(暫定)成人した誕生日にどっさりのプレゼントに囲まれて、酔っ払った頭でぼんやりいろいろ考えた。
ぶっちゃけ、ひとところの世界に留まって二十歳を数えたのは初めてのことで──こんなにあっけなく越えられるものなのかとびっくりした。
とにかくがむしゃらに走り回って鉄砲玉よろしく突っ込んで、ご破算。ご愁傷様。死して屍拾う物なし。
そんな人生ばっかりだった。
だもんだから、成人したらもっと劇的に『大人』になるのだと思い込んでいた。
年相応の考え方とか、落ち着きとか、そういう大人に必要な要素が合体ロボみたいにくっつくのかな、と。
けど、いざ体験してみたらぜんぜんそんなことなかった。
思考も性格も感覚も全部が地続きで繋がってて、ぜんぜん変化なんてしなかった。そんな自分にがっかりする。
誰かがおふざけで入れたらしい煙草を見つけて、吸ってみた。苦くてまずかった。しかもニコチンが重かったのか気持ち悪くなってひっくり返った。
目が回る。馬鹿だ。
なんでロシーはこれが好きなんだろう。苦いばかりで美味しくないし、お腹に溜まらないし、けむったいだけだ。
余ってるのが勿体なくて、一気に残りを吸った。先端がぢりりと音を立ててどんどん灰になって、むせた。涙目になって吐くほど咳き込みながら、自分よりとっくの昔に二十歳を迎えた弟たちのことを考える。
ドフラミンゴもロシナンテも大事な弟だ。
それは変わらない。大好きで、大切で、失いたくなかった。どちらも。
どっちの味方をするのか、ぱっきり決められれば楽だった。でも、そんなの無理だった。
……ほんとは、ちょっとだけ分かってた。
二人の間に、埋めようのない溝ができていたこと。
食事中の筆談でなされる会話や、すれ違うときの動作、誰かとの電話、ちょっとした時に感じる雰囲気の変化……あちこちに落ちている憂慮の種は、どうしようもないくらい、お互いの心が離れてしまっていたことを示唆していた。
僕は、そんな崩壊の予兆を見ないふりしていた。
ぎりぎりで保っていた均衡を崩してしまう何か、引き金のようなものを自分が引いてしまいそうで恐かったから。糾弾することも、話し合うこともせずにただ逃げたんだ。
ずっと会いたかった。
長い長い時間の果てで、初めてできた弟たち。
でっかくなってても関係なかった。びびって顔だけ見ようと思ってたけど、いざ再会したらそんな気持ちは一発で吹き飛んでしまった。
僕は二人といたかった。できるだけ、長く、一緒に。
やっと会えたことに、変わらず好きでいてくれたことに浮かれてた。
嬉しくて、幸せで、嫌われたくなかった。捨てられることを恐れた。
初めてできた家族に、長く別れていた大好きなひとたちに嫌われてでもいいから向かい合う、なんて勇気をだせなかった。
きっと三人揃って同じ所でご飯を食べられるのは、そう長い間じゃないと心のどこかで察してて、それでも臆病で弱虫で、おまけに意気地なしでずるい僕は、惜しんで、甘えていた。
もう少しだけ、あとちょっとだけと、口の中に残っている飴を惜しむような気持ちで。
あれも大事、これも大事で欲張って、結果がこれだ。自分のろくでもなさにうんざりする。
本当は──どうすればよかったんだろう。
僕がもっと頭がよくて、ちゃんと『年上のお姉ちゃん』だったら。誰も思いつかないような華麗な手段で快刀乱麻に問題解決、誰もが納得できるハッピーエンドになったのだろうか。
そういう『大人』になってたら、もっと上手くやれる方法が思いついていたかと期待してたけど、これじゃあてんでだめだ。
身体も心も大きくなれない僕は、年食っただけの子供だ。
どうするのが正解だったんだろう。
きっとどこかで間違えた。
ちゃんとケンカすればよかったのかな。変な八つ当たりしないで本人に直接ぶつけてたら、何か変わっていただろうか。そんなの今更、遅いけど。
くだらないことでカッとなって、いや僕にとったらくだらなくないんだけど、めちゃめちゃ気にしてることだったんだけど……ああ、いやだな。言い訳してる。すごくみっともない。恥ずかしい。こういう風に考えてるとき、僕は必ず間違えてるんだ。
今でもちゃんと好きだよ。ロシーぶち抜ぬこうとしたのは、許してないけど。
父様のことは、確認したかっただけで実はあんまり怒ってない。
きっと一生口にすることはないけど、僕は父様も母様も嫌いじゃなかった。
けど、好きかどうかは今になってもわからないんだ。ふたりが大事にしてたから、がっかりはしたけどそれだけだ。
因果は応報されるべきだから、巻き添えで死ぬような思いをしたきみは『それ』をする権利がある。
オペオペの実に関しては後悔なんかしてないけど横からかっぱらったのはそうだから、50億請求されたら一生かけてでもちゃんと払う。ローの命の代金としてなら安いもんだし。
──ごめんね、ドフィ。