桃鳥姉の生存戦略   作:小日向ひより

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じゅーよん.よろしい、ならば

 

 

 

 追加の薪と捕獲した魚を手に戻ったら、ぷるぷる鳴く電伝虫をほったらかしにしてコラソンがローを高い高いしながらぐるぐる回っていた。

なんだろうこの状況。

 

「カオスだ!」

「おっ、ミオ! 聞いてくれ!」

 

 喜色満面のコラソンが気付いて、ローを振り回しながら駆け寄ってくる。ぬいぐるみのようだ。

 ローは体格の問題でぶんぶん振り回されながらもそっぽを向いているけれど、その頬は照れているのかじゃっかん赤い。なんだなんだ可愛いな。

 

「ローがおれのこと、コラさんって呼んでくれた!」

「マジ!? よかったねコラソン! おめでとう!」

 

 それはめでたい。

 全力で喜びを表現しているコラソンと、魚を持ったままバンザイしたら「バカばっかりか! 電伝虫出ろって言ってるだろ!」と宙ぶらりんのローが怒鳴ってきた。

 電伝虫はじゃっかん疲れたような顔つきでぷるぷる言っているので、ひょっとしたらかなりの時間放置されていたのかもしれない。

 

 コラソンはいかにもしぶしぶ、といった体でローを下ろしながら「照れちゃって!」とか言いつつ上機嫌で電伝虫を取る。

 

『──おれだ、コラソン』

 

 聞き覚えのあるテノールボイス。響いた途端、コラソンの表情がびきりと強ばった。

 ドフィの声に、今までも浮かれきった空気がまとめて吹っ飛ぶ。そういえば、コラソンは喋れない設定で電伝虫をどうしていたのだろうか。スカイプみたいに相手の顔も見えないし。

 

『コラソン、おまえだな?』

 

 なんて思っていたら、コラソンはあぐらをかいて返事の代わりに電伝虫の頭を指先で叩く。

 トントントン、と三回。どうやらモールス信号のような感じで通話しているらしい。

 

『そうか、おまえらが飛び出してもう半年だ……ローも一緒か?』

 

 イエス。

 

『そうか、二人共無事で何よりだ。いい医者はいたのか?』

 

 これにはノー。二回叩く。

 

『──だろうな、ローを連れて船に戻れ。病気を治せるかもしれない』

 

 それは、どういう意味だろう?

 

 横で聞いていると、『オペオペの実』の情報を手に入れたのだとドフィが語った。

 コラソンの表情が驚きに変わり、こちらと顔を見合わせる。たぶん僕の顔も超びっくりしているだろう。世に知られている悪魔の実の中でもローを治せる可能性の最も高い実の名前なのだ。

 

 もちろん、こっちの反応なんか見えないので話は続く。

 海軍に巨額の金を提示された、価値を知らないバカな海賊が取引に応じるらしい。必ず政府が裏で糸を引いていて危険だろうが、これを奪うと。

 

『手に入れたら『能力の性質上』、最も信頼出来る人間が食う必要がある』

 

 ドフィの笑みが電伝虫越しでも深くなるのが、わかった。

 

『おまえが食え、コラソン──そしてローの病気を治すんだ』

「!」

 

 その言い方はどこかコラソンを試しているようで、内心うーんこれはと顔をしかめる。コラソンのこと、ひょっとして勘付いたか?

 僕はコラソンが海兵でドフィが海賊だと知っているが、それをどうこう言ったことは一度もない。二人が選んだ人生だから、それに口を挟むのは違うだろというのがその理由だ。

 

 二人の邪魔はしないけど、ちょっとした手助けはする。そういうスタンス。

 

 ドフィはオペオペの実強奪のための算段を、日付から場所まで微に入り細に穿ちとうとうと語り、最後に。

 

『それと……ミオ、そこにいるだろ』

「いるよー、なに?」

 

 ドフィから口頭で説明された内容を必死でメモっているコラソンから、ひょいと受話器を持ち上げて返事をする。

 

 コラソンたちを追いかけ始めてから、あっちこっちの国を回っていたのでドンキホーテ海賊団には一度も寄っていない。

 たまに電伝虫に連絡が入ってきたのだけど、大抵タイミングが悪くて「いま忙しいからあとで!」つってガチャ切りしていた。わりとひどいことをしている自覚はある。しかし反省はしていない。

