親兄弟の保護という枷から解き放たれたミオは、ドフラミンゴの予想の範疇を超えて自由気ままで奔放だった。
何事か興味を引かれることがあればドフラミンゴの希望もむなしくあっちこっちを渡り歩き、電伝虫で連絡しなければ一ヶ月くらい平気で留守をする。戦闘において一日の長があり、ついでに生活力に長けて勘働きがよいのも悪い方に働いた。
当初は資金がなくなれば戻らざるを得ないだろうとたかをくくって、借金でも背負わせて飼い殺しにするつもりまんまんだったのだが、本人が自力で賞金首を上げて金を稼いでいるので意味がない。
一度、逆ギレして弟たちが海賊なんて姉として心配じゃねぇのかと聞いてみた。ファミリー入りを正面切って断ってきた当てこすりである。
ミオは心底不思議そうに首を傾げた。
「謀反の心配がないのに、なにを心配すればいいの?」
確かに部下は軒並み忠誠心が高く、またそうなるようにドフラミンゴは仕向けてきた。そういう意味では非の打ち所がない自慢のファミリーだ。
だが、ちがう。
なんかこう……違うだろ。
「もし倒産しても、うーん、資金の援助はむりだけど……あっ無職になっても一年くらいは面倒みるから心配しないでがんばれ! あくどいしずる賢いし経営手腕はあるって! 大丈夫大丈夫!」
駄目押しに失礼千万な言葉とともにべしべし背中を叩かれ、元気付けられた。逆にげんなりした。海賊に倒産はない。
そうだった。この姉は全力で斜め上にかっとんでいるのだ。認識の差異をドフラミンゴは改めて思いしった。嬉しくもなんともない。
最近はドフラミンゴも引き込むことを諦めて、賞金稼ぎという地位を利用するようになってきた。下手に策を弄するより、ミオが出かけるときに手配書を渡すと、いつの間にか潰していることが多いのでなにかと楽なのだ。
昔は光り物を大事にしていたことを思い出したので、戦利品の宝石類などの宝飾品をプレゼントだと大量に貢いでみたところ、単に資産価値が変わらなくて持ち歩きに便利だから最小化していただけだったという事実が判明した。
宝石を飴玉の包み紙で包装するとバレにくくて便利だという『明日使えるかもしれない無駄知識』を得た。当時の苦労が偲ばれる。
仕方がないので、海賊の手配書横流しを『外注』として成功報酬を支払うようにしたところ、こちらはすんなり受け取らせることができた。
ただし、報酬額を高額にするとかかった経費と賞金首の値段から適正価格を算出されて、リテイクを言い出されるのでとても面倒臭い。請求書を用意しないで欲しい。ドンキホーテ海賊団をいちばん会社扱いしているのはミオである。
スパイダーマイルズをアジトにしていたドンキホーテ海賊団は、勢力を拡大しつつ一路グランドラインを目指していたため、リヴァースマウンテンを越えたら追いかけるのは至難の業である。チャンス到来。
山越えをしている最中はミオが不在になるように仕込み、頃合いを見計らって迎えを寄越そうかフッフッフと恩を着せようとしたのだがこれも失敗に終わった。
「リヴァースマウンテン越えたの? すげぇええ! おめでとう! お祝い楽しみにしててね!」
電伝虫越しにはしゃいだ声が聞こえ、数週間後にプレゼントを山ほど抱えて合流した。あの小さな船でリヴァースマウンテンを越えたのなら大した手腕だが、船にはさしたる損傷はなかった。
こっそり調べさせてみたのだが、やたら丈夫で設備が整っていることくらいしか判明しなかった。謎は深まる一方である。
ドフラミンゴはミオを手元に置いておきたかった。
自分の目の届くところで、真綿でくるむように大事に、掌中の珠のように愛でていたかった。それが許される立場だと信じて疑わなかった。
己の未熟さゆえに姉を喪ったと確信したときの絶望と悔恨は、今もなおドフラミンゴの心の奥底に焼き付いている。
