提督の余命は後...   作:まのめ

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前回から考えたらものすごい早さで書いた今回の話

提督にはもう少し頑張ってもらいましょう


それでは本編


9月 訪れる平和と静寂

目が覚めた、見知らぬ天井…と言いたいところだがよく知る天井だった。

体が思うように動かない、無理やり体を起こし、目に映ったのはギプスと包帯で固められた右腕と傍で寝ていた大淀が居るのがわかる。

 

今まで看病してくれていたのだろうか、彼女が目覚めたらお礼を言わないとな……、しかし外は明るいのにやけに静かだな、駆逐艦逹の声が聞こえていてもいいと思うのだが、誰も外に出ていないのか?

 

しかしそれよりも私が生きているということは和平が成立したのか、それとも命からがら逃げられてこれたのか、私が気絶している間に何が起こったのか知りたい。

すぐ近くに大淀が居るが私の看病で疲れているだろうからあまり無茶はさせたくないし、ゆっくりと寝かせてあげたい。

 

誰か他に人を呼べるようなものがないか探していると左の扉が開き誰かが入ってくる。

 

ゆっくりと入って来たのは明石だった、しかしノックもなしに入ってくるとは…まったく、明石らしいといえば明石らしいが。

 

目があって声をかけようとしたが驚いた様子で勢いよく戸を閉めて何処かへ行ってしまっ………た?

 

何故、戸を閉めた音が聞こえなかった…?

 

そうだ、勢いよく閉めたはずだ、見て分かるほど強く閉めていたはずだが私には何も聞こえなかった…。

そういえばまだ夏だとというのに蝉の鳴き声も聞こえないじゃないか、この時期は元気いっぱいの蝉の鳴き声が聞こえてくるはずなのに、何故?

 

考えてもわからない、だがもしそうなら…

 

「 」

 

やはり自分が口にした言葉が自分で聞き取れない、確信した、私は聴覚を失ってしまったようだ。

 

これじゃ会話が出来ないじゃないか、せっかく対話による和平を結ぶはずだったのに、話せなくなったならもう私は提督を辞めなければならなくなる。

 

こんなことになるんだったら手話くらい覚えておけば良かったかな、だが聴覚が無くなったからといって今さら慌てる事もないが………。もう皆の元気な声を聞くことが出来ないのが残念で仕方ない。

 

そうこう考えてるうちにまた新たな入室者が現れた。

 

扉から飛び込んで来たのは金剛だった。

 

今まで見たこともないような嬉しそうな顔をしている、しかし速かったな、明石が部屋を出てからまだ2分と経っていなかったが私が起きたという事を明石から聞きつけ急いで来たのだろう、顔に汗を流し肩が上下しているから分かる。

 

まったく大淀が寝ているのに慌ただしいな、起きたらどうするんだ、疲れているだろうにゆっくり寝かせてやろうよ。…と思ったところで私の声は届かないか…、早速弊害が出たな。

 

しかしホントに来るのが速かったな、こういうときはだいたい島風が一番なんだが…、と思っていたらまたドアが開く。

今度は島風だった、自分が一番じゃないことが驚きの様子だ、不満そうな顔をしている。私は島風に対して手招きをしぴょこぴょこ近づいてきた彼女の頭を撫でてやる、今私の出来ることはこうやって慰めるしかないからな。

 

島風はご満悦のようだが今度は金剛が不満そうな顔をしている、大人げないなぁ。

金剛も呼んで彼女の頭も撫でてやる、私は怪我人だぞ、私に気を使わせてどうする。

 

二人で何か話しているようだが残念ながら私には聞こえない、どんな会話をしてるのかな、口の動きだけじゃさすがにわからない。

 

すると島風が思い出したように部屋を出る、金剛はそれを見送り私を見てにこにこしている。私が起きたのがよほど嬉しかったのだろう、私も会話してやりたいがいかんせん音が拾えないから会話が出来ない。

 

しかし金剛の様子を見ていると私に話しかけてくる様子がまったくない、私が話せなくなっている、耳が聞こえなくなっている事をすでに知っていたのだろうか。

 

 

島風が部屋を出てから数分後長門と陸奥、赤城と加賀が部屋に入ってきた。そのタイミングで大淀も起き、私が起きていたことに驚いたようだ。

 

