艦隊マニフェスティア ~大鳳総理とミッシェル・陸奥~   作:鑪川 蚕

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歯車に乗っていない設定です


5話 政剣乱舞①

 

追い討ちをかけたアリシアだが、すんでのところで避けられ、ヤトーに態勢を整い戻されてしてしまう。

そこから始まる二人の一騎討ち。

まさしく圧巻と言うべき光景であった。

ヤトーが力任せに攻めれば、アリシアはかかるエネルギー全てを重心と剣で虚空へと受け流す。隙をついてアリシアが斬りかかれば、厚い装甲を盾にヤトーは弾き返す。

 

 硬さと速さの一進一退の攻防。手出しするものはいない。つい魅入られてしまうのだ。

 

 

 

 彼女が剣を振る度に揺れる、おっきいおっぱいに

 

 

 

 剣を構えるだけで、ぷるるん

 

 振りかぶれば、ぶるんぶるん

 

 左右にステップを踏みながら、ばいんぼいん

 

 苦悶の表情を浮かべて、ぷよぷよん

 

 大玉スイカと見紛うほどたわわに実りに実った爆弾おっぱいが、観る者全ての視覚を弾けさせる。

 大いなる山の頂上、底が見えない渓谷の奥深く。若者はそこに何があるのか日々夢想し、滾る情熱を必死に抑え込みながら眠れぬ夜を過ごしてきた。そんな冒険者達に目の前に広がるエデンの光景はあまりに刺激的過ぎたようだ。「うっ…!」「あぁっ…!」と断末魔を叫びながら、前のめりにうずくまっていく。

 長き年月さ迷い続けた結果、あれほど望んでいた宝物は所詮霞のごとき夢幻だったのだと悟った老賢者達も、「はぅ…!」「おほぉっ……!」とやっぱり前のめりに倒れた。ある者など心臓あたりとヘソの下あたりを同時に手を当て、小刻みに震えている。

 

 「みんな!大丈夫?!いきなりどうしたの!?」 

 

 次々と倒れだしたコクミン達を心配し、リューナは混乱しながら駆け寄った。

 

 「くっ……限界だ……もう俺は…………ん??」

 「あれ?なぜか苦しくなくなったぞ?」

 「本当だ!リューナを見たら、一気に熱が引いた!」

 「さてさて、ヤトーはどうなっておるかの……ウッ…!!」

 「バカヤロー、じいさん!あっち見たら死ぬぞ!リューナでも見とけ!」

 

 パパパパパパパパパパン

 

 なんかムカついたから発砲した。悔いは無い。

 怪我人がいないからセーフ。

 

 「一般人に何すんだよ!」

 「これは言論の封殺だ!謝れ!」

 「素直に射罪です!」

 「ちゃんと水着で謝るんだぞ!」

 「は?エプロンでしょ」

 「お前とは旨い酒が呑めそうだ」

 

 口々に文句を声高に叫ぶ男達、素晴らしい団結力である。批判に耳を傾けず、リューナは手近な中年男へ、玉砕寸前の薄ら禿げ頭へと銃口を向けた。

 

 タッーン!タッーン!

 ヒラリヒラリと舞い上がる色素の薄い髪の毛十数本。

 死にかけの髪に介錯してあげただけだからセーフ。

泣きながら頭を押さえるオッサンを捨て置き、可憐な独裁者は光が消えた瞳で劇鉄をカチカチと弄ぶ。

 

 「なんじゃあ?おまさんらの頭、真っ赤なお日さまにしよかい?」

 

 「「「「「間に合ってます!!!」」」」」

 

 瞬時にコクミン全員は黒煙が昇っていない、被害の少ない方へと逃げ去っていった。その様子を見届け、リューナが安堵のため息を吐くと

 

 「避難誘導ご苦労様。正直足手まといよね」

 

 ポンッと肩を叩かれ、耳元で労いの言葉をかけられた。かかる吐息が妙にくすぐったく、にやけそうになるが、隠れたトゲが気に入らない。

 

 「足手まといだからしたわけじゃ…………えっ?」

 

 背後にもどこにも誰もいなかった。背後を取られていた事実にぞくりと肌が粟立つ。政霊である彼女が気づかないほどとなれば相当な手練れだ。しかし、政霊の第六感が告げる。

 

 「敵じゃない……?」

 

 悩んでいても仕方がない。今やるべきことを考えて動けと、リューナは地を蹴った。

斜め後ろでコトッと小石が転がったが誰も知り得ないことだ。

 

 

 

 

 

 

 

優美な調度品に囲まれた15畳ほどの洋室。空中に映し出された魔法のスクリーンの前で鳥は醜い顔を更に醜く歪ませた。

 

「まだ劣勢ダスな。あの二人の片手剣では決定打に欠けるダス。……あんなことが無ければ今頃はもっと楽に…」

 

 鳥の隣で同じ画面を祈るように見つめていた少女は、何かを感じとったのか右手で額を押さえ、目を瞑る。

 

「総理より入電です。『想定外もあったが予定通り。作戦は続行する』と」

「口ではなんとも言えるダス」

 

 シノブの報せをナイカクは吐き捨てる。

 

 「私は信じます」

 「………フンッ」

 

純真な彼女の瞳に気圧されたナイカクは魔法液晶を見つめ直した。

 街中にいるはずの3人の姿を探しながら。

 

 

 

 

 

 「ごめん!遅くなった!」

 

 拳銃で援護をしていたリューナは、援護により一旦後方へと退避できたアリシアと肩を並べた。

 

「早いくらいですよ。もっとゆっくりしても良かったのに」

 