でも、無力さに泣いていた子供はもういない。ドフラミンゴは大人になり、ミオはその時間を止められた。
立場が逆転し、今度はこちらが守る番だと息巻いていたらこの有様だ。どうしろというのだ。
ドフラミンゴはミオを愛している。
執着し、拘泥している。そうでなければ、遺骸の捜索などという徒労に貴重な労力を割いて、十年来に渡って続けたりなどするものか。
だからこそ、生きている姉の姿を見たときに感じたのははっきりとした歓喜だった。姿かたちがちっとも変わっていなくてもどうでもよかった。
ドフラミンゴの独占欲は並外れて強い。
それは本来の資質であったし、地獄の如き環境と経験でより強固に育った。家族は自分のもので、ファミリーは一人残らず所有物だ。そう思えばこそ、大切にする。裏切りは決してゆるさない。実の姉であれば尚更のことだ。
けれど、ミオの家族というのはドフラミンゴのそれとはどうやら違うらしかった。
身内を大事にするのは当然で、ドフラミンゴとロシナンテにも変わらぬ好意を抱いているのは言わずとも伝わるが、それを理由に拘束しようとも、されようともしない。
ミオにとって『家族』は四六時中、一緒にいなければ絆を感じられないような稀薄なものではないようだった。
ひとりひとりが、自分の人生を謳歌する。
その手伝いはするけれど、強制はしない。根底にあるのは深い信頼で、変わらぬ愛情だった。
けれど、もはやそれでは足りないのだ。
ドフラミンゴはミオを愛して、甘やかしたい。──彼女なしではいられないほどに。
姉を思い慕う心は苛烈な体験で歪み、執着と欲望で醸造された。あたたかで柔らかな姉弟の親愛を求める時期は、とっくに通り越して凍てついてしまった。
再会してからドフラミンゴの欲望は日に日に募り、飢えて渇いてどうしようもなかった。触れる度、言葉を交わすたびそれは強くなる。
心が蕩けそうなほどの安堵と、ぢりぢりと
奇跡と運命の重ね合わせであらわれた
もう十分だろう。我慢嫌いの自分がこれでも我慢してきたのだ。
ミオが好き勝手にやっているのだから、こっちだって好きにすればいい。妥協してきてやったのにちっとも居着かないのが悪いのだ。
好意を持って接して来た相手を、ミオは無下に扱えない。優しくされたら振り払えない。子供たちが良い例だ。その優しさが何より尊い最大の力で、弱点であることをドフラミンゴはもう知っている。
ならばそこを狙う。苦い経験は繰り返さない。ドフラミンゴは海賊で、大人だ。
大人がずるくて汚くて嘘つきだと教えたのは姉だった。すべてを駆使して奪うことに何の痛痒があろう。
「フッ、フフ……!」
暗い部屋の中でドフラミンゴは喉を鳴らして嗤い続ける。
欲しいものは力尽くで奪うのが海賊の流儀だ。
×××××
ミオの与り知らないことだが、かつて『奴隷嫌い』で名の通った『ラグーナ海賊団』船長であるラウネ・チェレスタは他の海賊たちからも一目置かれる実力者だった。
それは彼の卓越した技倆のおかげでもあったし、食べた悪魔の実の能力故でもあった。実の名前は『コチコチの実』。
その能力を本人は『凍結』と呼び、また周囲もそう認識していたが、その本質はあらゆるものの『固定』である。
コチコチの能力はとにかくなんでも固定する。
炎も電撃も空間ごと固定され、分子運動すら停止させる彼の能力は攻め手にこそ欠けるものの汎用性が高く、無類の強さを発揮した。
そしてコチコチの実は他の実にはない、ある特性を持っていた。
それは能力者が死亡した際、いちばん『最後まで固定されていた生物』に、その能力を引き継ぐというものである。能力を引き継がれたものは、それがどんな生き物でも固定されたまま、誰か『別の能力者』に触れられるまで固定が解除されることはない。
そういう意味で、ミオは本当に運がよかった。
託された先が白ひげでなければ、もし先に別の下卑た海賊に隠し財産を発見されていたら、チェレスタの望みが叶うこともなくミオの命も無駄に散って終わりだっただろう。
