エースがティーチを追いかけて白ひげを出奔して数ヶ月。
彼のことは気がかりだけど、新聞を見るにそろそろ『ハートの海賊団』がシャボンディ諸島に到着しそうだったこともあり、例年より少し予定を早めてシャボンディ諸島へ向かった。
シャッキーさんのお店に顔を出して、宿賃代わりに雑用を引き受けるという恒例の交渉をして了解をもらう。
「えっ、そんなに!?」
そこで、既に諸島に到着している大型ルーキーの数を聞いて驚いた。そろそろ十に届きそうだ。
まだいくつかのルーキーが諸島に来そうな気配があるので、ひょっとしたらそれ以上かもしれない。大豊作すぎる。キャベンディッシュさんなんかごめん。
「ふふ、『ハートの海賊団』はまだだけど、時間の問題でしょうね」
ふぅ、と紫煙をくゆらせて微笑むシャッキーさんは今日も美人さんである。
シャッキーさんは情報通なので、僕はバイトのたびに『ハートの海賊団』に関する動向を聞いていた。そのせいか『ハートの海賊団』のファンであると思われている。
間違ってはいない。間違ってないんだけど……こう、心理的には氷川○よしを見守るババアに近い気がする。あんなに小さかったのに大きくなって、みたいな。
ちなみに、いつもの部屋にレイリーさんがいないのでどうしたのかと尋ねたところ、ここ数ヶ月は帰っていないとのこと。
元海賊の性なのか放浪癖のあるレイリーさんはわりとちょくちょくいなくなる。あの人のことだから、その辺に女作って寝泊まりしているのだろうという意見で一致した。いつまでも若い御仁である。
新しい手配書をめくりつつ、諸島に潜んでいるルーキーをシャッキーさんから聞きつつ照らし合わせていく。
「ふんふん、『怪僧』に『赤旗』、『海鳴り』……へぇ、『大喰らい』も? ここまで揃うのも珍しいですね」
ユースタス・『キャプテン』・キッドと『殺戮武人』はワンセットとして、新聞を賑わせていたそうそうたる顔ぶれに感心すら抱いてしまう。
「ええ、ここまで揃うなんてそうそうあるもんじゃないわ」
海賊の結成時期が違えば当然、諸島に着く時期だってそれぞれ違う。
学園祭みたいに必ずこの時期に集まる、なんてことはまずないので本当に珍しい。もしかしたら初めてじゃないかな。
どちらかといえば、異常だ。
「……ふむ」
ここまで狙い澄ましたように物事が運んでいると、時代が動く先触れというか、運命めいたものが音を立てて回り出すような気配があってぞっとしない。
あんまり真剣に手配書を見つめていたせいか、シャッキーさんがくすりと笑った。
「お使いがてらに見物してくる?」
「あ、行きたいです!」
「じゃあこれ、買い物のメモとお金ね」
メモとお金を受け取って、一応読み上げ確認。うん、大丈夫そう。
腰には得物を佩いたままだけどかさばる荷物は部屋に置いてきたので、あとは財布とリュックだけを装備する。
「気を付けて行ってらっしゃい、最近『賞金稼ぎ狩り』が多いらしいから」
「賞金稼ぎ『狩り』?」
耳慣れないのにピンポイントなワードに聞き返すと、シャッキーさんはそういえば来たばかりだものねと説明してくれた。
シャボンディ諸島はよその島と比べて奴隷の売買がわりと大っぴらに行われており、それに伴って人さらいを生業としている者達も存在する。
『商品』の価値は強さや美しさ、物珍しさなど様々だがとりわけ能力者や他種族となると取引額も跳ね上がる。
つっても、そういう種族は手に入りにくいからこそハイパーなお値段でやり取りされるわけで、そうしょっちゅう捕まえられるワケではない。
そこで目を付けられたのが賞金稼ぎというワケだ。
海賊が多い分、賞金稼ぎの数も段違いな諸島である。薄利多売にシフトした人さらいチームが実力が足りずに食い詰めた賞金稼ぎをだまくらかしたり、あるいは徒党を組んで襲いかかって身ぐるみを剥いで、親切ごかしに取り入って身売りさせる~なんてのが主な手口らしい。
「ただの人間よりよっぽど付加価値はつけられるし、力もあるだろうしね」
『かの有名な○○海賊団を潰した~』なんて冠文句のひとつでもあれば、オークションでも箔が付くだろう。
売るなら出来るだけ高く、は人情なので分からなくもないが迷惑な話である。
「特にミオちゃん目立つから、見つかると狙われるわよ」
「え」
思ってもみなかったことを言われて、一瞬意味が分からなかった。め、目立つだと?