 

『おれよりコラソンを取るとは……フフ、さすがのおれも傷つくぜ?』

「コラソンとローのコンビ旅とか心配の塊、そりゃ追いかけるって。追いつくのにめっっちゃ時間かかったけど。しかもドフィの電伝虫、タイミングくっそ悪いんだよ! おかげでエターナルポース一個割れたんですけど、弁償してくれませんかねぇ? ドラム王国のやつ」

 

 ちなみにドフィタイミング悪いランキングワーストは、海賊に襲撃されている真っ最中にかかってきたやつ。それでエターナルポースが壊れた。入手するのすごく大変だったのに。

 矢継ぎ早に文句をつけると、電伝虫の顔がじゃっかん歪んだ。心なし申し訳なさそう。

 

『あー、うちにドラムのエターナルポースはねぇな……』

「そっち闇取引ばっかだもんね。健全な取引はお呼びじゃないんですよねー、わかりますー」

 

 思い出してやさぐれてきたので、イヤミを込めてぶぅぶぅ言うと『それよりも、だ』と話を変えられた。ちっ。

 

『これ以上ご無沙汰していると、デリンジャーに顔を忘れられるぞ?』

「ええー、それは困るけど……ローとコラソン心配だから、しばらく顔出すのはむりかな」

 

 ドンキホーテ海賊団に身を置いている以上、子供たちの身の安全だけは保障されている。それなら先行きが不安な方につくのは当たり前である。

 僕はドフィの不満げな沈黙をあえて気にせず受話器に向かって続けた。

 

「それより、コラソンにオペオペの実食わせるって……本気で言ってる?」

『ああ、実の弟に食べさせるのに、なにか、不安要素でもあるのか?』

 

 えらい意味ありげに区切りながら問いかけてくるが、不安要素があるのかって、そりゃあ……ありまくりですよ。むしろ不安要素しかない。

 それは、僕よりドフィの方がよっぽど分かっていると思うのだけど。本人も認めた公認であるからして。

 

「いや、だって、コラソン……ドジッ子じゃん」

『あん?』

「コラソンだよ? 立てば転ぶし座れば火災、歩けば惨事のドジッ子ラソンだよ? 神がかり的なタイミングでドジをやらかすコラソンにオペオペの実なんて……本当にいいの? 後悔しない?」

『……』

 

 ドフィが電伝虫でもわかる物凄い形相で黙り込み、コラソンが半べそになっているのをローが必死で慰めている。ごめん、でも言わせてくれ。

 手術とか医療とか、繊細な作業の目白押しです。それを、日常生活においてあれだけドジをかますコラソンに与えるなんて、どう考えてもヤバい。ひとのいのちの危険が危ない。

 

「これ以上はコラソンの名誉を毀損しそうだから言わないけど、ドフィならお姉ちゃんの心配をわかってくれるものと期待します」

 

 確かにべつの人が絡むとドジは減るのだけど、皆無というワケではないので、ミリ以下のミスで人の命を左右する重要な仕事に関わる実を食べさせるって、どうよ。

 いやコラソンはもう能力者なのでおかわりは不可能なのですが。

 

 そんなことを考えていると、しばらくの沈黙ののち、ドフィが意外なことを言い始めた。

 

『フッフ、そうだな、確かにコラソンはドジッ子だ。なら、おまえが食べてもいいんだぜ?』

「はあああ?」

 

 おいおいなんの冗談だ。

 

 予想の斜め上にかっ飛ばしたことを言われて、眉間に皺が寄るのが分かった。いきなり何を言い出しているんだいマイブラザー。

 

「僕が? オペオペの実を? そもそもドンキホーテ海賊団ですらない、いち賞金稼ぎに渡してどーすんの」

『お前はおれを裏切らない』

 

 まるで、それが最も重要であると誰かに言い聞かせるように。

 

『信頼には信頼で応え、道義に悖る真似は絶対にしない。ミオのことはおれが一番よく知っている。食うのがお前でも文句はねぇさ。それならそれで、使いようもある』

 

