艦隊マニフェスティア ~大鳳総理とミッシェル・陸奥~ 作:鑪川 蚕
「だーかーらー!私は長門型戦艦2番艦の陸奥で!こっちが」
「大鳳型装甲空母の大鳳です」
「ですが…政霊名簿にご両名の名は無く…」
一旦言葉を切ると、シノブは政霊名簿を眺めながら陸奥と大鳳を順に指差し、
「ミッシェル・ムツさん、コーデリア・ヤマモトさんと登録されています…」
「だから誰よそれ!?まだミッシェル・ムツは私と名前が似ているから百歩譲るとしても、コーデリア・ヤマモトって大鳳要素ゼロじゃない?!」
「た、確かにそうなのですが…」
陸奥とシノブが言い争う……というより陸奥が一方的に詰め寄っているという方が正しい光景を大鳳は困惑しながら見ていた。シノブというらしい女性は美巨乳和風メイドというあざと可愛い出で立ちであるが、純真無垢で真面目な性格であると態度と言葉の節々から感じ取れた。その証拠に、シノブからすれば怪しく理解不能なはずの大鳳達の話を信じてくれている。
「おそらく
話し合いに参加せず、じっと考えていた鳥が未知の用語を口にした。太ったアヒルのような絶妙に可愛くない鳥は「ナイカク」というらしい。この世界について非常に詳しく、シノブ曰く信頼出来る存在だそうだ。絶妙に可愛くない(二回目)ため、そうは思えないが…。
「アマクダリ?」
「あるカンリョーのロッカーに放置されていた、古文書の解析報告書に今の状況とよく似た現象が多分書かれていたダス。確かそんな名前だったダス」
「重要書類がそんなところにあるのは大問題では…?」
「重要だけど自分たちの利益にならない書類はテキトーに扱われるダス。あるあるダス」
「ええ~…」
ドン引きする大鳳をよそにナイカクは説明を続ける。
「その書類によると、ごく稀に別政界の人間がこの政界に迷い混むらしいダス。そして規格外の能力と運を用いて特に努力することなく金、地位、名誉、女などあらゆるものを欲しいままにするダス」
「なるほど。つまりレベルMAXのスライムおっさんがスマホでオバりますが何か?ってことね」
「ちょっと何言ってるかわかんないです…」
手を打つ陸奥と対照的に大鳳はこめかみを押さえた。
話を大体理解したらしいシノブが興奮気味に訊ねる。
「ということはミッシェルさんとコーデリアさんは素晴らしい能力や運をお持ちなのですか!?」
「そのはずダス。そのはずダスが…」
「特にそれらしい能力は発現してませんね…。艤装があれば別でしょうが、ありませんし」
「運も…。アタシ達は不幸艦の中でも特に無いわね…」
そこにいる全員が肩を落とす。ナイカクの肩がどこにあるのかわからないが。
「そんな…。ヤトーを一気に押し返すチャンスだと思ったのですが」
「気持ちはわかるダス。でも、もしそうだとしても総理がいなければ変わりはないダス」
聞き覚えがあるような無いような単語が出たため陸奥は首を傾げた。
「ヤトウ?ソウリ?この世界にも…?でも何の関係が?それにアタシ達は今、せ…政霊っていうのになっているのよね。それもなんなの?」
「この政界について説明しとくダスか。後、キミ達の世界の様子も知っておきたいダス。何か解決の糸口が見つかるかもダス」
「でしたらお菓子でも食べながらお話ししましょうか。美味しいショートケーキがありますから」
「ショートケーキって、イチゴと生クリームがのったスポンジケーキですよね?」
ショートケーキの名の冠した得体の知れないものかもしれないため大鳳は一応訊ねておいた。元の世界にはカレーという名の劇薬が存在するのだ。その可能性は充分あり得る(ヒエー)
「はい、その通りです。食べ物に関してはそちらの世界と同じなのかもしれませんね。何故かいっぱい国庫にあったので思う存分食べてください。……ナイカク?どこに行くのですか?」
ショートケーキという単語が出た瞬間にナイカクは羽毛を突如一斉に逆立たせながら(キモい)、そっとこの場から立ち去ろうとしていた。
「ん?なんダスか??ボクはいつも通りダスよ???」
「そちらに談話室はありませんが」
「ボクはいつも清廉潔白ダス。この真っ白な羽毛に誓うダス」
「何も疑ってなんかいませんけれど」
「さ、さっさとダンゴウ……もとい談話室に向かうダスよ!」
受け答えが明らかにおかしいのだが、ナイカクの勢いに押され特に触れられないまま彼女達は談話室へと歩き出すのだった