提督の余命は後...   作:まのめ

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安定の亀更新ですね、はい(反省してない)

後もう少しです、頑張っていきましょう。


9月追記 元帥の訪問

左手で文字を書くのにも慣れ難しい漢字以外なら難なく書くことが出来るようになった、だがそれでもお世辞にも綺麗とはいえないような字だ。

 

鼓膜の方も1ヶ月もすれば自然治癒でなんとかなるとのこと、まだ耳鳴りや物音が聞こえづらいのは変わりないが死ぬ前に治るのであれば不幸中の幸いだな。

 

 

 

 

 

 

今日は元帥直々に話があるということで本部からわざわざこちらに来られる、皆に話は行き渡ってるはずだがうちの娘達が元帥に対して粗相を起こさないか心配である。

 

失礼等無いようにしっかりとしてもらいたい。

 

予定では昼過ぎには来られる、大淀が門の前で元帥の到着を待っている。私はまだ体の自由が利かないので病室のベッドの上だ、まだ車椅子が無いと移動が出来ないし押してもらわないといけない、自分一人じゃ移動も儘ならない。

 

そうやって窓の外を眺めていると一台の車が到着した、元帥の到着だ。

 

大淀が丁重に案内をしている、私の方も心の準備をしなくてはな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、初めましてだね。笹木原大将。」

 

元帥が何か話しかけてくれたが生憎私には聞こえなかった、気を利かせて大淀が紙とペンを元帥に渡し説明している。

 

「おぉ、すまなかった、配慮に欠けたな。」

 

「そういえば耳が聞こえなくなっていたのだったな、すまない。」

 

またなにかしら呟いたところで元帥はペンを持ち紙に書いていく。

 

『初めまして笹木原大将、今戦い、作戦での君の活躍よく聞いているよ。ご苦労だった。』

 

元帥直々の労いの言葉に私は目頭が熱くなる。

 

溢れようとしてくる涙をこらえ返事をする。

 

『ありがとうございます、この度の私の無茶を通していただき感謝しています。』

 

私のあの作戦を通してもらった、だから今の現実がある。

 

 

そして元帥は続ける。

 

『初めは私も馬鹿げた作戦だなと、でもまぁやるだけやってみろ、と思って承諾したがまさかやりとげて帰ってくるとは誰も思ってなかったよ。』

 

『自らが先頭に立ち、深海棲艦と向き合い対話し、平和的な方法で終戦へと導いた君のその勇姿はこの先誰もが忘れることはないだろう。』

 

『だから私は君の考えを尊重し君に協力しようと思った。あの作戦が無謀だと思っていた自分が恥ずかしくてね、彼女達の居住区も君の考えにそって各鎮守府で建ててもらっている。』

 

『君がこの世界に残したものは非常に大きい、君のおかげでこの世界はまた平和への道を進むことができた。』

 

『一人の人間として、君に礼を言いたい。ありがとう。』

 

元帥は座りながら両手を両の膝に置き深々と頭を下げる、床に小さな水滴が落ちる。

 

元帥は泣いていた、肩を震わせながら泣いていた。

男泣きという奴だ、そんな元帥を見て私もついに涙がこぼれ落ちた。

 

「これでようやく仲間が死ぬことはなくなる……、先立つ戦友を見送らなくてすむ。」

 

「君の、君達のおかげで私たちは救われた…、ありがとう……。」

 

私の聞こえないはずの耳からはっきりと元帥の口から「ありがとう」と言う言葉が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『年甲斐もなく情けないところを見せてしまったね、そろそろ私も帰るとするよ。』

 

『また何か困ったことがあればなんでもいってくれ、協力する。』

 

『ありがとうございます、また何かあれば連絡いたします。』

 

「うむ、では帰るとするか。」

 

大淀が元帥を連れて部屋を出る、また部屋に一人となった私は元帥が残していった紙を拾い読み直す。

 

 

そして私は自分がしてきたことが間違いではなかったと確信する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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