距離とは心の距離
離れ近づきそして消える……
夏休みというものは、中々に長いのだがその日々が流れる早さはあっという間であり煌遊達の夏休みも終わりが近づいていた。
いつものように葵や健斗と遊んでいると気づけば夕暮れになっており午後5時を告げる放送も辺りに響く。
その放送が別れの合図。
この放送が聞こえたらデュエルも全て中断して家に帰るのだ。それが学校からプリントという形で手元に残る約束の証拠に書かれた内容の1つなのだ。
「あぁ~もう5時かよっ」
残念そうに唸る健斗は起動中のデュエルディスクのディスプレイを見ながらデュエルを中断するように操作する。
デュエルディスクがデュエルを終了するとソリッドヴィジョンは消えた。
このようにデュエルが中断すると引き分けで終わるのだ。
「私ももっとデュエルしたかった」
しょんぼりと浮かない表情を浮かべる葵は5時の放送をうらめしそうに聞きながらデュエルディスクを腕から外すとバックにしまうのだ。
デッキはデッキケースに入れるとそれも落とさないようにバックに入れてしまう。
確かにデュエリストからすればデュエルディスクを着けて街を歩きたくもなるが道幅が狭かったり、人混みの中等ではデュエルディスクの材質や腕からはみ出してしまう構造故に相手との接触を避けるために腕から外すことが多い。
昔はデュエルディスクの装備に特別なルールは無かったが、デュエルディスクが当たって喧嘩、相手の衣類が破けて弁償、電柱に引っ掛けて怪我をするなどのことが多くなったため今では、全世界で移動時のデュエルディスクは外すことがルールとして設立されたのだ。
帰る支度ができると3人は歩きだす。
公園から家までの距離は、あまり遠いことはないが家の方向が煌遊だけが正反対で公園を出て少し歩くと四ツ辻で健斗と葵と別れたのだ。
「また明日遊ぼうなー!!」
「明日こそ勝つから」
健斗と葵は、別れの挨拶と明日の再戦という遊ぶ約束をすると、家路へと向かい歩いていった。
「またねー!!」
煌遊もまたねと答えるとニコニコしながら家に向かい歩いていく。
そんな彼の後ろには音もなく近づく影があり、1歩ずつゆっくりと、だが確実につめていく。
夕方故に影の伸びかたで相手を判断できないが、近づく足音はコツコツと響いていた。
煌遊も怖い話特集のせいか先ほどから聞こえる足音に怖くなり嫌な汗を幼いながらも感じていた。
そしてできるだけ早く家に帰りたいと思いながら、後ろの誰かを見たくないとも思いとうとう意を決して走ろうとした時に肩に手がポンと乗るのだ。
その時の驚きは、すでに声の出るような物ではなく、まるでこの世の終わりを実感したような位顔を青くしていた。
「煌遊、葵ちゃん達はどうしたんだ?」
永遠にも感じる長いようで短い一瞬の時を越えた先に聞こえてきた声は自分の知っているもので急いで振り替える。
その声の主はスーツを着ていた自分の父であった。
この夏のせいか、少し汗をかいており肩に触れていない手は、ハンカチで額の汗を拭っていた。
「な、なんだぁお父さんかぁ……」
煌遊からすれば誰かもいやそもそも人かもしれない者との対峙を覚悟していたので父親でほっとしたのか力なくへなへな~と崩れそうになる。
「なんだとはなんだ?お父さんこれでも少しでも煌遊といるために頑張ってきたんだぞぉ」
父親は煌遊のなんだという発言にむっとしたのか煌遊を抱き上げると、抱き締めて家まで歩いてしまった。
恥ずかしくて抵抗する煌遊を笑いながら話しつつであった。
夜になると煌遊は自分のカードを見ていた。
沢山というほど持っている訳ではないがそれでも大切なカードであった。
1枚ずつ捲っていると親に呼び出しをされるのだ。
声の質からして母親だろう
「なに母さん?」
煌遊はすぐに声のした方────リビングへと足を運ぶ。
そこには父と母が椅子に座っており、煌遊に椅子に座るように手招きするのだ。
「なぁ煌遊……その父さん転勤になってな……それで何年かここを離れなくちゃいけない……だから父さんと母さん、煌遊の3人で引っ越さないか?」
父親は煌遊を見つめながらいつものような笑顔ではなく申し訳なさそうに引っ越しの話をするのだ。
煌遊はそれを聞くと驚き彼は父親と母親に聞くのだ。
どういうことなのかと
彼の言葉はどんどんと小さくなっていき、それに比例して彼の目には涙が溜まり頬を伝う。
涙はテーブルにポタポタと落ちるが、母親も父親も少し申し訳なさそうに見ているだけで、引っ越しが取り止めになることはなく
「夏休みの最後の日に引っ越しをするから準備をしておきなさい」
父親から引っ越しの準備を言い渡されると彼は駆けるように少し足音を煩く自分の部屋へ向かうのだ。
