スマブラキャラがただ飲んでお話しするだけのお話 作:スマブラ族
次は今回復活したメンツで書きました、どうぞ。
全員参戦。
その言葉は、世界中の人間を震撼させた。
何年かに一度開催される、ゲーム業界の格闘競技「大乱闘スマッシュブラザーズ」の、新たな戦いのプロモーションビデオにて掲げられた言葉に、皆が熱狂し、主催企業を湛える声で溢れていた。
全員参戦ということはすなわち、過去4回の戦いのうち、やむを得ず主催企業からリストラをされてしまった戦士も復活を遂げる、ということだ。当然、過去に参戦できず失意した戦士は、例外なく感謝するとともに、興奮のあまり咆哮したものも少なくない。
プロモーションビデオの放映後、すぐに、参戦ファイター全員で近くの飲み屋を占拠し祝杯を挙げ、誰もが嬉しそうにうまい料理や酒に浸った。
その後は、昔からの大御所ファイターたちが離れて二次会を行うことになり、解散することになった。他のファイターたちもまたそれぞれの場所に戻り、それぞれの時間を楽しんだ。
そしてーー晴れて復活参戦することの出来た戦士たちは、その会場を離れて近くの場末の居酒屋へと向かった。しばらくぶりの参戦であるため、あまり手持ちが良くはないのだ。
彼らは席につくと眠そうな店員に飲み物とつまみを注文した。その後、飲み物がテーブルに並ぶと、各々がそれを持ち上げて祝杯をあげたのだった。
「乾杯!!!!」
「乾杯!!!!!!」
かちんとグラスが鳴るとぐいっと皆喉に入れ込む。そして、ぷはっと息を吐き出すと、一気に弛緩した空気が流れた。
「改めて言おう、復活おめでとう! そして、参戦おめでとう!」
ゲストとして参戦した伝説の兵士・スネークが叫ぶように皆にいうと、またもビールを喉に含んだ。中身は空になっており、すぐさま店員を呼んだ。
彼は、主催企業に所属する人間ではなく、それに並び立つレベルの企業に所属している。しかし、友好関係を築くべく、10年前ゲストとして戦いの場へと降り立った。
しかし、そのつぎの大会には出場しなかった。関係が良好になったと言いがたい事態がおき、大会を欠場することとなったからだ。しかし、彼は元々《メタルギアソリッド》シリーズにて多大な人気を誇っており、多くのファンがスネークの復活を求めていた。故にこうして今回の大会で参加を表明することになり、彼の参戦が告知された瞬間、世界中が興奮の渦に巻き込まれた。
「おいおいスネーク、もう一杯目飲んだのか……? ペースが早いとあまり体によくないぞ」
白衣を羽織った中年の男・ドクターマリオがミルクを飲みながらスネークを諌めた。
彼は、かの大スターマリオの名前を冠している。しかし、出演した《Dr.マリオ》においては運動能力がオリジナルよりも低いという設定がつけられてしまい、マリオではない別の人間を用意する必要があった。その人物が彼である。故に、大御所的な存在のマリオとは違う。
彼は前の大会でも参加をしていたが、その前の、つまり10年前に大会では欠場を余儀なくされた。やはりマリオに似ているなら大御所を出す方がいいだろう、というのが主催企業の本音だったようだ。しかし、《Dr.マリオ》という名作のファンも多く、彼の復活参戦を希望する声があった。故に前大会で復活参戦し、今回も満を持しての参戦となった。
「まあでも今日はこんなところのビールとはいえ、ペースが早くなるのは無理ないぜ。何せここにいるやつら全員参戦だからな」
狼のパイロット・ウルフは安めの焼酎をぐっと一息で飲み干した。彼は《スターフォックス》シリーズに出演し、主役であるフォックスの好敵手として人気を博した。彼もスネークと同様に前大会には出場せず、今回で復活を果たした。彼の参戦を喜ぶ声もあり、ものすごく上機嫌である。
「そうだよね……俺も久々の参戦だから腕がなるよ! 時の勇者復活だ!」
こどもリンクは、表情を綻ばせながら予め頼んでおいたフライドポテトをつまむ。
彼はその名の通り、リンクの子供時代役である。ゼルダシリーズを一躍有名なものにした伝説的な名作《時のオカリナ》の序盤や、その続編の《ムジュラの仮面》にも出演し、その縁あってか格闘大会に出場が叶った。
