艦隊マニフェスティア ~大鳳総理とミッシェル・陸奥~ 作:鑪川 蚕
ちょっと書いてみたくなったので書いてみました。
設定の甘いとこがあると思いますが何卒温かい目で…。何卒…。
追記 少し修正しました
「んむっ……」
おもむろに眼を開くと、柔らかな光が大鳳を迎えた。
「……どこかしら、ここ?」
よくわからないまま頭を持ち上げ、辺りを見回すと、真っ白な世界が広がっていた。どこを向いても白一色。ただただ白い。白って何だっけとゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。
光の出所はわからないが昼間のように明るい。壁も床も天井も境目なく、どこが端なのか、下手をすれば上下左右もわからない。今このように座っていられることが不思議なくらいだ。服は所々破けてはいるが、肌にかすり傷一つない。試しに頬をつねってみたが痛い。夢ではないようだ。
何故こんなところにいるのか?
確か深海棲艦の強襲に遭い、陸奥と共に沈んでしまったはずだ。
タウイタウイから舞鶴への航行中、澄み渡った晴天が突然暗転し嵐と化した。何処からか現れたル級やヲ級などの敵艦が無数の稲光と轟音とともに私達に襲いかかって……。それ以降は気を失っていたのか記憶が無い。
必死に思い出そうとするが、空を掴むように手がかりが無い。
「何もわからない…。そういえば陸奥さんは?」
近くにいたのは陸奥だけだ。同じ状況にいる可能性が高い。恐る恐る立ち上がり、周囲を観察してもその姿は無い。それどころか人も物も何も無い。「陸奥さーーん!」と呼ぶが、その声は帰ることなく、どこかへ消え去った。
一歩一歩安全を確かめながら、しばらく歩き回るが何の変哲もない同じような場所が続くばかり。
「どうしたらいいの…」
風船がしぼむようにため息を吐き、座り込む。つい今朝、食パンをかじりながら議員の収賄容疑の記事を読んでいたのが嘘のようだ。目まぐるしく変わる眼前の出来事に理解できず、気が狂いそうになる。
「誰か!誰でもいいから答えて!」
どこかへ向けるつもりもなく、ただ叫んでみた。
予想通り何も返事がない。
「ははは…、このままかしら……」
もうお手上げだ。ここでただいたずらにに時を過ごすしかないのか。時という概念があるかどうかわからない空間のようだが。なんとなく見上げてみると、先ほどまでは無かったであろう黒い線を見つけた。
「……?何?」
よくよく見ると線だと思ったのは文字列だった。
「『トークルームの鍵を開放しました』…?」
トークルームとは?それよりも何故いきなり文字が現れたのか?疑問符で頭がいっぱいになっているとポキポキッと軽快な音がした。
『トークルームに【運営】さんが参加しました』
[この度は突然発生した原因不明の重大なバグがいくつかの世界に影響を及ぼし、作動不良や発注ミス、有料アイテム大量配布、練習潜水艦などの誤作動を引き起こしてしまいました。現在バグの原因を鋭意究明中です。ユーザの皆様に大変ご迷惑おかけし深くお詫び申し上げます。現在、各世界で緊急メンテナンスを行っており、復旧次第再作動させていただきます。今後はこのようなことが無いよう万全を期して運営を進めたいと考えております。ご不明な点がございましたら、サポートセンターまでご連絡ください。運営一同]
ご不明な点しかございません。
運営?世界?バグ?メンテナンス?有料アイテム?練習潜水艦?何を言っているのか想像もつかない用語で溢れかえっている。そして、「すみませーん」と呼び掛けても何の反応もない。どうしたらいいものか。とりあえず「サポートセンターさーん、お話ししたいのですがー!」と叫んでみる。
『トークルームに【サポートセンター】さんを招待しました』
『トークルームに【サポートセンター】さんが参加しました』
『通話モードに切り替えました』
叫んだ瞬間、先ほどの文章の下に3件続けて表示された。
[はい、サポートセンターです。ご用件をお伺いします]
「ええと、あの…」
30代くらいの女性の声で応答があった。まさかこんな方法で交信できるとは思ってもみなかったから尻込みしてしまう。
訊きたいことは星の数ほどあれど、何から訊けばよいものか。
[無いようであれば切らせていただきます]
「ちょ、ちょっと待ってください!」
[はい、いかがされましたか]
「え、えーと…。あの、陸奥さんの行方を知りませんか!?」
「承知いたしました。検索いたしますので少々お待ちください」
ふと出た質問がこれだったことに大鳳自身が驚くが、訊いてしまった以上返答を待つしかない。陸奥の行方さえ分かれば、そこに向かえば良いし、わからなければ…まあ、その時考えよう。
[検索結果が2件出ました。失礼ですが、そのムツさんは男性でしょうか?]
「いえ、女性ですが」
[ではこちらですね…。装備の種類は重装ですか?]
重装?重装備ということ?確かに戦艦の艤装は高い火力と厚い装甲のために重装備だが。
「はい、たぶんそうだと思います」
[わたくし、この世界に詳しくないのですが間違いないようですね]
詳しくないの!?、とツッコミたくなったが堪える。
[お調べしましたところ、お訊ねの方は既に元の世界へ戻られているようです]
元の世界へ戻るとは?死んだはずでは?と疑問が浮かぶものの、陸奥が無事なようでホッと一息つく。
そして「あなたは?」と訊かれ、そういえば言っていなかったと今さら気づいた。
「大鳳です」
[タイホウですね。それですとこちらですか…。ん?]
サポートセンターが何かに気づいたようだ。[2人いる…。どっちだろ…]と不安になりそうな発言をする。大鳳は何故か自分の胸元に視線を感じた。[こっちかな。うん、間違いない。なんか雰囲気違う気もするけど、絵柄がコロコロ変わるのはよくあることだし、服装も限定かなんかでしょう]とさらに不安になるような発言が続く。どういうことかと大鳳は問い詰めたかったが、矢継ぎ早に質問されるせいでなかなか訊けない。
[同じ場所へ転送を希望されますか]
「あ、はい」
[わかりました。では、転送を行います]
「え、もうですか?!」
[はい、何か?]
「いや、もうちょっと何かないのかなと」
[ああ…]
明らかに呆れているなとわかってしまうほどの「ああ…」だった。何か悪いことを言っただろうか。というか段々扱いが雑になっていないか。
[はい。こちらが今回の不備による詫びアイテムとなります。どーもすみませんでした]
ぺっ!と唾を吐いていそうな発言とともに大鳳の手元に紙幣に似た黄緑色の紙の束が現れた。驚きつつもその紙片をまじまじと見つめる。まったく見たことが無いデザインに聞いたこともない単語が並んでいた。
特に意味が分からない単語は
政剣マニフェスティア
政権ではなく政剣。誤字だろうか。いや、これで合っている、そんな気がする。ふと、もしかすると今までの会話が実は全くかみ合っておらず、とんでもない事態に発展しているのではないかと嫌な妄想を抱く。
「あの…」
[さっきから他からのコールが煩いのでちゃっちゃと送りますね。あ、バックアップ復元ということで、姿はこちらに記録されているものとなりますので]
「もしかしてなんですけど…!」
[てんそーー]
「ああああああああーーー!!!」
反論の余地すら与えられず、大鳳の身体はみるみるうちに白銀の粒子の塊へと姿を変え、ほんの一瞬で上空へと消え去った。