かくして、かつて数多の海賊をびびらせた能力を受け継いだミオはそのちからを知る彼の友人、エドワード・ニューゲートから開陳され、血の滲むような努力を続けて磨き上げ──とっても便利な冷凍庫として活用していた。
「こっちもください!」
「はいよ、気前いいねぇ」
ぽんと渡された箱に入ったアイスクリームをこっそり『固定』してから紙袋に突っ込む。
バッファローがアイス好きなのでよくお土産に買うようになったのだが、日持ちしないのでどうしたもんかと悩んでいて、ふと能力を使ってみたらいい感じに保存できたので活用している。もっと早く気付けばよかった。
ドンキホーテ海賊団と縁故を結んでそろそろ二年の月日が経とうとしていたが、ミオの生活はあまり変わらなかった。
変わったことはドンキホーテ海賊団の勢力が日毎に増していることと、ミオの行動範囲が広がっていることくらいだろうか。
彼らがリヴァースマウンテンを越えたことで、毎回危険を侵して『凪の帯』を軍曹頼りに渡航しなくて済むようになり、ログポースなどの独特の文化を隠す必要がなくなった。そうなるとミオもエターナルポースなどを活用して島々を渡り歩くことが可能になり、結果──以前よりも行動範囲が広がったのだ。
「……」
最近、少し悩む。
ミオの生活はおおむね平和だ。
ドフラミンゴとロシナンテと再会を果たし、彼らの職業を知ってしまったので海賊になることは保留にして賞金稼ぎとして活動している。
賞金稼ぎとして生活が成り立っているので、白ひげも無理に白ひげに入れとは言わずに好きにさせてくれている。
問題なのは生活面ではなく、ドンキホーテ海賊団の可愛いちびっこギャング……もっといえばローのことだ。
ローは医者の息子で幼い頃から手ほどきを受けてきたのか医学に詳しく、自分のカルテから残り寿命を類推している。彼の計算ではあと一年、保つかどうか。そこに偽りはないだろう。
ないから、厄介なのだ。
彼を癒やせる異能を秘めた悪魔の実と出会うチャンスはこの先、本当にあるのだろうか。
ドフラミンゴはローの運次第だと言っていた。事実、そうなのだろう。
医学知識に乏しいミオではどうにもできない問題である。
だから、遠出するたびに悪魔の実について探るようにしているが、成果は芳しくない。悪魔の実は無数にあり、能力は千差万別。食べてみなければわからない、なんてことも珍しくない。
けれど、悪魔の実を食べられるチャンスはひとりにつき一度きり。欲を掻いて二つ目を口にしたものは死亡すると聞く。
この広大な海の、どこかにあるかもしれないローを治療できる力を秘めた悪魔の実。それを探し出してローが食べられる可能性を考えると目眩を覚える。砂漠に落ちた砂金を探すようなものだ。
時間が足りない。いつだってそうだ。歯痒くて、もどかしい。
「……ッ」
知らず噛みしめていた唇がぎり、と音を立てる。舌に血の味。
ミオのローへ向けている感情はなかなか複雑で、あえていうなら罪悪感がいちばん近いかもしれない。
あの、運命の日。
生きて弟たちの元に戻れるなんて、はなから期待していなかった。二人には悪いが、あの時すでにミオは生きた死人だった。彼らが生き残れるなら、自分の命なんてどうでもよかった。そうするだけの価値があって、大切な人のために命を賭すのは望外の喜びですらあった。
ミオはいつだってその瞬間を欲している。そうとは知らず、無自覚に。
己というものに価値を見出していないから、せめて大切だと、好意を寄せてくれたひとのために自分を使い潰して──果てたいのだ。
幾度となく望まぬ生を受け、余人には言えない奇矯な人生を歩んでいるミオは、その芯が歪んでいる。平たくいえば病んでいるのだ。
ただ、基本的に善人であるからこそ、気付かれることは少ない。