普段見せない姿を見られて顔を赤くしている。

 

程なくして私の姿を見て安心したのか長門と陸奥が退室し入れ替わりで島風が帰って来た。

手には大量のコピー紙と下敷き、マジックペンを持っていた。

 

私はそれを受け取り島風はまた元気に退室していった。

 

なるほど筆談か、その手があったか。

 

私は紙とペンを取り慣れない左手で文字を書く。

 

《あのあとどうなった?》

 

つたなく汚い字ではあるがまぁ読めるだろう、大淀がペンを持ち問いに答える。

 

《作戦は成功です、誰一人失うこと無く深海棲艦側と和平を結ぶことが出来ました。》

 

《そして提督、今回の提督の怪我は私のせいです、申し訳ありませんでした。》

 

私の体なんて気にしなくていいのに、しかしそうか、誰も失うこと無く済んだのか。そうだ電は、電はどうしたんだ?

 

《わたしのけがのことはだいじょうぶきにしないでくれ、わたしがいきているならそれでいい、いのちあってこそだ。》

 

《それより、いなづまはどうした?かのじょはぶじか?》

 

《電ちゃんは無事修復も済み、他の子達と遊べています、すっかり元気になりました。出撃も演習も遠征も無くなったので今は勉学に励んでいます。》

 

《海防艦の子達も勉学に励んでいますよ。》

 

そっか、ホントに全部終わったんだな。

駆逐艦達や海防艦達も勉強しているのか…、なら何故島風は私のお見舞いに来たんだ?まさか勝手に抜け出したんじゃないだろうか、まったく…。

 

《みんながいきていてくれてよかった、わたしもいきてかえれてよかった、みんなとのやくそくをまもることができてよかった。》

 

《あらためて、おつかれさま》

 

大淀が目に涙を浮かべながらペンを握る。

最後まで泣いてばっかりだったな、大淀。

 

《提督もお疲れさまでした、怪我の回復心よりお祈りしております。》

 

「 」

 

ありがとう、お疲れ様、はっきりと言葉になったか分からないが音程も発音も聞き取れないけれど自分の言葉で私は伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

《ところでわたしはなんにちねていた?》

 

《9日程です。》

 

 

《それと提督が目覚めたら会ってもらう人物が居ます。》

 

私に会ってもらう人?

 

《だれだ?》

 

《島田暮一元帥です。提督が目覚めたらそちらに向かうと連絡が入っています。》

 

元帥が直々に私に用件があるとは、今回の作戦のことか。まぁそうだよな、歴史的快挙を成し遂げたのだから。

 

《わかった、いつおみえになる》

 

《今から連絡をいれても約5日程後です。》

 

5日か、怪我の完治は見込めなそうだな。みすぼらしい姿で会うのは失礼だろうが今回ばかりは仕方ないだろう、どんなことを聞かれるのか不安だな。

 

《わかった、いますぐにれんらくをいれてじゅんびにかかろう。》

 

《まかせたぞ、おおよど。》

 

《承知しました、お任せください。》

 

大淀が退室し赤城と加賀が残る。

 

《なにかつたえたいことがあるのか?》

 

私は二人に質問する、すると加賀がペンを取り

 

《提督はこのまま提督を続けたいと思っていますか?》

 

…私の体を労っての質問だろうがどういう意図があるのかわからないな。こんな体でも続けるか否か、勿論私は続けるつもりでいる、皆の新しい門出を新しい時代を見ずしてこの職を降りるつもりはない。

 

《つづけるよ、だれがなんといおうとね。》

 

加賀は安堵した表情で赤城は嬉しそうな表情でこちらをみる。

 

《よかった。》

 

たった一言だけだったが彼女の気持ちが込められている、まだ私は提督でいていいようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話が終わり赤城と加賀が退室する

 

病室に一人

 

独り

 

静かな世界のなかで私はベッドに横たわる

 

紙とペンを机におき

 

ベッドに沈む感覚を感じながら眠りにつく………

 

 

 

 

 

目を閉じ、静寂と闇のなかに意識を落とす

 

すぐに提督は静かな眠りについた…

 

 

 




艦娘同士の会話は脳内保管で

余力があれば番外編で出します
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