提督の余命は後...   作:まのめ

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ここから物語語りが急速に動き出す


ラストまで突っ走るのでよろしくです!


6月 「お前に、そしてお前達に…託す」

6月3日

 

 

 

右腕が動かなくなってからもう何日も過ぎた

左手だけの生活にも慣れ、今では左手でも箸を持てるようになった。人間死ぬ気にならばある程度何でもできるんだなと実感した。

 

 

 

ふと今この鎮守府にいる皆のことがデータ化してあるファイルを見た。私は机のうえにある艦娘のデータファイルを手に取りそれを見る、そこにはこの鎮守府にいる艦娘達の細かなデータが載っている。もちろん妖精さん達の練度も載っている。このデータファイルは全部で5冊あり、全部で約130名ほどの艦娘のデータと各妖精さん達のデータが記載されている。

 

これを見るのはもちろん初めてではない、そもそもこれを作ったのは私なのだから。

 

艦娘が新たに着任した時や新しく改装したとき、妖精さん達なら練度が上がるたびに、そして成長につれて彼女らの練度の上昇により新しいデータに変えるときなんかでよく見ている。

 

新米の頃から作ってきたこのファイルがまさかこんなにも増えるなんて思ってもいなかったな、たったの数年でこの鎮守府も大きくなったものだ。

 

このファイルひとつでみんなの特徴が一発でわかる、このファイルのお陰で作戦もたてやすいし便利な物だ。

 

私がここを離れることになったらこのファイルは次の者に託そう。

 

 

きっと役に立つはずだ

 

 

 

 

 

 

 

6月7日

 

 

 

 

 

今日は台風が来た、鎮守府自体に影響はないが海は大荒れ、波は高く皆を海には出せない状況になっている。なので今皆は鎮守府に待機してもらっている、だがしかしこの台風で深海棲艦達が警備が薄くなった海域を進みこちらに向かってくるのではなかろうか…と…。

 

去年の梅雨時期にもこういった台風の日に深海棲艦達がこちらに近づいていたという報告があって危険を承知で出撃させたことがある…、あのときは本当にすまなかったと思っている。しかしこうするしかなかったのだ、すまない。

 

今年は気を付けておかねばならない、でないと去年の二の舞になってしまう。

 

だから私は手を打った、警戒に潜水艦達を当てた

 

こんな嵐のなかだが潜水艦達に鎮守府付近の警戒に当たってもらった、本当に申し訳ないな。

みんな快く行ってくれたみたいだか本当に心が痛む、彼女達には支えられてばっかだな…、イムヤなんて「今動けるのは私たちしか居ないんだからこれくらいどうってことないわよ!」と言って笑顔で答えてくれた。

私はそれを聞いて泣きそうになったのは内緒だ

 

無事に帰ってきてくれ

 

 

 

 

6月8日

 

 

 

 

潜水艦達の報告でわかったことは2つあった

 

1つ目は鎮守府近海に深海棲艦が見あたらない

 

2つ目は憶測だがもしかしたら戦力を蓄えるために集結しつつあるのでは、と言うことだ。

 

おかしい、普段なら近海にも駆逐艦くらいはいるはずなのだが昨日の台風の中行かせた潜水艦達の報告ではそれこそ敵影も何も見あたらなかったとのこと…だが少し進んだ海域には無数の敵の反応があったとのこと。

 

おびただしい数の敵が確認できたらしく彼女達でもどうしようもなかったと言っていた。見たことのないような数見つからないように帰ってきただけでも私は嬉しかった。よくぞ無事に戻ってきたと彼女達の目の前で年甲斐もなく泣いてしまった、心配だったんだこんな私を許してくれ。

 

報告があった距離から考えて深海棲艦達はいつでも攻撃できる態勢を整えていると見て間違いないだろう、近すぎず遠すぎない絶妙なところにいる。もしかして場所を変えず留まり続けるのならこちらから仕掛けるのもありだが果たして被害はどうなるか、数では圧倒的に負けているしこちらには練度がまだまだ足りない艦娘だっている。

 

作戦を考える、最善の道を考える、被害が少なく済む方法を考える。

 

 

 

まぁ私は、私が思う最善の道を行くまでだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月19日

 

 

 

今日大淀が一人で泣いているところを見てしまった

 

場所は執務室

 

どうしていいかわからなかった

 

慰めの言葉も気の利いた言葉も出なかった

 

ただ、泣く彼女を抱き寄せることしか出来なかった

 

こういう時はどうしたらいいのか正解が私にはわからない

 

だが理由は分かった、彼女は、大淀は私の日記を見たのだ。

あの日以来毎日欠かさず記されている日記を、いつから日記の存在を知ったのかは分からないが参ったな、きちんと直しておくべきだった。机の上においたまんまにしていたな、それで大淀が見てしまったのだな…私の失態だ。

 

 

ようやく落ち着いたので彼女と話した

 

日記を通して私の考えを読み説いた彼女の意見は私の意見に賛成してくれることだった、協力してくれると言うことだ。嬉しかった、嬉しかったんだ。一人で悩んであれこれして、また自分のなかで私は抱え込んでいた、それを今日また改めて思いしった。

 

もう少し頼っていいだな、もう一人で背負い込まなくていいだよな、そうだ…私にはこんなにも優秀な部下ばかりいるじゃないか。何をしてたんだろうな今まで私は、自分から突っぱねるようなことばかりして誰の力も借りようとせず結局私はあの時から何一つ変わっていないじゃないか。

 

 

もう私は一人じゃない……、一人じゃないんだ。

 

 

 

 

 

 

6月27日

 

 

 

先日皆を集め協力を呼び掛けたが誰も反対者はおらず、皆賛同してくれるようだった。そんな中人一倍張り切っていたのは電だ。

 

敵でも助けたい…、初めて会ったときから彼女がずっと言っていること。それは今でも変わらず私の意向を聞いたとき真っ先に声を上げ賛同してくれた。彼女の第二次世界大戦時の記憶が、駆逐艦電の乗組員やその艦長達の強い意志が彼女を造り上げているとしたら納得がいくな。

 

 

 

私達の単独の、独断の作戦を考える。

 

皆でやる最後の作戦、私の最後の作戦、私の最後の作戦指揮。

 

皆が意見をだしあいまとめ、事前情報も何もない私達だけが行う失敗が許されない一発本番の作戦。

そして何より

 

 

彼女達と初めて立てた作戦

 

 

 

 

失敗なんぞしてたまるか、これからの平和のために俺が人柱になるんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「皆、よく私のもとに集まってくれたこと感謝する。そして今回の作戦に参加してくれること、賛同してくれたことに感謝する。」

私は一人一人の顔を見るためぐるっと周囲を見やる、皆私に注目し静かに静聴している。

「今回の作戦は今まで以上に厳しいものとなる、他からの支援もなく事前情報は無くただただ強大な敵に我々だけが対抗する作戦となる。」

「失敗すれば死人が出るのも免れない、それに私も死ぬだろう…。」

もう一度皆を見、中には目に涙を溜めているものがいた。
自分の感情を圧し殺して私の話を聞いてくれている、ホントに私は恵まれているな。
私はこんなにも皆に思われている、それを再確認できてよかった。

「もし私に何かあったら大淀に一任している。私の代行者は大淀だ、だから……。」

「大淀…皆………、お前に、そしてお前達に…託す。」


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