そこそこの常識と倫理を被って、かろうじて人がましく擬態することに長けているだけで──とっくに『まとも』ではないのだ。
無私と優しさを土台にして、まじめにこつこついびつな成長を遂げたミオは、まれにそれと知らずに人の心を踏みにじる。そこにあるのはねじくれ曲がった優しさで、本人なりの信念に基づいた行動なので悪気なんてかけらもない。狂人が己を狂人と自覚できないことと少し似ているかもしれない。
大事なひとは、自分のぜんぶで大事にする。大事なひとの好きなものは傷つけず、なるべく大事にしよう。敵には相応の態度で臨んで、それ以外はテキトーに。
そんなごく単純な論理で生きている。下手に実行できているからタチが悪い。
だから──相手は傾けた心の分だけ傷を負う。踏み込めば踏み込むほど、より深く、より強く。
それは悪人も善人も等しく変わらず。
なべて人と人の関係はそういうものだが、ミオの場合はより強烈だった。
そういう存在に、なってしまった。
そうして、頑固であほで考えなしで、おまけに無類の死にたがりは己の命をびた銭程度で売り払い、嬉々として死出の旅へと飛び出した。
ぼろくずみたいになって、心から満足して──うっかり生かされてしまった。
文句を言おうにも、自分を生かした相手は墓の下。
まんまと死に損なったミオは、ひとりぼっちになったのだと途方に暮れて──その直後に家族ができた。しかもいっぱい。
白ひげの規格外の包容力と家族愛は、これまでミオが知らなかったもので、内心とても戸惑った。まっとうな家族というものに会った試しがなかったため、無条件に与えられる愛情がむずがゆくてこそばゆい。おまけに、白ひげの薫陶をうけた船員たちも年相応の子供扱いしてめいっぱい甘やかした。
頼れる『大人』が、そうして欲しいと望んでいる人ばかりに囲まれた生活は新鮮で、これまで苦しかった日々のご褒美みたいだった。
今を生きているのは奇跡のような偶然が糸のように撚り合わせられて、誰かさんの願いと根性が引き寄せてくれた、いわば余録のようなものだとミオは思っている。
すでに命は売り払ったあとだ。
思いがけず大切な家族に巡り会い、弟たちの成長を見届けることもできた。
ぶっちゃけ、思い残すことは特にない。仮にここで誰かに殺されてもまぁいいか、と割り切れるくらいには未練がないのだ。弟たちは立派に成人して、白ひげ海賊団はお父さんがいるので安泰だ。
心の底から切望していたことは、もう全部叶っている。
だから。
降って湧いた幸運で命を繋いでしまった自分と、ひしひしと迫る命の終わりを感じ取りながらも、懸命に前を向いて走る少年。
ひどく、後ろめたい。
ローに会う度、申し訳なさが募る。心配で、落ち着かない。それは同情のような綺麗な感情じゃなくて、もっと独りよがりなものだ。
もし、ひとの寿命を粘土のように切り貼りできるのなら、ローにまとめてあげられればいいのに。
あのまっすぐ斜めに曲がって未来を諦めきっている少年に、未来を、人生を、寿命を、渡すことができれば。
「そんな悪魔の実、ないかなぁ」
ぽつりと、つぶやく。
いかな悪魔の実にもそんな異能があるだろうか。わからない。寿命の左右となれば、それはもはや神の領域だ。
初めてローを見た時、目つきが弟にそっくりだったから世話をした。
ほんの気まぐれで、それ以上の意味はなかった。珀鉛病に侵された町の生き残りだと言われても、よく逃げ延びたものだと感心するだけだった。どうせこれきりの出会いだと、たかをくくっていたのだ。一期一会。
事実そうなるはずだったのだけど、なぜだか弟たちの海賊団に入り込んでいて驚いた。
そうなると向き合わないわけにもいかず、生き急ぐ子供の稽古に付き合って、彼の孤独に触れた。心配になって、情が湧いた。だからって、どうにもできないけど……。