昔から目立たないように目立たないように生きてきたつもりなのですが。
「……僕、目立ちますかね?」
おそるおそる問いかけると、シャッキーさんは紫煙をくゆらせながら新聞でも読み上げるように淡々と言った。
「前はそうでもなかったけど、ここ何年かで目立ってきたわね。ミオちゃん神出鬼没だしずっと第一線で動いてるじゃない」
シャボンディ諸島と新世界とグランドラインを行ったり来たりしているので、端から見れば神出鬼没に映るかもしれない。
ただ、これには差し迫った事情がある。
なんせ海軍本部が近いので、僕が世界でいちばん顔を合わせたくない海賊ことドンキホーテ・ドフラミンゴ……王下七武海が招集される時は全力で逃げ隠れするしかない。本当はジンベエ親分にご挨拶とかしたいのだけど、あの弟に見つかってしまう可能性があるような真似は、何が何でも避ける他ないのだ。
あと、ソロの賞金稼ぎってわりと長持ちしないという定説もある。
体力勝負だし相手が相手なのであっさりお陀仏していつの間にか、なんてのも珍しくないのだ。
「それはそうですけど、名前が売れるようなことをした覚えがないのですが」
下手に逃がすと、変な噂を立てられないとも限らない。
そういうのがめんどくさいので標的の海賊は大体全滅させるか、そうでなければひっそりこっそり船長とか副船長、航海士もしくは料理番なんかの今後存続に支障を来す役職の人間を狙っていた。隠密行動は得意である。
評判を立てる相手がいないと思うのだけど。
「海賊はそうかもしれないけど海軍に知り合い、いるでしょ?」
すぐに何人かの顔が思いつくのでそこは素直に頷いた。
「そりゃまぁ、この稼業長いのでそこそこは」
十年以上も賞金稼ぎをしていれば海軍の知り合いが出来るのは自然の流れな気がする。
そういえばスモーカーさんとたしぎちゃんは昇進したんだっけか。王下七武海サー・クロコダイルが砂の王国アラバスタでなんちゃらかんちゃら。
特に諸島は海軍本部のお膝元なので、本部近くの町をうろうろしていれば海兵はなんぼでもいる。
ロシーがお世話になったというガープ中将なんてわりと仲良くさせてもらっている方だと思う。おせんべいくれるし。そうでなければ、換金所で顔なじみになった海兵さん以外にも知り合いが何人か。
弟の育ての親も同然だというセンゴクさんに関しては軍の中でも立場が上すぎて未だに会えていないのが残念だ。
「狙う海賊は懸賞金より評判重視で、しかも自分から名乗ることは一切ない。律儀な賞金稼ぎなんて珍しいから海軍筋からけっこう人気あるのよ。知らなかったの?」
「いろいろ初耳です。あー、海軍筋からかぁ……ぜんぜん考えたことなかった……」
頭を抱える僕を呆れたように見ながらシャッキーさんが「ミオちゃんって時々抜けてるわよね」とつぶやいた。はい、うっかりしてました。海軍は知り合いになったひと以外はほぼATえむげほげほ換金所扱いしてました。
目立つ理由は分かった。しかしどうしようもないから……これは開き直るしかない。
「ともかく、気になるので買い物がてらにちょっと見てきます。いざとなったら海軍監視下方面に逃げるんで、ちょっと遅くなるかもしれません」
目立つ原因なので責任とってください。
責任転嫁かどうか微妙なラインの台詞を吐くと、シャッキーさんは軽く手を振る。
「『音無し』を捕まえられるような人さらい屋はそうそういないと思うけどね。ええ、行ってらっしゃい」
自室に置いてあるボンチャリで行こうと思ったけど、置き場所に困るので徒歩に変更。荷物はボンバックに入れてもらえば平気だし、いざという時に置いて逃げて自前のボンチャリ盗まれたらイヤだ。