しかし、彼に不幸が訪れた。10年前の大会にて、《風のタクト》などで出演したトゥーンリンクに出番を取られ、被ってしまうなどの理由でリストラされてしまった。もはや復活は絶望的と、本人もファンも諦めていたが、まさかの復活を果たし、驚きと共に彼を迎えいれた。
「こんな日は飲まなきゃ損だ! ちょっともらうよウルフ!」
「お、おいお前まだガキだろ!?」
「大丈夫だスネーク。お前は知らないかもしれないが、あいつは見た目は子供だが実年齢は立派な大人だ。酒の味くらいはわかるはずだ」
「……いや、体が大人じゃなければだめだろ酒は」
スネークは危惧するが、とうの子供リンクは全く顔を赤らめることもなく、飲み干してしまった。
「意識してないとリンクは元は大人だが子供に戻っただけというのに気づかないな……しかし、なんとも数奇な人生だ」
「いや、ミュウツーが言えたことじゃないピチュ」
焼酎を飲みながらぼやくミュウツーにピチューが突っ込んだ。
ミュウツーとピチューは、共に同じ《ポケットモンスター》に出演しており、どちらもそれぞれ人気を博している。
ミュウツーは、アニメの劇場版一作品目でラスボスを勤め、ゲームでもとてつもなく強いキャラクターとして登場した。また、彼の重すぎる設定も人気の種となり、700種類増えたポケモンの中でもトップクラスの人気を、世界中から得ている。10年前の大会でリストラされてしまったが、前大会でまさかの追加参戦が決定し、今回も続投となった。
またピチューも、ピカチュウの進化前ポケモンとして有名であり、人気を果たしている。余りあるデメリットからあらかじめ主催企業が最弱ファイターだと謳っていたが、ピチューの圧倒的な可愛さのおかげで支持は多く、今回ようやく復活を果たした。
「でもまあ、今日くらいはガンガン飲んでもいいよね、よっと!」
「おおっ! ロイすごい飲みっプリだ! よし僕も!」
そういうと、炎の子・ロイはぐいっとビールを、隣に座るリュカはオレンジハイを喉へと流し込んだ。もちろん二人とも外見は少年である。
ロイは、10年前の戦いでリストラにあってしまった。《ファイアーエムブレム》に同じく出演していた蒼炎の剣士・アイクに出番をとられてしまったからである。しかし、以前に参加したのは出演作品の前宣伝のためのはずにも関わらず、彼の復活を求める声は年を経過していくうちに大きくなり、ついに前大会で追加参戦が決まり、そのまま続投となった。
リュカは10年前の大会で初登場したが、その次では最初から参加していなかった。その暴挙とも言える行動にブーイングが起こり、追加参戦が叶った。そのときリュカはネスに泣いて抱きついたという逸話があるとか、ないとか。
「僕はお酒飲んじゃうと山登れなくなるからね……飲まないでおこうかな」
「僕もまだ未成年だしな……やめておこう」
アイスクライマーと、男の子のポケモントレーナーはおとなしくウーロン茶を啜った。なお、アイスクライマーは普段は二人一組なのだが、今日は女の子のナナが女子会の方に行ってしまったので、今日は一人である。
アイスクライマーは、10年前の大会を最後に出場しなかった。こちらは主催企業から公式にアナウンスがあり、システム的な問題故に参戦が不可能だったようだ。今回はその問題が無事解決したので、参戦できたようだ。尤も彼の復活は予想の範疇にあったので、喜ばれこそすれ、驚きの声は他の人より劣っていた。
一方ポケモントレーナーの方は多いに驚かれた。彼もまたアイスクライマーと同様に10年前の大会を最後に参戦せず、彼の手持ちポケモンである《リザードン》は続投だったが、ゼニガメやフシギソウは前大会でも不参戦だった。しかし、今回は以前のような形で再び参戦が叶い、こうして上機嫌にソフトドリンクを飲んでいる。
「しかし……お前ってマリオさんたちが大会に出る頃辺りからデビューしてるだろ?」
ウルフが質問するとトレーナーはうなずいた。
「まあね。といっても僕個人が出演する事ってけっこう希だけどね。ついこの前サンムーンでもイメチェンして出たんだ」