無力を痛感するたび、罪悪感で埋まりたくなる。目的もなくのうのうと生きていることが、自分にまだ寿命があることが、とてもひどいことのように思えるのだ。
「軍曹、ただいまぁ」
解決しない問題に暗澹としつつ船に戻って番をしてくれていた軍曹に声をかけると、片脚をひょいと上げて部屋の一角を示した。
一年くらい経った頃に脱皮した軍曹は、足りなかった脚も元に戻って今日も元気いっぱいです。
テーブルに据えられた電伝虫が、ぷるぷると鳴っていた。
「あ、さんきゅ」
買ってきたカブと人参とカボチャを放り投げると、軍曹は投げ網のように糸を出してキャッチしてぼりぼり食べ始めた。
荷物を傍らに置いて椅子に座りながら電伝虫を引き寄せる。
がちゃ。
『よう、ミオか?』
にゅいーっと電伝虫の顔がドフラミンゴそっくりになる。毎回思うのだが、これは電伝虫のこだわりなのだろうか。
「こんにちは、ドフィ。なんか海軍本部? の、おつるさん? に襲撃されたから、しばらく連絡できないかもって言ってなかった?」
実の弟という名の獅子身中の虫を飼っているドンキホーテ海賊団は、彼の密告によって海軍本部からちょくちょく襲撃を受けている。
中でも熱心に追いかけてくるのは本部の『おつる』というおばあちゃんだ。遠目に見たことがあるけれど、老齢の域には入っていたものの姿勢のいい、
『目下逃走中だ。だが、問題が発生した』
「問題?」
いちばんの問題は弟が海賊なんて犯罪者集団のボスやってることなのだが、置いといて。
電伝虫が一度黙り、ややあってからひどく言いにくそうに口を開く。
『コラソンが、ローを連れて船を出た』
「え、家出?」
コラソンの愚痴なんて山ほど聞いている。嫌気が差して出て行ったとて、誰が責められようか。いや、ドフラミンゴはボスなので責められるか。
『ちげぇ。『ローのびょーきをなおしてくる』だとよ』
……珀鉛病って、治せる類の病気なのか?
あれは病気じゃなくて中毒症の一種だ。水俣病のような公害病にごく近い位置にあるとミオは認識している。
普通の病気のように抗生物質の投与や腫瘍の摘出、なんて風に治せるとは考えにくい。でも、コラソンが行動を起こしたということは、それなりの理由があるのかもしれない。
まさか何も考えず子供を誘拐同然に出奔なんて……ないよね?
「そっか、治るといいな」
素直な気持ちを口にすると、電伝虫が面白くなさそうな顔つきになる。
『動じねぇな』
「だってコラソン優しいもん。驚きとかはべつにないな。むしろ案外遅かったなー、くらい」
『……そうかよ。こっちはまだ逃げてる最中だ。落ち着いた頃に連絡する』
「はいはい。逃走がんばって」
てきとうに返事をして、がちゃりと通話を切る。
「……ふむ」
コラソンがローを連れて家出した。
彼はドフラミンゴに隠しているが海兵である。潜入捜査という立場をかなぐり捨ててもローを救いたいと思い、行動に移したのだろう。それは彼の性格上、いつやってもおかしくない。
なぜ、二年という月日を経てから動き出したのかの方が、気になる。病院にかかるなら早期治療は基本である。もっと早く行動してもおかしくない。
それが、なぜ、今になって。
「よし」
気になるなら、聞きに行こう。
決断すれば早い。船室から飛び出してもやい綱をほどき、帆を張りながらカボチャに齧り付いている軍曹に声をかける。
「軍曹、出発しよう! まずはそうだな、ドラム王国!」
医療技術の傑出した国といえばドラム王国だ。
グランドラインでも一、二を誇る医療大国だからコラソンたちが立ち寄る可能性が高い。
確か世界会議にも出席していたはずだから、エターナルポースもどこかで入手できるだろう。
この時、ミオはコラソンことロシナンテが直情的でまれに見るドジッ子だという事実を完全に失念していた。
主人公の精神構造は戦国期の人生葉っぱ隊のそれがいちばん近いです