×××××
シャボンディ諸島はその名の通り、無数のシャボン玉が漂う幻想的な島である。
その理由はこの諸島を作り出しているヤルキマン・マングローブの自発呼吸と、樹木から染み出している樹液である。呼吸のたびに空気が常に分泌される樹液を膨らませ、シャボン状の球体となって排出されるのだ。
ミオは諸島に漂う無数のシャボンの上を、水切り石のようにひょいひょいと足場にしながら目的地を目指していた。
人間にとって真上はわりと死角なので、ある程度の高さは保ったままで。勝手知ったる場所なので地図など見なくても到着できる。
先ほどのシャッキーの話を聞くと無法地帯方面は避けた方が無難そうなので、街に出るまではこのまま行こうと思う。
元々、数年前からドンキホーテ海賊団直営のヒューマンショップが1番グローブの方にできたので近付かないよう努めているのだけど、より気を付けた方がいいだろうと気を引き締めた。
「絶対やべーもんなぁ、っと」
物騒な周辺をスルーして、造船所近くの商店街でようやくシャボン玉から降りた。
馴染みの店主と挨拶をして買い物を済ませて『ボンバッグ』に入れてもらって、ひもをリュックに通して固定する。
『ボンバッグ』はシャボン玉を利用した買い物袋のようなもので、シャボンが自発的に風船のように浮いているので重いものでも楽々運べる便利グッズだ。
「毎度あり! 今回はどれくらいいるんだい?」
「まだ決めてないんです。しばらくはいるつもりなんですけど、気になることがあるので」
ともかくミオは逞しく(?)成長したローに会いたいので、それまでは滞在を決めている。
気になることというのは、エースのことだ。
彼の実力は知っているけれど、ティーチが口にしたであろう『ヤミヤミの実』の能力は未知数。妙な胸騒ぎがしていたミオは、もらった電伝虫の番号に時々連絡を入れていた。お父さんこと白ひげが反対していた、という不安要素も一因である。
元々携帯みたいに電伝虫を持ち歩いたりしないエースとの連絡は繋がりにくく、たまに繋がったとしても弟の懸賞金が上がっただの、どこぞの海軍駐屯所のコーヒーがしぬほど苦くてまずかっただの、毒にも薬にもならない話ばかりだった。
それはそれで元気な証拠だったので安心していたのだが、それからしばらくして連絡が完全につかなくなった。
それから、さほどの時間も置かず新聞の一面を飾った事件。
グランドライン『バナロ島』において起こったポートガス・D・エースと『黒ひげ』マーシャル・D・ティーチの決闘。
この決闘の結果、エースは世界政府に引き渡されインペルダウンに収監。エースの身柄確保と引き換えにティーチが王下七武海へ加入を果たした。
最初は内容が信じられず目を皿のようにして紙面を何度も読み込み、事実として飲み込んだミオはそこらの海兵にそれとなく尋ねて裏取りしてから白ひげに連絡した。
海賊である以上、海軍に拿捕されることだって当然ありうる事態ではある。しかし、理解と納得は別問題。
微妙な立場をふらふらしているミオと違って、エースは既に白ひげの『家族』だ。ミオだってエースが大事だし、『家族』に手を出された白ひげの苛烈さは筆舌に尽くしがたい。
彼らの動向如何でミオも腹を括るつもりだった──のだけれど。
電伝虫に出た相手はマルコで、返答はそっけなかった。
曰く、エースの件はこちらでなんとかするからミオは関わるな。
これは徹頭徹尾『白ひげ海賊団』と海軍との問題なので、余計な口を挟まないように。突き詰めるとそういう返答である。
