提督の余命は後...   作:まのめ

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物語は最終局面へ

投稿が遅れて申し訳ございません。これから頑張っていくのでどうか最後まで見届けて下さい



本編


8月 提督の猛火、そして終戦へ…… 前編

「いよいよ今日、歴史的作戦の出撃当日となる。」

 

グラウンドに集まったみんなを見て沸き上がる決意を固める。

 

「7月も終わりに近づき梅雨も明け、夏も本格的になる。これから天からの防ぎようのない日差しや、照り返す海からの逆光にさらされながら航行することになる。」

 

「こんな戦いにくい時期にこの作戦を決行することを皆に謝りたい……。すまない。」

 

深く頭を下げ心の底から謝罪の意を表す、気温が上がり額に汗をかきながら汗が滴り落ちるのを肌で、頬で感じる。

頭を上げまた皆の方に向き直る、一人一人覚悟が決まった顔をしている。

 

皆の真剣な顔を見て安堵した、心配してることも失敗することも無いと感じさせるいい面構えをしている。

 

「今回我々は敵が集結しつつある海域に向かう、そのため逆襲や強襲、闇討ちなんかに遭うかもしれない。」

 

「そうなってしまったらまず死人は確実に出るだろう。………………昨日まで、つい数刻まで一緒にいた仲間が居なくなる……。これから向かう戦場とはそういうところになることが予想される。」

 

深呼吸し続ける

 

「今までの作戦より過酷で厳しいものになるだろう。」

 

場は静寂に包まれ私の声がよく響く、私の声が皆に行き渡るのを感覚的に感じた。

 

「だが死人なんて私が許さない、遠足は帰ってくるまでが遠足だと言う。なら作戦も皆が無事この鎮守府に帰ってこれたら作戦も終わりだ。」

 

「一人でも欠けたら作戦は成功してもそれは成功とは言わない。悲しみが生まれ後に引くものも現れる、なら皆で笑顔で迎えられるように生きて帰ってこようじゃないか!」

 

力強く言葉を発する、私の気持ちを知ってもらいたい。この作戦にかける私の気持ちを皆に感じてもらいたい、皆には生きて帰ってきてほしいから。

 

勿論私もここで死ぬつもりはない、皆笑顔でこの鎮守府に帰ってくるんだから、死ぬわけにはいかない。

 

「無論私もこんなところでくたばるつもりはない、新しい時代を見ずには死ねないからな。」

 

私は微笑み

 

「皆で帰る場所を見失い途方に暮れている仲間達を…救いにいこう。私からは以上だ、各人各々の準備を怠らないように。」

 

提督はこれを最後の言葉とし壇上を降りる、皆の拍手の音を背に浴び執務室に戻る。

 

執務室に戻り最終的な身支度のチェックを済ませた後、出発のまでの時間を何して過ごすかと考えていると執務室のドアをノックする音が聞こえた。入っていいぞと声をかけると小さな声で「はい」とだけ聞こえ、その人物が入ってくる。

 

大淀だ。

 

弱々しい彼女の顔を見て私は彼女が抱く不安を察した。

普段は必ず見せることのない彼女の不安で曇った顔、色んな負の感情が読み取れる。何か言いたそうにしているが言えないのか言いたくないのか下唇を噛んで震えている、まるで悔しそうに。

 

私は大淀に近づきそっと抱き寄せ、頭を撫でる。

 

震えている彼女の体が私に伝わる、彼女の体温も鼓動も感じる。

 

暫くすると大淀は泣き始め、私に体を預け嗚咽する。溜め込んだ感情が溢れるかのように圧し殺していた声が漏れ、泣きじゃくる。肩から胸にかけて彼女の涙で濡れるのがわかる、きっと大粒の涙を流しているのだろう…。彼女が落ち着くまでどれだけ時間が経ったか分からないがその間私の決心と決意が強まる、私のやるべきことが今はっきりと自覚した。

 

ようやく落ち着き出したのか彼女の震えが治まりこちらを見上げた。

目元は腫れ、隈が出来ていて普段の彼女とは思えない顔をしている。寝不足なのだろう、それに昨日からずっと泣いていたのだろうな…。

 