そんな背中を見守る父親と母親もどうにもできないのか歯痒いのか二人で手を握り合わしているだけだった。
─────
ボクは自分の部屋に入ると扉を締めてベットに寝転がる。
さっきまで見ていたカードをまた見るのだ。
今日遊んだ健斗君や葵ちゃんの約束もあるし、また二学期から楽しくデュエルできると思っていたのに引っ越すなんて……
「ここにいたいよぉ……」
ボクのカードを何枚も捲りながら、言っても昔絵本で見た精霊は出てこない。
出てくるはずないのに……お父さん達を困らせてワガママばっかり言っているボクの所に精霊なんて…………
ボクは最後に引っ越したくないなぁと思いながら天井を見る。
夜のせいで白色の天井に青色っぽくて、まるで今のボクみたいだった。
ずっと健斗や葵と一緒にいると思ってたのに……こんなふうにお別れしちゃうなんて……いやだよ……ずっと一緒にいたいよ……
枕に顔をおさえてボクはこれからのお別れを考えてたらいつの間にか寝ちゃってた。
煌遊が寝ている間に彼のカードの何枚かが淡く光っていた……
「おはよ」
気づけば朝になっていてボクはデッキを片付けて着替える。
脱いだパジャマを洗濯機に入れてからお母さんにおはようと言うとお母さんからおはようと返ってくる。
「あら煌遊おはよう……ご飯はちょっと待っててね」
お母さんはキッチンで朝ごはんを作ってくれているのか待っててと言う。
今日はお父さんお休みでまだ寝ているけど朝早く起こすと眠そうにしてるからいつも起きるまで寝ててもらうんだ。
ボクはお母さんの朝ごはんを待つ間に、コップやお箸を用意しようと思ってキッチンへと歩く。
お父さんはいつもあんまり早く起きないからお母さんとボクのお箸とコップをテーブルに置いて朝ごはんを待っていた。
─────
───
──
─
「ご馳走さまでした!!」
今日の朝ごはんはベーコンエッグとお味噌汁とご飯でとても美味しかった。
食事の挨拶をしっかりとして使ったお茶碗やお箸とかをキッチンに置くとボクは歯磨きと顔を洗う。
「煌遊……昨日の話なんだけど」
「ぼ、ぼく葵達と遊ぶ約束してたんだいってきまーす!!」
母さんが昨日の引っ越しの話をしようとしたからデュエルディスクを持ってボクは逃げたんだ。
今言われたらあれが夢じゃなかったと教えられるみたいで嫌だったからまだ遊ぶ時間じゃないのにボクは真夏の朝を一人で走って公園へと向かったんだ。
────
公園は誰もいなかった。
朝早くと言っても散歩やジョギングにしては遅く、遊ぶにしては早い中途半端な時間でいつも賑やかな公園はセミの鳴き声だけが響き渡っていた。
煌遊は、誰もいないことを知ると日陰を求めて歩くがその足は止まる。
彼の目の前にある影が蠢いていたのだ。
地面の色すら飲み込み黒一色となった影はまるで実態を得たかのように動き煌遊へと影を伸ばす。
煌遊は、逃げようとするがそのあまりにも衝撃的なことに腰を抜かしてしまい上手く逃げれずにいた。
「た、助けて……お父さん。お母さん……」
涙を目尻に浮かべる彼は、近づき足下まで移動してきた影を見てもうダメだと思い目を閉じた。
痛みが来ると思っていたためきゅっと目を閉じていたが、痛みどころか何も感じないので不思議に思いそっと目を開けた
「い、痛くない?……うわあああ!!」
目を開けると今度は、盛大に驚く声を上げてしまう。
目の前に真っ黒な人間が立っていたからだ。
それは、煌遊に触れることなくじぃーっと見ていると、腰を抜かしたさいに散らばったカードとデュエルディスクを興味深そうに見ていた。
「カード……デュエル……デュエル……」
その黒一色の人型は自分の左腕にデュエルディスクを作り上げると、どこからかカードの束、デッキを用意してそれをセッティングした。
「えっデュエル?……でもって起動してる!?それに電源も切れない」
煌遊はデュエルとぶつぶつ呟く声を聞くとデュエルをしたいと思うが、こんな得体の知れない物とデュエルなんてしたくないし、そもそも昨日の引っ越しの話で元から乗り気じゃないので断ろうとしていた。
そのためデュエルディスクを拾ってどうにかしようにもなぜか勝手に電源が入っていて、電源が切れないのでどうしようもないと覚悟を決めるように散らばったカードを拾っていた。
「はぁ……わかったよ。い、一回だけだからね」
煌遊はどんな人だってデュエルができるなら問題ないやと少し楽観的に考えなるようになれとやけくそになりながらデッキをセッティングした。
「決闘!!」
「決闘!!」
得体の知れない黒い物体VS齊廸 煌遊
大変お待たせしました
仕事等で上手く更新できずになってました
これからはしっかりと更新するように頑張りますのでよろしくお願いいたします