間【蒼鬼】は久し振りのご馳走で満腹になったのか先程から大人しい。

 

「…どうされましたか…?エリザベス様…?」

 

「…!いや、何でもない。気にするな。」

 

そして、【蒼鬼】は人間の血液を好む。これが一番厄介な問題だ。コイツらを守ろうにも【蒼鬼】が殺してしまうかもしれない。俺は…そんなの真っ平ご免だ。

だが、もっと分からない事がある。それは…、

 

「そういえば、前々から思ってたけど。エリザベスのその姿カッコいいよね~!なんかこう、色が大人っぽくてさ!」

 

「ですね♪」

 

そう、キャストの象徴とも言えるこのロボットフォーム。これは何だ?俺はヒューマンだった筈だ。何故キャストになっている…?これが一番の謎だ。【蒼鬼】よりも、もっと。ただ、一つだけわかっている事もある。それは…。内部フレームとこの赤い装甲は『噛み合っていないという事』。そもそも噛み合っていない以前にそんな事起こる訳ないのだ。何故なら全てのキャストは生まれた時から内部フレームと外部装甲は一体化している筈なのだ。なのに俺のこれは完全にずれていた。これは、流石の俺にも原因は分からなかった。

 

「…ありがとう…。では俺は自室に戻る。何かあれば連絡してくれ。」

 

一応礼は返し、そう言うと俺は振り返り自室へと向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~※~~~~~~~~~~~~~~~~

 

俺は【蒼鬼】の本能を舐めていたかもしれない。そう。大きな獲物を食わせると、コイツはもっと大きな魂を欲する。その事を忘れていたのだ。

 

「グ,グウウウウウウウウ!?!?!?!?!?」

 

自室に戻った瞬間に発症した。

今にも解放してしまいそうだった。めまいがする、吐き気がする。だが、解放させる訳にはいかなかった。俺は必死に耐えた。

 

「鎮…まれ!」

 

そう言うと俺は思い切り顔を殴り、何とか気を保とうとした。すると、

 

「クッ…!ハッ…!…お、収まったか…?」

 

【蒼鬼】は観念したのか、引き下がった。久し振りにきた。

 

「しばらく現場に出るのは控えるか…。」

 

そう、ルーサーが言っていた『君はあまり現場に出ない』とはこういう事だ。魂を食えば食う程【蒼鬼】は活性化する。それが最高潮に達した場合先程の様な事になる。

 

「…寝るか。」

 

俺は今までで感じた事の無い程の疲労感に襲われ、就寝用コンテナに身体を沈ませるのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~※~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「それで、彼はどうなったかね?」

 

総長室で「ある男」の報告をルーサーは聞いていた。どうやら【蒼鬼】関連の情報らしい。

 

「【蒼鬼】は依然としてあの赤いキャストに封じ込められたままです。随分と耐えるようですね。」

 

「それもそうさ。彼は10年も僕の実験に絶えたんだ。我慢強くないと困る。」

 

「そうですか…。」

 

「ところで、同族の君としては彼をどう思うのかね?【紅鬼】君。」

 

【紅鬼】と呼ばれた男は、ルーサーの問いにこう返した。

 

「【蒼鬼】の出番はない。【鬼】は僕だけでいい…。」

 

「随分と優しいんだね君は。まぁ、だからこそ君は自分から被験体になったんだろうね,【紅鬼】。」

 

【紅鬼】はそう言われる時には、もうその場から消えていた。

 

「全く、そのお人好しがどこまで通じるか。見物だな。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~※~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「はぁ…。疲れるねぇ全く…!どうしていつもいつも僕ばかり働かされるんだ…?」

 

そう愚痴を溢したのは、藍色の装甲に包まれた威圧感のある背丈の大きいキャストだった。

名前はGabriel。虚構機関から派遣された【蒼鬼】監視官だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~※~~~~~~~~~~~~~~~~




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