イナズマイレブン〜骨の力を手に入れた転生者は骨の髄まで頑張る〜 作:Rêve
A.分けた方がしっくりきた。
その日家に帰った刃は刃を普段は無視し、ロクに相手もしない両親から酷いことを言われていた。
「だから、サッカーはやめろと言ったじゃない!全く…。こんなんだから貴方はグズなのよ!」
「貴様程度がサッカーなどと言ったときはヒヤッとしたよ。我々はあの時止めたからな?今回のは貴様だけの責任だ」
いつもはロクに世話もしない両親が自分たちは正しかったなどと言うことを延々とと言われ続けた。
(クソ親共が。普段は俺に構いやしない癖に。自分たちが正しかったみたいに振る舞いやがって……)
それを横から見ている黒髪赤目の少年…塵山灰飛。彼はそれを見ながら制止しようともしない。いや、刃のことを眼中にすら入れてない。
(お前は相変わらずガン無視かよ。可愛い弟だからって流石に限度があるぜ……)
このまま救いの手はないかと思われた。しかし、この塵山一家には良心がいる。
「母さん!父さん!五月蝿いわ!陽奈が泣いちゃったわよ!」
「ごめんねぇ、薫。今、あやしに行くわね。…明日覚悟しときなさい」
「ふむ。そうだな、陽奈の教育にも悪い。続きは明日にしよう」
救われた。刃は妹に心底感謝した。彼女がいなければこの家には帰ってなかったと言ってもいいくらいだ。
「兄さん…ちょっといい?」
「……あぁ」
二人は誰もいない部屋に入る。薫の用は刃には分かっていた。
「新田君…怪我させたんだってね」
「……あぁ」
薫の口調は新田を心配しているだけで、刃を責め立てるものではなかった。
「それはいいの…けど…チームをやめたんでしょ?確かに全国は最後だったけどまだ、卒業試合があったじゃない」
「俺に出る資格はない」
刃は言い切る。今の彼にはサッカーに対するやる気が微塵にも感じられなかった。
「……待って。サッカーをやめるつもりなの?」
「あぁ」
返答した瞬間、薫の表情は怒気を含むものに変わった。
「兄さん、貴方は7年前母さん達を見返すって言ってサッカーを始めたの覚えてる?」
「はっ。どうだったかな。もう覚えてねぇやそんなこと」
嘘である。彼は今でもその言葉をはっきりと覚えている。しかし、それを今、口に出来る精神状態ではなかった。
「………!兄さんのあの時の目は決意に満ちてた!あれから色んなことがあった!けれど、それでもあんな目をするのはサッカーくらいだった!いつもはやる気の無い兄さんが本気でやってる!私はそれがとても嬉しかったし、誇らしかった!それは兄さんにも言ってあった筈よ!」
「………ッ!」
薫の言葉は新田の言葉以上に刃に突き刺さる。当然である。最愛の妹からの言葉だ。
「それを兄さんは裏切った!決意があれば何でも出来るっていう心情も不意にした!私はもう……兄さんを信じられない!」
「なぁ、かお「五月蝿い!もう顔も見たくないわ!……………ぁ」…………」
刃の表情は固まり声は出なかった。薫も怒気を含む表情から怯えるような表情に変わる。
「に、兄さん今のは…「出てけ」で、でも「今すぐ出て行け!」……ッ!」
刃の左目は輝き、周囲から骨が生えて来る。刃の激情に呼応したかのように。それを見た薫は涙目で出て行ってしまった。
「…………悪いな。もうここにはいられない」
翌日、薫が刃を起こしに部屋に行くと…
「兄さん!早く起きて!休みだからって怠けるのは……あれ?」
もぬけの殻。誰もいなかった。ただ一つ。残された置き手紙があった。
『薫へ
よう。これを読んでるってことは俺はいなくなってるってことだな。あぁ、死んだ訳じゃあないぞ?けどな、俺はこの家にいるのが辛くなっちまったんだ。クソ親共は普段関わらないくせに、俺がしでかせば何もかもを俺のせいにする。灰飛は俺の事を相変わらずガン無視だ。その中でも、お前だけは味方だった。いつも俺に引っ付いて可愛い妹だった。でも、昨日の喧嘩で言われた、もう俺を信じられない。顔も見たくないは勢いで出た本心じゃなくても、流石に傷ついたぜ。…お前のせいではないんだ。けど、俺はこの家を出て行く。サッカーは…続けるよ。やる気が出るかはわからないけど、止めるよりはマシだから。最後に一つ。昨日の俺が部屋から追い出した時…怖かっただろ?ごめんな。本当にごめんな。こんなダメなお兄ちゃんで本当にごめんな。
刃より』
紙には涙の跡があった。彼にとっても薫から言われたことは本当に辛かったのだろう。けど、それ以上に薫と別れることと怖がらせた事が嫌だったのだろう。
「……兄さん。うわぁぁぁぁ!」
誰もいない部屋に泣き声だけが木霊した。
「それで、俺の家に来たのか」
「はい……」
刃は今、賽野一の家にいた。彼の家は県外にあるが、刃の能力を使えば一瞬でこれた。
「用件は分かるぞ。俺の家に住まわせて欲しいんだな?」
「はい…無理を承知で頼んでいます」
これを断られた場合彼は宿無しである。普通は断られる状況。しかし、一は違った。
「ウチの親は間違いなく良いって言うからな。お前の事気に入ってるみたいだし。それに、5歳頃からの付き合いだ。いいぜ、条件付で住まわせてやる」
「本当ですか!それで、条件ってのは?」
一が出した条件。それは思いもよらぬものだった。
「もう小学校卒業して中学生になるだろ?だから、ウチの中学校でサッカー部に入れ。数合わせでもいい。今は俺一人しかいないんだよ」
彼らの物語が今始まる。
Q.雷門じゃないの?
A.雷門じゃないよ。