 使いようとは言ってくれる。

 

 横でメモを書いていたコラソンの動きがぴたりと止まり、指で×印を作りながらこちらへ向けた。

 迷うような、すがるようなコラソンの眼差しにローもつられるようにこちらを見ていて……あ、そうか。

 お土産の保存のために便利に使っていたけれど、結局コラソンを含むドフィたちの前で、自分の能力を見せたことがない。引き継ぎの能力者が悪魔の実を食べると、どうなるのだろう? 考えたことなかった。

 

『オペオペの実は、人体改造能力の最北端……使いこなせばローの病気どころか、あらゆる難病奇病を治せる奇跡の手術ができるようになるだろう』

 

 それに、とつぶやくドフィの声は笑みを含んで甘く、したたるような毒に満ちているようだった。

 

『──その身体の疵を』

 

──けれど。

 

『消したいとは、思わないか?』

 

 言葉の衝撃でぼんやりした。

 

 なに、言ってるの。

 

 なにいってんの?

 

 僕のことは一番よく知っているとのたまったくせに、その口で、それを言うのか。

 頭の芯が熱くなるのを感じた。あるいは冷たく沈むのを。

 

「思わねぇよ」

 

 受話器を割れそうなほどつよく握りしめて、吐き捨てた。

 

「ばっかじゃねぇの」

 

 

 

×××××

 

 

 

『──その身体の疵を消したいとは、思わないか?』

 

 受話器を持っている手が凍り付くのがローにも分かった。

 

 華奢な身体に刻まれた凄惨な疵痕をローもコラソンも知っている。いくら気にしていない風を装っていたって、着替えるたびに目に映ってしまうだろう。

 ローの白い痣のように、逃げることもできないのだ。少女が持つには惨いそれを消したいと願っていたとて、誰も彼女を責められない。

 

 そう、二人は思っていたのだけど。

 

「──」

 

 ドフラミンゴの言葉にミオの顔から血の気が引いて、直後、溢れかえったのは濃厚な怒気と果てしない悲嘆。それはローが今まで一度だって感じたことのない感情の奔流だった。咲き誇る花が残らず枯れ落ちるような、死の匂い、虚無の気配、どこまでも空っぽなのにひたすらに強い、心臓が縮むような圧力だった。

 

 総毛立ち、ローは思わず数歩後じさる。全身から冷たい汗が噴き出して、小刻みに震えるのを抑えられない。

 腰が抜けてしまいそうで、思わずコラソンにしがみつくと彼も無意識にかローを守るように抱きしめる。

 

 表情という表情すべてが抜け落ちたまま、ミオが口をひらいた。

 

「思わねぇよ」

 

 唾でも吐くような言い方だった。

 

「ばっかじゃねぇの」

 

 心底の侮蔑がこもった声だった。

 

 ドフラミンゴが次の言葉を発する前にミオは受話器を落とした。ガチャンと音を立てて通話が切れる。

 

 ミオはその場でずるずるとかがんでうずくまり、ふーっ、ふーっ、と猫が威嚇するような呼気を漏らす。暴れそうになるのを決死の思いで抑えているようだった。

 めまぐるしいまでの感情の変化についていけず、コラソンとローは抱き合ったままミオの奇行を見ているしかない。

 

「うがああ! むっかつく!」

 

ゴンッ!

 

 満身の力をこめて振り上げられた拳が、えげつない音を立てて地面に叩き付けられる。草がめくれ上がり、土が露出した。

 びくっと二人が肩をそびやかすが構う余裕がないのか、がんごんがんと少女が出したらやばい音を響かせつつ拳で地面を抉りながら、ミオは怒鳴り散らした。

 

「ふっざけんなあの野郎! あああむかつく腹立つ頭にくる! よりにもよって! ドフィが! それを言うのかよッ!!」

 

 土だらけの手でぐしゃぐしゃぐしゃっと頭をかきむしり、子供みたいにわめき散らす。

 それはいつもお姉さん然として飄々と笑っている様子ばかりが目立つのミオの、初めて見るかもしれない強烈な感情の吐露だった。

 

「ローのためならなんでもするよ! 当たり前だ! だけど、僕は、自分の傷を消したいと思ったことなんて、一度もない! ねぇよそんなの!」

 