それを持ち出して突っぱねられてしまえば、ミオも頷かざるを得ない。
どれだけ歯痒く、理不尽を感じようとも自分で望んだ立ち位置だ。勝手に動くには相手が悪すぎる。
しかしミオの心情的にしおらしく座して待つなんて無理な話なので、そうなると海軍本部の近い諸島の方が情報が手に入りやすいし、いざという時の行動がしやすい。
音に聞こえた新世界は『四皇』の一角、白ひげ海賊団の秘蔵っ子なんて海軍がどう扱うつもりなのか前代未聞すぎて予想がつかなかった。裏取引とかで穏便に出してくれれば喜ばしいのだが、エースはそういうことを甘んじて受けるタイプでもない。
そんなワケで何かあれば動く腹積もりだけれど、今のところは『ハートの海賊団』の到着待ちというのが現状である。
「そうかい、ミオちゃんがいると安心できるからねぇ」
この辺りの商店街のひととは大抵が顔見知りで、ミオが実力のある賞金稼ぎということを知っている。というのも、何年か前に無銭飲食している海賊をしょっ引いたからだと思っていたのだが、どうやらそれだけが理由ではないらしい。シャッキーに言われるまで気にしたことがなかったけれど。
というのも、ミオはさきほどシャッキーに述べた通り賞金稼ぎと海軍の関係なんて外注と発注者くらいにしか考えていなかったのだ。個人的な友誼とは別物として認識していた。
賞金稼ぎのあれこれなんて新聞に掲載されることはほぼないし、自船と白ひげとシャッキーのお店以外で定住場所は構えていない。猟場を決めていないから文字通りの神出鬼没。捕まえた賞金首はそのまま監獄直行なので、噂が広がることはないだろうと気楽に構えていた。
個人的には食い詰め浪人、もしくは剣客商売程度にしか認識していなかったのである。
しかし言われてみれば、海軍のネットワークは多岐に渡るしこと賞金稼ぎの情報に関して守秘義務はない。ソロ活動の限界でもあった。
ちょっぴり暗澹としていると、去り際に、店主のおばちゃんがグランドラインまんじゅうをひとつ投げて寄越してくれる。
「なにへこんでんだか知らないけど、おやつにもってきな! 甘い物は元気が出るよ!」
「ありがとう! またよろしくお願いしますね-!」
手を振ってから、キャッチしたおまんじゅうの包装をぺりぺりと剥がして、お行儀悪くかぶりつく。クリーム餡だった。美味しい。
そろそろ長い付き合いにも関わらず、いつまで経っても店主のミオの扱いは微妙に子供のそれだ。実年齢を吹聴してはいないものの、そこそこの年だと分かっていそうなものなのだけど……。
とはいえ、そういう好意は嬉しいので素直に受け取っておく。
「そういえば、シュライヤも『海賊処刑人』なんて異名ついてたもんな……」
最近、生き別れだった妹と再会したことで賞金稼ぎから足を洗ったらしい弟子は、グランドラインでも名うての賞金稼ぎになっていたことを思い出す。普通に活動していたって異名がつくのだから、彼の数十倍以上に活動期間の長いミオが有名じゃないワケがないのだ。ちょっと反省。
まんじゅうを食べ終えて、近くで買ったお茶で喉を潤していると──ぬうっとシャボン玉ではない影が差した。
「なんだ、あんたも来てたのかよ『音無し』」
知った声に顔を上げると、まさかり担いだ金太郎……もとい、金太郎のような髪型と前掛けをした巨体の男がこちらを見つめていた。
「あれ、戦桃丸さん。こんにちは、お久しぶりです」
彼は海軍本部科学部隊隊長という大層な肩書きを持つ将校である。
主な任務は海軍で開発業務に携わっているDr.ベガパンクのボディガードなので、扱いは非正規の海兵ということになっている。こうして諸島で会うことはよっぽどタイミングが合わないとないことなので、非常に珍しい。