 そう嘯く彼女の胸元を見やると、上気し赤みがかった双丘が汗で艶めき色っぽい。こんな状況だがリューナはゴクリと息を呑んだ。そして、彼女は自分の足元へと視線を送り、

 

 「もうちょっと欲しいな…」

 

 と、決して小さくは無い胸にため息をかけた。

 

 「なぁーにゆっくりしてやがんだよ!!」

 

 がなり声と共に迫り来る巨大な鈍器。彼女達は後ろに2,3歩引いてそれを軽やかにかわした。その足で先回りして、ヤトーの行き先を制する。「チッ」と鬱陶しげにヤトーは嘴を鳴らす。

この敵はもう逃げる方針へと転換している。もはや無敵と化した政霊2人を相手するほどの理由も利点も無い。だから見逃しても構わない、という訳でもない。ヤトーの今後の動向、コッカ防衛網の弱点発見などこのヤトーから得られるだろう情報は価値が高いのだ。

 それに、許せない。

 

 だが、状況は膠着している。

 リューナの銃剣とアリシアの片手剣は素早い攻撃が繰り出せる点が長所であり、高速で動き、耐久が低いヤトーには抜群の撃退性能を持つ。反対に、のろくとも耐久が非常に高いコイツには大いに不利だと言う他ない。踏みつけられないゾウと歯が刺さらないアリのどちらが勝つかなど、話し合うのが無駄なくらい平行線だ。

 

 救いはある。

 先ほどアリシアが耳打ちしてきたのだ。「このまま足止めし続けましょう。もうしばらくで長刀を携えた仲間が到着するはずです」、と。なかなかの使い手です、とも。単純な話だが、武器がデカいほど一撃が重い。なかなかの破壊力が期待できるのではないだろうか。

 

それでもリューナの顔は晴れない。

 最悪なケースがある。不安と疲労で脈打つ心音に呼応するように市街地の爆音が響く。その音が心なしか近づいている気さえする。

 

 「海老男サマ~!海老男サマァ!」

 

 右側から聞こえる情けなくしゃがれた声。それも複数。単眼の「目玉」、ドぎついピンクの「守る貝」、気味の悪い提灯鮟鱇のような見た目の「アングラー」、けばだった微毛がざわめく「膿蜘蛛」。

 最悪なケースだ。

 リューナは下唇を噛む。雑魚ヤトーの大群のお出ましだ。

 

「なァにしてんだよォォォォ!!!さっさとこのオンナどもの相手をしろ!!!ボクがたった一人で頑張っている間のんびりしやがってヨォ!!」

 

 海老男という名らしい大型ヤトーは形勢有利に傾いていると知ると、大上段に部下のヤトー達を叱りつける。

 

「シ、シカシ……。コイツはヒトリでアソビタイからアッチヘイケとオッシャッタデハアリッ」

 

 リューナも確かに聴いた命令だ。従ったヤトー達の一匹が真っ当な理由を述べたが、プチリと種無し葡萄のように潰され弾けた。

 

 

「ンなもんッ、ケースバイケースだろォ!??イチから言わねェとわかんねェのかよォ!?クソがクソがクソがアァァァ!!!」

 

 執拗に叩かれる、かつて部下がいた場所。放射状に飛び散った青緑色の体液が地面に染み込んで、奇怪な紋様が浮かび上がっていた。あまりにも惨い光景に政霊も他のヤトー達も黙りこくり身動きが出来ない。

 

「サァ、イッてコイ、バカどもが!!シヌ気でヤレ!!!」 

 

 口汚く部下の尻に火を点ける。自分自身のみが逃げ切るために。皮肉にも今が一番熱心に指示を出しているのではないだろうか。

 何か言いたげに躊躇するものが何匹かいたが、暴力と数で麻痺した大多数は促されるままに奇声を発し、こちらへと津波のように突っ込んできた。政霊達は疲労に満ちた体を奮い立たせ、臨戦態勢を整える

 

 「さすがに同情するよ。情状酌量はしないけれど」

 「その通り。速やかに片付け、親玉を討ち取らなければ」

 「とはいえ、この数はちょっとしんどいかな?」

 「泣きごとを言っても敵の数は減りませんよ。本気でいきます!攻速の祝福を我らに与えん!『ル・ガーシア』!!」

 

 片手剣『君臨の剣(トカゲ・ノ・オッポギリ)』の柄を胸元に構え強化呪文(エンチャントスペル)を唱えると、刀身を軸にそよ風が吹き集ってくる。同じ事がリューナの銃剣にも起きる。

 

 「風の力で武器を軽くしました!威力は変わらず一手一手が速くなります。気休め程度ですが無いよりはマシかと」

 

 「いえ、丁度良かったわ」

 

 「え?」

 

 聞き覚えない声にアリシアはたじろぐ。

 また、だ。

 リューナは愕然として、思わず辺りを見回す。すると、彼女達とヤトー達の間で微かに風の軌跡が煌めいていた。しかし、そこに何かがあるとは確信が持てない。存在を認識しようとする度に、その意志が抜け落ちていく感覚だ。ヤトー達も存在に気づく様子は無く、ひたすらに群れとなり猛進する。

 ヤトーの群れで、その光が掻き消えた時、確かに声を聴いた。

 

 「刈り入れ時ね」

 

 『雑 踏 闊 歩(ハイドアンドシーク)』解除 

 

 何故気づかなかっただろう。そう考えてしまう程、当たり前に彼女は立っていた。濃紺の禍々しいオーラが立ちこめる政剣を携え。

 

「初めまして、ムツよ。よろしくね」

 

 それは小柄な彼女よりも大きな剃刀であった。それをゆっくりと構えあげ、幼な顔の美少女は妖しく微笑んだ。

 

 「もう二度と会わないけれど」

 

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