 ここにいないドフラミンゴにぶつけるように言葉を放つ。

 怒りすぎてなのか、目に涙すら浮かべて吼えた。

 

「あるわけないだろ! 汚くたって、好きじゃなくたって──誇りで、自慢だ! 傷も痛みもぜんぶぜんぶ、僕のものだ!」

 

 悲痛なまでの魂の叫びだった。

 

 けれど、暗闇の中で星がひととき壮烈に輝くような、それは宣戦布告だった。

 

 放たれた怒号に貫かれるように、コラソンは理解した。

 

 ドフラミンゴはそうと知らずミオの逆鱗の触れた。

 無遠慮にかきむしり、虚仮にしたのだ。ミオはあの疵痕を厭ってなどいない。人が見てしまうとイヤな気持ちになってしまうだろうから、と分別をつけているから普段は適当に隠していただけだ。

 

 あの傷は、ミオの生きてきた矜持そのもので、証なのだ。

 

 それをよりにもよって、ドフラミンゴが突いてしまった。

 本人の希望を質すような物言いは、そのまま相手を貶すのと同義だった。致命的なまでの認識の差異を理解していなかった。

 

 すなおにローのために実を食ってくれと言えば悩んだだろう。自分を不老不死にしてくれと言われたら、考えたかもしれない。だが、その選択はドフラミンゴ自らの手で潰してしまった。

 

「うう、も、ドフィなんかきらい」

 

 もう一度、きらいだとうめいて、ふらふらと座り込む。

 

「人が思ったこともないことを、したり顔でよくもまぁ……」

 

 散々叫んで疲れたのか項垂れて、それからはっとした顔で『おろ、おろ』と手元を動かした。

 

「あ、わ、わぁ、ごめんコラソン。電伝虫切っちゃった。どうしよう、かけ直す?」

「くくっ。いいよ、大丈夫だ」

 

 こんな時なのに、コラソンは笑ってしまった。

 腹の奥が愉快でたまらない。ざまぁみろとすら思う。我欲だけで動くからこうなるのだ。ミオは平素から利他的で優しくお人好しだが、決して譲れないものがあることをコラソンは知っている。

 

 侵そうとする人間は、それが誰であろうと絶対に容赦しないことも。

 

「喜べロー! 生きられる可能性はある! 医者なんかもういい!」

 

 浮かれた気持ちのまま、足にしがみついて事の成り行きを見守っていたローを持ち上げてぐるぐる回る。唐突な展開できょとんとした顔で頭に疑問符を量産しているローにできる限りで説明した。

 悪魔の実は便利な魔法じゃないから、扱うには相応の知識がいる。それならローが食べるのにうってつけだ。

 

「おれ? ドフラミンゴはコラさんかミオに食わせるって……」

「悪魔の実は二つ食えば死んじまう。ドフィはおれが能力者だと知らねェからそう言ったんだ。それに、ミオは」

 

 ちらと様子を窺うと、案の定ミオは怒りを引き摺っているのか猛烈にイヤそうな顔をしてから、取り繕うようににこりと笑った。

 

「食べるくらいならローに食べさせるし、それが不可能ならドフィの目の前で海に捨てる」

 

 絶対に食べない、という決意がありありと見えた。ローの命に関わることなのでそんなに勢いよく素振りをしないで欲しい。笑顔だがちっとも笑っていないのがよくわかる。

 今の怒髪天を衝く様子を見ていればだよな、という相槌しか打てない。

 

「おれもお前も、もうファミリーには戻らない! この旅が長引いた時から、そう決めてた」

 

 再会したときからコラソンが海兵だということをミオは知っているが、ドフラミンゴを含め誰にも漏らしていないことも、よく知っている。

 

 けれど今回の旅路は長すぎた。

 海軍への定期連絡も途絶えているから、襲撃の回数も激減しているはずだ。ドフラミンゴはコラソンをファミリー内の裏切り者と見抜いているだろう。

 

 『オペオペの実を食わせる』ということは、なにも病気快癒のためだけではない。

 能力者の命と引き替えに、不老不死をもたらすと言われる実である。自分を使って、ドフラミンゴが永遠の命を得るというハラなのだろう。

 