ミオがぺこりと頭を下げると「あァ、確かに久しぶりだな」と戦桃丸も頷いた。
「今日はボディガードじゃないんですね」
「こんだけ諸島に億超えルーキーがいるんだ。わいらも奥に引っ込んでらんねェよ」
自分の全長の倍以上ありそうなまさかりの柄で肩をとんとんと叩きながら、戦桃丸はしかめっ面になる。戦闘力の高い人員を遊ばせておけないと駆り出されたらしい。
そういえば戦桃丸は、かの大将黄猿と知己のはずなので、大方彼に呼び出されたりしたのだろう。ご苦労様です。
しかしこのガチッぷり。
やっぱり今回の『諸島だよ、ルーキー大集合!』は海軍本部にとっても由々しき事態のようだ。
「『音無し』がルーキーの一人でも討ち取ってくれれば、わいらの仕事も減るってもんなんだが?」
「ルーキーは狩らないんですってば。前から言ってるじゃないですか」
「まーな」
言ってみただけだ、と戦桃丸は軽くため息を吐く。
『音無し』ことミオは賞金稼ぎの中でも古参で指折りの実力者だが、見た目はちっともそう見えないし、こうして対面していてもそんな雰囲気は欠片も窺えない。もっとも、その外見詐欺みたいな部分も実力の内なのかもしれないが。
「大体、今日の僕はしがないぼったく……居酒屋のバイトさんなので無理です」
じゃっかん不穏なことを言いながらほらこれ買い物、とボンバッグをゆらゆらさせる様子はそこらの民間人と本当に変わらなかった。やせっぽちで小柄で、腰には一応用心のためか刀を佩いているが、それだって護身用だと言われれば頷いてしまいそうだ。
ここらに漂っているシャボン玉のようにふわふわして掴み所がない賞金稼ぎは、そういう稼業特有のギラついた空気が一切ないのでどうにもこちらの気が抜ける。
「バイトって、金に困るようなことでもしてんのか」
「店主さんのご厚意でひさしを借りているので、宿賃代わりに雑用してるんです。お金はそこそこありますよ、もしもの場合に自分で自分を買えるくらい」
「ああ、例の『賞金稼ぎ狩り』か? んなの、お前みたいなヤツにとっちゃ物の数じゃねェだろ」
そこらのちんけな賞金稼ぎならあり得るが、ことミオに限っては天地がひっくり返ってもあり得ないと戦桃丸は言い切れる。
ソロの賞金稼ぎと銘打っているが、ちょっと関わった者なら『音無し』には規格外な『相棒』がついていることを知っているからだ。
「真っ向から来たら返り討ちにしますけど、できるだけの自衛はしますよ。万が一だってあるのが世の常ですので」
「そりゃそうか」
つい最近、白ひげの隊長がぽっと出の海賊に討ち取られるくらいだ。
万が一なんてどこにでも転がっていることくらい、戦桃丸でもわかる。
「それじゃ、お仕事頑張って下さいね」
「ありがとよ」
世間話と挨拶くらいの関係だが、にこにこ笑って屈託なく言われれば悪い気はしない。
「そうだ、どっかでルーキー見かけませんでした?」
「? 狩らねぇんだろ?」
「狩りませんよ? ちょっと生ルーキー見物したいなって」
今年めっちゃいっぱいいるから面白そうですよねと語るミオは、どう見てもそわそわしていた。
仮にも軍属を前にしてよくまぁぬけぬけと言うものである。
「ただのバイト云々言ってたくせにルーキー見物とか言うんじゃねェよ! あとわいに聞くな!」
「すいません調子乗りました自分で探します!」
そのまま手近なシャボン玉を足場にぴょんぴょんと乗り移りながら移動する様子は、控えめにいって
居酒屋のバイトさんはそんな動きしない。