提督の余命は後...   作:まのめ

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それでは本編



5月 震える手

5月3日

 

 

 

 

 

特に何も無いまま5月まで来てしまった。

 

案外治っているんじゃないかと疑ってしまう、まぁそれはないが。

だがもしかしたら死期が伸びたのかも知れないな、そうなら少し嬉しい。

 

春の作戦攻略は難なく無事皆欠けることなく生還してくれた。今回も熾烈で危ない場面が多々あったがみんなのお陰で無事に作戦を成功させ、新たな艦娘を迎え入れることができた。

 

着任してそうそう私のことを話し、気を使わせてしまうのが心苦しいが、事情が事情だからな、仕方のないことだ。

 

私達の鎮守府は、よりいっそう賑やかになりそうだ。

 

 

 

それはそうと、最近右手に力が入らなくなってきた。

握力が低下しているのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

5月6日

 

 

 

 

 

今日は祝勝会と歓迎会を行った。

 

一つの大きな作戦を成功させ、また新たに仲間として加わったもの達のこれからの親睦も兼ねて、鎮守府総出のお祝いだ。

 

始まりの乾杯の挨拶を終え、それぞれグループごとに飲み食いしたりふらふらほっつき歩いて色んな人に絡んだりしているものと、様々だった。

 

こうして見てみると、元は敵同士だったもの達や書類や歴史の中でしか知らなかった彼女達をこうして出会い見ることができ、その上共に戦っていると考えると不思議な気分になる。

 

もしかしたら深海棲艦とも和解が出来るのではないかと考えてしまう、どうなんだろうな。

 

深海棲艦の中に言葉を発するものがいる。もし深海棲艦と対話が成立すればお互いの意思疎通が可能になるのではないか?それが可能ならば平和への第一歩じゃないか。試す価値はありそうだが、いかんせん危険が伴う、難しいことだろう。

 

このことは私のなかで留めておこう。

 

最終の策として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月14日

 

 

 

 

 

 

右手に異変が起きた。

 

突然震えだし痺れが襲った、力は入らず物を掴むのが困難となった。恐れていたことが今日この日より始まった、覚悟はしていたがやはり怖いな、死期が近づいていることを実感するのは。

利き腕も使い物にならない、これじゃ文字も書けない。

この日記も今は左手でパソコンを打って印刷し、日記帳に張り付けている。

 

今日からこのスタイルだな。

 

仕事にも支障が出てきてしまったな、対策を考えなければ。

 

 

 

 

 

 

 

5月19日

 

 

 

 

皆が私の右手のことで心配してくれた、公表するか迷ったがいつかはばれる、皆に伝えるなら今しかないとそう思った。

 

自分の腕がまるで自分の腕じゃないようだ。何か重りをつけてるような、そんな感覚がする。

秘書艦も一人から二人に増やし私ができなくなった執筆による作業を代筆で行っている。もちろん私も目を通し確認してある、本当に皆に助けられてばかりだな。みんなに何かしてあげたいな。

 

特に大淀には助けられてばっかりだ、感謝してもしきれない。

大淀には本当に負担をかけてばっかりだな私は。

 

不甲斐ない自分に腹が立つ

 

何も出来ない自分に腹が立つ

 

彼女達になにもしてあげれない自分に腹が立つ

 

 

まだ動く体で、まだできることをやろう

そうしよう

 

 

 

 

 

 

 

5月26日

 

 

 

 

ついに私の右手は機能しなくなった、このままいくと半身不随は免れないかもしれない。それでもできることをやっていくだけだ、今まで通りにはいかなくても、私には関係ない。

 

私には彼女達がついている、気の迷いなんて起こさない、自決なんてもっての他だ。勝手に置いていくことはしない、たくさんの思いでと私の生きた証を残して死ぬ。

 

それまでは死んでも死にきれないな。

 

皆が団結し、最強の艦隊を作り上げこの終わりない戦いを、争いを終わらせてやる。

 

私が死ぬまでにどれだけのことができるかわからないが、できることをできるだけやってやる。

 

それが私がこれから生きる道だ。

 

少しでも早くこの戦いを終わらせるのが今の私の

 

 

 

役目だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




提督の寿命が迫っていると実感した

彼の右手が機能しなくなり、悲しいという感情より始まったのだと言う覚悟が強くなった。それは私だけではなくきっと他の子達もそうでしょう。

皆が提督の事を想い、今一つになろうとしている。艦隊の士気は下がるどころか上がっている、他の艦隊との演習でいい結果を残すようにっなのは皆が力を合わせている証拠だろう。


だが提督の日記に気にることが描いてあった


それは深海棲艦との対話での終結だった



確かに深海棲艦の中に言葉を理解し話すことができるものもいる。しかしそれは怨念が募った負の感情から来る私怨の言葉とされてきた、所謂リピート再生みたいなものだと思われたいた。

でも提督はそれを彼女達自身が自分の意思で話していると思っているようだ。もしそうだとしたら、対話は成立し誰ももう傷つくことがなくなるのではないだろうか。失敗すれば命はないが成功すれば平和は訪れる、この提督の考えはきっと間違っていない。

でもこのことはきっと大本営も知っているはず


何か隠しているのだろうか




深く考えすぎるのは私の悪い癖だ、しかしもし提督が深海棲艦との対話を望んだのなら止めはしない。


全力でサポートするだけです。







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