「いいか、ドフィたちを出し抜き! オペオペの実はおれ達が横取りするんだ!」

 

 コラソンはローの肩を力強く掴んだ。

 

「実はおまえが食え! 病気が無事治ったら二人でどこかに身を隠そう!」

「あ、それなら一緒に賞金稼ぎやろう! 楽しいよ!」

 

うってかわって楽しそうに挙手する顔は期待でわくわくしていて、コラソンも嬉しくなってミオとローを抱えてぎゅうぎゅうと抱き締める。

 

「うっぷ! おいコラさん!」

「そりゃいいな! 絶対に楽しいぞ!」

「でしょ! うん、それでさ、」

 

 コラソンのコートに半ば埋まりそうになるローが潰れた声をあげて、隣のミオの笑顔に剣呑なものが混じったのが分かった。

 これは知っている。

 なにかろくでもない悪戯を思いついた時のものだ。

 

「ドフィたちの取引前に当の海賊が『運悪く』、『賞金稼ぎ』に襲われたってそれはしょうがないことだよね? 海賊と賞金稼ぎは、そういう関係だから」

「は」

 

 おいおいちょっと待ってくれ。

 

 どうやらこの小さな姉は表面上落ち着いて見えるがその実、相当なおかんむりだったらしい。

 ちょっと大人しいのは、目の前にドフラミンゴがいなくて叫び疲れただけだったのか。コラソンの想像を遙かに超えてろくでもないことを考えている。

 

「それで乱戦の最中に『おたから』が行方不明になったってしょうがないし、それを偶然手に入れちゃったひとがどうしたって、そのひとの自由だよね?」

 

 冗談めかしてむふー、と小鼻を膨らまして胸を張っているのに、声は真剣そのものでぞわりと鳥肌が立った。

 

「おい、それは……」

 

 海賊と賞金稼ぎの関係性のみに焦点を絞れば正当な行為だが、ミオの立場からいえば明らかにドフラミンゴを裏切る行為だ。

 

 海賊と、賞金稼ぎ。

 本人のバランス能力でぎりぎり保ってきた危うい綱渡りのような生活を、自分で捨て去るということに他ならない。

 現に今、ドフラミンゴはコラソンに計画内容を言って聞かせて、ミオはそれを傍らで聞いていた。ドフラミンゴはそれを知っている。意図的に『不運な事故』を装ったとしたって、真っ先に疑われることになるだろう。

 

 そういった懸念があったのだが、ミオは清々しいほどはっきりと言い放った。

 

「ドフィはさ、ド級のケンカ売ってきたんだよ? そりゃもう高く買うよ? 買っちゃうよ? お値段的には、悪魔の実をポーンと買えるくらい」

「お、おう」

 

 完全に真顔だったので思わず頷いてしまった。

 

「ドフィを、ドフラミンゴをめっためたにへこましたい。けちょんけちょんにして吠え面かかせてやりたい。当分は会いたくないけど、とりあえず慰謝料としてオペオペの実は頂いちゃおう。ふんだ」

 

 ふんだ、とか可愛らしく言っているがその目つきはどこまでも本気のそれで、直感的にこれはヤバいと感じた。横のローもじゃっかん引いている。

 幼児期にドフラミンゴが癇癪起こして、奴隷を撃ち殺そうとした時と同じ目つきをしていた。否、当時以上かもしれない。

 

 あの時、ミオはドフラミンゴを全力でひっぱたいてから耳を掴んで両親の元に連行していた。

 

 ここまで怒っている姉を、コラソンは初めて見た。

 

 たぶん、自分のことを云々もあるが、ローの命をダシに使うような真似が、心底許せなかったのだろう。

 どうやって止めても、止まりっこないことを理解させられた。

 

「……わかった。とにかく、おれのツテで詳しい情報を聞いてみるから」

「っしゃあ! そうこなくっちゃ! コラソンらぶ!」

「らぶかぁ」

 

 ノリノリでガッツポーズを作るミオの頭を宥めるようによしよしと撫でて一旦離れ、出航の準備をしておいてくれと言い置いて電伝虫に慣れた番号をプッシュした。

 

 

 

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