「貴様はなんだかんだ言って主人公以外の役でも出ているしな。私やピチューも一応出演を果たしているが」
「まあポケモンはどの作品もぜんこくずかんがあるからね」
「身内話はいいが、俺が聞きたかった話はそれじゃねぇ。お前もうすでに成人しているはずだろ? もう何年たっていると思ってるんだ?」
「俺はお前たちの会社の作品には疎いが、流石に10年以上たっているのはわかるぞ」
「下手すれば20年はたっているよね。ピカチュウさんとデビューが一緒なんだから」
アイスクライマーの言葉にポケモントレーナーは僅かに俯いた。
「あー、そういうことか……でも、僕ってさ、何があっても絶対に成人にならないようになっているんだ。その辺はむらびとくんだって同じらしいよ」
「あぁ……そういうことか。聞いて悪かったな、小僧」
「分かってくれたらいいんだ、ウルフ。ちなみに女の子の方もそうだから」
「いやまて、それはどういうことだ? 人間というのは必ず老いるものだ! ゴエモン先輩とかならまだわからなくはないが……」
この中で唯一理解が追い付いていないスネークが狼狽える。それはそうだ、彼の世界はリアリティに満ちているのだから。
「これ以上は疑問にもたないほうがいいピチュ。まじで消されるピチュ」
「そうだよスネーク。せっかく参戦が決まったんだから、あんまり余計なことを言わない方がいいよ」
「……わかった。もう俺はこの件に関してはコメントはしない」
そういうとスネークはビールを口に含み、店員を呼んだ。おかわりを頼むようだ。
「それはそうと、どうして今回は全員参戦なんだろうね?」
やや暗くなった空気の中に一石を投じたのは、ポポだった。
「確かにそれは思ったね……今回はやたら大判振る舞いしたなぁって印象だ」
「ロイもそう思うか。実は私もなんだ。いくらなんでもやりすぎなところはある」
「おいおい皆、それは我々にとって喜ばしいことだろう? みんな仲良く参戦できたからそれでいいじゃないか」
「それはそうなんだがな……こうは思わないか?」
ウルフがぐびっとビールを飲み干して、ぼそりと口にした。
「これが、最後なんじゃないかって」
「…………」
ウルフの言葉により、沈黙が広がった。言ってはいけない、あの言葉を言ってしまったことによる緊張、不安が卓の空気を静かに揺らしている。
「……すまん」
「いや、むしろよく言ってくれたと感謝しているくらいだよ。しかも今回の副題はスペシャルときた。あっちの方じゃultimateだけど、とにかく今回は普通のバージョンじゃない」
ポケモントレーナーがウルフの肩をポンと叩きながらフォローする。どうやら人間ではない生物を手懐けるのには慣れているようで、ウルフもまんざらでもないような顔をしている。
「今回は完全版、といったところだね。ということはこれ以上は、ないのかな?」
「あくまでも可能性だよ。これで最後になってたまるかってんだ」
子供リンクは、自棄になるようにビールのジョッキを注文し、グイッと飲み干した。
「……ただ一つ言える事があるピチュ」
ピチューがレモンサワーを飲み干して呟いた。皆がピチューへと注目する。
「仮に最後だとしても、楽しめばいいピチュ。今回皆参戦できたんから、それを喜んで精一杯楽しめばいいピチュ」
ピチューの発言にロイがうんうんと頷き、同委の言葉をあげた。
「……それは言えてるね。最期かどうかを憂うより、楽しんだ方がいい」
「まあ無論最後じゃねぇ方がいいけど、とりあえず楽しまなきゃ損だぜ」
「全くだ。せっかく俺は別の会社から来たんだ、存分に楽しませてもらうぞ」
スネークはそういいながらぐっと飲み干すと、席を立ちあがった。皆が注目し、疑問の視線を投げかける。
「すまんな、さっきソニックから"他社会"の誘いがあったんだ。ということで失礼する」
「そうか……スネーク、道中気を付けろよ」
「感謝する、ミュウツー。復活組と飲めて楽しかったぞ。またな」
そういうとスネークはお金を置いていって、居酒屋を去っていったのだった。スネークが去って、しばし小話をはさんだ後に解散となり、復活組はそれぞれの家路へと帰ることとなった。
次回は、女子会でもやりますかなー