彼女だけが不安を抱いてる訳じゃない、それはわかっている。この先どうなるかは分からないがこの戦争を終わらせることが出来れば彼女たち、そして私自身も笑って過ごせる日常がやってくるはずだ。

 

皆の笑顔を取り戻し平和な世界を作るため私は指揮を執り戦場に立たねばならない。

 

平和な未来への架け橋に私とこの鎮守府の艦隊はならねばならない。これ以上の犠牲は出さない、出すことは許されない、私が終わらせる、絶対に…。

 

「少し遅れたがそろそろ行こうか大淀、涙を拭いて準備が出来次第行こうか。」

 

ハンカチを渡しながら私は彼女に言った。

 

「はい…。」

 

力無く返事をしたが彼女の表情に曇りがなくなった。

覚悟が決まったのだろう。

 

時計を見ると出発時間を少し遅れていたが誰も呼びに来なかった辺り汲んでくれたのだろう、本当に気の利いた優しい艦娘ばかりだな。

 

艦娘だって感情がある、泣いて笑って怒る普通の人間と変わらない…。兵器なんかじゃないちゃんと心のある感情のある人間と同じなんだ、なら深海悽艦もそうあると思うのは必然ではないか?悪は無慈悲無感情とは言うけどだがしかし、悪は悪なりの思想があるはずだ。しかも深海悽艦は人語も話すと言う、それなら知能もあると見ていいだろう。

 

だがなぜ大本営は彼女達を敵として認識し殲滅したがるのか?

 

なぜ悪だと決めつけるのか?

 

私には分からない、分からないがそれはこれから私自身が調べればいいこと。

本当の悪はどちらなのか、世界の真実を私は見極めなければならない、きっと彼女達もここにいる艦娘達と何ら変わらない存在であると証明して見せなければならない。この戦いが終わったらまだまだ私に残されている仕事はある、それを終わらせるまで死ねない。

 

彼女達が安全に暮らせる場所をそして新しい認識をしてもらうために私はまだ死ねない。

 

やりとげる、きっとそれが私の天命なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「先程は申し訳ありませんでした、提督、準備が整いました何時でも出撃できます。」

 

準備を終えた大淀が私を迎えに来た、少し遅れたがいよいよだ。

 

 

 

 

 

 

さあ

 

 

 

 

 

 

 

 

歴史を変えようじゃないか…




「てーとく遅いなぁ~、なにやってるんだろ。」

「大淀さんも来てないみたいですね、どうしたんでしょうか。」

川内と神通がまだ来ていない提督と大淀を心配している、集合時間まであと5分を切ったと言うのに現れないのは確かにおかしい。時間には厳しい提督だから今まで集合があるときは遅れることはなかった。

それは大淀も同じ、きっと二人の間で何かあったのだろう。提督の演説の時横で暗い顔をしていたのだから。

「心配することはない、きっと大丈夫だ。いつだってあの男は私達を第一に考えてきた男。きっと大淀を今頃なだめてるんじゃないか?」

「不安なのはわかるがこの作戦が上手くいけば救われる命がある、そう提督は言っていたじゃないか。それに私達を誰一人として失わないと、自身も死なないとあいつが自信たっぷりにいい放ったんだ私たちはそれに着いていき提督の期待に応えるのが私らの使命だろ?」

横から武蔵が割って入ってきたがさすがだな、いいことを言う。

「提督自身だって不安でいっぱいだろう、でもそんな提督は私たちの不安を少しでも和らげようと努力してくれている。」

「静かに待とうじゃないか、騒いでいても仕方ない。騒いでいても提督の不安を駆り立てるだけだ、大淀は提督に任せて静かに待とう。」

「そうですね長門さん、武蔵さん。」

「うん。」

「そう言うことだ。」

これこら来る未来を私たちが作る、今度こそこれで終わりだ。

提督が望む世界を必ず実現して見せる、そのために私たちは貴方に付き添うさ。






皆で笑っていられる世界のために……。

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